レビュー

アオシマ、「PLAfig. ゴジラ (2023)」テストショットレビュー

“チッピング”で浮かび上がるディテールで怪獣らしい皮膚を表現

【PLAfig. ゴジラ (2023)】
2025年9月発売予定
価格:7,260円
全高:約130mm
素材:PS
原型制作:蟹蟲修造
※今回のものはテストショットで、製品のものと異なります

 アオシマは9月30日にプラモデル「PLAfig. ゴジラ (2023)」を発売する。価格は7,260円。本商品は“圧倒的な造形プラモデル”を目指すことをコンセプトに立ち上がった新ブランド「PLAfig.」の第一弾。映画「ゴジラ-1.0」に登場するゴジラを、造形師の蟹蟲修造氏が造形した原型をプラモデル化している。

 今回発売に先駆け、「テストショット」を提供していただいた。テストショットは商品への仕様を詰めるバージョンである。これを元に細部の調整が行われる。今回、このテストショットを組み立て、彩色してみた。

今回は発売に先駆けてストショットを組み立てていきたい。製品版はここからさらに調整が加えられる

 本稿ではテストショット組み立てを通じて、「PLAfig. ゴジラ (2023)」の魅力を紹介したい。塗装に関してはスプレー塗装に「チッピング」という汚し塗装をしただけだが、かなりかっこよく仕上げられたので、この塗装方法を紹介していきたい。「PLAfig. ゴジラ (2023)」の優れたディテール表現が、簡単塗装で大迫力に仕上がる。オススメの塗装方法だ。なお本商品はインタビューも行っているので、合わせて読んでほしい。

・PLAfig. ゴジラ (2023)オンライン注文ページ

ディテールの細かさが印象的なパーツ

 「PLAfig. ゴジラ (2023)」はロボットや乗り物のプラモデルと比べ、全体的なパーツ数は多くない。足や胴体、頭部などでも支柱となるパーツに外皮のパーツを貼り付けていくイメージで組み立てていくため、1つ1つのパーツが大きめになっている。

 一方、背びれパーツは細かく30以上のパーツで構成されている。「PLAfig. ゴジラ (2023)」ではアオシマオンラインショップ限定でクリアパーツの背びれが付属している。今回はこちらのパーツを使用してみた。

【ランナー】
ランナーAと、Bは背鰭パーツ。今回はアオシマオンラインショップ限定のクリア素材の背鰭を使用した
ランナーCとD
ランナーJパーツ1つ1つがかなり大きめだ

 本商品の最大の特徴はそのディテール表現の緻密さである。ゴジラならではの細かく筋の入った体表、下半身部分のすさまじいボリューム、長い尻尾に、独特の形状の背びれ……。蟹蟲修造氏の原型を精密に表現したその情報量はすさまじい。これだけ繊細な表現をプラモデルパーツとして生産できる金型技術と、成型技術に驚かされる。それでは組み立てていこう。

 なお、今回紹介したパーツ形状、成型色はテストショットのものであり、製品版にはここからさらに調整が加えられるというところは今一度強調しておきたい。

【ディテール】
パーツのアップ。ディテール表現が大きな魅力だ
こちらが通常版の成型色の背鰭パーツ

フレームに体表を貼り付けていく組み立て

 ここから「PLAfig. ゴジラ (2023)」のテストショットを組み立てていく。本商品は支柱となるパーツに体表パーツを貼り付けていく形で組み立てる。接着剤は必須で、通常の接着剤と、流し込み用の両方を場所で使い分けるのがいいだろう。

 支柱パーツに体表パーツをつけていくとしっかり支柱を覆い隠しパーツがピタリとはまっていく。貼り付けるパーツには順番を考えながらつけていく箇所もあるので説明書でしっかり確認してから組み立てていきたいところだ。胴体部分はCとDランナー。右足はHランナー、左足はGランナーとランナーで組み立てる部位が決まっており、パーツも大きいためとても組み立てやすい。

【胴体の組み立て】
フレームに体表パーツを組み付けていく
フレームは覆い隠され見えなくなる
背鰭パーツをはめ込むための穴

 頭部は比較的パーツ分割が多い。ここでも口の中の牙の繊細な表現に驚かされる。ゴジラの目はかなり奥まったところにあるため、頭頂部のパーツはあえて組み立てずにいた。こうすることで目の部分はかなり塗りやすくなる。

