レビュー

タミヤ、「1/35 アメリカ軽戦車M24 チャーフィー (ヨーロッパ戦線)」レビュー

ヨーロッパ戦線に投入、大戦後も偵察で大活躍した軽戦車

【1/35 アメリカ軽戦車M24 チャーフィー (ヨーロッパ戦線)】
発売元:タミヤ
発売日:2026年7月11日
価格:4,400円
ジャンル:プラモデル
全長:約159mm

 タミヤが7月11日に発売した「1/35 アメリカ軽戦車M24 チャーフィー (ヨーロッパ戦線)(以下、1/35 M24 チャーフィー)」は、筆者が今年の静岡ホビーショーで強く興味を惹かれたプラモデルだ。第二次大戦末期のヨーロッパ戦線に投入されたM24はコンパクトな戦車だが、搭載している砲はB-25爆撃機に搭載された砲だという。軽量で強力な砲が開発されたため、強力なエンジンによってM24は軽戦車としてヨーロッパ戦線を駆け回り偵察で活躍、巨大な戦車とも渡り合ったというのだ。

 その戦車を立体化した「1/35 M24 チャーフィー」は精密さだけでなく、パーツ数を極力少なくし、ランナーでのパーツ配置も考え抜き、作りやすさも大事なフォーカスポイントとしているという。フィギュアも2体ついており、戦場の「ドラマ」を感じさせるところも気に入っていて、発売が楽しみだった。

 今回、この「1/35 M24 チャーフィー」を組み立てることができた。実車の開発エピソードを頭に入れていると楽しい部位の組み立て、戦車プラモデルの難点とされる履帯の設計など、本製品の魅力を紹介していきたい。

高い機動性と高火力を両立させた軽戦車

 まずはモチーフである「軽戦車M24 チャーフィー」の紹介をしよう。この戦車は第二次大戦中、「M3/M5スチュアート」の後継車輌として制式化された。1942年アメリカ軍は北アフリカへの上陸作戦で、チュニジアでドイツ軍と交戦、この戦いに投入されたM3スチュアートはドイツ戦車に対抗できず、大損害を被った。アメリカ軍にとってより強力な軽戦車の開発が急務となったのだ。

 その前の1941年には「T7試作軽戦車」の開発が進められていたが、度重なる規格変更で重量が増加、機動力不足で失敗作となった。この教訓を受け1943年3月に開発がスタートした「T24試作軽戦車」は基本設計をキャデラックが担当、全面的に傾斜装甲を取り入れ、キャデラック製エンジンを搭載。サスペンションにはビュイック社の「トーションバー式サスペンション」が採用された。

 主武装には爆撃機B-25の機首向けに開発された75mm砲が採用される。爆撃機搭載用に軽量化と威力を両立させたこの砲は、「T24試作軽戦車」に高い機動力に加え本格的な戦闘力を獲得させることとなる。1943年9月、アメリカの兵器委員会は試作車の開発を待たずT24の量産を決定、1944年7月に「M24軽戦車」として制式化される。ちなみにチャーフィーという名は、アメリカ軍機甲部隊の父と呼ばれたアドナ・R・チャーフィー・Jr少将にちなんだものだが、この名は戦後につけられたものとのこと。

【ボックスアート】
ヨーロッパ戦線で活躍している姿をイメージ。5名の乗員のうち、車長と装填手が顔を出している

 こうして完成した「M24軽戦車」は2基のエンジンをトランスファーユニットで一体化、操縦装置は操縦手と副操縦手の両方にあり、非常時には副操縦手が運転を担当できた。武装は75mm砲に加え、同軸に7.62mm機関銃。さらに副操縦席にボールマウント式の7.62mm機関銃、砲塔上部に12.7mm重機関銃1挺を搭載している。M24軽戦車は第二次大戦が終結するまで4,731輌が生産された。

 M24軽戦車は1944年7月に制式化されたものの輸送などの問題で配備が遅れ、フランス到着は12月。ノルマンディー上陸作戦から進軍する連合軍に対し、ドイツ軍が攻勢をかける「バルジの戦い」でM24軽戦車はデビューする。ドイツ軍の先鋒を務めた「パイパー戦闘団」を、誤配という形で届けられていた2輌のM24が第740戦車大隊の装備となって迎え撃ったのが、初戦闘となった。この戦いでM24は他の戦車と共に奮戦、パイパー戦闘団を退ける。

 バルジの戦いの後、北西ヨーロッパ戦線ではM5A1からM24への転換が進められていく。乗員達はその打撃力と機動性の高さを絶賛したという。M24はベルリンへと進軍する戦いで活躍、イタリア戦線にも投入される。第二次大戦後も朝鮮戦争でも使用される。旧式化した後も西側諸国に供与され、日本でも1970年代まで使用された。タミヤは今回の「1/35 M24 チャーフィー」開発にあたり、現存している自衛隊のM24を取材したとのことだ。

タミヤならではのディテール表現が楽しめるパーツ

 ランナーの一部も紹介しよう。「1/35 M24 チャーフィー」は9つのランナー(1つはM2重機関銃と弾薬箱)と、クリアパーツ、ポリキャップなどで構成されている。足回りは2枚のAランナーに集約されているなど、部位によって使用するランナーがしっかり分けられており、組み立てやすくなっている。

