レビュー
「figma ボッティチェリ作ヴィーナスの誕生」レビュー
教科書で知られるヴィーナスが両手ピースにハート! 広がるフィギュアの可能性
2023年7月20日 00:00
- 【figma ボッティチェリ作ヴィーナスの誕生】
- 開発・発売元:フリーイング
- 6月23日発売
- 価格:14,300円
- 全高:約150mm
- 原型:石橋たつや(MIC)
フリーイングの「テーブル美術館」シリーズは、「ロダンの『考える人』」や、「サモトラケのニケ」、「ムンクの『叫び』」など古今東西、様々な時代の名画や彫刻作品をアクションフィギュアにしてしまおうというユニークなシリーズだ。
多くの人が知る名画や彫刻が、"動く"。絵画が動き出すのはホラー映画などで見られるシチュエーションだが、「テーブル美術館」シリーズはフリーイングの造型・彩色技術、アクションフィギュアとしての設計と、味付けの面白さによって独特の魅力が生まれている。今回はシリーズ最新作である「ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』」をモチーフとした「figma ボッティチェリ作ヴィーナスの誕生」を取り上げたい。
女神ヴィーナスが、成人した女性の姿で海から誕生する姿を描いたこの絵は、美術の教科書でもおなじみの、ルネサンス期を代表する作品であり、女性の美しさをしっかり描いた作品であるといえる。このヴィーナスが動くのである。「figma ボッティチェリ作ヴィーナスの誕生」の面白さを紹介したい。
ルネサンス期に描かれた美しいヴィーナスが絵画から抜け出す衝撃!
商品の紹介の前に、もう少しモチーフを掘り下げたい。「ヴィーナスの誕生」は、1483年頃にイタリアの画家サンドロ・ボッティチェッリによって描かれた。縦172.5 cm 、横278.5cmの宗教画で、ギリシア神話の女神ヴィーナスが海から成人の姿で生まれた瞬間を描き出している。
左に描かれているのは西風の神ゼピュロスと妻のニンフ(妖精)。彼女はその後、花と春の女神フローラとなる。ゼピュロスとニンフの風によって、海から生まれたヴィーナスは貝の上に乗り岸へと流されていく。ヴィーナスを迎えるのは時間の女神ホーラー。彼女は裸体のヴィーナスを包むための絹のローブを持っている。
ヴィーナスのポーズは古典的な「恥じらいのヴィーナス」と呼ばれるもので、モチーフも伝統的なものではあるが、裸体の女性を絵の中央に置き、その美しさを前面に出すこの絵画は現代においても見る者に強い印象を与える。
「figma ボッティチェリ作ヴィーナスの誕生」はこの有名な絵画をフィギュア化。背景からヴィーナスと彼女が乗るホタテ貝を抜き出し立体化している。名画からヴィーナスが抜け出し、自由に動き回る、そんな空想が現実化したようなフィギュアとなっている。
まずフィギュアの前に背景を見ていこう。ブロック状に分割できる額縁パーツに実際の絵画そのままに描かれた背景紙をはめ込んだ背景画パーツは、本商品の重要な要素の1つだ。左右の人物達の細かい描き込みも改めてオリジナルの絵画の迫力を感じさせてくれる。
ホタテ貝の台座もしっかりした造型だ。支柱パーツを立てることでヴィーナスをしっかりと中央に立たせることができる。「ヴィーナスの誕生」でのヴィーナスは、構図通りだと現実では貝の上に立つ姿はあのようにはならないという分析もあるようだが、「figma ボッティチェリ作ヴィーナスの誕生」では支柱によりヴィーナスを浮かせることで、絵画の構図を再現している。
そして主役であるヴィーナスだ。各所にfigmaの関節が仕込まれているが、塗装や、特に複雑な造型の髪パーツで絵画の雰囲気を表現している。髪パーツは緩くカーブし体にフィットする形で下腹部を隠すように重ねることができる。
関節部分は目立つものの、肩の関節で女性らしいなで肩を表現できている。肘は深く曲げられ体を抱くようなポーズも自然にできる。ヴィーナスを360度様々な角度から見ることができるというのが本商品ならではの面白さだが、さらに"動かす"ことができ、しかも豊富な手首パーツで、独特の面白さが生まれる。次章では「figma ボッティチェリ作ヴィーナスの誕生」の魅力をより深掘りしていきたい。
意外に気さく? 絵画から抜け出したヴィーナスが見せる様々な表情
「絵画からヴィーナスが抜け出した!」という衝撃が「figma ボッティチェリ作ヴィーナスの誕生」の最大の魅力だろう。ポーズを取ったヴィーナスを別角度から見るだけでも全く違う印象が生まれる。
それだけでなく、このビーナスは自由自在にポーズを取るのだ。両腕を拡げたり、跳びはねたようなポーズもとれるし、足を前方に投げ出し、足先をピンと伸ばすことも可能。裸のためちょっと目のやり場に困ってしまうが、絵画でのちょっと近寄りがたい神秘的な雰囲気から、大きく異なる感じになる。
そして豊富な手首パーツだ。「figma ボッティチェリ作ヴィーナスの誕生」では、「ハートマーク」、「Vサイン」、「小指を浮かせた握り手」、「平手」など豊富な手首パーツが付属しており、これらを使うことでヴィーナスが多彩な表情を見せてくれるのだ。
とはいえ本商品のヴィーナスの表情は1種類。涼やかでどこを見ているかわからない、神様らしい神秘的な表情なだけに、一層面白いポーズが引き立つ。涼しげな顔で両手ピースや、顔の横で手のひらを大きく広げた姿は、こちらをからかっているのか、それとも真面目な人のいきなりの一発ギャグのようでもあり面白い。
これまでの「テーブル美術館」シリーズでもツタンカーメンや、ロダンの考える人が珍妙なポーズを取る面白さがあったが、「figma ボッティチェリ作ヴィーナスの誕生」は、神秘的な女神が表情も変えずポーズを取るところに「真面目ギャグ」ともいえるおかしみがプラスされる。
またアクション用にストレートな髪の毛がついているのも楽しいポイントだろう。より大きな動きができるパーツで、髪の毛をまとめる基部から交換でき関節で動きが出せる。ポーズ付けに嬉しいパーツだ。
今回はさらに布を配置してみた。アクションフィギュアだけに固定ポーズフィギュア以上に布と絡んだポーズができ、裸体を隠す感じで相性が良い。色々な布とポーズで撮影してみたいと感じた。そして本体だけでなく、背景も汎用性が高い。宗教画ならではの重厚な雰囲気が、前に立たせるフィギュアとのギャップを生み面白い空間になる。色々な遊び方ができる商品だと感じた。
「figma ボッティチェリ作ヴィーナスの誕生」は、女性の神秘的な美しさを表現したヴィーナスが絵画から抜け出し、色々な姿を見せてくれるというとても面白い体験ができるフィギュアだ。涼しげで神秘的な表情のまま、色々なポーズをする女神様が面白い。独特のセクシーさも魅力だ。手に取って様々な姿を取らせて欲しい。