レビュー

「METAL ROBOT魂 <SIDE MS> ジークアクス」レビュー

山下いくと氏のデザインをたっぷり堪能、最終回の姿まで再現可能!

【METAL ROBOT魂 <SIDE MS> GQuuuuuuX】
開発・発売元:BANDAI SPIRITS
発売日:2025年8月30日
価格:22,000円
ジャンル:アクションフィギュア
サイズ:全高約155mm
材質:ABS、PVC、ダイキャスト製

 BANDAI SPIRITSは8月30日にアクションフィギュア「METAL ROBOT魂 <SIDE MS> GQuuuuuuX(ジークアクス)」を発売した。TV番組「機動戦士ガンダム ジークアクス」は2025年4月より放送された番組だが、アクションフィギュアとしての本商品は番組終了後の発売となった。

 ガンプラは番組制作と同時進行で開発が進められ、「物語登場と同時に商品発売」という展開が可能だが、通常、商品開発には半年ほどの時間がかかる。ガンプラ以外のプライズやアクションフィギュアといった立体物商品に関してはどうしてもラグが生じてしまう。番組内でキャラクター(ロボット)がどう動いたか、どのような能力を発揮したか……。ユーザーが求めるキャラクター商品を番組展開と同じスピードで展開するのは、非常に難しいのだ。

 「METAL ROBOT魂 ジークアクス」はガンプラと比べると後発になってしまたが、最終回の「エンディミオン・ユニット覚醒」の姿まで再現できる商品となった。細かい彩色、金属部品を多用することでのしっかりした関節構造など、所有者に高い満足感をもたらしてくれる。今回は先行販売されている「METAL ROBOT魂 <SIDE MS> 赤いガンダム」とも絡めて遊んでみた。商品の魅力を紹介していこう。なお、本稿は「機動戦士ガンダム ジークアクス」のネタバレを多くしているので、注意してほしい。

今回は、「METAL ROBOT魂 <SIDE MS> 赤いガンダム」も使い、劇中シーンを再現してみた

山下いくと氏がデザインしたジークアクスをたっぷり楽しむ

 「METAL ROBOT魂 ジークアクス」の最大の魅力は、主役機ジークアクスのデザインをたっぷり見ることができることだ。「新世紀エヴァンゲリオン」のエヴァなどのデザインで知られる、メカデザイナー・山下いくと氏がデザインした「ガンダム」はどのようなものか? 本商品では細かいディテール、彩色でたっぷり見ることができる。

【全身】
「METAL ROBOT魂 ジークアクス」はメカデザイナー・山下いくと氏が、V字アンテナ、ツインアイ、青、白、赤のトリコロールカラーにアクセントの黄色……といった「ガンダムの記号」を取り入れてデザインしている

 興味深いのは肘や膝の「関節構造」だ。昨今のロボットデザインのブロックが連結しているような2重関節ではなく、前腕と上腕をそれぞれ板のように表現し、軸でつなぎ止めたような構造になっている。この構造は「片持ち関節」と呼ばれていて、現実の作業機械などで使われる関節構造だ。

 この構造は人間のように前腕や上腕の筋肉の伸縮によって肘を曲げるのではなく、肘にモーターが取り付けられており、この回転で腕が曲がることを意味している。初代「機動戦士ガンダム」のガンダムをはじめとした連邦軍の機体は、「フィールド・モーターシステム」で各関節にモーターが設定されており、これで動く、という設定になっている。

【関節デザイン】
肘の関節が、軸部分で2つの板をつないだような、「片持ち関節」とも呼ばれるデザインになっている。軸で関節を動かすアイディアは初代「ガンダム」の「フィールド・モーターシステム」といわれる設定を使っているようにも思える
こちらは「ROBOT魂 <SIDE MS> RX-78-2 ガンダム ver.A.N.I.M.E.」の肘。デザインでは丸い部分で曲がるようになっているが、フィギュアは内部にブロック構造の2重関節を盛り込んでいる
【現実の作業機械の関節】
エプソンの作業用ロボットアーム「VT6L」。片持ち関節で構成されている

・引用元:エプソン産業用ロボット/省スペースコストパフォーマンスモデルVTシリーズのページ

 ジークアクスの関節構造はこのフィールド・モーターシステムの設定を感じさせるデザインになっている。ちなみにザクをはじめとしたジオンの機体は「流体パルスシステム」として、動力パイプが全身に張り巡らされ、これで各部のシリンダーを動かして関節を曲げる。初代「機動戦士ガンダム」ではジオンと連邦では駆動システムそのものが違う、という設定があるのだ。

