レビュー

アオシマ、「PLAfig. ゴジラ (1999)」テストショットレビュー

迫力の造形と特徴的な背びれが生み出す、怪獣王の姿

【PLAfig. ゴジラ (1999)】
2026年1月発売予定
価格:
7,260円(通常版)
7,480円(オンラインショップ限定版)
全高:約130mm
素材:PS
原型制作:RYO ねんど星人

 アオシマが2026年1月に発売するプラモデル「PLAfig. ゴジラ (1999)」は、映画「ゴジラ2000 ミレニアム」に登場したゴジラの姿を再現している。PLAfig.はその名の通り、プラモデルで固定ポーズのフィギュアのような美しく繊細な造形を表現するシリーズであり、本商品はシリーズ第2弾となる。

 「PLAfig. ゴジラ (1999)」の原型はRYO ねんど星人氏。高級フィギュアそのままの氏の造形を、プラモデルという組み立てやすく、加工しやすいフォーマットで再現することで、より多くの人が手にしやすくなっている。しかも簡単な塗装工程でもかっこよく仕上げられるのだ。

 今回、「PLAfig. ゴジラ (1999)」のテストショットを組み立て、塗装してみた。前回の「PLAfig. ゴジラ (2023)」同様、スプレーによる全体塗装から、口内や眼、爪といった部分の塗装、さらには体表にチッピングを行い、ウォッシング用塗料を使った汚し塗装を加えただけの簡単塗装で仕上げてみた。

 今回は特に「背びれ」をアオシマオンラインショップの予約特典「クリア成型された背びれパーツ」の質感がわかるように、あえて薄めに塗装することで独特の質感を出してみた。「PLAfig. ゴジラ (1999)」の優れた造形は簡単な工程でも非常にカッコいいゴジラになるので、参考にしてほしい。

ゴジラ (1999)の大きな特徴は、巨大な背びれ。その形は炎のようだ

1999年に公開された「ゴジラ2000 ミレニアム」

 まず最初に簡単に映画「ゴジラ2000 ミレニアム」に登場するゴジラを紹介しておきたい。「ゴジラ2000 ミレニアム」は、1995年の「ゴジラvsデストロイア」以来のシリーズ第23作目であり、1999年に製作された。

 「vsシリーズ」で繋がっていた物語から一新し、今作のゴジラはシリーズ第1作目の「ゴジラ」から繋がる設定となっている。ゴジラは日本に度々上陸し被害を生み出す存在であり、日本政府は危機管理情報局でゴジラに対処することとなり、民間にも「ゴジラ予知ネットワーク」といった組織が存在している世界だ。映画「ゴジラ2000 ミレニアム」ではさらに新たな敵「宇宙人ミレニアン」が現れ、西新宿でゴジラとミレニアンの激しい戦いが繰り広げられる。

 この映画に登場するゴジラは炎のような鋭角的で大きな背びれが特徴になっている。この背びれは普段は赤紫色だが、放射熱線を発射する際はオレンジ色に輝く。口が大きく裂け、目が大きめで、尻尾の先がとがっているのも特徴だ。

1999年に公開された「ゴジラ2000 ミレニアム」

炎のような背びれと大きな口を持つ「ゴジラ2000 ミレニアム」のゴジラを再現

 「PLAfig. ゴジラ (1999)」はこの映画のゴジラがモチーフとなっている。ここからはキットのランナーを紹介していきたい。パーツは1つ1つが大きめで、ゴジラの体表は非常にきめ細かく表現されている。成形色が黒なのも特徴で、体表は塗装せず、銀や灰色などでスミ入れかチッピングを加えるだけでも見栄え良くできそうだ。

 背びれパーツは通常版の黒いパーツでも雰囲気が出る。今回使用したのはアオシマオンラインショップの特典として追加付属するクリアの背びれパーツ。まるでガラスのような質感がある。クリアパーツの質感を活かす場合は薄めに塗装する必要がある。自分のイメージする「ゴジラ像」を考え、どちらかをチョイスするのもいいだろう。なお、クリアパーツが付属するオンラインショップ限定版は、通常版と価格が異なる点は注意してほしい。

 では次章から早速組み立てていこう。

【ランナー】
「PLAfig. ゴジラ (1999)」のランナーの一部。ゴジラの生物的な造形をプラモデルパーツで表現。成形色が黒なのもうれしいところだ
ゴジラの複雑な皮膚をしっかり表現している
【背びれパーツ】
成形色が黒の背びれパーツ。通常版はこのパーツのみだ
アオシマオンラインショップで購入すると特典としてクリア成形の背びれパーツが付属している
まるで氷でできているかのような質感だ

