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新たなるプラモデル生産拠点、「バンダイホビーセンター PDII」内覧会レポート

ガンプラの世界供給充実を目指し稼働

【BANDAI HOBBY CENTER PLAMO DESIGN INDUSTRIAL INSTITUTE MUSEUM】
9月2日 オープン予定
営業時間:9時~17時30分
住所:静岡県静岡市葵区長沼500-15
入場料
大人(13歳以上):2,860円
小人:1,100円
未就学児:無料
※当施設は完全予約制です。

 BANDAI SPIRITSは新しいプラモデル生産拠点「バンダイホビーセンター プラモデル デザイン インダストリアル インスティチュート(BHC PDII)」を静岡・長沼にオープン、9月2日からはこの工場を見学可能な「BHC PDII ミュージアム」をスタートする。

 「BHC PDII」はこれまでのバンダイのプラモデル工場に加え、新しいプラモデル生産拠点となる。これは国内のガンプラ需要、さらには海外のガンプラ需要に対応するためであり、従来の工場では別々で行われていたプラスチック成形、パッケージ箱への封入、出荷をオールインワンで行うことができる。この工場は2026年度に本格稼働し、2023年度に比べ、生産数が35%増になる見込みだという。

 本工場を見学できる「BHC PDII ミュージアム」は9月2日よりスタートする。本稿では8月20日に行われた内覧会の様子をレポートしたい。弊誌ではすでに概要を紹介しているが、本稿では内覧会の詳報をお伝えしていく。なお、「BHC PDII ミュージアム」に関しては別稿でレポートする。

次世代の作り手育成も考えた「見せる工場」を目指しての設計

 内覧会で最初に登壇したのはBANDAI SPIRITS 代表取締役社長 榊原博氏。「BHC PDII」はプラモデルの安定的な生産・供給を目指し、2023年に着工、2025年7月24日から稼働している。これまでもBANDAI SPIRITSは自社に加え、パートナー企業の協力により生産機能の向上に努めていたが、この新工場が本格稼働する2026年には2023年に比べ、35%増の生産能力を獲得するという。

 BHC PDIIは従来の工場に比べ、生産効率が向上しており、世界中のファンへより多くの製品を供給を目指していく。さらに「この工場は従業員がモチベーション高く、より生き生きと活躍できる場を目指している」と榊原氏は語った。例えば成形担当者が自分の好きなモビルスーツのカラーリングを変更し生産できるなど、新しい工夫を行っているという。このシステムはBHC PDII ミュージアムでも見ることができる。体験コンテンツだけではなく、実際のシステムとしてもデザインが可能なシステムが組み込まれているとのことだ。

BANDAI SPIRITS 代表取締役社長 榊原博氏
BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン GM 高橋誠氏

 そして「BHC PDII ミュージアム」は、“モノ作りの魅力発信基地”としての役割を持たせている。見学プログラムはプラモデル工場を見学できるだけではなく、実際のプラモデルのデザイン、体全体のバランスを変更したり、 カラーリングを変更するといった実際のプラモデル生産の工程をコンテンツでゲームのように楽しめる。工場でプラモデルがどう生産されているかを学ぶだけでなく、自分だけのプラモデルを作るような体験ができる。「このミュージアムに来館した子供さんが、将来モノ作りに携わってくれたら、我々もうれしく思います」と榊原氏は語った。

 続いて登壇したBANDAI SPIRITS ホビーディビジョン GM 高橋誠氏は、工場の概要を語った。本工場の基本コンセプトは「見せる工場」。人を中心とした機能、空間、環境を考え抜いて設計されており、省人化、生産効率の向上を目指しており、これらを重視したシステムを安全性を重視した上で導入している。

 バンダイならではの多色成形、1枚のランナーに複数の色が異なる成形色の部品を出力する「多色成形機」と、通常の「単色成形機」、さらに生産から出荷までをすべて1つの工場で行うことができる。物資の移動がPDII内で完結することで、運送コストの削減、運搬車両の二酸化炭素排出を防ぐなどサステナビリティにも配慮した環境が実現しているという。

