レビュー

アルカディア「1/60 重装砲撃型 トマホーク」レビュー

ミリタリーテイストたっぷりのデストロイドを満足感の高いサイズで再現

【1/60 MBR-04-Mk.VI 重装砲撃型 トマホーク】

10月31日発売

価格:14,080円(税込)

全長:約200mm

重さ:約382g

材質:ABS、POM、亜鉛合金、他

 アルカディアは10月31日にアクションフィギュア「1/60 MBR-04-Mk.VI 重装砲撃型 トマホーク」を発売した。本商品のモチーフとなっているのは、アニメ「超時空要塞マクロス」で登場した陸戦兵器「デストロイド」のうちの1つ「デストロイドトマホーク」である。

 「デストロイドトマホーク」は、BANDAI SPIRITSのアクションフィギュアシリーズ「HI-METAL R」シリーズで参考出展されていたものの、数年たっても発売されなかった。筆者はこの商品を心待ちにしていたのだが、今回アルカディアからデストロイドトマホークのアクションフィギュアが発売されると言うことで、予約し楽しみにしていた。

 手にした「1/60 MBR-04-Mk.VI 重装砲撃型 トマホーク(以下、トマホーク)」は全長約200mm、重量約382gのビックサイズでかなり満足できるものだった。今回は商品の魅力と、ミリタリーテイストたっぷりのデストロイドトマホークそのものの面白さをレビューしていきたい。

【「トマホーク」【超時空要塞マクロス】】

陸戦兵器として独特のかっこよさを持ったデストロイドトマホーク

 デストロイドシリーズは可変戦闘機「VF-1バルキリー」と共に、地球に落下してきた宇宙人の戦艦(後に「マクロス」と命名される)によってもたらされた異星人文明の技術OTM(オーバーテクノロジー・オブ・マクロス)によって生まれた兵器である。

 デストロイドは惑星や衛星での拠点防衛用を前提として設計された。バルキリーが様々なオプションパーツで偵察から対空戦闘、爆撃までこなすマルチロール機であるのに対し、デストロイドは砲撃型のトマホーク、対空戦闘を行うディフェンダー、格闘戦を前提としたスパルタン、そして第二次大戦の「列車砲」のような超長距離砲撃を行う"歩く大砲"であるモンスターなど様々なタイプが生まれた。

デストロイドで最大の大きさを持つ「モンスター」。BANDAI SPIRITSではHI-METAL Rシリーズで商品化されたが、トマホークは未発売だ

 アニメでの描かれ方としては、デストロイドは主人公達が搭乗するバルキリーの"引き立て役"としてのやられメカとしての描写が多かった。また、劇中のゼントラーディ軍との戦闘では、軌道上からの戦闘艦の圧倒的な火力による砲撃でなぎ払われてしまい、地上でデストロイドが活躍できる場面は少なかった。

 一方、フォールドシステム(ワープ航法)の暴走により冥王星付近まで転移してしまい、避難民を収容し地球までの長い帰還の航海をしなければならなくなる。このとき多数のデストロイド部隊もマクロスに所属することになるが、その戦闘はもっぱらマクロス防衛のための対空戦闘だった。陸戦を想定していたトマホークは活躍の場は少なかったが、マクロスの"腕"をピンポイントバリアで覆って敵艦にめり込ませ、腕部分にデストロイド部隊を集中配備しその火力で戦艦内部から破壊する「ダイダロスアタック」ではその攻撃力を遺憾なく発揮した。

 以降、「マクロス」の世界はその後の世界が描かれていくが、可変戦闘機がより多彩な用途で活躍していく一方で、デストロイドは"脇役"として防衛任務に少ないバリエーションが展開する形となっている。

 「マクロス」において、デストロイドはあまり活躍のない存在ではあるが、「SFメカ」としてそのデザインの面白さ、魅力は大きい。特に今回のフィギュア「トマホーク」はそのミリタリーテイストあふれる無骨なデザインをたっぷり堪能できる商品となっている。

【トマホーク全身】
両手がそのまま主砲になっており、見ただけでどのような戦いをする兵器なのかはっきりわかる。アニメ放映時の1982年ではこういった機能に特化したロボットデザインは新しく、その後のロボットデザインに大きな影響を与えた

 ではフィギュア「トマホーク」を見ていこう。ずんぐりむっくりしたロボットで、昨今のガンダムのようなスマートなデザインとは全く違う無骨なシルエットだ。設定上の全高は11mほどなので、「太陽の牙ダグラム」のダグラムよりちょっとだけ小さいくらいである。

 大きな特徴は何といっても両手の巨大な荷電粒子砲(マウラー PGB-11 荷電粒子ビーム砲)。腕が人型ではなく直接武器になっているのもアニメロボットとしては珍しいと言えるかもしれない。トマホークは戦車のようにその巨大な荷電粒子砲の火力と重装甲で正面から敵を打ち破り戦線を押し上げる戦車のような役割を担うために生まれたロボットだ。

