レビュー

ガレージキット「T’s system ウマ娘 タマモクロス」レビュー前編

キットの全体像が見えてくる軸打ち作業

 全パーツのゲート処理、パーティングライン処理が完了したら軸打ちを行なっていきます。ガレージキットはスナップフィットのプラモデルと違いパーツをハメ合わせるだけではパーツ同士を固定できません。さらに、ガレージキットのハメ合わせはガレージキット素材であるレジンが収縮する特性からガタツキが生じます。そこで軸打ちを行ない、パーツ同士をしっかりと固定できるようにしていきます。軸打ちはガイドの凹部に合わせてピンバイスで開孔を行ない、そこに真鍮線を固定していきます。

真鍮線を固定したパーツ。これでパーツ同士をしっかりと固定できます。

 なお、軸を打つ際にガイドとなる凹部がない場合やピンバイスでの開孔がずれてしまい上手くかみ合わなくなってしまうことがあります。この場合は真鍮線を打っていない側の開孔を一回り大きなピンバイスで広げてしましょう。こうすることでかみ合いは確保することができます。しかし、このままでは固定が上手くできません。そこで、ポリパテを使用して固定していきます。ポリパテは主剤と硬化剤を混合することで硬化させることができるパテで、ガレージキットだけでなくプラモデルの加工などにも使用される便利なツールとなります。

混合前のポリパテ。白が主剤、黄土色が硬化剤です。
混合したポリパテ。約1時間で硬化が始まります。
拡張した開孔部にポリパテを充填します。
パーツをハメ合わせ、パテが硬化するまでマスキングテープで固定しておけばガタツキはなくなります。

 また、パーツに負荷のかからない箇所については軸打ちを行なわずマグネットによる固定も可能です。多少のずれがあっても固定可能となります。

マグネットを埋設したパーツ。埋設するだけで固定可能なので作業時間短縮につながります。磁極の向きには注意が必要です。

完成時の見栄えを大幅アップする合わせ目消し

 軸打ちが完了したら次に合わせ目消しを行ないます。ガレージキットもプラモデルと同様、パーツとパーツの分割位置に合わせ目が発生する場合があります。この合わせ目をそのままにしておくと完成時に目立ってしまい、きれいに仕上がりません。そのため、合わせ目消しを行なっていきます。

合わせ目が目立つ脚パーツ。これから合わせ目消しを行なっていきます。

 まずはパーツ同士を固定します。固定にはエポキシ接着剤を使用しました。エポキシ接着剤は瞬間接着剤よりも固定力が高いので、パーツ同士の接着には有効です。

パーツ同士の固定に使用したエポキシ接着剤。A剤とB剤の2種類を混ぜ合わせることで接着できます。

 パーツ同士の固定が完了したら隙間にポリパテを盛りつけていきます。ポリパテは硬化時に収縮するため盛り上がるくらい盛っておきましょう。

パテを盛りつけた脚パーツ。硬化時に収縮するので多めに盛ります。
ポリパテが硬化したら神ヤスの400番を使用して整形。これで合わせ目はきれいに消えました。

キットによっては制作必須の土台作り

 今回作成しているタマモクロスは完成時にキットだけでは自立しません。そのため、土台を自作してやる必要があります。今回は自宅にストックしてある木材を使って10cm×10cmのサイズで作成することにしました。

切り出しを行なった木材。このままでは見た目が悪いので少し加工していきます。
加工を行なった土台。今回は角をやすりで面取りを行ないました。

 完成した土台はキット同様に軸打ちを行ない、固定できるようにしておきます。

仕上がりを決めるひと手間、表面処理

 ここまで加工が完了したら全パーツの表面処理を行なっていきます。これまでの加工にてやすりは400番までしかかけていないため表面の粗さに差が出てしまっています。そのため、表面の粗さを均一にするためパーツ全てにやすりがけを行なっていきます。今回は1000番の神ヤスでやすり掛けを行ないました。

パーツの隅々までやすりで磨いていきます。

塗装前の最終仕上げとなるパーツ洗浄

 ここまでの表面処理などでパーツ表面には削りカスが多く付着しています。そのため最後に洗浄を行なっていきます。洗浄には超音波洗浄機(シチズン 超音波洗浄機 SWS510)を使用します。超音波洗浄機は一度に多くのパーツを洗浄できるので1台持っておくと非常に便利です。

いつも洗浄に使用している超音波洗浄機。少しお値段はしますが買っておいて損はありません。
洗浄前の超音波洗浄機。中に入れた水は澄んでいます。
洗浄後の超音波洗浄機。しっかりと削りカスが取れていることがわかります。

 これにて塗装前の工程はすべて完了となります。それでは塗装前の仮組した姿を見てみましょう。

四方から見てみます。細かい部分までしっかりとディテールが作り込まれています。
合わせ目消しを行なった脚パーツ。この上から塗装すれば合わせ目は目立ちません。
土台パーツのアップ。主張しすぎないようにシンプルに仕上げました。
髪の毛のアップ。毛束の隙間すべてにやすりを掛けています。
左手のアップ。指は細いので折ってしまわないように注意が必要です。
腰部分のアップ。リボンパーツが本キットで一番細かいパーツでした。0.3mmの真鍮線で固定しています。

 いかがでしょうか。これから塗装を開始していきます。ガレージキットの加工はプラモデルと少々異なる点もありますが基本はプラモデルと大きく変わりません。皆さんもこれをきっかけにガレージキットに挑戦してみてはいかがでしょうか。本キットの塗装を行なう後編もぜひ読んでみてください。