インタビュー

「METAL BUILD ゼータガンダム」発売直前特別インタビュー

変形機構アレンジの新鮮さと今なお愛されるデザインを追求

【METAL BUILD ゼータガンダム】
4月26日 発売予定(一般店頭販売)
価格:44,000円(税込)
※画像は試作品を使用しています

 BANDAI SPIRITSより展開されているMETAL BUILDシリーズから『機動戦士Ζガンダム』の「ゼータガンダム」が商品化され、いよいよ4月26日に一般店頭販売される。

 「ゼータガンダム」は『機動戦士Ζガンダム』の主人公・カミーユ・ビダンが搭乗する後期主役機だ。ガンダムを象徴するトリコロールカラーに、背中のフライングアーマーによる特徴的なシルエットに加え、変形機構を有したモビルスーツであり、人型の「ゼータガンダム」から巡航形態「ウェイブライダー」に変形することができる。

「METAL BUILD ゼータガンダム」
※画像は試作品を使用しています

 METAL BUILDでは劇場版『機動戦士Ζガンダム A New Translation』にてメカニカル作画監督を務めた仲 盛文氏をスタイリングアドバイザーに迎え、METAL BUILDならではのデザイン表現や独自の変形ギミックなど新たな試みも多数盛り込んだ商品となっている。

 そして、2024年11月に開催されたイベント「TAMASHII NATION 2024」にて公開された「METAL BUILD ハイパー・メガ・ランチャー オプションセット」も近日中に続報がある模様。

 本稿では「METAL BUILD ゼータガンダム」と「METAL BUILD ハイパー・メガ・ランチャー オプションセット」のデコマス写真などを交えて、気になる変形機構や開発の経緯をBANDAI SPIRITS コレクターズ事業部で本商品の企画担当をされている洲崎 敦彦氏に話を聞いてみた。

BANDAI SPIRITS コレクターズ事業部で本商品の企画担当をされている洲崎 敦彦氏

刻を超えて愛されるデザイン性に変形機構アレンジを組み込んだ“新訳ゼータガンダム”が誕生

――「METAL BUILD ゼータガンダム」の立体化・商品化の経緯をお聞かせください。

洲崎氏:元々「ゼータガンダム」をMETAL BUILDで立体化しようという企画は2021年のブランド10周年を迎える段階で「METAL BUILDのさらに10年後にはどんな機体を出しているのか」をチームで話をする機会がありました。

 その時に「機動戦士ガンダム00」シリーズや「機動戦士ガンダムSEED」シリーズだけではなく、ゼータガンダムなどの宇宙世紀の機体が展開されているべきではないか」という会話になりまして。なので、「ゼータガンダム」に関しては遅かれ早かれ「METAL BUILDで商品化する!」という覚悟を決めていました。

 やはり「ゼータガンダム」はガンダムシリーズ全体の中でも人気の機体でもあり、避けて通れない存在でもあります。

 後ほどお話させていただく変形機構という課題はありましたが、それを避けて「METAL BUILDのさらなる10年後」は考えられない。そのため、かなり確度の高い形でラインナップ候補に挙がっている機体ではありましたね。

※画像は試作品を使用しています

――METAL BUILDで展開されているガンダムシリーズでは、本体が大きく変形するギミックを持ったアイテムがなかったので、今回の「METAL BUILD ゼータガンダム」はかなり挑戦的なアイテムかと存じます。

洲崎氏:そうですね。変形ギミックというのが大きく取り上げられるアイテムではあるのですが、それ以外の観点でも魅力的に映る「ゼータガンダム」になるように開発を進めていきました。

 METAL BUILDは「DX超合金」などのブランドとは異なり、“アクションフィギュア”としてのコンセプトが根本にあるブランドだと捉えています。なので企画の一番最初に、そうしたプロポーションやアクション性を意識し、「変形するゼータガンダム」で終わらないよう試みました。

 なのでイベント展示などでご覧になっていただいた際に「変形機構を持ちながらも、変形都合を感じないプロポーションやアクション性」を感じていただいたお客様もいらっしゃったかと思います。

――造形に関しては劇場版『機動戦士Ζガンダム A New Translation』でメカニカル作画監督を務めた仲 盛文氏をスタイリングアドバイザーに迎えての立体化とのことで新しく試みたポイントなどはありますか?

