特別企画
ニッパーすら欠けてしまう程に硬いガンダリウム合金を実現したその革新性! 「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」
2020年7月21日 12:11
- 12月より順次発送
- 価格:220,000円(税込)
BANDAI SPIRITSが発売を発表した「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」。全身金属のその姿はもちろん、やはり発表された時、その価格が話題を集めてしまうのではないだろうか。
22万円(税込)。1/60クラスの全高約370mmの「METAL STRUCTURE 解体匠機 RX-93 νガンダム」が、フィンファンネル別売としても102,300円(税込)だったことを考えると、1/144で約125mmの「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」のその価格は、話題を集めるのは必至と言える。
しかしその価格は結果であって、本質ではない。「ガンダリウム合金」という架空の金属にあえて挑戦したその"凄さ"が面白さであり、革新なのだ。従来の金属モデルと言えば「亜鉛ダイキャスト」という金属を使うのだが、今回、BANDAI SPIRITSはアニメの設定に近いチタンとアルミニウム、希土類イットリアを混ぜた合金、まさに「現代の技術で作れるガンダリウム合金」に挑戦し、それをガンダムの形にした、そこに意味があるのである。
この挑戦の面白さ、新しさはどこにあるのか。まず玩具と金属のこれまでの歴史、活用のされ方を振り返った上で、BANDAI SPIRITSが「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」に挑戦する意義を考えていきたい。
なお、弊誌HOBBY Watchでも「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」に対してインタビューを行なっており、近日公開予定だこちらも楽しみにして欲しい。
キャラクターの魅力、リアリティ、そして遊びごたえをもたらす"金属"の魔力
金属と玩具は密接な関係がある。筆者の頭にまず浮かぶのは「超合金」というブランドである。バンダイの子会社であるポピーから1970年代に発売された「超合金 マジンガーZ」は後の玩具史に大きな衝撃をもたらした。プラスチック、ソフトビニール、あるいは木製が主流だったそれまでの玩具に、「合金モデル(フィギュア)」という新しい流れを生み出したのだ。
「マジンガーZ」は"超合金Z"という架空の金属で作られた強力なロボットで、その堅牢さは強く印象に残った。その超合金の名前を冠した「超合金 マジンガーZ」は亜鉛ダイカスト部品が多く使われ、手にズシリと重い。ロケットパンチなどのギミックも子供心を大きく掴み、「超合金 マジンガーZ」は大ヒットとなり、「超合金」は一大ブランドと成長、他社からも様々な合金玩具が発売された。
金属はやはり特別な印象を与える。特に金属で作られているロボットとは相性が良い。BANDAI SPIRITSは今でも超合金の名を冠する商品を販売しているし、「METAL BUILD」や「聖闘士聖衣神話(セイントクロスマイス)」もその系譜に連なるものだ。
「聖闘士聖衣神話」は戦士達が纏う鎧を金属パーツで表現、重みと質感でユーザーに聖衣の説得力と、満足感を与える。「METAL BUILD」や「METAL ROBOT魂」は、手に触れる部分や関節などに金属パーツを使用することで効果的に質感を際立たせている。「METAL STRUCTURE 解体匠機 RX-93 νガンダム」にもこのノウハウが効果的に活用されている。
これらは質感を高めたり重さを演出するだけでなく、力のかかるポイントに金属パーツを使うことで耐久性を上げ、遊んでも壊れず、しっかりと各パーツを保持するという玩具としての実用性も追求している。その技術は「ROBOT魂」などプラスチックパーツが中心の商品でも活かされている。
合金フィギュア、関節に金属パーツを使うことでの強化は他社の商品でも積極的に行なわれている。また、ダイキャストパーツの生み出すリッチさ、肌触りはそれだけでも魅力で、コレクターズ事業部は「超合金の塊」という商品も生み出しているほどだ。
「合金玩具」という意味では、タカラトミーの代表ブランドの1つミニカー「トミカ」は外せないだろう。車体をダイキャストパーツで表現したミニカー商品であるトミカは、車体をリアルに再現するその加工技術も目を見張るものがある。手に持った時のしっかりした重み。金属パーツだからこそ、生まれる独特のリアリティ。子供から大人まで魅了するトミカの魅力に、金属の車体が果たす意味は大きい。