 ジークアクスがフィールド・モーターシステムを使っているかは明言されていないが、特にジークアクスの足の構造は関節のフィールド・モーターで四肢を動かす設計だからこそのデザインになっていると感じた。関節だけで手足が動かせるならば、足やすねに筋肉はいらず、構造を支えるフレームだけで十分だ。中空となった部分に何を積むか? ジークアクスは太ももに大型タンク、そしてすねから足までの下腿部を大型のエンジンで構成するという非常に思い切ったデザインとなっている。

 ジークアクスは太ももも下腿部もフレームのみの簡素な構造で、ここにタンクとエンジンを詰め込んでいる。くるぶしから下はロケットノズルになっていて、噴射口をフレキシブルに動かせる。地面に接地する足部分は1枚のプレートのみで構成されている。明言されてはいないが、本来ジークアクスは宇宙空間を飛翔することを前提とした機体であり、足は機体を立たせるためのランディングギアのような補助的な機能しか持っていない、ということを表すのではないか? オープニングや劇中のような地上を走り回るジークアクスは、デザインの想定とはちょっと違うのかな? といった考察もできる。「METAL ROBOT魂 ジークアクス」の優れたディテール表現はこんな想像もさせてくれる。

【足の構造】
太ももは中空で、内部に赤いタンクがあるように見える。ロケットエンジン用の推進剤タンクだろうか?
すね部分もフレームのみで、大型のエンジンが入っている様なデザインだ
バーニアにつけられた着陸用の板、といったデザインの足。ショックアブソーバーのような機構も見当たらない。ジークアクスが地上を踏みしめて動く陸戦兵器ではなく、常に飛んでいる宇宙兵器としてデザインされているように感じさせる構造だ。

 「METAL ROBOT魂 ジークアクス」は完成品フィギュアならではの細かい彩色で山下いくと氏のデザインをたっぷり楽しめる。V字アンテナ、ツインアイ、青、白、赤のトリコロールカラーにアクセントの黄色……。こういったガンダムに求められる“記号”がジークアクスではどのように活かされているか、その造形と彩色をしっかり味わえるのだ。

【ディテール】
完成品フィギュアならではの非常に細かい塗り分け
複雑なデザインをしっかり立体化している
背中のバーニアも非常にユニークだ
専用のスタンドも同梱

各種武装も充実、エンディミオン・ユニット発動状態も再現

 「METAL ROBOT魂 ジークアクス」は武装もしっかり押さえている。「機動戦士ガンダム ジークアクス」でのジークアクスはジオンの最新モビルスーツなのだが、1話で強奪され、装備を失ったままでストーリーが展開するので、“フル装備”でのシーンは少ないのだが、フィギュアには様々な装備がそろっている。

 まずはビーム・ライフル。凝ったデザインなのだが、1話ですぐに喪失、その後補給された11話でもすぐに失ってしまい活躍の場がほとんどなかった。ビーム・サーベルは腰の後ろに2つ装備している。輪の形をしたグリップから曲線を描いてビーム刃が形成されるというユニークなデザインだが、こちらもしっかりクリアのエフェクトパーツを使って表現している。

【ビーム・ライフル】
凝ったデザインのビーム・ライフル。劇中では2回ともすぐ失ってしまい、ほとんど使われなかった
【ビーム・サーベル】
腰の後ろに2つ装備している
輪の形をしたビーム・サーベルの柄
ビーム刃のエフェクトパーツは、クリアできれいだ
独特のデザインのビーム・サーベル

 劇中の印象的な武器はヒート・ホークだ。資金難のポメラニアンズがクランバトルのために用意できた唯一の武器だが、「METAL ROBOT魂 ジークアクス」にももちろん同梱されている。しかも背中にジョイントをつけることで懸架可能だ。ビーム・ライフルを懸架するためのパーツも用意されている。

【ヒート・ホーク】
劇中印象的に使用されたヒート・ホーク。赤熱化した刃も欲しかったところだ
【シールド】
シールドは左右が開き、隠された内部を露出できる。劇中ビームを防ぐ描写もあったので、Iフィールドユニットだろうか?
【武器を懸架】
背中にパーツを差し込むことで、ヒート・ホークやビーム・ライフルを懸架できる

 そして「METAL ROBOT魂 ジークアクス」の大きな特徴が物語終盤の姿の再現である。マチュがコクピット内のオメガ・サイコミュのリミッターデバイスを拳銃で破壊することで解放できた能力で、劇中ではリミッターの解除により、両肩と膝の突起が展開し、何らかの力場が発生した。

