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トレンチガン、あぶ刑事コラボ、キングコブラなど、2024年話題のモデルガンを振り返る【年末特集】

 近年、モデルガン人気が回復しつつある兆しを感じる。数年前と比較してオークションやフリマでの相場が上がっているし、タナカを始め、KSCやマルシン、ハートフォードなどモデルガンメーカーからも再販、リニューアルを含む新製品リリースが相次いだ。高額にもかかわらず売れ行きも好調だ。「あぶ刑事」のオフィシャルモデルなど、製品によっては短期間で品切れになるモデルも散見された。

 モデルガンの価格は、エアガン、ガスガンと比べるとどうしても割高に感じられる。昨今のエアガン、ガスガンの外観や機構はリアルになり、モデルガン「銃の模型」としてのアドバンテージが少なくなったということもいえるだろう。昨今の材料費や人件費など製造コストの高騰の影響を受けた結果でもある。

 短期間で再販された「Model 1897 "Trench Gun"」、10年ぶりの再販が決定した「コルトウォーカー」などなど、今年はモデルガン市場にとって魅力的な製品が多くリリースされた。待望の再販アイテムだったり、素材や機構をリニューアルして動作性能などをアップするなど、モデルガンそのものの魅力をアップしたものも多かった。数あるモデルガンの中で、筆者が心に残った2024年のモデルガンを紹介したい。

西部開拓時代に生まれたショットガン! タナカ、「Model 1897 "Trench Gun"」

【Model 1897 "Trench Gun" Heavy Weight Version.2 Model Gun】
発売日:2024年11月12日再販
価格:93,500円
全長:約985mm
メーカー:タナカワークス

西部開拓時代生まれのショットガン「Model 1897 "Trench Gun" Heavy Weight Version.2 Model Gun」
散弾風のカートリッジが用意されている

 M1897は、西部開拓時代に発売されたショットガン(散弾銃)だ。黒色火薬仕様のM1896から無煙火薬仕様に変更されたモデルで、西部劇でも登場するシーンも描かれている。第一次世界大戦では銃身を短くカットし、冷却のためのバレルジャケット、銃剣の着剣装置を付加した「トレンチガン」仕様も作られ、敵国兵士から恐れられたという。本モデルはその「トレンチガン」を再現したものだ。

 2023年末に発売、2024年11月に再販という早いサイクルで発売され、再販分も品切れを見せているショップもある。従来のABS樹脂からHW樹脂へ素材が変更され重量感も増し、メカもVer.2となって動作性能も向上した。動作性能も向上し、重量感もたまらない。

 フォアグリップを前後させて装填、排莢を繰り返すポンプアクションは、ショットガンの醍醐味でもある。ボルト部がフレームから飛び出してショットシェルを装填、排莢する独特のウィンチェスターならではの機構にもロマンがある。

 綺麗に仕上げられた木製銃床と、ずっしり重く感じられる銃の質感、キャップ火薬2つを使って迫力の発火を体験できるショットシェルの機構など、ショットガンの魅力を余すところなく再現しているのが魅力だ。西部開拓時代からベトナム戦争期まで、現在でも?幅広い年代で使われてきた歴史の重みも感じられる。

2024は「あぶ刑事」映画! オフィシャルライセンスの「勇次モデル」

【『帰ってきたあぶない刑事』オフィシャルライセンスプロダクト 大下勇次モデル M10 2inch Early ヘビーウエイト モデルガン DX セット】
発売日:2024年5月16日
価格:85,800円
全長:約175mm
メーカー:タナカワークス

劇中そのままの”ユージの銃”を手にできる
DXセットでは特別仕様のカートリッジやスピードローダー、劇中モデルを再現した本革ホルスターが同梱

 あぶない刑事が好きな筆者としては個人的今年No.1モデルガンなのが、この「S&W M10 2inch」、いわゆる”ユージの銃”だ。Ver.3メカを採用し良好な動作と丁寧に作られた木製グリップの良質な仕上がり、特別仕様のカートリッジやスピードローダー、劇中モデルを再現した本革ホルスターのセットなど、あぶない刑事ファンはもちろんのこと、モデルガンが好きな人はきっと満足できるに違いない内容だといえる。

 付属の冊子は、モデルガンメーカーの垣根を超えて、あぶない刑事に関わる多くの人から集めた、貴重なプロップガンの資料としても一級品で、それだけでも買う価値があると言えよう。

 単なるなりきりアイテム、ファングッズにとどまらない、「本当にファンが欲しかったアイテム」に仕上がっていたのだと思う。

10年ぶりの再販、リボルバーの元祖 HWS「コルトウォーカー」

【コルトウォーカー】
発売日:2024年12月
価格:49,500円
全長:約400mm
メーカー:ハートフォード

西部開拓時代のパーカッションリボルバー「コルトウォーカー」

 西部開拓時代の銃といえば、COLT Single Action Army、いわゆる「ピースメーカー」があまりにも有名だ。ちょっと西部劇に詳しい人、銃器の歴史に詳しい人なら、レミントンニューモデルアーミーとか1851ネイビーなどを挙げる人もいるかもしれない。さらにマニアックな人ならテキサスパターソンだとか、ドラグーンなどの古式銃を挙げる人もいるだろう。その1つが「コルト(M1847)ウォーカー」だ。