【荷電粒子砲】
主武装である荷電粒子砲。トマホークは熱核反応炉と燃料発電機による大電力でこの荷電粒子砲を稼動させる

 このため主砲である荷電粒子砲以外にも多くの武器を前面に配置している。固定武装として胸の左右についているのは「ガンクラスター」という複合兵装で、レーザー砲、マシンガン、火炎放射器などの砲口が狭い空間にぎゅっと並んでいる。敵が接近してきたときはこれらの武器で攻撃する。凄まじい火力を想像させる武器だ。

【ガンクラスター】
何本もの砲口が束ねられた「ガンクラスター」。マシンガン、レーザー砲、火炎放射器などで近づいてきた敵を攻撃するためのショートレンジの武器

 肩部分はカバーを跳ね上げることで12連発のロケット弾ランチャーがあらわになる。荷電粒子砲で敵をなぎ払いつつロケットで面の攻撃を行い、前進し近づいた敵はマシンガンや火炎放射で、というのがトマホークの戦い方だろう。右肩上部はさらに6発の対空ミサイルを装備している。他に対空装備としてはセンサーの上部に機銃を装備している。

【ロケット弾ランチャー】
ハッチを開いて使用する12連装のロケットランチャー
【対空ミサイル】
6発搭載の対空ミサイル。肩部の兵装はオプションであり、様々な武器を取り付け可能
【対空機銃】
機銃も角度を変えることが可能

 フィギュアは両手の大型の荷電粒子砲がフレキシブルに可動、ミサイルハッチは肩部のものだけでなく、対空ミサイルも開閉する。頭部の機銃も角度が変えられる。足部分は付け根から下に引っ張ることで可動域が広がる。関節は固めで、基部に金属パーツも使用しているのでしっかりと自重を支えてくれる。派手なアクションポーズを取らせられるほど可動域は広くはないが、可動カ所は多く、特に足首は柔軟で調整することでしっかりと接地する。

 質感という所では全体は成型色の部分塗装だが、細かいディテールがミリタリーモデルのような兵器としてのリアルな雰囲気をもたらしている。クリアパーツも効果的に使われていて、センサー、左肩のサーチライト、そして膝部分のライトなど、クリアパーツが各部の機能をきちんと想像させてくれる。

【可動】
足の付け根の軸を下げることで可動域が増やせる
両手はかなりフレキシブルに動かせるが、トマホークは正直派手なアクションポーズより、火器は常に前面に向け、前進するというイメージが強い
【デザイン】
ライトやセンサーにはクリアパーツが使われ質感を高めている
背面。スラスターや放熱ダクトが集中している。陸戦兵器であるトマホークだが、宇宙での戦闘ももちろん考えられている。しかしバルキリーや敵のリガードに較べると機動性は大きく劣る

 また各部のマーキングも注目ポイント「トマホーク」ではシールが用意されている。水転写のデカールではなく貼りやすいシールにしたのは模型初心者向けを意識したものだろう。部隊マークやナンバーなど指示されたシール以外の予備のものがたくさん用意されており、「自分だけの機体」を作ることができるようになっている。

 またいくつか大きさの違う「リン・ミンメイ」のイラストシールが用意されているのも面白い。宇宙での逃亡生活を強いられたマクロスでは、船内で生まれたアイドルミンメイは兵士の心の支えでもあった。戦闘機のノーズアートなど機体にミンメイや女の子のイラストを望んだ兵士も少なくなかっただろう。今回はシールの指示がなかった右足に貼ってみた。マーキングでさらにミリタリーテイストが深まるのも楽しいところだ。

【マーキング】
各部マーキングはシールを使用。シールは耐久性の高い材質なのが嬉しい
右足にミンメイのイラストを配置してみた

 「トマホーク」は大きさもとても魅力的だ。全長約200mm、重量約382gで、無骨なスタイルだけに手に持つとかなりの満足感がある。リアルな兵器の雰囲気を持ったディテールと、各部にクリック関節を使用した操作感など「良いアイテムを手に入れたな」という実感がこみ上げる。

 正直デストロイドトマホークというモチーフはヒロイックなポーズは似合わないし、商品の可動域もそこまで広くはないのだが、荷電粒子砲の砲口を前面に向け、前進していく姿、足を踏ん張りロケットや砲を発射する姿を想像するだけで楽しい。ディスプレイして眺めても楽しいフィギュアだ。

 「トマホーク」はさらにパーツ分割で兵器としての説得力を増すギミックを持っている。次ページではギミック紹介と、筆者が持っている他のマクロス商品とも組み合わせて遊んでみたい。