レビュー
「Mr.カラー ベルベットカラー」レビュー
簡単なエアブラシ塗装で滑らかな布の光沢を表現できる新感覚塗料。30MMの「マルチクロス」を鮮やかなマントに仕上げる
2025年1月22日 00:00
- 【Mr.カラー ベルベットカラー】
- 発売元:GSIクレオス
- 価格:660円
- 発売日:2024年12月13日頃
- 【30MM 1/144 オプションパーツセット14 (マルチクロス)】
- 発売元:BANDAI SPIRITS
- 価格:1,078円
- 発売日:2023年12月9日
塗装による表現方法はこれまでに様々なものが開発されてきました。それはユーザーが開発した塗装技法だけではなく、塗料メーカーの開発する塗料においてもその進化は止まりません。そして2024年12月、GSIクレオスより新たなる塗装表現を可能とする塗料が発売となりました。本稿では、塗装するだけでベルベットの輝きを表現することができる塗料「Mr.カラー ベルベットカラー」をレビューします。
ベルベットのような輝きを発揮する新感覚塗料
本記事にて紹介する「Mr.カラー ベルベットカラー」はGSIクレオスより発売された溶剤系アクリル樹脂塗料(通称:ラッカー塗料)です。エアブラシで塗装するだけでベルベットのような、光沢のある布の質感が表現可能な塗料となっています。ベルベットの色調を表現するには黒下地が基本となりますが他の下地色によっても色調が変化します。
様々な下地に応じて発色が変化する塗料シリーズ
本塗料はメーカーの説明にもあるとおり、下地色によって発色が異なる塗料となっています。今回、様々な下地色を使用して発色の違いを確認してみました。まずは白下地、グレー下地、黒下地における発色の違いを見ていきます。
画像のとおり、各色全て下地色の明るさによって色味が異なっています。白下地の際は明るく、黒下地の際は暗く見えます。また、乾燥後の塗膜は、サーフェイサー等のつや消し塗料を塗布したときと同等の粗さに仕上がっています。塗膜表面は粗く仕上がっていますが、塗料中に含まれる金属粒子によって見る角度で異なる輝きを見せてくれます。
次に下地色を赤色、青色、黄色とした場合の発色を見ていきます。画像では左から白下地、赤下地、青下地、黄下地の順で並べています。
このとおり、下地色によって発色が異なるため下地色を変更することで仕上がりの色を若干変更させることが可能です。下地色をベルベットカラーと同じ色を選択することでよりビビットな発色に、下地色をベルベットカラーの補色とすればより暗色寄りに発色しました。
最後に下地塗装の光沢有無にて仕上がりに差が発生するか検証してみます。一方は下地色にサーフェイサーを塗布した状態の無光沢グレーの下地を用意し、一方は光沢ブラックと光沢ホワイトを調色し、光沢グレーの下地を準備しました。結論から言うと、両者の仕上がりに差異はなく、下地の光沢有無は仕上がりに影響しないことがわかります。
塗装時は膜厚に注意
メーカーホームページにも記載がありますが一度に厚く塗ってしまうと塗膜にクラックが入ってしまうことがあります。筆者の感覚では、ウェットな塗膜を形成してしまうとクラックが発生するように感じました。
本塗料を塗装する際はメッキ塗料を塗装するときと同様に薄くミストを吹き付けるように塗装する必要があると感じました。
ベルベット調の質感を再現するために布再現パーツへの塗装を実施
ここからは実際にキットを塗装して「ベルベットカラー」の実力を検証してみます。今回の作例ではBANDAI SPIRITSから発売中の「30MM 1/144 オプションパーツセット14 (マルチクロス)」を使用し、「ベルベットカラー」各色にて塗装を行ないました。各色の下地は、ベルベットの色調を再現する基本とされる黒下地を採用しました。
まずは「ベルベットレッド」を使用した作例を見てみましょう。「ベルベットレッド」は凹凸に合わせメタリックレッドから、ブラックに色味が変化します。見る角度によって色が変わりますが、平置きした際と「30MM 1/144 EXM-H15A アチェルビー (TYPE-A)」に装着した際でその差が顕著に出ています。
次に「ベルベットブルー」を使用した作例を見てみます。「ベルベットブルー」は寒色であることから陰影も控えめとなり、落ち着いた印象になります。青いボディの「30MM 1/144 EXM-H15B アチェルビー (TYPE-B)」に装着してみると、よく馴染みながらも質感の違いによるアクセントを加えてくれます。
最後に「ベルベットグリーン」を使用した作例を見てみます。広い面を持ったパーツを塗布することでより滑らかな布地のような表現ができました。「30MM 1/144 EXM-H15E アチェルビー(TYPE-E)」に装着してみましたが、“布感”は3色で最も強く出ているように感じました。
今回使用したベルベットカラーはこれまでのメタリック系塗料では表現できなかった新しい布地表現を可能にする塗料でした。塗装サンプルによる実験により、下地色における発色の違いが顕著に表れることがわかったので下地色の塗分けにより発色の違いを表現しても見ても面白いと思います。
今回はマントの塗装にベルベットカラーを使用しましたが、狙い通り布の質感を表現することができました。広い面積を一気に塗った際にもしっかりと布らしさを表現してくれるので、膜厚にさえ気をつければとても扱いやすい塗料だと感じました。マントの他にも、カーモデルの内装等にも使用しても面白いのではないかと思いました。
(C)2019 GSI Creos Hobby Dept.
(C)BANDAI SPIRITS 2019