ニュース

「宇宙世紀」の「ガンダム」がこれからの人類の宇宙進出に果たす役割とは?

「GUNDAM UNIVERSAL CENTURY DEVELOPMENT ACTION(GUDA)」発表

6月15日発表

 バンダイナムコグループは、「機動戦士ガンダム」シリーズに関する施策を発表する「第1回 ガンダムカンファレンス」をオンラインにて実施し、ガンダムを活用したサステナブルプロジェクト「GUNDAM UNIVERSAL CENTURY DEVELOPMENT ACTION(GUDA)」の始動と、その一環となるプログラム「ガンダムオープンイノベーション」を発表した。

 サステナブル(Sustainable)とは、「人間・社会・地球環境の持続可能な発展」を意味する。今回のカンファレンスではビジネス面での「ガンダム」IPの活用だけでなく、今後社会の変化、より積極的な宇宙進出をしていこうという時代において"宇宙世紀"という宇宙に人々が生活の場を移した「ガンダム」と言う物語が、現実社会において役割を果たせるかの問いかけをしていこうというものだ。

 発表会ではバンダイナムコエンターテインメントCGO藤原孝史氏が登壇し、同プロジェクトの内容やガンダムの事業戦略に関する最新情報を解説した。

バンダイナムコエンターテインメント チーフガンダムオフィサー(CGO)藤原孝史氏

世界により広く「ガンダム」の認知を! 「ガンダムプロジェクト」発足

 2019年のガンダム40周年、2020年のガンプラ40周年における国内外の周年事業により、2020年のバンダイナムコグループのガンダムシリーズの売上推移は950億円まで成長したことを報告。この4月以降は同グループの組織改変に伴い、グループ横断での展開を強化すべく「ガンダムプロジェクト」を発足し、ガンダムとガンプラが45周年を迎える2025年には、グループ売上1500億円を超えるIPへと成長させていく計画だ。

2018年度以降のバンダイナムコグループのガンダム売上グラフ

 ガンダムをグループ最大級のIPに成長させるための戦略について、2つのプロジェクトが提示された。ひとつは「グループ横断によるガンダム戦略強化」。「世界規模での話題創出」、「国内活性化戦略」、「ターゲット別&MD連動型作品展開戦略」といった戦略を掲げ、国内外のガンダムIPのさらなる強化をはかっていく。

【世界規模での話題創出】
2020年度の国内とアジア・北米における売上比率は左のグラフの通り。継続的に世界規模での話題を提供し、近い将来には50:50比率を目標とする
世界規模での普遍的なIP化を目指す施策として、世界に向けたハリウッド映画「レジェンダリーガンダム」を発表
監督はジョーダン・ボート=ロバーツ氏に決定。「富野由悠季監督の抽象的で独創的なビジョンに向き合いながら、この世界に命を吹き込むことが待ち遠しい」とコメント
「機動戦士ガンダムSEED PROJECT ignited」。TVシリーズの続編となる劇場作品で、この作品を中心に20周年を盛り上げていく
フラッグシップストア世界戦略も加速中。世界18店舗が展開される「ガンダムベース」。タイや北米の他、夏には仮想空間でのショッピングのテスト展開も予定
「ガンダムバトルオペレーション2」や「ガンダムブレイカー」といったタイトルで海外アクティブ比率を上げるだけでなく、賞金付きゲーム大会も実施。またeスポーツ向けタイトルも開発中とのこと
実物大の立像プロジェクトは、ガンダム30周年の2009年よりスタート。お台場のユニコーンガンダム、横浜の動くガンダムに続き、この5月には上海のフリーダムガンダムが披露
実物大立像のプロジェクトは今後も世界に向けて展開予定で、次回のガンダムカンファレンスではその詳細が発表予定とのこと

【国内活性化戦略】
こちらは国内都道府県別ガンプラユーザー含有率の図。赤が含有率が高く、青が低い地域。これらエリアの現状と可能性を見極め、大都市に限定することなく全国で事業を展開していく
イベント「ガンダムワールド」は大幅リニューアルされ、その第1弾「ガンダムワールドコントラスト」として、初代ガンダムとガンダムSEEDの対比がテーマとした内容で、今年の秋に大阪を皮切りに全国巡回予定とる