 尻尾はゴジラならではの重要なパーツだ。「ゴジラ (2023)」は前傾姿勢の体のバランスをとるようにかなり長く、大きなものとなっている。胴体や足同様支柱に体表パーツを取り付けて組み立てる形となっている。

【各部の組み立て】
足もフレームを中心に体表パーツをつけていく
大きなゴジラの足
腕の組み立てはシンプルだ
頭部の分割はパーツ構成が細かい
目の塗装のため、あえて頭頂パーツは組み付けない

 また説明書では胴体に手足、頭部、尻尾を取り付けてから背びれをつける指示があるが、今回は塗装を行うため、手足や頭部はあえて組み立てずに背びれの取り付けを行った。この背びれの取り付けこそが「PLAfig. ゴジラ (2023)」の組み立ての山場といえる。

 背びれの取り付けは一見複雑に見えるが、各パーツの位置は厳密に決められており、違う穴にはめ込もうとしたり、前後を間違うときちんとはまらないように凹凸が設定されている。1つ1つ確認をしていけばきちんと設計通りの位置に背びれを取り付けられるはずだ。これで各部の組み立ては完了。塗装を行うため、あえて全体の組み立ては行わず、進めていこう。

【尻尾、背鰭の組み立て】
尻尾も細かく分割されている
組み立ててから連結させていく
背鰭パーツは1つ1つが場所が設定されている
かなり複雑な形状だ

“チッピング”で質感が大きく向上!

 ここからは「PLAfig. ゴジラ (2023)」のテストショットの塗装を行う。あらかじめアオシマの担当者からアドバイスをいただいていたので、そのアドバイスに従って塗装を行っていった。塗装のため、部位ごとに分かれた形で各部の塗装を行っていった。

 最初はスプレー塗装である。つや消しの黒を全部に吹きかけた。「PLAfig. ゴジラ (2023)」には繊細なモールドがされているが、スプレーでもこのモールドはきちんと残る。ただ、クリアパーツの背びれはスプレーによって完全に黒一色になってしまう。劇中の放射能火炎を発射するときの発光させた表現をする場合は、背びれの組み立ては行わずスプレーし、後で彩色を行った背びれを組み付けるのもいいだろう。

【スプレー塗装】
各部パーツを"猫の手"で挟み込み、スプレー塗装で黒に染める
クリアパーツの背鰭は黒一色で染まった
塗装でもディテールは全く潰れない
基本塗装はタミヤスプレーのマットブラックを使用

 背びれにも細かいモールドがあるが、こちらもスプレーでモールドが埋まるようなことはなく、しっかり黒く塗料が乗る。こだわる人はサーフェイサーなどを使うと思うが、直接黒のスプレーを吹きかけてもしっかり塗装できると感じた。

 黒一色になったゴジラの爪と歯の部分を白で塗っていく。このとき、口の中も全部白で塗装した。こうすれば口の中を塗る際の下地にもなる。また、あえて頭頂部のパーツをつけない状態で目の部分も白で塗装をした。この口と目の塗料が乾いた後は、黒目部分と、口の周りの外側を黒で塗っていく。口の中は赤に少しだけ黒を混ぜた色で塗っていった。

【白で塗る】
手足の爪、口の中、目を白で塗る。白や、口の中の赤、チッピング用の銀などはタミヤのアクリルカラーを筆塗りで使用した

 この状態ではゴジラの体表は黒一色なのだが、ディテールを浮き立たせる「チッピング」という手法で、びっくりするほど質感が向上した。このチッピングは「ドライブラシ」と呼ばれる塗装テクニックの1つだ。

 ドライブラシは筆に塗料をつけた後、ペーパータオルなどに筆をこすりつけて塗料を拭き取り、色が出ないくらいまで塗料を拭き取ってから、表面に筆をこすりつけるとディテールの出っ張っている部分にだけ塗料がくっつくことで汚れや、メカの塗料がはげたような表現ができる。

 チッピングは筆ではなく、スポンジで行うことで一度に広い範囲に汚し塗装を行うことができる。ガイアノーツから棒の先にスポンジがついた「スタンピングスポンジ」というツールが販売されており、今回はこれを使用した。

 チッピングを行うとゴジラの体表がはっきりと浮き出る。特に背びれのディテールはスポンジを押しつけてスタンプのように銀色がついたときに質感が大きく変わった。体表も黒一色だったところが、銀色が押しつけられたことで立体感が生まれた。背骨周辺の隆起も薄く銀が乗ることで金属のような質感に変化した。

