インタビュー
「実物大スコープドッグ」はいかにして実現したか? 稲城市観光協会・徳尾会長インタビュー
2025年10月15日 00:00
- 【スコープドッグ モニュメント設置5周年記念トークショー】
- 9月28日開催
- 会場:いなぎペアパーク
- 入場無料
一般社団法人稲城市観光協会は9月28日、東京都稲城市の「いなぎペアパーク」に設置されている「実物大スコープドッグモニュメント」の設置5周年イベントを開催した。このイベントではアニメ『装甲騎兵ボトムズ』の監督・高橋良輔氏とメカデザインを務めた大河原邦男氏によるトークショーが開催された。
大河原氏は江戸時代の昔から先祖代々稲城市に住んでいる。街の変化も見続けているという。イベントでは『ボトムズ』の前作にあたる「太陽の牙ダグラム」での2人の出会い、大河原氏の発案により、全高4mのロボット「スコープドッグ」が主役メカとなる『ボトムズ』の誕生秘話などが語られた。
イベントは大盛況で、会場には海外からもファンが訪れた。稲城市は2015年より「大河原邦男プロジェクト」を進めている。稲城市観光協会は実行部隊として2018年より様々な活動をおこなっている。「実物大スコープドッグ」はその柱ともいえるモニュメントだが、他にも大河原氏がデザインした「ガンダム」、「シャア専用ザク」、「ヤッターワン」といったモニュメントの設置、市内を背景に描いたメインキービジュアルなど大河原氏とタッグを組んだ観光事業を展開している。
今回、「実物大スコープドッグモニュメント設置5周年イベント」の機会に、稲城市観光協会の会長を務める徳尾和彦氏にイベントへの想いや今後の展望などを聞くことができた。「大河原氏ゆかりの地」である稲城は、今後どんな活動をしていくのだろうか?
「スコープドッグのモニュメントが欲しい」、大河原邦男さんの想いを実現
――まず最初にイベントの感想をお聞かせください。
徳尾氏:感動しました。イベントの開始は13時30分なのですが、熱心なファンは朝8時から会場にいらっしゃったんです。結構暑くなりましたが、ファンの熱意を強く感じました。会場の拍手もとても温かく、ファンの思いが感じられました。
『ボトムズ』という作品に、ここまで多くの人を惹きつける魅力があるというその力に、イベントを開催するたびに圧倒されます。例えば30年以上前ならマンガやアニメ、いわゆるサブカルが行政の観光施策の柱になるなんてことは、考えられなかったと思うんです。しかしクールジャパン、日本のアニメは世界が魅力に感じる文化になってます。今やアニメ文化は“表舞台”に立った、観光コンテンツになっていると思っています。
――徳尾さんは稲城市観光協会の会長になられて何年になるのでしょうか?
徳尾氏:私は稲城市の観光行政に関わって5年、会長になってからは5年になります。実は私はこれまでも「ソフトを通じての地域作り」に30年近く関わっているんです。アメリカ駐在の時にレジャー産業に関わったことを始めとして、国内では北九州市のテーマパーク「スペースワールド」の仕事もしましたし、その後千葉県木更津市の「かずさアカデミアパーク」でのMICE(ビジネスイベント)の仕事を経て、町田市観光コンベンション協会、次いで稲城市の観光施策に関わってきたことなど、コンテンツで地域を盛り上げるという仕事をやっていました。ずっと集客に関わるマネージメントをしている、というところです。
ただアニメの仕事はこの「大河原邦男プロジェクト」が初めてです。色々新鮮な気持ちで取り組んでいます。勉強の毎日です(笑)。大河原先生と話すのは本当に新鮮で刺激を受けています。
私はこの仕事に就くまでは大河原邦男先生がどれだけすごいメカデザイナーなのか、というのを正直あまり知っていませんでした。イベントの時に熱心なファンが来て、彼らの熱意で改めて大河原先生がどれだけ大きな存在かを実感させられました。これはこれまで自分が気がつかなかったことでした。改めてすごい人がこの稲城にいる、という幸運を実感しています。
――アニメ、ロボットアニメがここまで大きな影響力を持つコンテンツに成長したというのは驚きがありますよね。
徳尾氏:稲城市は大河原邦男先生のゆかりの地として、それまでも詳しい人には知られていたんです。しかし「実物大スコープドッグ」を皮切りに、市外の方、日本全国や海外の人までを引きつけるようになったのは私を含め、市民の方々の価値観を変えたと感じています。"外の人からの人気"が大きな動きを生み出しています。
――徳尾氏が稲城市の観光に関わって10年ということは、2015年の「大河原邦男プロジェクト」のスタートにも関わられていた、ということですか?
