レビュー

「Mr.カラー ベルベットカラー」レビュー

簡単なエアブラシ塗装で滑らかな布の光沢を表現できる新感覚塗料。30MMの「マルチクロス」を鮮やかなマントに仕上げる

【Mr.カラー ベルベットカラー】

発売元:GSIクレオス

価格:660円

発売日:2024年12月13日頃

【30MM 1/144 オプションパーツセット14 (マルチクロス)】

発売元:BANDAI SPIRITS

価格:1,078円

発売日:2023年12月9日

今回は「Mr.カラー ベルベットカラー」で「30MM 1/144 オプションパーツセット14 (マルチクロス)」をエアブラシで塗装。滑らかな布のような高級感のある輝きを放ちます。

 塗装による表現方法はこれまでに様々なものが開発されてきました。それはユーザーが開発した塗装技法だけではなく、塗料メーカーの開発する塗料においてもその進化は止まりません。そして2024年12月、GSIクレオスより新たなる塗装表現を可能とする塗料が発売となりました。本稿では、塗装するだけでベルベットの輝きを表現することができる塗料「Mr.カラー ベルベットカラー」をレビューします。

ベルベットカラーにて塗装された表面はこれまでのメタリック系塗料では再現できなかったベルベット調の輝きを再現できます。

ベルベットのような輝きを発揮する新感覚塗料

 本記事にて紹介する「Mr.カラー ベルベットカラー」はGSIクレオスより発売された溶剤系アクリル樹脂塗料(通称:ラッカー塗料)です。エアブラシで塗装するだけでベルベットのような、光沢のある布の質感が表現可能な塗料となっています。ベルベットの色調を表現するには黒下地が基本となりますが他の下地色によっても色調が変化します。

今回発売された「Mr.カラー ベルベットカラー」。レッド、ブルー、グリーンの3色が展開されています。

様々な下地に応じて発色が変化する塗料シリーズ

 本塗料はメーカーの説明にもあるとおり、下地色によって発色が異なる塗料となっています。今回、様々な下地色を使用して発色の違いを確認してみました。まずは白下地、グレー下地、黒下地における発色の違いを見ていきます。

「ベルベットレッド」の発色変化。下地色は左から白、グレー、黒
「ベルベットブルー」の発色変化。下地色は左から白、グレー、黒
「ベルベットグリーン」の発色変化。下地色は左から白、グレー、黒

 画像のとおり、各色全て下地色の明るさによって色味が異なっています。白下地の際は明るく、黒下地の際は暗く見えます。また、乾燥後の塗膜は、サーフェイサー等のつや消し塗料を塗布したときと同等の粗さに仕上がっています。塗膜表面は粗く仕上がっていますが、塗料中に含まれる金属粒子によって見る角度で異なる輝きを見せてくれます。

 次に下地色を赤色、青色、黄色とした場合の発色を見ていきます。画像では左から白下地、赤下地、青下地、黄下地の順で並べています。

「ベルベットレッド」の発色変化。下地色は左から白、赤、青、黄
「ベルベットブルー」の発色変化。下地色は左から白、赤、青、黄
「ベルベットグリーン」の発色変化。下地色は左から白、赤、青、黄

 このとおり、下地色によって発色が異なるため下地色を変更することで仕上がりの色を若干変更させることが可能です。下地色をベルベットカラーと同じ色を選択することでよりビビットな発色に、下地色をベルベットカラーの補色とすればより暗色寄りに発色しました。

「ベルベットレッド」の白下地と赤下地。赤下地の方がより彩度が高く感じます。
「ベルベットブルー」の白下地と青下地。「ベルベットレッド」と同様に青下地の方がより彩度が高く感じます。
「ベルベットグリーン」の黒下地と赤下地。下地色に補色を使用することで黒下地と同等の明度に発色させることが可能です。

 最後に下地塗装の光沢有無にて仕上がりに差が発生するか検証してみます。一方は下地色にサーフェイサーを塗布した状態の無光沢グレーの下地を用意し、一方は光沢ブラックと光沢ホワイトを調色し、光沢グレーの下地を準備しました。結論から言うと、両者の仕上がりに差異はなく、下地の光沢有無は仕上がりに影響しないことがわかります。