 フィギュアでは差し替えで力場の発生状態を再現できる。さらに最終回で明らかになった、ジークアクスの顔部が展開し内部の歯のようなデザインのユニットがむき出しになる「エンディミオン・ユニット覚醒状態」にもすることができる。物語のクライマックスの姿を再現できるのは、商品展開としては後発となった「METAL ROBOT魂 ジークアクス」だからこそといえるだろう。ファンには非常にうれしいギミックである。

【オメガ・サイコミュ解放】
マチュがリミッターデバイスを破壊したことで、リミッターが外れ、肩と膝から力場を発生させ、エルメスの時間停止に干渉できることが可能に
【エンディミオン・ユニット覚醒】
マチュの想いにジークアクス内部のエンディミオン・ユニットが覚醒。ジークアクスの口が開き、歯をむき出しにしたような姿に。この頭部は差し替えることで表現
すべての力を解放したクライマックスの姿を再現可能だ

 ディテール、彩色、金属パーツ使用によるしっかりとした可動と「METAL ROBOT魂 ジークアクス」は高い満足感が味わえる商品だが、だからこそちょっと満たされない部分も感じた。1つがアンテナやセンサーが収納された状態の頭部パーツが入ってないこと。もう1つが、差し替えでもいいから本体から分離したコアファイターを再現してほしかったことだ。どちらも劇中で魅力的に使われていただけに、本商品でも再現してほしかった。

 また、可動も肩周りや、膝の曲げ角度、さらには首回りなど、デザイン上の干渉がありちょっと窮屈だ。特に首は二重関節にすればもっと上を向けたり、自由度を上げられたと思う。制作期間やコストなどの問題があるとは思うが、ハイクオリティなフィギュアなだけに、後ほんのちょっと突き詰めてほしかった。とはいえ、「METAL ROBOT魂 ジークアクス」がオススメの商品であることは間違いない。次章からは劇中再現、さらには他のアイテムを絡めた遊び方も見せていきたい。

活躍シーンを再現しながら遊べる楽しさ

 「機動戦士ガンダム ジークアクス」はTV放映が終わった現在でも、Amazon Prime Videoなど配信サービス各種で見ることができる。全12話とコンパクトなので、番組を「METAL ROBOT魂 ジークアクス」を手にしながら見て、劇中の姿を再現するのがたまらなく楽しい。

 まずは1話の「軍警ザクのライトに照らし出されるジークアクス」だ。難民の住居を躊躇せずに破壊する軍警に怒りを覚え、主人公・マチュは不時着していたジークアクスを奪う。ジークアクスはマチュの想いに応え、オメガ・サイコミュを起動、オメガ・サイコミュの力でマチュの思念でジークアクスは自由自在に動くようになる。マチュは1体の軍警ザクを破壊したものの、もう一体のザクに追い詰められてしまう。その姿を再現してみた。

ザクのライトに照らし出されるジークアクス

 次が「軍警ザクをやっつける姿」だ。軍警ザクともみ合ううちに宇宙に放り出されたマチュはパニックになるが、赤いガンダムに乗るパイロット・シュウジの思念によってその認識力を拡大、ジークアクスを見事に操りザクを倒す。「METAL ROBOT魂 ジークアクス」は足を高く跳ね上げザクを蹴り上げた姿もきちんと再現できる。

軍警ザクをキックで撃破する

 3つめは「斧を振りかぶるジークアクス」だ。“ガンダム”であるジークアクスが、“ザク”の武器を持っているところが面白い。4つめは「オープニングの走るシーン」、5つめは「宇宙を飛翔するジークアクス」を意識してポーズをとらせた。専用台座は様々な姿勢を可能にしてくれる。

斧を振りかぶるジークアクス
オープニングで印象に残る走る姿
飛翔するイメージで飾る。台座はこういった姿勢でもしっかり支えてくれる

 そしてここからは11話のオメガ・サイコミュ解放状態のジークアクス。エルメスに向かって手を伸ばすシーンもやってみた。さらにエンディミオン・ユニット覚醒、そこから巨大ガンダムに駆け上り、ビーム・サーベルを振るうシーンも再現してみた。アニメはカメラワークやパースなどで迫力が増しているが、「METAL ROBOT魂 ジークアクス」のパーツや、可動で名場面を再現できるのは非常に楽しい。

