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ハロが宇宙に飛び立つ「みんなのハロ」プロジェクト発表会レポート
きっかけは何と大河原氏本人?「絶対ハロの方が面白いと思った」
2026年4月8日 12:18
- 【「みんなのハロ」プロジェクト】
- 4月7日発表
- 会場:いなぎ発信基地ペアテラス
スペースエントリーは4月7日、稲城市の「いなぎ発信基地ペアテラス」にて、『機動戦士ガンダム』に登場するペットロボット「ハロ」をモチーフに、大河原邦男氏がデザインした自律型宇宙ロボット「みんなのハロ」を組み立て、国際宇宙ステーション(ISS)に打ち上げて「きぼう」日本実験棟に長期滞在させるミッション「HELLO, HARO」プロジェクトの始動を発表した。
プロジェクトはCAMPFIREのクラウドファンディングを通して行なわれ、支援したプランに応じて「みんなのハロ」の組み立てや実験などに参加することができる予定。スケジュールとしては4月14日より、クラウドファンディングの支援受付を開始し、現在開発中の「みんなのハロ」の組み立て開始は2026年6月頃を予定。完成は2026年内で、アメリカのロケットを使用して2027年3月までの打ち上げを目指すとしている。運用期間は2年間を想定している。
発表会には、スペースエントリー代表取締役 CEOの熊谷亮一氏のほか、「みんなのハロ」デザインを担当したメカデザイナーの大河原邦男氏、稲城市の高橋勝浩市長の3名が登壇し、今回の「HELLO, HARO」プロジェクトの経緯などについてのトークが行なわれた。本稿では発表会で語られた関係者の思い、さらに大河原氏への囲み取材での応答などを紹介したい。
球形を見た大河原氏からの提案で「ハロ」デザインが実現!
熊谷氏は1994年に有人宇宙システム株式会社(JAMSS)に入社して以来、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の開発初期から宇宙開発プロジェクトに関わってきたという経歴を持つ。これまでのISSに関する知見と経験を活かして、今回の「HELLO, HARO」プロジェクトを推進していくという。
大河原氏にデザインを依頼した理由として、熊谷氏は、これまでの宇宙開発では基本性能や過酷な環境に耐える「性能」が重視されてきたが、これからは「デザイン」がポイントになってくるという考えから、気軽に宇宙開発に参加したいと思わせるための親しみを持ったデザインを頼むなら、やはりハロを生み出した大河原氏にお願いするのがベストではないかと考えたとのこと。
さらに大きな理由が3つあるとし、1つめは日本を代表するメカニックデザイナーとして未来を視覚化できること、2つめは大河原氏のデザインが単なるアニメのデザインだけでなく、工学的な知見に基づいたリアリティを備えていること、そして3つめは「機動戦士ガンダム」のデザイナーであったことだ。熊谷氏もガンダムがきっかけで宇宙開発を志した1人なので、大河原氏に依頼することで、「宇宙の民主化への最高の一歩になる」と語った。
そして大河原氏からも経緯について説明があった。実は最初に大河原氏が受けた依頼は、宇宙での実験に使用する球形ロボットのデザインのみだったという。しかし「球形」を見た大河原氏は「これは絶対にハロがいい! サンライズに連絡して許可を取ってハロでやろう」と決意し、大河原氏自らサンライズに連絡、スペースエントリーと担当者を繋いで許可を取ったことで、今回の「HELLO, HARO」プロジェクトが実現したそうだ。なお、サンライズの担当者には、「ロイヤリティを取るな」と声を掛けたが、両社の間で実際にどのような契約になったかについては大河原氏はわからないとのこと。
ハロのデザインについては、大河原氏の過去のインタビューなどでも触れられているが、元々は『機動戦士ガンダム』の前番組『無敵鋼人ダイターン3』の時に依頼された整備用ロボット「メカマル」のボツ案の1つだったという。その後、富野由悠季監督が「機動戦士ガンダム」で採用されたと、ハロ誕生のエピソードを語った。
ここで大河原氏から自律型宇宙ロボット「みんなのハロ」のデザイン画が紹介されると、会場からも歓声が上がった。今回のデザインについて大河原氏は「皆さんから愛されているハロなので、なるべくハロに近づけた方がいいだろうということで、このラインの中にいろんなセンサーが入っています。実際のハロよりラインは太くなっていますが、これは機能的な理由です。かなり適当に作ったデザインだったハロが、宇宙ステーションに滞在できるというのはチャンスだと思い、お金をくれなくてもやります!という気持ちで始めた」とした。
これを受けて熊谷氏のプレゼンテーションにて、デザイン画を元に開発されたリアルな「みんなのハロ」のビジュアルが紹介された。まだモデルの段階だが、直径は約200mm、重さは4.5kg、ISSには燃えやすい素材は持ち込めないので、筐体はアルミで作る予定だという。バッテリーで駆動し、地上からの遠隔操作でコミュニケーションができる機能を搭載する予定となっている。