【ターゲット別&MD連動型作品展開戦略】
日本、中国、北米におけるガンダムのファン層のグラフ。年齢層も作品も異なり、それにより戦略を変えていく必要があると藤原氏
作品ごとの多角的な展開を通して、そのポテンシャルの最大化をはかっていく。その例として上がったのが「ガンダムビルドリアル」、「閃光のハサウェイ」、「ガンダムブレイカーバトローグ」の3作品だ
ゲームとガンプラの演出や遊びの全てが連携する「ガンダムブレイカーバトローグ」。北米の若いゲームユーザーにも向けた企画となる

「ガンダム」で提示されたSFアプローチを現実社会で活用する「GUDA」

 続いての戦略が、本日の主題となる「ガンダム×サステナブル」だ。IP軸戦略のもと、ファンとともにグループが向き合うべき社会的課題に対応したサステナブルな活動に、ガンダムを通じて取り組んでいく。

 既にグループ4社による共同プロジェクト「GUNPLA RECYCLING PROJECT」を今年3月よりスタート。ガンプラを組み立てた後に残るランナーを、ファン協力のもとに回収し、新しい商品として発売する「マテリアルリサイクル」、他社との協力のもと最先端のリサイクル技術で新たなプラモデル製品に生まれ変わらせる「ケミカルリサイクル」、リサイクルしたときに出る熱エネルギーを電力に変える「サーマルリサイクル」の3種類のリサイクル活動を行なっていくというものだ。現状の回収量は年間10t程度で、この活動をさらに推進し、リサイクルの座組みを構築していきたいと述べる。

【ガンダムを通じた社会活動】
ガンプラの制作及び生産時に出てくるランナーを回収し、リサイクルして別の価値へと生まれ変わらせるのだ
小学生の教育現場で、物作りの面白さや環境への関心について楽しく学ぶための「オンライン授業×プラモデル」をこの秋より全国で本格的に開始

 そしてガンダムを社会に還元していくプロジェクトとして立ち上がったのが、冒頭でも述べた「GUNDAM UNIVERSAL CENTURY DEVELOPMENT ACTION(GUDA)」だ。ガンダムが地球をその手に乗せたビジュアルが美しいこのプロジェクトは、来たるべき現実の宇宙世紀の開幕に向け、ガンダムを使ったサステナブルな活動を行なっていくというもの。

 今後加速するであろう宇宙への進出において、宇宙における様々な問題を描いたガンダムのメッセージ(人口問題・地球環境問題)は、これからの人類にとって価値のあるものであり、リアルな宇宙世紀の幕開けに向け、フィクションのガンダム世界の宇宙世紀を教訓として、よりよい世界を目指し、バンダイナムコグループがガンダムを旗印に、ファンや外部パートナーと手を組み、未来の子供達のために様々なアクションを行なっていく。

GUDAのメインビジュアル

 その一環として発表されたのが、「ガンダムオープンイノベーション」だ。2018年よりバンダイナムコホールディングスが進めていた「バンダイナムコアクセラレーター」を次のステージへとリニューアルして実施するもので、ガンダムを使った人口問題や環境問題への新しい活動や技術を幅広く募集するというもの。

ガンダムの世界同様に現実世界が抱える社会課題に対し、ガンダムと未来技術を掛け合わせることにより未来の夢と希望を現実化するプログラム

 「機動戦士ガンダム」という作品は40年以上前に、増加する人口や悪化する地球環境に対して警鐘を鳴らしていた。さらに宇宙進出と人類の関係を密接に描き、我々が宇宙や未来、平和を考える作品となった。フィクションであるガンダムの世界からインスパイアされた技術やアイデアがあるからこそ、現実に活用できる新しいアイデアがあるのではないかと、このプロジェクトに期待を込めていると藤原氏は語る。

ガンダムオープンイノベーション公式サイトがオープン。7月には説明会が実施され、エントリーも開始される予定だ

 バンダイナムコグループは、世界の未来のために貢献できることは何かを本気で考え、ガンダムを世界の未来のために役立てたいと宣言。これまでのキャラクターとしての「IP(Intellrctuall property)」を、社会的アイコンの「SP(Social property)」へと成長させる思いで取り組み、そのためにガンダムを愛する人々の知恵と力を借りて、一緒にガンダム・ガンプラ45周年、そしてその先へ歩んでいきたいことを述べた。

 2019年から2020年にかけての40周年で盛り上がりを見せたガンダムシリーズだが、国内外のファンに向けた今後の新しい取り組みにも大いに期待がかかるところだ。また今回発表されたガンダムオープンイノベーションは、かなり壮大なプロジェクトとなりそうで、「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」の動くガンダムのような、これまで誰も考えもつかなかったガンダムの未来を楽しみに、その展開を見守っていきたい。