徳尾氏:「大河原邦男プロジェクト」がスタートしたのは稲城市市長である高橋勝浩さんの先見の明、というところが大きいです。市長が力を入れてくださったので、大河原先生を中心としたプロジェクトをスタートすることができました。
また、大河原先生側からも積極的に協力してくださったので、プロジェクトがスムーズに進行しました。大河原先生は稲城市を“ふるさと”として想いを持ってくださっている。実は特に大河原先生の奥さんのお気持ちが強く、大河原先生を「あなた、やりなさいよ」と後押ししてくださっていたようなんです(笑)。
稲城市は観光の柱を4つ設定しています。読売ジャイアンツ、東京ヴェルディとのつながりで「スポーツ」、そして「自然と歴史」、よみうりランドを中心に据えた「レジャー」。そして4つめが「大河原邦男プロジェクト」なわけです。このなかで「大河原邦男プロジェクト」は2015年からの新しい柱です。高橋市長のバックアップのおかげで、進めることができた要素といえます。「自分の街に大河原先生がいるんだ」という情報は稲城の市民の意識を変え、街全体の活性化に繋がりました。
――その「大河原邦男プロジェクト」の中心というのが「実物大スコープドッグ」というのが面白いと思います。「ガンダム」は一般の方にも知られる存在といえますが、「スコープドッグ」は比較的マイナーと言えるロボットといえます。なぜ「スコープドッグ」にフォーカスしたのでしょうか?
徳尾氏:私も「スコープドッグ」は昔は知りませんでした。4mのロボットがなぜ活躍するのか、どのように劇中で描かれているのか、そういうストーリーを学んで感心させられました。戦後の闇市のような都市を舞台とした後、世界での紛争も取り上げる『ボトムズ』の世界は、私自身の時代感覚にも近かったです。
そして多摩地域は米軍の基地があった場所なんです。戦車が走る風景など、軍用車両を見る機会も多かった。大河原先生はそういう時代を生きていた。4mのスコープドッグが歩いているような世界と親和性が高かったんじゃないかとも思っています。
大河原先生と色々な話をさせていただいたんですが、その中で「実は思い入れがあるのは、スコープドッグなんだ」とおっしゃっていただけたんです。「ガンダム」の実物大立像はお台場など数カ所で実現している。大河原先生にとって、「自分がデザインしたメカ」として「スコープドッグ」には特別な思い入れがあるんだ、とお話をいただき、それならば実物大立像をつくろう、という流れになりました。
そこですぐに立像製作のための見積もりをとったんです。金額はおよそ2,500万円。これだけの製作費をどう捻出するか、そこで東京都のアニメ向けの補助金で2,000万円、さらに大河原先生ご自身にも出資いただいています。こういった経緯で「実物大スコープドッグ」が実現したんです。やはり「実物大スコープドッグ」には大河原先生ご自身の並々ならぬ強い思いを感じます。その実現をお助けできたかな、とも思っています。
――私自身この「実物大スコープドッグ」を見に初めて稲城市を訪れましたが、ユーザーの反応はとても大きなものだったんじゃないでしょうか?
