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【おもちゃショー】エポック社、「シルバニアファミリー」の"新要素"。ファンタジーの導入や、SNSの取り組みなど新しさと変わらないかわいらしさを両立
2022年6月18日 08:03
おもちゃショーの業者日は、各メーカーが小売店や販売店に向け、自分たちの商品がいかに人気を集めるための活動をしているかをアピールする場である。「今の時代ユーザーはこういう理由でこういった商品を好む」、「この商品はこういった取り組みでユーザーの期待に応え、人気を博している」……。
特に時代を超えて愛される「ブランド商品」は「今年はこの方向を提示する」というしっかりしたビジョンの提示が求められる。多くのユーザーを獲得する定番商品やブランドは立ち止まり時代性を失えばたちまち「古いブランド」とユーザーに認知されてしまう。それでいて目新しさのみを狙うと、ブランド本来の良さを失いかねない。
エポック社の「シルバニアファミリー」は、「ブランドとして守っていくこと」も多いシリーズである。しかしここ数年は積極的に新しい魅力も提示している。「シルバニアファミリー」はそして他のキャラクター商品以上に"現役"のファンの多いブランドという側面もある。
おもちゃの定番ブランドのいくつかはユーザーが「卒業すること」を前提に商品企画を立てているが、「シルバニアファミリー」は子供だけでなく大人も"趣味"としてコレクションするユーザーも多い。本稿ではエポック社のブースで改めて知ることができた「シルバニアファミリーの取り組み」を昨今の商品を交えて紹介したい。
「シルバニアファミリー」の基本は"お人形遊び"だ。擬人化されたウサギの家族を中心に、様々な動物の家族、彼らが住む家などを商品化し、ユーザーはそれらを購入して自分だけの家族、ストーリーを作り出していく。特に「シルバニアファミリー」は、「少し前の時代の雰囲気がある欧米の家庭」をテーマに、田舎町の風景を追求し、独特な世界観を持っている。素朴で、温かで、愛情あふれる家庭風景を家族や建物、様々な小物で表現している。
この世界を追求しながら、「乗り物」を導入したことで、観光や旅行をテーマとした要素を導入した。そして「都会を訪れたシルバニアファミリー」をテーマに、こちらも昔のアメリカやヨーロッパをイメージさせる建物や小物を販売、世界に広がりを持たせた。こういった広がりを見せている「シルバニアファミリー」だが、ここ数年はさらに大胆な新要素を加えている。
これまでの世界観を受け継ぎつつ発展をさせている要素の1つとして「赤ちゃん」の存在がある。これまでの「欧米の片田舎」という世界観を守りつつ、主人公のウサギの女の子よりさらに年下で小さな赤ちゃんや、赤ちゃんを持つ家庭を展開し、赤ちゃん用の小物などかわいらしい商品を展開している。
この流れを受けて企画されたのがコンビニ流通の「シルバニアファミリー 赤ちゃんコレクション」シリーズだ。玩具店ではなく、コンビニの食玩コーナーでブラインドパッケージで販売されるこの商品ではランダムで赤ちゃんのフィギュアが封入されている。もちろんこれまでのコレクションに加えることもできるが、オフィスでマスコットとして机の上に小さく飾っておくような遊びも考えてのものだという。
商品の中心となるドールハウスの「赤い屋根の大きなお家」にも、屋根裏の子供部屋を追加。階段が天井から引き出せるというギミックもあり、ここにベビーベッドなどを配置し小さな子供がいる家庭風景を作りやすくしたという。赤ちゃんフィギュアの人気を受けた新要素なのだ。
このほか、「シルバニアファミリー」は従来とは世界観を少し変えた展開もしている。1つは「ファンタジー要素」。あえて現実的な路線ではなく、キラキラと華やかな雰囲気の商品シリーズを展開している。2020年4月に発売された「お城のゆめいろゆうえんち」は、遊園地か、絵本の中にあるようなファンタジックな建物。従来のシックな色合いの商品と大きく異なる商品展開だ。
4月に発売された「ゆめいろマーメイドキャッスル」はこの路線をさらに進め、「海の中のお城」をイメージした商品。人魚のように尾びれを持つキャラクターが登場しているが、実は既存の人形に人魚の尾びれをはかせるギミックで人魚キャラクターになれる。どちらもシルバニアのキャラクターが夢を見て、その中で遊んでいるような華やかさがこれまでとは異なる印象を受ける。
もう1つ、「おしゃれにスタイリング! ビューティヘアサロン」も新展開商品。ポニーのキャラクターに長い髪を持たせ、人形遊びの定番である「ヘアメイク」の遊びを取り入れた。従来のおままごとや、ジオラマ的な遊び方ではなく、髪をとかしたり、髪型を変える楽しさを持った展開だ。
さらに「コラボレーション」もここ数年で積極的に行なっている路線だという。キャラクターの絵を配置したホットケーキミックスや、有名菓子店とのコラボレーションなどは従来の「シルバニアファミリー」ではあまり行なってこなかったとのこと。
こういった流れはSNSなどでの新しい広がりもうけてのことだという。「シルバニアファミリー」のキャラクターたちが様々な活動をしてそれを写真に撮るインスタグラムはかなりファンの反響が大きい。キャラクターたちが水泳をしている写真などは「どうやってとったんだろう?」といった興味も惹かれる。
「シルバニアファミリー」はやはりその"かわいらしさ"が最大の魅力だ。業者日のビジネス目的で来る来場者が、エポック社のブース前の「シルバニアファミリー」のジオラマを目にした途端、「わ! かわいい!」と小さく声を上げ、ジオラマの前で手を振っているウサギの女の子・フレアにうれしそうにスマホのカメラを向ける。こういった風景が「シルバニアファミリー」の人気を支えていると思う。これからも変化しながら、きちんとファンの声に応えていくシリーズのチャレンジに期待したい。