 最初は加減がわからなかったので、体表が銀色になるくらい塗ってしまったので、さらに黒でチッピングを行った。銀を残すように意識することで、さらに立体感が向上したと思う。

【チッピング】
ガイアノーツの「スタンピングスポンジ」。キッチン用のスポンジを小さく切っても使用できるが、棒がついており、こちらを使うと非常に簡単にチッピングができる
スポンジに塗料をつけてからキッチンペーパーに押しつけ塗料をカスカスになるまで減らした上で、プラモデルの体表に押しつけていく
右がチッピング後。左と比べると大きく質感が向上しているのがわかる
過度に銀色を塗ってしまったので、改めて黒でさらにチッピングを行った

 ここからさらに「ウォッシング」による汚し塗装を入れた。「Mr.ウェザリングカラーグランドブラウン」というそのままで土汚れをイメージした汚し塗装ができる塗料を使い、これを専用薄め液で薄めた上で、各部に塗り荒く拭き取るという形で汚し塗装を施していった。歯の部分や爪はあえて拭き取らないことで怪獣らしい汚れた色が演出できた。

【ウォッシング】
薄めた「Mr.ウェザリングカラーグランドブラウン」で荒く筆塗り、拭き取ることで土汚れがついた感じに
白い爪が茶色で汚れた感じに

 チッピングによる凹凸の浮き出た上で、ウォッシングにより砂埃を全身にかぶったような質感が生まれ、非常にゴジラらしい体表表現ができた。正直全身に適度にスポンジを押し当て、そこから薄めたウェザリングカラーを荒く塗り、拭き取るだけでここまでカッコイイ、怪獣らしい体表になる、というのは驚きだった。もちろんこだわればここから光源の当たり方や、ダメージ表現、地上を歩くことでこすれる部位など、塗装で色々な表現ができると思うが、今回のように簡単な工程でも、しっかり質感が向上するのが確認できた。まずは全身を見てほしい。

【完成】
各部を組み付けて完成。「ゴジラ (2023)」ならではの迫力のある姿だ

ゴジラならではの体表が塗装によって表現できる楽しさ

 ここからは塗装した「PLAfig. ゴジラ (2023)」テストショットのディテールを見ていこう。やはりチェックしてほしいのはその「体表」だ。黒い基本色に銀色がかすれた感じでディテールが浮き立つ。さらにしっかり見ていくと茶色の汚れが入っているのがわかる。

 そして「表情」だ。口を大きく開き、前方を威嚇するように前をにらみつけるゴジラ。足を開き力を込め、手のかぎ爪を前に向けている。そして曲線を描く尻尾。前傾姿勢のゴジラのバランスをとるような大きく太い尻尾のバランスは「ゴジラ (2023)」ならではだろう。

【ディテール】
暴力的な力強さを感じさせる姿だ
大きく口を開け、力を込めた目線、ゴジラの恐ろしさがしっかり伝わる
正面からの顔は、映画でも印象的なシーンだ
ゴジラ (2023)を象徴するといえる背鰭

 背鰭も注目ポイントだ。ゴジラは特殊な形状をした背鰭が大きな特徴だが、ゴジラ (2023)の背鰭は特に大きい。チッピングにより中央部分や縁が銀色に浮き上がっており、独特の質感が生まれている。

 黒の下地に銀でディテールを浮き上がらせ、さらに茶色の汚し塗装で生まれるゴジラの体表は、ランダムで濃淡が生まれることでチェックをすればするほど楽しくなる。簡単な塗装でこの質感が生まれるのは本当に驚きだ。しかしその質感が生まれたのは「PLAfig. ゴジラ (2023)」の細かく繊細なディテール表現あってのこそだ。

体表のディテール、土汚れ、簡単塗装で迫力のディテールだ
尻尾の表現もゴジラらしさだ

 今回の「PLAfig. ゴジラ (2023)」はテストショットのためか、首周辺のなどの分割線が目立った。正式版ではこういった所は改修されると思われる。しかしこのテストショット時点ですでにかなり高い完成度であることも確認してもらえただろう。非常に魅力的なプラモデルであり、簡単な塗装でその魅力が大きく増すことがわかるだろう。製品版ではさらにクオリティがアップするということで、期待したいところだ。

 今回、アオシマの担当者のアドバイスで塗装してみたがチッピングで質感が大きく向上したことがうれしかった。ゴジラの塗装として、簡単な塗装でしっかりゴジラらしい表現になってくれる。筆者のように「怪獣の塗装は初めて」という人も、ぜひ製品版を手にして塗装もしてほしい。