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アオシマ「PLAfig. ゴジラ(2023)」開発者インタビュー

原型師の造形技術をプラモデルへと昇華、銀座で暴れる"動き"を表現

【PLAfig. ゴジラ(2023)】
9月発売予定
価格:7,260円

 アオシマはプラモデルの新シリーズ「PLAfig.(プラフィギュア)」の第1弾「ゴジラ(2023)」を9月に発売する。「PLAfig.」は、60年超にも及ぶアオシマのプラモデル技術を結集し、圧倒的な造形プラモデルを目指すことをコンセプトに立ち上がった新規のシリーズ。「PLAfig. ゴジラ(2023)」は2023年公開の劇場用映画『ゴジラ-1.0』に登場するゴジラ(通称マイゴジ)だ。

「PLAfig. ゴジラ(2023)」。9月発売予定。価格は7,260円。原型制作は蟹蟲修造氏

 5月14日から18日にかけて行われた「第63回 静岡ホビーショー」では、その彩色見本やランナーの一部が出展。さらに同シリーズで企画中の新作として、『ゴジラ2000ミレニアム』の「ゴジラ(1999)」と『ゴジラvsデストロイア』の「デストロイア 完全体」の2つの試作原型が披露され、本シリーズにおけるアオシマの“本気度”がアピールされた。

 この展示が行われた静岡ホビーショーの会場で、アオシマで「PLAfig.」の企画担当者にインタビューをする機会を得たので、シリーズの企画経緯やコンセプト、そして今後の展望などについて聞いてみた。

アオシマ マーケティング本部 企画部 キャラクター企画チーム 山之内拓也氏。2023年にアオシマ入社。約半年間金型設計部門に所属し、その後現在の企画部へと異動、「1/450 伝説巨神イデオン アニメカラーver.」を手がけた後、「PLAfig. ゴジラ(2023)」を一から企画し、「ACKS 1/144 超獣機神ダンクーガ」などと並行して開発を手がけている

造形にこだわったプラモデルを、入手しやすいコンパクトなサイズで商品化するアオシマの新たなシリーズ

――まずはこの「PLAfig.」シリーズで「ゴジラ」を企画した経緯をお聞かせください。

山之内氏:私自身が以前から“造形にこだわったプラモデル”を作りたいと考えていて、企画部へ異動をした直後に『ゴジラ-1.0』が公開されて大ヒットしていたんです。会社からも新規の企画が求められていたので、社内での承認後すぐに版元の東宝さんにライセンスの申請を出したところ快諾いただいて、そこから本格的に開発が始まりました。

――東宝さんのライセンスは問題なく下りたんでしょうか。

山之内氏:はい、企画自体はすんなり通りました。

――企画から設計まではどのような手順で進められるのでしょう。

山之内氏:担当者や企画内容によって違うんですが、例えばこの「ゴジラ(2023)」を例に挙げると、最初に原形師さんに原型を作ってもらって、できあがった原型を可能な限り損なわないよう、プラモデルとしての内部構造を設計していくという手順です。それができたら金型を作って、完成したテストショットをさらに細かく調整していくという流れで、現在はその段階まで来ています。

――山之内さんのお仕事としては、原型をプラモデルに落とし込むのが主な仕事なんですね。

山之内氏:そうですね、メインの仕事はそこですが、今回はシリーズの企画自体を私が立ち上げたので、どの原型師さんにお願いするとか、社内での設計等の担当をどう割り振るかといったところも全て私が決めています。

――この「ゴジラ(2023)」の原型制作は蟹蟲修造さんが担当されているそうですが、起用の理由を教えてください。

山之内氏:蟹蟲さんは動物造形が得意な方で、個人的にも仲良くしていただいていて、怪獣も大好きなので「ゴジラ作りませんか?」とお願いをしたところ、快く引き受けていただけました。

――このポーズはどのように決められたんですか?

山之内氏:マイゴジは劇中で吼えているシーンが多いので、そのイメージでお願いしました。ゴジラのフィギュアは他社さんのものも含め素立ちのものも多く、本商品はダイナミックで力強いポージングにしたくて、銀座で暴れているイメージのポーズになりました。

――ポーズも蟹蟲さんにお任せしているんですか。

山之内氏:最初にこちらから簡単なイメージを伝えて、いくつかの候補を出してもらって、その中から自分のイメージに近いものを選んで調整をして今の形に決まりました。

――仕様や設計が決まった現状で、この「ゴジラ(2023)」のこだわりポイントを改めて教えてください。

山之内氏:やはりあの造形をプラモデルで表現できたことでしょうか。これまで有機的な生物の質感をプラモデルで表現するのは技術的に難しかったんですが、今の時代になって技術が進歩して、弊社でもようやくそこに挑戦できる環境が整ってきて、その結果として今回展示させていただいたテストショットをご覧いただくことができました。

 蟹蟲さんにその原型を作っていただく段階では、いわゆる「アンダー」と呼ばれる金型で成形するときに引っかかってしまう部分については作ってもらって、完成した原型を設計担当とにらめっこをしながら、「ここで割れば形状を崩さず成形できる」みたいなやりとりをしながら進めていきましたからね。

――となると蟹蟲さんも原型を作りやすかったのではないですか?

山之内氏:そう思います。原型の段階から金型を意識して作ることはかなり難しいので、そこは気にせずに作っていただいて、形ができてからこちらで試行錯誤するという、かなり力業な手法ですね。

――先ほどお話にも出ましたが、他のメーカーさんが様々なゴジラの造形をリリースする中で、この「PLAfig.」のゴジラはどう差別化しようと考えたんでしょう?