【ミュージアム】
ミュージアムではプラモデザイナーの体験ができる
各パーツの大きさを変えたり、カラーリングを変えられる
モールドでは金型の位置を変え、効率のいい射出成形を学べる
パッケージもデザイン、総合的なセンスも判定される
記念商品も販売予定

 作り手のモチベーションを上げる仕組みとしては、本工場のミュージアム化も大きいと高橋氏は語る。工場でどのように生産が行われているかだけでなく、工場でのプラモデルの設計、パーツのバランスや、カラーリングといった設計変更、より効率の良い射出成形を目指した金型の工夫、パッケージデザインなど、実際の工場やスタッフが行っている仕事を体験型コンテンツで学び、実際の作業風景を学ぶことで、来場者だけでなく、見られている工場スタッフにもモチベーション向上を目指しているという。ミュージアムは次世代の作り手への導入に加え、BANDAI SPIRITSの優れたモノ作りをアピールする役割を担っていると高橋氏は語った。

 内覧会ではBANDAI SPIRITS プラモデル公式アンバサダーの「LINKL PLANET」も登場、彼女たちはPDIIのテーマソング「プラモデザイナー」を歌う。この曲では工場の特徴が歌詞に織り込まれており、工場のイメージを伝える曲となっているという。

プラモデル公式アンバサダーの「LINKL PLANET」はPDIIのテーマソング「プラモデザイナー」を歌う
【ミュージアム内覧】
内覧会ではLINKL PLANETの案内の元、ミュージアムも見学できた。別稿で詳しく紹介したい
プラモデルデザイナーとして、色々なことを学べる

多色成形機を目の前に! ここでしかできない工場見学

 内覧会ではミュージアムの見学プログラムでは入ることができない工場内も見学することができた。多色成形機を目の前で見ることができた。

 成形機ではペレット状のプラスチックを240度ほどに加熱し溶かし、成形機に流し込んでランナーを成形する。成形機には大きなクレーンがあるが、これは地下に収められている金型を取り出し、成形機にセットする機能があるという。

 現在の工場では多色成形機5台、単色成形機32台が稼働している。2026年の本格稼働時には多色成形機10台、単色成形機は84台まで拡大する。従来の工場でも稼働している台数も合わせて計算すると、多色成形機が1.5倍になる。

 また工場には、天井で物資を搬送する「天井搬送台車」の経路が張り巡らされており、工場内のスペースを効率的に使って物資を搬送している。このシステムで成形機で射出したランナーの袋詰め、箱詰めを行うことができるとのことだ。フォークリフトも無人制御できるようになっており、ペレットの搬入などを行う。オートメーションを積極的に取り入れた工場であることを見ることができた。

バンダイが誇る多色成形機
袋に詰められたペレットを溶かし、射出成形を行う
ずらりと並んだ成形機。現在の工場では多色成形機5台、単色成形機32台が稼働している
工場の天井で物資を搬送する「天井搬送台車」
無人で資材を運ぶフォークリフト

 今回、初めて「プラモデル工場」を見ることができた。気がついたのは作業員の少なさだ。内覧会ということもあったと思うが、現在でも工場は稼働しており、プラモデルは生産されていることを考えれば、これだけの人員で工場が稼働しているというのは驚きだ。オートメーションでプラモデルが生産されているというところをしっかり見ることができた。最新の工場を見ることができたのは新鮮な体験だった。

 本工場は工場の外周がミュージアムになっており、工場でどんな生産が行われているかをミュージアムでコンテンツを体験しながら見ることができる。プラモデルがいかに生産されるかを学びながら、実際の生産過程を確認できるのだ。別稿でミュージアムのコンテンツも紹介するので、お楽しみに。