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世界一深いシャーマン沼に誘い込むアスカモデルの戦略【#静岡ホビーショー】
新作はもちろんシャーマン「1/35 アメリカ中戦車 M4A3シャーマン(105)」
2024年5月9日 23:26
- 【1/35 アメリカ中戦車 M4A3シャーマン(105)】
- 発売時期:未定
- 価格:未定
「シャーマンをはじめよう。」
スケールモデルでも、戦車プラモデルでもない。ダイレクトにM4シャーマンに誘導してくる世界で唯一のスケールモデルメーカーがアスカモデルだ。模型の首都 静岡のメーカーで、同地で金型のノウハウを学んだ先代の意思を受け継ぎ、現在2代目がグローバル展開を目指して奮闘している。静岡ホビーショーで同社の戦略を取材した。
M4シャーマンは、第二次世界大戦期の米陸軍でもっともポピュラーな中戦車だ。76mm砲に、コンパクトな砲塔、避弾経始を考慮した傾斜装甲、愛らしいずんぐりむっくりとした外観と、他の戦車と一線を画した多くの特徴を備えつつ、主砲や装甲の溶接、エンジン別に無数のバリエーションが存在することでも知られる。戦車に詳しくない方でも、M4シャーマンに英国の17ポンド砲を搭載したシャーマン ファイアフライぐらいは聞いたことがあるだろう。
同社のカタログを開くと眼に飛び込んでくるのはシャーマンばかりだ。昨年リリースした新製品もシャーマン(1/35 アメリカ中戦車 M4コンポジットシャーマン “キューピッド”)だし、再生産が決定した展示品もシャーマン(1/35 アメリカ中戦車 M4A1 シャーマン初期型(直視バイザー型)」、新発表の製品も当然シャーマン(1/35 アメリカ中戦車 M4A3シャーマン(105))だ。
このシャーマンへのこだわりは先代ゆずりということだが、2014年の創業当時からシャーマンだけを扱っていたわけではないという。わずか数名で会社を運営する上で、最効率を考えた結果がシャーマン特化だったという。
実際これは理にかなった戦略だ。戦車プラの新製品を企画する度に、新種車輌を選択していたら、その都度新しい金型が必要となる。金型の製作には多額の先行投資が必要となり、タミヤのような大手メーカーならともかく、アスカモデルのような小規模のメーカーでは毎回その選択肢をとることは難しい。
M4シャーマンは、先述したように、米軍のみならず、多くの国で大戦後も長期間に渡って使用されており、そのバリエーションはほぼ無限といっていい。M4シャーマンのベースはそのまま流用しつつ、主砲や砲塔を追加パーツとして用意するだけで、新製品を投入できる。
こうした強気な展開が可能なのは、ひとえにキットとして優秀だからだ。M4シャーマンは、当然無数のスケールモデルメーカーがキット化しているが、多くのキットが、見えない部分を簡略化し、パーツとしてひとまとめにして嵌め込みで処理しているのに対し、アスカモデルのキットは、見えない部分も含めて可能な限り非常に細かくキット化されており、なおかつキット内で選択肢を用意し、好みに応じて組み方を変えることができる。こうした徹底したこだわりが世界のモデラーファンに支持されている。
とはいえ、である。シャーマン一本槍で、事業が成り立つほどスケールモデルは甘い世界ではない。シャーマンを作ったら、次は別の戦車が作りたくなるのが当たり前だからだ。そこでアスカモデルが採った戦略は、顧客の母数を増やすための積極的な海外展開と、“シャーマン内”でステップアップできる3グレードによるキット展開を推し進めている。
1つ目は多くの海外代理店と手を組み、海外展開を強化している。現在、米国、英国、ベルギー、カナダ、オーストラリア、ポーランドなどに展開しており、それぞれ別の代理店と契約を交わしている。実際、ブースでは海外メディアによる作例も展示されており、海外のモデラーファンにも支持されていることがわかる。
2つ目は、アスカモデルのプロダクトは、キットとして優れている一方で、価格が高めで、製作難易度が高いという意見もある。これをふまえて、通常のキットのほかに、組みやすさと価格をそれぞれ抑えたブラックボックス、エントリーキットを用意した。モデラーの力量やお財布事情に応じてステップアップを図りながら通常のキットを目指せるようにした。こうした工夫により、シャーマン特化というビジネスモデルを成立させている。
最後に新製品についても紹介しておこう。今回発表された新製品「1/35 アメリカ中戦車 M4A3シャーマン(105)」は、M4A3シャーマンに、105mm砲を搭載した実在のバリエーションモデルを再現したものだ。M4A3シャーマンに、76mm砲に比べて一回り口径が大きく砲身長の短い105mm榴弾砲が搭載されている。主砲の金型はまだ未完成ということで確定ではないということだが、すでに完成度は高く、まもなくシャーマンに欠かせないバリエーションである105mm砲搭載モデルをアスカモデルキットで楽しむことができる。
発売は年内を計画。出せるかどうかは担当者の頑張り次第。来場者の反応は上々でモチベーションになっているということで、早期の発売に期待したいところ。今後も引き続き注目したいメーカーだ。