目にはLEDが内蔵されており、点滅することで意思表示が行なえるほか、口や鼻のあたりには障害物を自動で回避するためのレーザーセンサーを内蔵。先ほど大河原氏が太くなっていると説明した本体中央のラインの中にはカメラやセンサーが盛り込まれている。そして特徴的な黒く塗られたほっぺや背面の黒丸部分はいずれもファンの排気口となっており、これら4カ所からのエア吹き出しで姿勢を制御したり、移動する。
「みんなのハロ」は「ドローン型」の自律型宇宙ロボットと説明されていたが、ドローン用のプロペラなどが生えるわけではなく、アニメなどで行なわれたような耳の部分をバタバタさせるような可動ギミックも搭載されていないことが質疑応答の中で明らかになった。
重力のある地上においてドローンのプロペラは重力に逆らって浮力を得るために利用するが、無重力の空間において、ドローンのプロペラは姿勢制御や移動にのみ用いるため、本体に内蔵している。また、耳をパタパタさせるようなアクションをさせることは、技術的には可能だが、強度面などの課題が増えてしまい、開発工数が増えてしまうという。2030年にはISSが退役してしまうため、その前に打ち上げる必要があることから、スケジュールを考慮し、開発要素を減らすために耳を動かす機能は断念したと説明した。
開発状況としては、現在JAXAのフェーズ2の安全審査を受けているところとのことで、実際の機能面などについては「BBM(ブレッド・ボード・モデル)」において性能の確認が進められているという。BBMとは、新規技術要素を有する開発において、設計の実現性を確認するために製作・試験されるモデルのことを指す、最初の開発段階となる。
質疑応答では、大河原氏は「改めてハロを再設計・再デザインしてみて、愛着が湧いたといった気持ちはある」という質問に対し大河原氏は「一番単純で可愛くできた。『ダイターン3』の時の息抜きで生まれたメカなんで、それが未だに可愛がっていただけているというのは、あんまり一生懸命仕事しない方がいいのかな、なんて感じもしています。自分が楽しんでデザインしたものが一番長く続くのかなと改めて思っています」とくだけた口調で語り、会場を笑わせた。
今回デザインしたハロで一番気に入っている点を聞かれると「やっぱりほっぺでしょうね。初め提案された四角の穴をどう料理しようかなと思ったんですけど、丸くすれば機能的にも影響ないかなということで、苦肉の策がいい結果になりました」とした。
なお、ハロの音声については現時点では何も決まっておらず、声優を起用するか、またはプロジェクト参加者から選ぶ方法などを検討しているという。個人的には是非きちんと声優さんを起用してほしいところだ。
真っ先に頭に浮かんだのが「ハロ」でした! みんなで楽しむための「ハロ」起用
その後、大河原氏に囲み取材でさらに話を聞くことができた。「ハロがファンからどのように愛されていると思うか」と聞かれた大河原氏は「やっぱり最初にアムロと一緒に出てきて、まだ戦いの前のリラックスした状態でのアムロとのやり取りがあり、その後1年戦争に突入していく中でのホッとさせられる部分が愛されたのでしょうね。形自体も球体で、誰でも描ける“ズルい”デザインですもんね」とユーモアを交えて語った。
前番組の『無敵鋼人ダイターン3』でサポートロボット「メカマル」のデザインが採用されず、『ガンダム』で「ハロ」として採用されたエピソードについて聞かれると「あの頃は、サンライズができたばかりで余裕があった時代だったので、富野監督に気に入ってもらい『機動戦士ガンダム』で採用されました。アニメは分業作業なので、私がやるのはモノクロのデザインだけで、名前も色も演出や色彩設計にお任せしていて、形だけ私が作った感じです」と当時を振り返った。
「宇宙飛行士の方々にハロにどう接してほしいか」と聞かれると「バーチャルの世界のデザインがリアルの世界として宇宙ステーションに行く。それだけで今回のハロの使命は達成されたんじゃないかなと。『ガンダムZZ』ではアニメじゃないなんて歌ってましたが、まぁあれはアニメでした。今回はリアルな存在としてハロが宇宙に行くことは、私にとっても財産になります」と『機動戦士ガンダムZZ』のオープニングの歌詞を例に出しながら、リアルの「みんなのハロ」が宇宙にいくことについての思いを語った。そして宇宙飛行士との触れ合いについては「万国共通で憎まれる要素がない可愛さがありますから、宇宙飛行士の方にも可愛がってもらえると思います」とした。
筆者は今回、大河原氏からハロを提案したというのが強く印象に残った。そこで「大河原さん自身が宇宙ロボットにハロを提案したのに驚きました」と大河原氏に聞いてみた。大河原氏は「相手の提案通りでも良かったんですが、誰もが喜ぶのはハロを宇宙に飛ばすことだろうなと。ファンの方も多いですし、みんなで遊べるかなと思ったんですよ。こういうのは楽しい方がいいじゃないですか」としており、自身の新しいデザインの誇示よりも、より多くのファンの人たちのことを想定しての提案だったとした。また、ハロ以外の大河原氏の球形デザインについて聞いてみると「タイムボカンシリーズなど結構あると思いますけど、それでも、これについてはやっぱり真っ先に頭に浮かんだのはハロでしたね」と語った。
