インタビュー

『ELDEN RING』、「S.H.Figuarts ミケラの刃、マレニア」企画担当者インタビュー

何度も何度も倒された強敵裏ボスの魅力を細部まで実感できるフィギュア

【S.H.Figuarts ミケラの刃、マレニア】

7月発売予定

価格:16,500円

1月9日より予約開始

 今回のフィギュア「S.H.Figuarts ミケラの刃、マレニア(以下、S.H.Figuarts マレニア)」は、フロム・ソフトウェアのアクションRPG『ELDEN RING』に登場する。高貴な雰囲気を持ち、右腕から伸びる剣でプレーヤーを切り刻む。ゲームでは非常に強く、プレーヤーにとって強烈な印象を与えるキャラクターだ。

 「S.H.Figuarts マレニア」は、BANDAI SPIRITSコレクターズ事業部のアクションフィギュアブランド「S.H.Figuarts」における『ELDEN RING』のキャラクターを扱った商品としては2作目に当たる。

 フィギュアの造型、塗装、使用する素材など仕様を細かく詰めていった結果、実に3年もの開発期間を要したという。今回、「S.H.Figuarts マレニア」のディテールに関して、企画者であるBANDAI SPIRITSコレクターズ事業部の福田晋久氏に話を聞くことができた。

「S.H.Figuarts ミケラの刃、マレニア」の企画者であるBANDAI SPIRITSコレクターズ事業部の福田晋久氏

圧倒的な強さを持つマレニアをフィギュア化

――最初に、マレニアというキャラクターの設定を紹介して下さい。

福田氏:『ELDEN RING』は武器や技、アイテムのテキストなどで背景が語られますが、細かい設定は語られていない部分も多いんです。マレニアは背が高く赤い髪を持ち、美しいであろう素顔を兜で隠し、赤いマントと鎧で身を包んだ、デミゴッドと呼ばれる神のような力を持つ者の1人です。剣士としても非常に高い実力を持っていますが、自身の"腐敗"の力の影響で、右手と両足は義手・義足に置き換わっている。

 彼女はゲーム内のボスとしても非常に強敵で、彼女に挑んで返り討ちにされたプレーヤーは非常に多いです。

「S.H.Figuarts ミケラの刃、マレニア」、アクションRPG『ELDEN RING』の裏ボスと言えるマレニアをアクションフィギュアで表現

――『ELDEN RING』での「S.H.Figuarts」は今回が2体目ですが、毎回ボスキャラクターをモチーフとしています。対決するプレーヤーキャラクターではなく、ボスをモチーフに選んでいるのはどうしてでしょうか?

福田氏:主人公は装備や技など非常に自由度が高くなっており、装備で姿も大きく変わってしまうので、フィギュア商品として表現するのが難しい部分があります。一方ボスキャラクターは立ち向かって、戦って、どうすれば勝てるかゲームをプレイしていないときもイメージで練習したりする。そういった体験を通して、キャラクターに対するとても強い思い入れが生まれると思います。

 しかも戦闘では攻撃をよけることや、相手のモーションを見るのに必死で、デザインそのものを細かくチェックできない。「S.H.Figuarts」ではそういう強烈な印象を残すボスキャラクターを細部まで再現し、技などを表現できるようにアクションフィギュアとしての可動にも力を入れています。

服、金属の義手と鎧、下半身は服の下に鎖を仕込んでいる。デザインだけでなく、素材感も非常に力が入っている

――3年もの開発期間がかかったという「S.H.Figuarts マレニア」ですが、他のフィギュア以上に時間がかかったところはどこでしょうか?

福田氏:やはり「設定の細かさ」が大きいと思います。製作に当たり、フロム・ソフトウェアさんからマレニアの資料をいただいたのですが、本当に非常に細かく設定されている。こちらも劇中の雰囲気をしっかり再現すべく、素材感や塗装にこだわりました。

 まずマントですが、布を使い、内部にワイヤーを仕込むことで、細かい表情付けを可能にしています。軟質素材でマントを作ることも可能ですが、それだと表情付けが限られ、可動も制限されてしまう。そこで、ゲームでの印象的な雰囲気を活かすため、布を採用することにしました。「S.H.Figuarts マレニア」に関しては、「可動と造型の両立」をかなり意識して企画しており、だからこそフィギュアの仕様を決めることにも時間を掛けました。

マントの黄金樹の紋章も美しい

――フロム・ソフトウェアさんからの資料の細かさ、というのはどのようなものですか?