 パーツをチェックしていて目が惹きつけられるのはパーツ表現の精密さだ。戦車兵の服のモールド、戦車の鍛造部分の表現やエンジングリルのモールドなどタミヤならではの精密な表現は見所だ。

【ランナー】
2つ入っているAパーツ。車輪や履帯の他、手すりなどの細かい部品も集約されている
車体上部が配置されたBパーツ
Cパーツは車体下部
Eパーツは乗員やフェンダーなど
精密なディテール表現は感心させられる

戦車モデルならではの複雑な足回り

 いよいよ組み立てていこう。最初は車体下部だ。車体下部は履帯とそれを駆動させる「ドライブスプロケット」。地面に押しつける「ロードホイール」。そしてロードホイールを支えるサスペンションアームなど、戦車ならではの「足回り」を作るのが楽しい。

 「1/35 M24 チャーフィー」ではまず車体下部の基部を作り、戦車後部に取り付けられている「金網製ラック」を取り付ける。このラックを本キットではエッチングパーツで表現、専用の治具でかご状に成型し、接着剤を使わずに戦車に取り付けることができる。今回は無塗装のスミ入れのみの組み立てだが、エッチングパーツのキラリと光るマテリアル感は完成時のアクセントになってくれる。

【基部を組み立てる】
基部の組み立て。側面の凝ったディテールに注目だ
ディテールをスミ入れで浮き立たせる
エッチングパーツは治具で成型する
金網製ラック。エッチングパーツでの質感が楽しい

 片面5つずつのロードホイールを支えるサスペンションアームを車体に取り付け、まずは8個のロードホイール、そしてドライブスプロケット、履帯上部の「リターンローラー」を取り付けていく。そしてドライブスプロケットの対面に位置する場所に「アイドラーホイール」、その前のロードホイールを取り付け、「1/35 M24 チャーフィー」の全車輪の取り付けは完了する。

 次が第一のクライマックスと言える「履帯」だ。「1/35 M24 チャーフィー」では上下に大きなパーツ、下側に曲面を描く2つのパーツ、それをつなぐ前後にそれぞれの5つのパーツで構成されている。説明書を見ながらしっかり位置を決め、パーツの前後の向きを決めながら接着していけば、しっかりと組み上がる。

 履帯の表現はプラモデル設計者を悩ませるところだ。軟質樹脂で履帯を表現するキットもあるし、1つ1つ履帯をつないで表現する商品もある。「1/35 M24 チャーフィー」は軽戦車なため比較的履帯パーツが少ないという点もあるが、とても組みやすい。下から順番に、車体後方の履帯を接着させていき、上の履帯へつないでいく。説明書通りにやることで一見複雑な履帯をだれでもしっかり組み上げられる。その設計の見事さを実感できた。

【足回りの組み立て】
最初に8個作るロードホイール
サスペンションアームを取り付ける
エンジンの力で履帯を動かすドライブスプロケット
足回りの上部に取り付けるリターンローラー
それぞれを取り付けていく
履帯は説明書通りに組んでいくことでスムーズに組み立てられる。こちらもスミ入れをすることで情報量がぐっと増す

1/35スケールの精密な表現が楽しい車体上部

 次は車体上部だ。左右に張り出す「フェンダー」を組み付け、履帯の上を覆う「サンドシールド」を取り付けていく。サンドシールドの取り付けは選択式だ。次に車体上部のハッチを取り付けていくのだが、ここで楽しいのがハッチに取り付ける「ペリスコープ」だ。戦車は戦闘時はすべてのハッチを閉める。このとき外の様子をうかがうことができるのがハッチに取り付けたペリスコープなのだ。「1/35 M24 チャーフィー」ではペリスコープを展開している状態を再現している。乗員がこれを使って外を見る、その光景を想像させるのが楽しい。

【車体上部】
こちらもスミ入れをすることで細かな表現がよりわかりやすくなる
フェンダーを取り付ける
ハッチにつけられたペリスコープ

 また戦車上部に多くの「取っ手」を取り付けていくのも細かいが面白い作業だ。ピンセットでつまみ、接着剤をつけ、各部に押し当てて接着していく。キットでは塗装での塗膜も考えあえてゆるめに設計されているようで、こういったバランスもタミヤのプラモデルの「こだわり」が感じられる。

 何よりこの細かい取っ手の組み立ては、1/35というスケールだからこそ表現できる解像度と言える。取っ手は戦車の乗降時に必要だったり、各種ハッチを開けるための位置についていて、改めて機能とデザインの関係性を考えさせられる。ワイヤーロープや重機関銃にかぶせるための布製カバーにも注目したいところ。こういったパーツの成型技術の高さも作っていて感心させられる。

取っ手やライトなど部品を取り付けていく
車体部品は細かく組み立てにピンセットも必要となる。機銃にかぶせる布製カバーやスコップなど、戦車運用の具体像が見えてきて楽しい
下部と組み合わせるとぐっと戦車らしくなった
ワイヤーロープや予備の履帯を取り付ける