山之内氏:造形や動きもそうなんですが、怪獣の造形ってサイズ的に大きなものが多いんです。あまり大きくなると金型の費用も膨大になって、必然的に価格も上がってしまいますから、コンパクトでコレクションしやすいサイズにして、造形とポージングで迫力を出す内容としたんです。

 あとはプラモデルでガレージキットのクオリティを目指したいということもありました。ガレージキットって価格や入手のハードルが高くて、初心者の方がちょっと手を出しづらい存在でしたが、ガレージキットクオリティの造形を価格をある程度抑えたプラモデルで出すことができれば、手に取りやすいですからね。

――サイズは全高で約130mmでしたね。

山之内氏:サイズのスペックを見ると結構小さいように思われてしまうんですが、展示した試作品を見てもらうと「意外にでかい」という反応が多かったのはよかったですね。

原型師こだわりの造形が出せるキャラクターを、怪獣に限らず広くプラモデル化していきたい

――今回のホビーショーでは、「ゴジラ(1999)」と「デストロイア 完全体」がシリーズの新規ラインナップとして披露されましたが、この2種はどのような経緯で選んだのでしょう。

山之内氏:「ゴジラ(1999)」(通称ミレゴジ)は、私個人が最も好きなゴジラで、実は第1弾のマイゴジと同時に企画して並行して進めていたんです。ただ商品としてはやはりマイゴジのほうが注目度が高かったので、ミレゴジは第2弾としました。

「PLAfig. ゴジラ(1999)」。2025年発売予定。価格は未定。原型制作はRYO ねんど星人氏

 そのラインナップを踏まえて、シリーズを続けていくのであれば敵怪獣も欲しいだろうという話が社内で出たので、それならばと「平成ゴジラ」シリーズの最終作である『ゴジラvsデストロイア』に登場して人気も高いデストロイアを選びました。デストロイアは怪獣としてのデザインが非常に凝っているので、これをプラモデルとして成立させることができれば、後の造形の幅がさらに広がるのではないかと思っています。

「デストロイア 完全体」。2026年発売予定。価格は未定。原型制作はRYO ねんど星人氏

――ちなみに立体化対象のチョイスにはやはり山之内さんの世代的な好みなどが反映されていたりするんですか?

山之内氏:それはあるかもしれません。子どもの頃一番最初に観たのがミレゴジでしたので、まずは馴染みがあってよく知っている対象から攻めていったということです。私自身が企画部に入ってから浅いこともあるので、ある程度実績ができてから他のゴジラもやれたらいいなと思っています。

――開発で苦労されたところはありますか?

山之内氏:やっぱり、原型が完成してからプラモデルの設計に落とし込んでいく作業が本当に大変でした。マイゴジの原型自体は去年の5 月には完成していたんですが、いざプラモデルに落とし込むとなると強度的な問題なども出てきて、設計に半年ぐらいかかってしまいました。

――強度を維持して設計をするのは大変なんでしょうか。

山之内氏:パーツを成形するときの肉厚などは組み立て時や完成後の強度などにも影響しますからね。それらを一定以上のクオリティに保たなければならないので、設計担当者とともに試行錯誤を繰り返して設計しました。

――ちなみに組み立てに接着剤は必要なんですか?

山之内氏:はい、スナップキットではありません。接着剤を使わない仕様にするとなると、常にコンマ何mmレベルの調整が必要で、設計の都合上ディテールと両立させることが難しいんです。シリーズのコンセプトとしてディテールをおろそかにはできませんから、そこはあえて要接着剤の仕様とさせていただきました。

――今後もゴジラシリーズが展開されていくことが発表されましたが、そこから先の構想や夢などはありますか?

山之内氏:ゴジラシリーズは今後も続けていきたいと思っていますし、造形にこだわるという「PLAfig.」のコンセプトに則った、造形が映えるキャラクターは世にたくさんいますので、そこにも挑戦していきたいですね。

――そこはゴジラ、ひいては「怪獣」に限らないということでしょうか。

山之内氏:そうですね、いわゆる「怪獣」というカテゴリーに限らないキャラクターも、社内の企画が通って版元さんの許可をいただければ挑戦したいです。「PLAfig.」シリーズは現在私1人が担当なのですが、社内にもこだわった造形をやってみたいというメンバーもいますので、今後複数人で体制が整えばリリースできるペースも早くなると思いますし。

 それとこの「PLAfig.」の裏コンセプトみたいなものとして、ガレージキットや完成品フィギュアなどを支えている原型師の皆さんを盛り上げたいという目的があるんです。私自身も趣味でガレージキットを作ってイベントに出たりもしているんですが、現在のプラモデルの台頭により、ガレージキットやそれを作る原型師さんがその影に隠れてしまっていることを感じることがありまして、そういった皆さんの存在をこの「PLAfig.」シリーズで一般のユーザーさんに改めて知っていただきたいんですよね。

――ということはこれからも原型師さんの名前は前面に出していくんですね。

山之内氏:はい、そのつもりでシリーズは進めていきます。

――最後に今年9月の「ゴジラ(2023)」の発売に向けたメッセージをいただけますか。

山之内氏:「PLAfig.」はコンセプトとしては造形にこだわったシリーズになるんですが、それに加えて弊社の各シリーズで培った“作りやすさ”という点にも注力しています。プラモデルを作ったことがない方でも組みやすい設計になっていますので、ゴジラや怪獣が好きならばぜひ手に取っていただきたいです。組み立てには接着剤が必要で、リアルに仕上げるには塗装も必要ですが、ビギナーから一歩先に進みたいという思いがある人にもお薦めします。

――ありがとうございました。