 次章では「METAL ROBOT魂 赤いガンダム」も加え、さらなる劇中再現に挑戦していきたい。

オメガ・サイコミュのリミッターを解除、力場を発生させる
エルメスに手を伸ばすシーン
エンディミオン・ユニット発動
巨大ガンダムの腕を駆け上り、首を切り落とすシーンをイメージ

他のアイテムを組み合わせ、劇中を超えた楽しさを追求

 フィギュアのポーズは”相手役”がいることでさらに楽しさが広がる。先行販売されている「METAL ROBOT魂 赤いガンダム」を合わせてさらに名場面を再現していこうと思う。

 赤いガンダムも劇中様々な装備を失いその姿は変わっていく。「METAL ROBOT魂 赤いガンダム」は2機のビット、ビーム・ライフル、ビーム・サーベル、さらにはハンマーも装備している。

【赤いガンダム】
「METAL ROBOT魂 赤いガンダム」は6月21日発売、価格は24,200円。現在でも入手可能だ
山下いくと氏が「初代ガンダム」をモチーフにデザイン
2機のビット、ビーム・ライフル、ビーム・サーベル、シールド、さらにはハンマーを同梱

 劇中再現に挑戦していこう。最初はやはり「マチュと赤いガンダムの出会い」からだろう。軍警ザクに追われ宇宙に放り出されるマチュとジークアクス。パニックになりかけるが、赤いガンダムに乗るパイロット・シュウジと思念でつながつことで、周りが輝き認識範囲が増大する“キラキラ”を体験する。宇宙に投げ出されたジークアクスと、それを見つめる赤いガンダムのシーンを再現してみた。

 そして赤いガンダムに手を引かれ、敵に向かって放り投げられるジークアクス。さらに最も衝撃的と言える、「赤いガンダムを盾にするジークアクス」を再現してみた。このときのジークアクスのパイロットはニャアン。彼女は思考で機体を動かすオメガ・サイコミュによって、相棒の赤いガンダムの頭をつかみ、敵の前に見せつけるように突き出す。彼女が心の中に秘めている暗い何かが明らかになったような衝撃的なシーンだ。どちらも2体のロボットがいるからこそ再現して楽しいシーンである。

 もう1つ、ニャアンのジークアクスと、シュウジの赤いガンダムがサイコ・ガンダムを見るシーンも再現してみた。物陰から出て同じ方向を伺う2体のガンダムは独特の楽しさがある。

【劇中シーンをイメージ】
マチュはキラキラの中で赤いガンダムを見る。「METAL ROBOT魂 赤いガンダム」ももっと上を向けるように首の可動域を増やしてほしかったところだ
手をつなぐ2体のガンダム
衝撃的な、ニャアンがシュウジを盾にするシーン
シュウジの赤いガンダムと、ニャアンが乗るジークアクスがサイコ・ガンダムを見るシーン

 ジークアクスと赤いガンダムは共闘をしていくが、全12話というストーリーで同じフレームに収まるシーンというのは実は多くない。後半ではマチュ、ニャアン、シュウジはバラバラになり、3人がそろうのは最終回12話だ。ただ、フィギュアがあれば様々な共闘シーンを表現できる。物語になかった姿をフィギュアを並べて想像できるのも、立体物の楽しさだ。

【オリジナルシーンも】
2体を並べて様々なシーンを想像するのも楽しい

 最後は「ガンダム」との対決シーンをやってみた。最終回、突如現れた初代・ガンダムとジークアクスは戦う。全くデザインラインが違う2つのロボットが戦うというのは「機動戦士ガンダム ジークアクス」だからこそ実現した戦いといえる。

【ガンダムとの対決!】
使用したのは「ROBOT魂 <SIDE MS> RX-78-2 ガンダム ver.A.N.I.M.E.」
別世界から現れたガンダムと戦う

 「機動戦士ガンダム ジークアクス」は独特の魅力を持った作品だった。「METAL ROBOT魂 ジークアクス」は山下いくと氏のデザインや、考えられた機能などが想像力を刺激してくれるだけでなく、何よりも作品世界を再現する楽しさがある。さらには想像力を羽ばたかせることで、原作にはないシーンも作り出すことができる。

 その上で、「METAL ROBOT魂 ジークアクス」はやはり完成品フィギュアであることが最大の魅力といえる。遊んでも関節が簡単にはヘタれず、細かい塗り分けとディテール表現で細部までデザインをチェックでき、多彩な可動でカッコイイジークアクスを追求できるのは完成品フィギュアならではである。「METAL ROBOT魂 ジークアクス」は現在でも入手しやすい。少し高価ではあるが、手にしてみてはいかがだろうか?