フレームに精密なディテールの表皮を貼り付け、組み立てていく

 「PLAfig. ゴジラ (1999)」では中心にフレームパーツがあり、これに体表パーツをくっつけていくことで組み立てていく。パーツには凹凸のかなり大きなジョイントが設定されており、ここにはめ込むことでピタリと位置がはまる。このジョイントをしっかりはめ込んでいくことで、体表がしっかりフレームを覆っていく。

 本商品を組み立てには流し込みタイプの接着剤が有用だ。ジョイントをはめ込んでからそこに流し込んだり、体表のつなぎ目に流し込むことでピタリとパーツが固定される。ただし大型のパーツや、体表前部を覆ってしまうパーツの接着用に粘度の高い通常の接着剤も用意し、場所に合わせて使ってほしい。またパーツの同士が隙間なく接着される設計なので、ゲート跡はしっかり処理しておきたいところだ。

【胴体の組み立て】
フレームに表皮をつけて組み立てていく
パーツを取り付けていくとどんどんゴジラの胴体ができていく
胸パーツをつけることで生物的な表皮に包まれた胴体になる
背中には番号が振られている。精度の高い成形技術が感じられる。ただし、振られている番号はパーツの番号とは異なるので、説明書の対応表を見る必要がある

 感心させられたのは、背中の穴に“番号”が振ってあること。説明書のパーツの対応表を使うことで、細かく多い背びれパーツをしっかり設計された場所に配置することができる。背中の穴の中にしっかり番号が刻印されているのは優れた金型技術あってこそだろう。ゴジラの複雑な体表表現など、「PLAfig. ゴジラ (1999)」では、プラモデルの成形技術の高さには驚かされた。

 足もフレームに体表パーツを取り付けていく。ここにも右足にはR,左足にはLの刻印がされている。組みやすく初心者にもわかりやすいアイディアだ。ゴジラらしい太く大きな足はパーツだけでも迫力がある。腕は4つのパーツを組み合わせて作る。大きく開いた指の先の長い爪は、今作のゴジラの特徴の1つだ。

【足の組み立て】
足も胴体同様フレームに表皮を取り付けていく
生命感のあるゴジラの足
左足も同じように組み立てる
右足の付け根にRの刻印がある
【腕の組み立て】
手は4つのパーツで構成されている
左手も同様に組み立てる

 頭部は口の中や目などを塗装しなくてはいけないため、この時点ではあえて組み立てなかった。頭部はかなりパーツ分割が細かい。

【頭部パーツ】
塗装のためこの時点ではあえて頭部は組み立てなかった

 尻尾は長く、いくつものパーツに分かれている。根元とその先はフレームに体表を取り付ける方式だが、その先の2パーツは左右貼り合わせ、先端は2つの部品で構成されている。部位で分けると、全部で5つの部位で構成されている長い尻尾はゴジラならではと言えるだろう。背びれはあえてつけず、ここから塗装を行った。次章では塗装と組み立てを行っていく。

【尻尾の組み立て】
尻尾の根元。フレームを表皮パーツで覆っていく
2つめのパーツも同様に組み立てていく
先端は3つの部品。ゴジラ (1999)の尾は合計で5つの部位で構成される

背びれを紫で、表皮をチッピングで表現することでゴジラらしさを追求

 塗装で最初に行ったのは胴体、手足、尻尾の塗装だ。こちらはスプレーのつや消し黒で行った。スプレーでも体表のテクスチャーは潰れることなくしっかり色が乗った。

【スプレーで基本塗装】
つや消し黒のスプレー塗装
スプレー塗装でもディテールは潰れず、しっかり確認できる

 次は筆塗りで各部の塗装を行っていく。手足の爪、口の中、目玉部分を白で塗る。口の中はさらに赤で、そしてウェザリングカラーで黒くしていく。次は背びれだ。クリアの質感を活かすため、紫を薄め液で薄めたものを塗っていった。場所によって濃淡が出るのも味になったと思う。

【爪と口の中】
手足の爪を白で塗る
口の中も白で塗る。ここからさらに色を乗せていく
頭部の内部フレーム。目玉部分を塗っていく
【背びれの塗装】
クリアパーツを紫で塗装。透明感が残るように薄めに塗っていく
ディテールもしっかり残る。塗料の濃淡が独特の質感が楽しい