無光沢下地(写真左側)と光沢下地(写真右側)に塗布した「ベルベットブルー」。仕上がりには特段差異は見られないことがわかります。

塗装時は膜厚に注意

 メーカーホームページにも記載がありますが一度に厚く塗ってしまうと塗膜にクラックが入ってしまうことがあります。筆者の感覚では、ウェットな塗膜を形成してしまうとクラックが発生するように感じました。

クラックを発生させた塗膜。光沢面を出す塗装方法では塗膜全体にクラックが発生してしまいます。

 本塗料を塗装する際はメッキ塗料を塗装するときと同様に薄くミストを吹き付けるように塗装する必要があると感じました。

ベルベット調の質感を再現するために布再現パーツへの塗装を実施

 ここからは実際にキットを塗装して「ベルベットカラー」の実力を検証してみます。今回の作例ではBANDAI SPIRITSから発売中の「30MM 1/144 オプションパーツセット14 (マルチクロス)」を使用し、「ベルベットカラー」各色にて塗装を行ないました。各色の下地は、ベルベットの色調を再現する基本とされる黒下地を採用しました。

塗装前の「30MM 1/144 オプションパーツセット14 (マルチクロス)」。ニュートラルグレーの成型色にて成型されています。

 まずは「ベルベットレッド」を使用した作例を見てみましょう。「ベルベットレッド」は凹凸に合わせメタリックレッドから、ブラックに色味が変化します。見る角度によって色が変わりますが、平置きした際と「30MM 1/144 EXM-H15A アチェルビー (TYPE-A)」に装着した際でその差が顕著に出ています。

「ベルベットレッド」にて塗装したパーツ状態での「30MM 1/144 オプションパーツセット14 (マルチクロス)」。メタリックレッドから、ブラックに色味が変化します。
「ベルベットレッド」を塗布した「30MM 1/144 オプションパーツセット14 (マルチクロス)」。造形の凹凸に合わせて色味が変化して見えます。
同じ色でもパーツ同士の重なりで違った色を見せてくれます。

 次に「ベルベットブルー」を使用した作例を見てみます。「ベルベットブルー」は寒色であることから陰影も控えめとなり、落ち着いた印象になります。青いボディの「30MM 1/144 EXM-H15B アチェルビー (TYPE-B)」に装着してみると、よく馴染みながらも質感の違いによるアクセントを加えてくれます。

「ベルベットブルー」にて塗装したパーツ状態での「30MM 1/144 オプションパーツセット14 (マルチクロス)」。メタリックブルーから、ブラックに色味が変化します。
「ベルベットブルー」を塗布した「30MM 1/144 オプションパーツセット14 (マルチクロス)」。寒色ということもあり、落ち着いた印象に仕上がりました。
「ベルベットブルー」は陰影も控えめとなっています。

 最後に「ベルベットグリーン」を使用した作例を見てみます。広い面を持ったパーツを塗布することでより滑らかな布地のような表現ができました。「30MM 1/144 EXM-H15E アチェルビー(TYPE-E)」に装着してみましたが、“布感”は3色で最も強く出ているように感じました。

「ベルベットグリーン」にて塗装したパーツ状態での「30MM 1/144 オプションパーツセット14 (マルチクロス)」。メタリックグリーンから、ブラックに色味が変化します。
「ベルベットグリーン」を塗布した「30MM 1/144 オプションパーツセット14 (マルチクロス)」。「ベルベットレッド」同様に陰影が見えます。
ベルベットカラーで広い面を塗装することにより、滑らかな布地のような表現ができました。
最後に今回作成した作例を並べてみました。ベルベットカラーはプラスチックの成型では再現できない質感を表現できます。

 今回使用したベルベットカラーはこれまでのメタリック系塗料では表現できなかった新しい布地表現を可能にする塗料でした。塗装サンプルによる実験により、下地色における発色の違いが顕著に表れることがわかったので下地色の塗分けにより発色の違いを表現しても見ても面白いと思います。

 今回はマントの塗装にベルベットカラーを使用しましたが、狙い通り布の質感を表現することができました。広い面積を一気に塗った際にもしっかりと布らしさを表現してくれるので、膜厚にさえ気をつければとても扱いやすい塗料だと感じました。マントの他にも、カーモデルの内装等にも使用しても面白いのではないかと思いました。