福田氏:デザインや設定だけではなく「素材」まで指定されていて、驚きました。腕の鎧の金属の種類、鉄や銀、金のように種類が異なると色も質感も変わってきます。マレニアは右腕と両足が義手と義足になっているので、造型と塗装を組み合わせて素材感を表現すべく、試行錯誤を繰り返しました。

 他にも、鎖帷子など、非常に細かく装備の素材が設定されている。それをフィギュアでどう表現するか、触っていただくとよりこだわりが実感できると思います。

鎖の下から見えるマレニアの義足。義足の質感を塗装と表面処理で実現している

――フィギュアの造型だけでなく、可動も力が入っているのでしょうか?

福田氏:スカートに関しては印象的な立ち姿を再現するためのパーツと、足を開き激しいアクションを再現するためのパーツをそれぞれ用意しています。スカートにスリットを入れ数パーツに分解することでシルエットを調整しながら脚の可動を実現しています。パーツを差し替えて戦闘中の激しいポーズを再現できます。

 スカートの材質は軟質素材のPVCのため細かく動かせ、表情付けも可能となっています。素立ちの時のすらりとした姿、スカートが広がったときの派手な動きなどの変化も面白いと思います。

分割されたスカートパーツも用意されている
スカートパーツによって足を開いた派手なポーズも可能

――頭の一部分は素肌が出ていますが、少しただれたようになっていますね。

福田氏:彼女は体が腐敗に浸食されているという設定で、素肌部分は変色し、一部がただれたようになっています。そういったディテールも設定通りに細かく表現しました。キャラクターのバックグラウンドなどはゲーム内でも見ることができますが、そういった設定でキャラクターの肉体にどんな変化があったのかを、フィギュアで確認できるようになっているんです。

――義手のディテール表現の細かさもびっくりしますね。

福田氏:こちらはデザインだけでなく、可動機構もしっかり考えています。注目して頂きたいのは「汚し塗装」です。金属ならではの質感と、時間を感じさせる汚し塗装によって使い込まれた雰囲気を出しています。

 義手はもちろん「義手刀」を取り付けることができます。ゲーム内でも印象的な刀の"長さ"を実感していただけると思います。刀にはびっしりと文様が描かれていますが、その並びも細かく設定されていたので、再現しました。刀自体の汚し塗装、質感も注目していただきたいです。

――義手は2重関節になっていて、デザインと可動の自由度が両立されていますね。

福田氏:これは元デザインの良さだと思います。上腕で回転させることで剣の向きや斬撃のポーズなどもしっかりさせられます。

義手のデザイン、塗装による金属の質感、汚し塗装もしっかり入っている
刀身の文様も細かく表現されている。模様は設定を忠実に再現している

――福田さんが特にお気に入りの部分はどこですか?

福田氏:義手のディテールが特にお気に入りです。マレニアを象徴する「義手刀」が接続されているこの腕は、プレーヤーとしても特に印象があります。

 塗りの表現、細かなディテール、金属が重なった表現と、装飾……。金属で作られた義手であることが左手との対比でしっかりとわかります。甲冑の様にも見えますが、関節がちょうつがいを思わせる設計となっていることで、デザインの魅力に加えてメカニカルな雰囲気もあります。

 他にもマントの赤さは時の流れで色あせた感じにしており、紋章の色味などもこだわっています。

 このほか髪の毛も分割し、曲げるだけでなく、ねじることができるようになっています。首の向きを変えても、より自然にシルエットができるように関節設計がされています。マントが跳ね上がる動きに合わせ、髪の毛も可動させる、といったことも可能です。

髪の毛も可動し、ポーズに勢いを加える

――ゲーム内のキャラクターの姿、CGのデータと、フィギュア化した際の立体化のバランス、というのは変わるものですか?