 次はチッピングである。胸や太ももなど光の当たるところに銀の塗料をガイアノーツの「スタンピングスポンジ」で軽く押しつけていく。銀の塗料を乗せたあと、さらに黒の塗料で調整していく。この黒を塗る際、背びれにも同様の処理をしてみた。背びれに黒の影が混じり、よりゴジラの背びれらしい雰囲気になったと思う。

【チッピングによる表面塗装】
ガイアノーツの「スタンピングスポンジ」で銀色を塗った後、さらに黒で調整していく
胸部分の光に当たるところには銀色を強めに、銀が強すぎると感じるところには黒を重ねていく
紫の背びれに黒を乗せる
背びれを本体に取り付けていく。紫と黒の塗装が施された背びれがカッコイイ

 いよいよ最終工程だ。全体をくみ上げた後、茶色のウェザリングカラーで爪や牙、目玉に汚しを入れる。体表部分にも茶色の汚しを部分的に入れ、完成だ。

力強さのあるゴジラの完成!

 いよいよ「PLAfig. ゴジラ (1999)」の完成だ。まず全身を見ていこう。作る前はちょっとスマートなイメージがあったが、完成したゴジラはかなり力強さを感じさせるマッシブな姿になった。

【全身】
こちらをにらみつけ、カッと口を開ける迫力のある表情。黒い体に紫の背びれが独特のバランスを生み出している
後ろ姿。背びれがすさまじい情報量だ
側面は炎のような背びれの形がしっかりわかる

 面白いのは左右で大きく表情が変わったこと。これは実は黒目の塗装が少しずれてしまったことの副作用でもあるのだが、非常に味のある結果になったと思う。角度を変えても印象が大きく異なる。

【左右で表情が変わる】
黒目の塗装の位置で、左右で全く表情が変わってしまった。独特の味のある表情になった

 ここから背びれ、手足といったディテールを注目していこう。

【ディテール】
背びれ。クリア素材に紫の色、黒い塗料を乗せることで非常に美しい質感になった
尻尾の先端に向かって背びれは小さくなっていく
尻尾の先端はクリア素材ではなく、紫に塗装したのみだが、質感が統一されたような見た目になった
爪は茶色の汚し塗装で迫力が増した
足の爪も汚すことでゴジラらしい雰囲気に

 さらに"後ろ姿"もフォーカスしていきたい。背びれの迫力が正面とは異なるゴジラの魅力を引き出してくれる。

【後ろ姿】
紫の炎が背中で燃えているようなゴジラの後ろ姿

 ここからは前回作成した「PLAfig. ゴジラ (2023)」を並べてみた。ゴジラ (2023)は小さな頭、非常に大きな下半身と、太い尾を持つ、これまでのゴジラの特徴をさらに強調した非常にアレンジの強いシルエットとなっている。野生動物のような獰猛な表情を浮かべたゴジラ (2023)と比べることで、ゴジラ (1999)のデザインを改めて実感できる。

 2体の作品が異なるゴジラを並べることができるのは立体物ならではだ。2体のゴジラの塗装手順はかなり共通した物だが、雰囲気も大きく異なったものとなった。

【ゴジラ (2023)と並べる】
姿勢、シルエット、体のボリュームやバランスが大きく異なる2体のゴジラ
野生動物の荒々しさを持ったゴジラ (2023)
並べると2体の体型の違いがわかる
尾のボリュームが大きく異なる。並べると改めてどちらのゴジラの魅力的な造形が実感できる

 今回、「PLAfig. ゴジラ (1999)」のテストショットを組み立てて、完成した姿を見て「カッコいい」と改めて感じた。「PLAfig. ゴジラ (2023)」を組み立てたからかもしれないが、ゴジラ (1999)は筆者が"ゴジラらしい要素"をしっかり備えた「スタンダードなゴジラ像」に近いゴジラだと感じた。

 ゴジラは作品によって姿が違うのだが、ゴジラ (1999)は筆者の理想的なゴジラのバランスに近く、組み立てた姿がとても好きになった。角度によって表情が違って見えるのも楽しいし、背びれの質感も美しい。もしもう一回作るならば、背びれをオレンジに燃え立たせた姿を再現してみたい。

 今回の作例はテストショットなために一部のパーツに隙間が空いている。パーツの凹凸のバランスや、本当に微妙な調整など、テストショットを重ねることで精度が上がる、ということが実感できたのもとても面白かった。製品版はここからさらに完成度を上げていく。ぜひ手にしてほしい。