徳尾氏:「実物大スコープドッグ立像」が設置されているいなぎペアパーク内の観光案内所「いなぎ発信基地 ペアテラス」の集客が大きく伸び、『ボトムズ』関連の商品の売り上げも非常に好調です。ただ、私自身はこういう流れは予想していたんです。
「大河原邦男プロジェクト」を始めるにあたり、秋葉原でアニメ関連の盛り上がりを調べたんです。そこで改めてキャラクタービジネスの勢いを目の当たりにして、衝撃を受けました。キャラクター、アニメへの想いが、今どれだけ大きいのか、実感していたからこそ、「実物大スコープドッグ」の人気は納得するものがあります。
それまで私はキャラクタービジネスといえば、「ハローキティ」など子供向けのかわいらしいキャラクターとグッズを想像していたのですが、今の時代は大人向けのアニメのグッズがこんなに盛んで、大きな市場を形成している。秋葉原の特にガンダム関連のビジネスの勢いは圧倒されました。
やはり現場をちゃんと見て、現在のビジネスを把握する大事さを感じました。ユーザーが商品を見る目の輝き、スマホで写真を撮る熱心さ……。そういう現場ならではの熱さが時代を変えている。“このユーザー達の勢いは本物だ”と思いました。常に現場を見て、自分の価値観をアップデートする必要性を改めて感じました。
――『ボトムズ』の世界を反映した、「稲城の苦いコーヒー」や、様々なグッズなど、特にいなぎペアテラスの販売アイテムなどは、若いスタッフの積極的な姿勢を感じます。
徳尾氏:スタッフは大河原先生や、『ボトムズ』に対する理解度が非常に高いです。「ペアテラス」で求人をすると「大河原邦男プロジェクトに協力したい」という熱心な人材が集まったんです。「ペアテラス」にはプロジェクトのための展示物以外にも放映当時のグッズなどたくさんのアイテムが展示されていますが、これらはスタッフの私物なんです。そういった積極的な姿勢が街の観光を盛り上げてくれています。
若いスタッフ達が積極的に観光事業を盛り上げてくれる。私はエンタメにずっと関わってきましたが、こういったボトムアップともいえる勢いはとても新鮮です。例えば私がかつてクラッシック音楽事業に関わっていたときは、演奏者達が「聞かせてあげる」というトップダウンの風潮があったんです。「大河原邦男プロジェクト」のスタッフとユーザーが盛り上げ、私たちがそこに応え、応援するというボトムアップのビジネスは、これまでの私の仕事とは違う手応えを感じています。まさに"ボトムズ"なんじゃないかなと(笑)。
――ユーザーや若いスタッフが積極的に協力して盛り上げている「大河原邦男プロジェクト」ですが、今後の展望をお聞かせください。
徳尾氏:私個人の夢としては「大河原邦男ミュージアム」ですね。色々ハードルはありますが、事業として取り組んでいただけるパートナーを募集しています。バンダイナムコさんとか、ぜひ手を上げていただければなと(笑)。
具体的な考えとしては関連グッズの一層の充実です。ファンの声に応え、稲城の良さも感じてもらえるようなグッズを考えていきます。稲城市から発信したグッズが皆さんの部屋に飾られる、そういう流れをもっと大きくしたいです。大河原先生はもちろん、高橋監督にも協力していただきたいと思っています。
メディアに対してももっと働きかけ、「大河原邦男プロジェクトの街」、「稲城はメカの聖地だ」という情報をアピールしたいです。何をしたらいいのか、考えています。鳥取県境港市の水木しげるさんの盛り上げなど、他のケースを参考にしつつ研究を進めていきます。
――最後に読者へのメッセージをお願いします。
徳尾氏:私たちの最終的な目的は「稲城市のブランドを高める」ことにあります。稲城(いなぎ)市なのに今でも「いなげ」と読まれることがある。知名度を上げればこういった所も払拭できると思います。稲城市と聞いて、「実物大スコープドッグ」、「大河原邦男プロジェクト」など、しっかりしたイメージを浮かべてもらう。そういったものをもっと増やしていきたい。今後も模索していきたいです。
――ありがとうございました。
「大河原邦男プロジェクト」と、その中心となった「実物大スコープドッグ立像」が生み出した活気、稲城市の盛り上がりを筆者もその誕生時から見守っているが、その熱意は独特のものがある。この盛り上がりが稲城市に活気を与えていることを今回改めて実感することができた。
大河原邦男氏というロボットアニメを語る上で欠かすことができない人物のふるさとである稲城市が、大河原氏の協力を得て町おこしをするこの活動は興味深い。なにより、「スコープドッグ」というちょっとマニアックなロボットに対する大河原氏の強い想いを改めて聞くことができた。今後も稲城市観光協会の活動に注目したい。
(C)サンライズ














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