洲崎氏:「ゼータガンダム」は過去の立体物でのアレンジの振れ幅も大きく、色々な表現の可能性を秘めた機体だと感じています。

 「METAL BUILD ゼータガンダム」では、過去に発売された「METAL BUILD ケンプファー」のような、皆さまの期待するイメージに合わせたフォルムに落とし込みつつハイディテール化、の方向性に近く、フォルムアレンジの振れ幅を大きくするのではなく、ファンの皆様が持つイメージに近い形にしたい、と考えたのも一つの試みでした。

魂ウェブ商店限定「METAL BUILD ケンプファー」 2024年2月発送(販売終了)

洲崎氏:「METAL BUILD ストライクフリーダムガンダム」や「METAL BUILD デスティニーガンダム」など元のデザインから大きくアレンジが加わったデザインパターンも考えましたが、「ゼータガンダム」に関しては今回初めてMETAL BUILDで取り組むにあたり「多くの人が望むゼータガンダム」でありたいと思いました。

 イメージとしては、劇場版『機動戦士Ζガンダム A New Translation』のビジュアルが印象的で、TV放送から時代を経て映画の新規カットで描かれた「ゼータガンダム」はファンの方にとっても、最新でありながら納得感のある、正に“新訳”と評されるフォルムだったかと感じていました。

 今回仲さんに参加していただいたのも「大きく刷新されているけど、多くの人にとってオーソドックスになりえるゼータガンダム」にできるのではと思い、お声がけさせていただきました。

オーソドックスでありつつ新しい「ゼータガンダム」デザインを追求
※画像は試作品を使用しています

――本アイテムのプロポーションなどは仲 盛文氏が設定された形なのでしょうか?

洲崎氏:仲さんにはスタイリングアドバイザーとして、沢山の画稿を描いていただき、方向性を大きく決定付ける、シルエットの構成であったり、パーツの形状であったり、アドバイスを本当に沢山いただきました…!その中で我々からの「玩具としてこうしたい」、「こういったギミックで構成したい」といった部分も受け止めていただいた上で、「それではこのような形はどうでしょう」とアドバイスしていただく流れもありました。

 なので「デザイナーさんがデザイン設定を細かく決める」という形式ではなく、正にスタイリングアドバイザーという形で本商品に大きく関わっていただきました。

――今回はオーソドックスなデザインを意識されているとのことですが、あえてアレンジを加えた箇所はありますか?

洲崎氏:アレンジに関しては大きく2つありまして、ひとつは「変形自体にアレンジを加える」ことでした。

 アニメ本来の設定とは異なる変形を取り入れたとしても、それがMETAL BUILD流のアレンジになるように意識しました。

 もう一つはガンプラやROBOT魂をはじめ様々な形で立体化されていますので、本アイテムでは「お客様が様々な遊び方ができる」ことを意識しました。

 例えばビーム・ライフルですが、今回は銃身を極端に短くすることができます。特徴的なロングレンジライフルをコンパクトにして持つシチュエーションや銃床(ストック)側からビームが発振して、相手を斬る動きがあってもいいのではないかと考えています。また、脹脛の展開ギミックも付けています。

銃身や銃床(ストック)を縮めたコンパクトな造形にもできるビームライフル
※画像は試作品を使用しています
アニメなども印象的なロングレンジのスタイル。銃身だけではなく、銃口部分も伸ばすことができる
※画像は試作品を使用しています
ストック箇所にもサーベルエフェクトを取り付けることができる
脹脛の装甲を展開することが可能
※画像は試作品を使用しています
※画像は試作品を使用しています

洲崎氏:「METAL BUILD ゼータガンダム」は「アニメのゼータガンダムが好き」という方は脹脛の装甲を閉じてビーム・ライフルも伸ばした状態にして遊んでいただき、「METAL BUILDならではのゼータガンダムを楽しみたい」という方はギミックを展開したり、ビーム・ライフルのサイズを変えてみたりし、好みのシルエットにできるようにアレンジの幅を持たせるようにしました。

――ビーム・ライフルのマウント箇所としてフライングアーマーに着けられるのも、立体物としては新鮮な印象ですね。

洲崎氏:マウント部分は新たに用意してみました。

 アニメなどでも変形する際にビーム・ライフルを背中に回すイメージはあるかと思います。その際は中央のロングテール・バーニアスタビライザーの基部にマウントするのですが、「ゼータガンダム」状態では手に取るのが難しい配置になっています。

 しかし、背部に懸架するのはお客様もやりたい部分ではないかと思い、ここは機構やディテール面でアストレイズ様とも相談して、アレンジメントとして追加してみました。

左右のフライングアーマーにジョイントが仕込まれ、展開することでビーム・ライフルを背負った状態にすることができる
※画像は試作品を使用しています

――続いて可動部分についてお伺いできればと思います。変形する関係で大きく制限されてしまう動きなどはありますか?

