レビュー

アルカディア「1/60 重装砲撃型 トマホーク」レビュー

生産性や戦局に応じたカスタマイズを想像させるギミック

 デストロイドシリーズの設定上の大きな特徴として「他のデストロイドと下半身のユニットが共通」というものがある。トマホークは、対空兵器のディフェンダー、ミサイルポッドを両腕に装備した防空用のファランクスと共有のユニットが使われており、コストの低減が図られている。フィギュアでも下半身と上半身は分離を前提としたギミックが仕込まれている。

【下半身を分離】
他のデストロイドと共有の下半身。放映当時タカトクトイスからは上半身を交換できるアイテムも発売された

 またトマホークは上半身もコクピットブロックと、様々な火器を搭載したウエポンユニットが分離できる設計となっている。正直筆者はこの要素をこれまで知らなかったのでとても感心したギミックだ。複合武装をユニット化することでメンテナンスや弾丸の補充は非常にしやすいのではないだろうか。

 下半身を共用化するというところにも繋がるが、この兵装ユニットそのものを交換することで他の局面に対応する可能性もあったのではないだろうか。接近戦に特化した装備や、レドームなど観測機器に特化した偵察型のトマホークなどもプランとしてはあったのかもしれない。劇中でこのユニットギミックは活かされなかったが、想像を刺激させられるシステムである。

【武装ユニットを分離】
武装がセットになった部分をまるまる取り外せる。整備のためや換装を目的としたギミックなのだろうか?

 デストロイドはメカデザイナーの宮武一貴氏がデザインしたものだという。「超時空要塞マクロス」が放映されたのは1982年、「機動戦士ガンダム」から始まる"リアルロボット路線"の中で、「砲撃型」、「対空型」といった機能に特化した姿を持つデストロイドは画期的な存在だった。ガンダムのプラモデルブームにより様々なモデラーやデザイナーが「新しいリアルなロボット」を考えている時代、デストロイドは強い刺激を与える「リアルロボット」であったことを、今回改めて実感した。

【ディフェンダー】
こちらはBANDAI SPIRITSの「HIMETAL R ディフェンダー」。下半身のデザインが共用なのがわかる

フィギュアや他のマクロスアイテムと組み合わせることで広がる遊びの幅

 「トマホーク」には同スケールのパイロットフィギュアの他に、整備兵のフィギュアが2体付属している。書類を手にした整備兵と、誘導灯を手にした整備兵だ。空母での戦闘機の発着など、現用兵器での発進シーンやメンテナンスシーンをロボットに置き換えた場面はリアルロボットでは欠かせない。デストロイドではこの整備兵を置くことで楽しい撮影ができる。

【付属フィギュア】
パイロットと、整備員2名のフィギュアが付属

 本来トマホークは2人乗りの機体だが、フィギュアでは前面のコクピットが再現されている。ここに整備兵のフィギュアを置くと発進前の打ち合わせのシーンが演出可能だ。戦場の状態や、マシンの調子などを話し合っているのだろうか?

 また誘導灯を持ったフィギュアはフォーカスによる「被写界深度」の演出が楽しい。誘導員にフォーカス色代をぼかしたり、逆にすることでそれぞれの視点を表現できるのではないだろうか?

【フィギュアを配置】
パイロットと、整備員2名のフィギュアが付属
コクピットにフィギュアを配置
整備員を置くとドラマが生まれる
フォーカスを変えると印象も変わる

 さらに他のアイテムとも撮影してみよう。筆者はBANDAI SPIRITSの「HI-METAL R」シリーズでトマホークの登場を待っていたが、まだ実現していない。「HI-METAL R」シリーズのデストロイドではディフェンダーを持っているので、撮影してみた。

 ディフェンダーは対空能力に特化したデストロイドだ。頭頂部にレーダー、両腕に強力な対空砲を装備したその姿はドイツの現用兵器「ゲパルト自走対空砲」を思わせる。「トマホーク」と並べるとはっきりするのがサイズ差。

 「HI-METAL R」は約1/100スケールなのに対し、「トマホーク」は1/60なので横に並べるとそのサイズ差がはっきりする。なのでディフェンダーを後ろに配置してみた。異なる部隊が戦場で展開している雰囲気になっただろうか?

 もう1つこちらもBANDAI SPIRITSの「DX超合金 VF-1J バルキリー」とも並べてみた。バルキリーは約1/48スケールなのでこちらは大きすぎる。手前に配置しぼかしてみた。サイズが違うメカをどう並べて写真に収めるかも楽しい遊びだ。

【他のアイテムと絡める】
「トマホーク」は1/60、「HIMETAL R ディフェンダー」は1/100なので大きさがかなり違う
構図とフォーカスでサイズ差もぼかす
こちらは1/48の「DX超合金 VF-1J バルキリー」
前方に配置してぼかしてみた

 アルカディアの「1/60 MBR-04-Mk.VI 重装砲撃型 トマホーク」はとても満足度の高い商品だった。やはり手に持ったときのボリュームと、ディテール表現がとても良い。そしてデザインはある意味"主役メカ"を名乗れるくらいのカッコ良さがあるのが確認できた。兵器としての独特の説得力が感じられると思った。

 後に版権問題に広がってしまったが、デストロイドはアメリカの「バトルテック」の初期に広く海外に認知された。その後二足歩行で武器を満載したロボットが地上戦を繰り広げるというイメージは「メックウォーリアー」をはじめとした海外のゲームで大きく進化していった。その"元祖"ともいえるデストロイドはやはり魅力あるモチーフであり、その魅力が実感できる本商品は「マクロス」に詳しくない人も、このデザインが気になった人は手にして欲しい。

 活躍を想像してポーズを付けても良いし、シールによるカスタマイズで自分の機体を追及しても良い。本商品をきっかけに1/60のスケールで展開しているアルカディアの「マクロス」シリーズをコレクションするのも良いだろう。ぜひチェックして欲しい。

【デザインの魅力】
無骨な武器の塊という雰囲気が魅力。古さを感じさせないミリタリーテイストたっぷりなデザインだ