福田氏:まずゲームのそのままの試作を作ったのですが、フロム・ソフトウェアさんにも様々なアイディアをいただきながら調整をしていきました。手足のバランスなど、目の前に実際にマレニアが存在したら、というイメージがこのフィギュアには込められています。

 一方でキャラクターとしてプレーヤーキャラクターよりずっと大きく、手足の長さなども独特ですので、私たちの「フィギュア化のノウハウ」が当てはまりきらない部分もありました。細部だけでなく全身のバランスも時間を掛けてしっかり調整したところです。

――アクションフィギュアとしてのお気に入りのポーズはどんなものですか?

福田氏:本当に何度も倒された「突き」のポーズですね(笑)。近づいてくるときのすらりと立っていて超然とした雰囲気がある"立ち姿"もお気に入りです。

福田氏お気に入りの突きのポーズ

――プレーヤーとしての思い入れもしっかり受け止めてくれるフィギュアになった、ということですね。

福田氏:ゲームの中の動きや、戦っているときの攻撃時の迫力、ムービーシーンの姿を再現できるようにフィギュアの企画を詰めていきます。アクションフィギュアは様々なシーンを再現できるので、ここが良いところだと私は思っています。

 「S.H.Figuarts マレニア」は、足の付け根や、ももの回転軸など、関節の可動箇所も多い豪華な仕様のフィギュアなので、色々なポーズを取らせて欲しいと思います。マレニアはすらりと立った立ち姿が印象的ですが、分割式のスカートパーツ使うことで、足を開き、こちらに斬りかかってくる派手な攻撃モーションも再現できます。

足を大きく開いたポーズも可能

――これからの未来、というところで『ELDEN RING』のキャラクターのさらなるフィギュア化も期待します。

福田氏:現状は未定ですが、個人的にはぜひ続けたいと思っています。ただ、キャラクターの選定が難しいですね。……大きなキャラクターだと、可動も難しくなりますし、「どうフィギュア化するか」というところも悩ましいです。

――では、個人的に「S.H.Figuarts」にしてみたいキャラクターはありますか??

福田氏:「黒き剣のマリケス」ですね。巨大ボスはフィギュア映えしそうですし、夢が広がりますよね。これをアクションフィギュアで実現できたら嬉しいです!

 『ELDEN RING』はアクション要素が強いゲームなので、キャラクターは関節のあるアクションフィギュアの方が再現できるシーンが多いと思います。

福田氏の言葉からはゲーム『ELDEN RING』への強い愛も伝わってくる

――最後に、ファンへのメッセージをお願いします。

福田氏:フィギュアファンはもちろん、『ELDEN RING』プレーヤーで、フィギュアに触ったことないよ、という人にも魅力的な商品になりました。キャラクターを知らない人も、フィギュアの世界観に魅力を感じていただけると思います。ぜひ手に取っていただいて、造型、塗装、可動、色々な魅力を楽しんで下さい。

――ありがとうございました。


 『ELDEN RING』は世界観が非常に魅力的なゲームだ。滅びに向かっているような隠滅とした世界に、攻略法がわからなければフィールドを歩いている敵にすらアッという間に倒されてしまう難易度、そして印象的なボスキャラクター。ストーリーは積極的には語られないが、入手できるアイテムなどでバックストーリーが見えてくる。

 「S.H.Figuarts ミケラの刃、マレニア」はキャラクターに対するゲーム開発者の思い入れが深く伝わってくるフィギュアだ。装備に対する非常に細かい設定、彼女の背景がしっかり設定されていることがわかるディテール、何よりも高貴な雰囲気と、キャラクターを象徴する弧を描く刀。フィギュアを通じて、『ELDEN RING』の世界観がしっかり伝わってくる。

 そのゲーム開発者の強い想いを見事に立体化した「S.H.Figuarts ミケラの刃、マレニア」は開発に長い期間がかかった、というのが納得できるクオリティだ。話を聞きフィギュアの細部を見ると、その苦労が伝わってくる。ゲームファンはもちろん、そうでない人も手にすることでゲームへの興味がかき立てられるだろう。