洲崎氏:変形による可動の制限はゼロではありませんが、「ゼータガンダム」で取りたいポージングは一通りできるように意識して設計していただきました。

 モビルスーツらしい力強さが出るように特に腰回りや足の付け根などの位置や形状にも配慮して、腰のひねりもリアスカートの位置を調整して動かすことができます。お客様が「ゼータガンダム」に望むポーズをなるべく実現できるようにしております。

 ポージングに関しても、ダイキャストを使用しているのでその恩恵も大きいです。合金トイでMETAL BUILDのサイズ感だからこそ出来た可動範囲になっています。

腰のひねりなどパースのついたポージングが可能
※画像は試作品を使用しています

――「ウェイブライダー」状態のプロポーションはいかがでしょうか?

洲崎氏:そうですね。特に「ウェイブライダー」の形は仲さんとのやりとりが色濃く反映されたところで、正面から見ると主翼がハの字に流れている形になっています。ここは設定画の特徴的なハの字形状を再現できたかと思うので、是非見ていただきたいポイントのひとつでもあります。

 また、俯瞰から見た時の楔形に見えるフォルムは企画初期から、仲さんから修正指示画稿を描いていただいて、アニメで良く見る「ウェイブライダーらしいシルエット」になっているかと感じています。

 「ウェイブライダー」のアニメの飛行機的なキャラクターとしてのシルエット再現に注力していきました。

こだわりの「ウェイブライダー」形態
※画像は試作品を使用しています
俯瞰でのシルエットも美しく映る楔形となっている
※画像は試作品を使用しています

洲崎氏:他にも機首になるシールドもまっすぐではなく下面が少し反った形になっています。こちらは仲さんからアドバイスをいただき、少し反った形状にすることで大気圏突入時の空気を受けて降下していく空力的な造形を取り入れています。

 そのため、真横から見ると曲線を描く形となっています。機首のピーク部分が少し上がっているポジションとなっていますね。

横から見ると底面が曲線を描くシルエットとなっている
※画像は試作品を使用しています

洲崎氏:また、リアスカートパーツも本来はスライドして縮む形なのですが、本アイテムではクランクで前に移動する形で位置を調整し「ウェイブライダー」本来のプロポーションに近づけています。

 加えて、細かい部分ですが翼端灯も左右で赤と緑の色分けをしております。

リアスカートパーツはクランクで位置を調整
※画像は試作品を使用しています
現実の航空機同様に右が赤、左が緑の翼端灯の色分けがされている
※画像は試作品を使用しています
※画像は試作品を使用しています

――次は気になる変形アレンジについて教えてください。

洲崎氏:変形のアレンジとして、一つは股関節部分があります。これまでの立体物では、股間部分を左右に分割して脚部の位置を調整するものもありましたが、METAL BUILDでは股関節の根元部分に独自機構を取り入れ、腰の位置を変えずに変形時の位置に展開できるようになっています。

腰パーツの位置を変えず、脚部が大きく展開する変形可動を備えている
※画像は試作品を使用しています

洲崎氏:そして、胸部の変形部分ですが、胸部装甲が前に持ち上がって頭部が下がる動きはアニメ同様ですが、METAL BUILDでは両腕部が正面から見てハの字に下がる可動が入っています。これによって腕部の位置が外側になり、頭部も差し替えなしで入れることができます。

腕部が斜めに下がることで内部のスペースを確保し頭部を収納することができる
※画像は試作品を使用しています
※画像は試作品を使用しています

洲崎氏:さらに、脚部にも変形アレンジが入っています。脛部分に壁になるパーツがあるのですが、こちらは足先を押し込むことで引き込まれるギミックを備えています。変形する都合上その個所は空洞にならざるを得ない部分ですが、

 ここもアストレイズ新谷様の提案で、少し空洞部分を隠して「ゼータガンダム」時でも空洞が目立たないように工夫しています。

 この様に、今回の商品では「ゼータガンダムの変形」が好きな方には、何かしら驚いてもらえる要素が必ずあると自負しております。

 「ゼータガンダム」の変形プロセスを知っている方こそ「どうやって変形しているのか?」、「頭部が大きいような?」など疑問だった部分も、これらの変形アレンジによってプロポーションを崩すことなく「ウェイブライダー」への変形が可能になりました。ぜひ触っていただき、発見していただけると幸いです。

【【4月26日発売】「METAL BUILD ゼータガンダム」のウェブライダー変形手順を紹介!】

洲崎氏:また、アストレイズの新谷学さんが機構の面で「遊んでいて面白い商品」というのを意識してくださっていて、単なる変形ではなく「楽しんでいただける変形」を追求しました。

 そこに仲さんとの重ねてきたプロポーション、デコマスラボの広瀬裕之さんによる、圧倒的に説得力と凄みのある彩色の質感も合わさり、クリエイティビティが詰まった「ゼータガンダム」になっています。