この他、プラモデルには「エッチングパーツ」というものがある。軍艦やバイクに金属パーツを加えることで、プラスチック単体や、塗装だけでは表現しきれない、金属パーツだからこそ生み出せるシャープさや、金属の質感がプラモデルにプラスされ、全体の雰囲気を底上げするのである。
また、玩具ではなく、"美術品"としての金属モデルもある。一時期、「純金製のウルトラマン胸像」や、「プラチナ製マジンガーZ」などが作られ、話題を集めたこともあった。これらは存在のインパクトが大きく、とても一般の人が買える金額でもないが、こちらも「金属の魅力」と「キャラクターの魅力」が合わさることで、独特の魅力を発している商品であることは実感できる。
ガンダリウム合金を作る、玩具史に刻まれるその新たな挑戦
これまで説明したように、玩具と金属というのは親和性がある。しかし、その歴史から見て、「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」は異質だ。なんと"ガンダリウム合金を作ってしまおう"、というのが企画の立脚点なのだ。
多くの金属モデルには「亜鉛ダイキャスト合金」が使われている。亜鉛ダイキャスト合金は溶融点が比較的低く、金型に流し込んでの加工がしやすい。他の金属より薄く作ることもでき高い精度が出せる。そして"重い"。金属は軽さを求められる場合が多いが、玩具の場合は重さが利点となる。ズシリと重い、その重さが満足感に繋がるのだ。
「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」は、新しいガンダリウム合金という合金を作り、これを活用しようというプロジェクトである。従来の加工技術が通用しない。ここだけでもこのプロジェクトの異質さ、新しさがわかるだろう。
アニメでのガンダリウム合金は月面で採取できる希少金属「ルナ・チタニウム」を主原料とする合金で、高い耐久性と軽量性を併せ持つ。この新しい金属「ガンダリウム合金」を使って建造されたガンダム、ガンキャノン、ガンタンク、そしてホワイトベースは、高い耐久力を実現した。初の実戦型MS・ザクの主武装ザクマシンガンを至近距離から受けても傷もつかないのだ。
ガンダリウム合金の高い耐久性が素人であった登場人物達をジオンの猛攻から守り、戦士へと成長させた。ガンダリウム合金は主要登場人物達が生き残る"舞台装置"として、ガンダムの強さ、ガンダムが未来兵器であることを象徴する金属と言える。
BANDAI SPIRITSがまず求めたのはこの架空の金属の実現だった。チタニウム、アルミニウム、希土類イットリアを混ぜた合金を作り、その金属を作り上げたのだ。筆者は本商品が発表された時取材を行なっているが、BANDAI SPIRITSはこの金属を作り上げ、加工するため、エプソンアトミックスと協力している。
前述したとおり、亜鉛ダイキャストを使わない「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」はこれまでの玩具技術とは違う方法が必要となる。この金属はプラスチックや、亜鉛ダイキャストのように金型に流し込んで作れない。"焼結"という融点よりも低い温度まで加熱して焼き固める技術を使って成型する。この金属の焼結技術に関して高い技術を持っているのがエプソンアトミックスなのだ。本商品はこの会社の協力なしには実現しなかっただろうとのことだ。
その結果できた金属は「ガンダムのアンテナすらニッパーの刃を当てても、ニッパー側が欠けてしまう」という程の硬度を持った金属だという。その上でこの金属を"ガンダムの形"に加工しなくてはならない。そう、「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」は、「新しい金属」、そして「その金属を加工・成型する」という2つのテーマに挑戦した商品なのである。
エプソンアトミックスとの協力による成型技術を実現し、「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」は「RG(リアルグレード)」並みのディテール表現を実現した。「RG RX-78-2 ガンダム」は、かつてお台場に立っていた「1/1 RX-78-2 ガンダム立像」のディテール表現を1/144サイズで実現させた商品。加工の難しいガンダリウム合金でそのディテールをいかに実現したかは、本当に興味がそそられる。
そして、だからこそ「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」は革新的なのである。プラチナ製や、純金製の立像とは意味合いが全く違う。また、加工技術がこなれている亜鉛ダイキャストでの金属モデルではなく、「ガンダリウム合金のモデル」になぜBANDAI SPIRITSが挑戦したのかを考えさせられる。インタビューではこれらの点を担当者に質問している。ぜひ、このBANDAI SPIRITSの大きな挑戦に注目して欲しい。
(C)創通・サンライズ