ここでさらに「大河原さんの新たな球体デザインのメカも見たかった気持ちもあります」と意見も言ってみた。大河原氏は「それはいくらでもできるんですよ。途中までは、自分ならこういうのを作るだろうなというデザインも作っていたんですけど、やってる途中で、これについてはやっぱりハロにした方がいいと思ったんです」と答えてくれた。その途中のデザインも見てみたいところだ。
「大河原氏は様々なデザインをどう生み出しているのか?」というデザイナーのあり方を問うような質問も出た。大河原氏は「私の場合、アイデアがどんどん湧くタイプではないんですよね。知り合いでは天野喜孝(イラストレーターの天野喜孝氏。『タイムボカン』シリーズなどタツノコプロ作品でキャラクターデザインを担当)とか安彦良和(イラストレーター・漫画家の安彦良和氏。『機動戦士ガンダム』でキャラクターデザインを担当)とかは、自分からどんどんアイディアが出てくる人なんですが、私の場合はオファーを受けてから、なるべくその相手を満足させるデザインを返せるかという、卓球みたいなやり取りをするタイプなんです。だから、エンジニアの要求にこう対応しようとあれこれ考えます。こうやって構造を考えるプロセスが一番楽しいですね」とした。
また「あと、絵を描くよりも物を作る方が好きなので、旋盤を回して、どこを削ってどこでカットするかなど、加工しながら色々考えるのが好きですね」としており、手元には絵を描く道具よりも物を作る道具の方が多い話などを楽しそうに語っていた。
12月の誕生日で79歳になるという大河原邦男氏だが、いつまでも精力的にデザインの仕事を頑張ってほしいと心から思わされた囲み取材だった。
江戸時代から稲城市に住む大河原家
発表会では、稲城市の高橋勝浩市長から、稲城市と大河原氏の繋がりについての話もあった。なお、稲城市は今回のプロジェクトに「ハローハローパートナーズ」として参画しており、金銭的支援は行なっていないが、大河原氏のデザイン決定時にも報告を受けるなど、緊密に連携しているという。
高橋市長は、稲城市がこれまでにも市内に大河原作品のモニュメントを設置するなどの「大河原邦男プロジェクト」を推進しており、市民が「稲城市はガンダムの街だ」という誇りを持つことで、地域への愛着や定住、活性化に繋がってほしいという願いを明かしている。また、漫画やアニメーションを一つの文化として、その地位を高める手伝いをしたいと思いを語った。
大河原氏はこうした市長の発言を受けて「ちょっと荷が重い」と照れやユーモアを交えながら「亡き父からは、『生まれ故郷に貢献しなさい』と常々言われていたので、市からの依頼は何でも引き受けるようにしている」とし、故郷への強い思いを語っている。
大河原家は、江戸時代から続く家系で、大河原氏の兄が11代目であり、ずっと稲城市に住んでおり、稲城が本当に好きだと語る。最近は都内に出るのも辛くなってきており、なるべく稲城市から出ないようにしているほどだという。
こうした市の取り組みについては、街中に自分のデザインしたモニュメントが立っているため、「悪いこともできないし、行儀よく生きないといけない」と冗談めかして語った。
ファンを喜ばせる「仕事人」大河原氏のファインプレイに感謝
以上、スペースエントリーの発表会についてレポートした。振り返って最も特筆すべきは、やはり今回のプロジェクトが大河原氏自らの提案によって「ハロ」へと昇華された点だろう。
当初スペースエントリーの開発側が持ち込んだ案では排気口である「ほっぺ」が四角い形状だったが、それを「丸いほっぺ」に描き直したことで、機能面のみならず、より愛らしい「みんなのハロ」へと変貌させたところも素晴らしい。
大河原氏は笑みを浮かべながら「みんなで遊べるほうが楽しいじゃないですか」と語るその姿勢からは、自身のデザインの誇示よりも、ファンの喜びやプロジェクトの成功を第一に考える「仕事人」としての矜持を感じた。
2027年、漆黒の宇宙空間に浮かぶISSの中で「みんなのハロ」が浮遊し、目を光らせるその日は、大河原氏が50年近く前に"ちょっとした遊び心"で描いた1つのキャラクターが現実世界で活動する歴史的瞬間となる。「みんなのハロ」プロジェクトは、クラウドファンディングが4月14日から開始される予定で、参加プランによって自分の名前や音声をハロと共に宇宙へ運んでくれる。クラウドファンディングを通じてプロジェクトに参加できるというのは、ファンとしてこれ以上ない贅沢と言えるだろう。
(C)創通・サンライズ






























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