 彩色に関して、個人的に目から鱗だったのが、足裏部分が赤かガンメタルのみになりがちですが、デコマスラボの広瀬裕之さんから「ウェイブライダーの状態だと足裏が良く見えるので単純な造形にしないほうがいいのでは?」とご提案いただき、赤とガンメタルの彩色に加え、アストレイズの阿久津潤一さんにディテール化を仕上げていただき、踵部分もノズルが展開するギミックを備えています。こういった目線は、彩色と向き合われている広瀬さんならではのご提案だな、と感じました。

足裏の彩色やディテールの作りこみ。踵のノズル展開ギミックでこれまでにない造形を実現
※画像は試作品を使用しています

――「ウェイブライダー」形態での造形へのこだわりがうかがえます。

洲崎氏:「ウェイブライダー」の再現は企画のスタートにありましたが、正直、METAL BUILD以外のブランドでの商品化検討もありました。

 反面、METAL BUILDは、たくさんのお客様からのご支持、ご期待をいただいているブランドであり、「METAL BUILDならではのゼータガンダム」をお見せしたいというテーマもありました。なので、今回はMETAL BUILDとして自信を持ってお届けできるところまで詰めて、発売に至った、という想いです。

――変形機構を持った「ゼータガンダム」がMETAL BUILDで商品化されたことで、今後のラインナップの幅も広がったのではないでしょうか?

洲崎氏:そうですね。今後もMETAL BUILDらしさを持ちつつ「ゼータガンダム」のような変形機体や「ダブルゼータガンダム」のような合体する機体も当然考慮に入れていきます。

 ただ、プライオリティワンには「お客様に提案して楽しんでいただけること」がありますので、変形・合体だけに注力するのではなく、今後も色々なものをお出しできればと思います。

 その意味では、ブランド10周年の時に私たちから発表した「METAL BUILD Hi-νガンダム」が宇宙世紀に登場したモビルスーツを盛り込んでいくというメッセージでもあったので、宇宙世紀の機体は今後も引き続きご提案できればと思います。

「METAL BUILD Hi-νガンダム」 2022年7月30日発売(販売終了)

――「METAL BUILD ゼータガンダム」本体とは少し離れますが、本商品からパッケージがリニューアルされるとのことですが、どのような形になっているのでしょうか?

洲崎氏:今までのパッケージは私たちも含め、お客様にもなじみのあるデザインかと思います。一方で2021年のイベント「METAL BUILD 10th ANNIVERSARY」を経て、初めてMETAL BUILDに触れる方も多いことを感じて、この機会にパッケージでも面白さや驚きを届けたいと思いました。

 今回から従来よりも厚めの紙質で、表面のキャラクター部分にはニス引きを追加してより高級感を出していくことを目的にリニューアルをしました。今後展開するアイテムに関してもこの仕様で提供を予定しております。

 サイズ自体は変わらないので今まで集めてくださったお客様も、ここからMETAL BUILDに触れるお客様にも変わらず今までのパッケージと並べていただけるようになっています。

「METAL BUILD ゼータガンダム」からパッケージデザインがリニューアルされ、より高級感ある仕様に
※画像は試作品を使用しています

――次に「METAL BUILD ハイパー・メガ・ランチャー オプションセット」について伺えればと思います。こちらは「METAL BUILD ゼータガンダム」に合わせてかなり大型の造形になっていますね。

洲崎氏:「METAL BUILD ゼータガンダム」本体が比較的オーソドックスなデザインなので、こちらはアレンジを強めに入れた造形となっています。

 ノーマルの状態ではアニメイメージに近い造形になっています。そこから各部展開をすることで最大出力で狙撃するようなイメージにすることもできます。また、銃身の展開も「ウェイブライダー」形態時のランディング・ギアを想定したものとなっています。

 そして、用途の変更によって銃身に横グリップを展開して、これを持つことで腰だめに構えることもできます。比較的後ろで持たせたポーズが取れるようにでき、持ち方や展開の仕方などでMETAL BUILDだからこその自由な遊びをしていただけるように開発を進めております。

大迫力の「METAL BUILD ハイパー・メガ・ランチャー オプションセット」
※画像は試作品を使用しています
各部展開でシルエットも大きく変化
※画像は試作品を使用しています
銃身には横のグリップも内蔵している
※画像は試作品を使用しています

――最後にユーザーへのメッセージをお願いいたします。

洲崎氏:今回「METAL BUILD ゼータガンダム」を商品化させていただき、発表してから幅広い年齢層の方から反響がありました。

今まで「ゼータガンダム」が好きで触ってくださった方には何かしら驚きがあるものに仕上がっていると自負しておりますので、ぜひこの機会に今だから出せる、合金可変完成品最新の「ゼータガンダム」を手に取っていただければと思います。

――ありがとうございました。