 コルト社史上最も大きく、重いリボルバーで、全長約40cm、実銃の重量は約2Kgとまさにデカくて重いリボルバーだった。ハートフォードでは、実銃を忠実にモデルガンとして再現。フレームとローディングレバーが熱処理時の色ムラを再現したケースハードン仕上げ、バレルとシリンダーがブルーブラック仕上げとなっている。重量は、実物には及ばないものの約1,100gと重量級だ。メキシコ戦争、桜田門外の変と日米の歴史に大きく関わった銃とのことで、歴史の重みを感じたい人にもぜひおすすめしたい。

 そんなコルトウォーカーが10年ぶりの再販となった。2024年内ギリギリ12月の発売で、製造コストの高騰からだいぶ値段も上がってしまったが、実銃そのものは本国でも非常に高額(過去のオークションでは、状態のいいウォーカーモデルの落札価格は92万ドル“およそ約1億3,800万円前後”という値がついたという)なので、それと比べると非常に安価に感じてしまう。

気軽にバンバン撃てる「コルト キングコブラ ABS」

【コルト キングコブラ ABS】
発売日:2024年5月31日
価格:34,650円~
全長:約230mm
メーカー:KSC

「コルト キングコブラ ABS」、写真は4インチモデル

 コルト ウォーカーが10年ぶりならば、こちらは15年ぶりの再販となったコルト キングコブラだ。今回は耐久性に秀でたABS樹脂モデルでの発売で、バンバン撃てる発火を重視したものとなっている。とはいえ製造コストの高騰で前回の価格から大幅な値上げとなっているという一面もある。

 キングコブラは、2.5インチ版があぶない刑事でユージの銃としても採用されたことがある。4インチのシルバーモデルは、シティーハンターで海坊主のパートナー美樹の銃でもあった。実銃の世界では、コルトのダブルアクションリボルバーとして完成系とも言われる良好なものだとして評価も高いようだ。

 キングコブラをはじめコルトVフレームを日本においてモデルガンで再現するのは、現時点でKSCが唯一なので、HWモデルやシルバーモデル、ピースキーパーなど、今後のバリエーション展開にも期待したい。

アルミカートリッジでよく飛び、動作も快調! 「コルト コンバット コマンダー」

【コルト コンバット コマンダー エクセレントHW X-PFC】
発売日:2024年8月20日
価格:34,800円
全長:約195mm
メーカーマルシン工業

上の黒い銃が「コルト コンバット コマンダー」。銃身が短く、ハンマーが丸いのが特徴

 マルシンは、既存モデルを新規格の「X-PFCカートリッジ」化を進めており、今年も多くのモデルがX-PFC対応モデルとしてリニューアル販売された。当初9mmカートリッジ使用モデルが多かったが、念願の.45ACPモデルであるガバメントタイプがリリースされた。X-PFCカートリッジの大きな特徴は、カートリッジ素材がアルミニウムに変更されて軽量になること。撃った際のカートリッジの飛びがよくなり、動作性能も向上した。

 さらにマルシンは、他社ではあまりモデルアップしない短銃身モデルの「コンバットコマンダー」も存在し、人気だった。X-PFC化されたことで再販の運びとなったのは喜ばしい。特に仕上げが丁寧で美しいエクセレントHWモデルは、撃って遊びたい人はもちろん、実銃のような表面処理の「ブルーイング」をしたい人や飾って楽しみたい人など多くのモデルガンファンに届くモデルだと思う。

マルシンは、ABSモデルやキットなど、ユーザーのニーズに応じてバリエーションがあるのも評価ポイントだ。今後のバリエーション展開にも期待したい。

日本では銃規制が厳しく、一般市民が実際の銃を入手するのは狩猟や競技用などをのぞけばほぼないと言って良い。だからこそリアルな外観と機構のモデルガンが生まれた、という背景がある。海外では、モデルガンは存在せず、トイガンでも銃口がオレンジに塗られていたり、アタッチメントが義務付けられている国や地域もあり、派手な塗装、明らかにオモチャとわかる形状など、トイガンの方にさまざまな規制が設けられている。それでも、銃を使った事件などが起こると、エアガン、モデルガン愛好家に疑いの目を向ける風潮がある。安全で平和だからこそ楽しめる趣味なのだ。

 筆者は2024年もHOBBY Watchにて様々なモデルガンを紹介してきたが、モデルガンならではの魅力に掘り下げた連載企画「"撃つ姿が美しい"モデルガンの世界」を開始した。2025年も色々な視点でモデルガンの魅力を紹介していきたい。毎年の繰り返しになるが、トイガンを存分に楽しめる世の中であることを祈りたい。