強力な75mm砲と砲塔の組み立て

 次はこの戦車の主砲、爆撃機B-25の機首向けに開発されたという「75mmM6」だ。「1/35 M24 チャーフィー」では外側に出ている部分だけでなく、砲尾も表現することでM24の砲塔内部の構造も再現している。主砲はポリキャップで接続されており、組み立て後も砲身を上下に動かせる。 砲塔後部に接続されているのが「雑具箱」。これは車内が必要最小限の乗員スペースであることを語っているようで面白い。組み立てることでM24のみならず「戦車の構造」が学べるところが、プラモデルの面白さだろう。

【砲塔の組み立て】
75mmM6の砲尾を組み立てていく
砲尾を砲塔に取り付ける。75mm砲の接続部はポリキャップが使用され上下に動かせる
砲身はスライド金型を活用した1パーツ。曲線を描くカバーの鍛造表現も注目
クリアパーツを使用したキューポラ、ハッチや重機関銃のマウントを取り付ける。砲塔の後ろには雑具箱が取り付けられる

 砲塔を組み立て終われば完成までもうすぐだ。乗員フィギュア「ローダー」、「コマンダー」。「M2重機関銃」を取り付ける。これにスライドマークを貼って完成だが、今回はスライドマークを貼った後に、さらにつや消しクリアーをスプレーした。次章で完成した姿を見せたい。

乗員フィギュアもスミ入れで表情まで細かく確認できる。左がローダー。右がコマンダーだ
砲塔上部に取り付けられたM2重機関銃
アンテナも取り付ける。後はスライドマークを貼って完成だ

ヨーロッパ戦線で活躍したM24をその手に!

 完成した「1/35 M24 チャーフィー」を見ていこう。今回はスミ入れのみだが、ディテールを浮き上がらせることでキットの精密な造型をしっかり味わうことができる。

 全体のシルエットとしては小型だが機動性の高さを感じさせるフォルムが独特のかっこよさがある。機動性を活かして偵察や歩兵の援護に活躍し、ドイツ軍の大きな戦車相手に側面や後ろに回り込み、75mm砲を当てて撃破するM24の活躍が想像できる。車体に比べ大きなM2重機関銃の存在感も想像力を刺激する。

 機関銃のカバーである布、スコップなどの装備品はM24がどのように運用されていたかイメージが膨らむし、ハッチやペリスコープなど戦車の構造や細かい機能も、模型の構造を見ることで実在する車両からしか学べない情報がある。プラモデルを作ることでモチーフとなったM24への知識が深まるのが楽しい。

【完成】
まずは全面、側面、後方から。高い機動力と75mm砲の強力な火力を併せ持つ軽戦車だ
上から見下ろす。様々な車体部品のディテールが楽しい
ドラマを感じさせる乗員
ワイヤーの表現など細かいところをチェックしたくなる
サンドシールドの奥の足回りも見たくなる
M2重機関銃のすぐ近くに弾薬箱が取り付けられている
砲塔を回転、砲身を上下に動かし表情がつけられる

 「1/35 M24 チャーフィー」は組み立て、完成後の姿を見るのが楽しいプラモデルだ。偵察で活躍したという小柄なシルエット。「どうしてその部品がここについているか」が模型を作ることでしっかりわかるディテール。手に取って色々な角度から細かく見たくなる。

 何よりうれしいのが、「この精密な模型を組み立てることができた」という満足感だ。パーツを切り取り、指定された場所に部品を接着するだけで、リアリティあふれる模型がきちんと組み上がる。このハードルの低さとできあがった姿のクオリティの高さは、タミヤの製品ならではだろう。

 ただ、ドライブスプロケットの貼り合わせや、履帯の下部分の取り付けなど、一部組み立てが難しく感じた。ドライブスプロケットは左右2つの部品を貼り合わせるのだが、部品を回転させてもどこがどうはまるのか、わかりにくかったのだ。また履帯の下パーツをはめ込む場所もわかりにくかった。

 通常、プラモデルは部品の位置を確定させるために実車にはないはめ込みのための凹凸を設ける。ドライブスプロケットと、履帯はこの凹凸がわかりにくかった。どうしてそのような設計になったかと言えば、「部品を貼り合わせるための凹凸は実車には存在しない」という設計者の思いを感じた。模型としてのリアリティを優先したため、ちょっと部品が合わせにくくなってしまったのではないだろうか? 筆者はこれまでもいくつか戦車プラモデルを組み立てたが、「1/35 M24 チャーフィー」は部品の合いを探ってしまう箇所がいくつかあった。

 もう1つ、静岡ホビーショーで担当者から聞いたエピソードだが、ファンはタミヤの技術によって立体化されるM24を待っていたという。これまでタミヤではイタレリ製の「M24」を販売していたが、今回待望の「タミヤのM24」が登場した。このキットを基にしたバリエーション展開も期待されている。今後の展開が楽しみだ。

組み立て難易度は高くなく、高い満足度が味わえる。今後のバリエーション展開も楽しみだ