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ジブリ作品の動くフィギュア「うごくハウルの城」レビュー

「ハウルの動く城」が実際に動く。生命を感じる独特なギミックに魅了

【うごくハウルの城】

12月26日 発売予定

価格:22,000円

全高:約135mm

 スタジオジブリ作品のグッズを扱うショップ「ジブリがいっぱい どんぐり共和国」を運営するベネリックが、「ハウルの動く城」から実際に動くフィギュア「うごくハウルの城」を全国の店頭とオンラインショップ「そらのうえ店」で12月26日に発売した。価格は22,000円。

 本製品は映画「ハウルの動く城」に登場し主人公「ソフィー」たちを運んだ物語の中心でもある「城」を、現実に動かすためのアレンジを加えて立体化したものだ。細やかに造形と彩色が行われたフィギュアでありながら、モーターで足や上部構造物が駆動する。

 「ハウルの動く城」劇中では内部に火の悪魔「カルシファー」が座り、城を動かす動力となった。数百メートルはありそうな巨体に大小様々な構造物が組み込まれ、尾部の扉には魔術がかけられていて本来の場所とは全く違う場所へつながっている。

 古びた印象を与える見た目だが、「ハウル」の居城として丁寧に手入れがされ、大事にされたアンティーク、といったイメージも持てるのが劇中の「城」の描かれ方だ。筆者はそういった巨大な城に様々なものが詰め込まれ、にぎやかに描かれているのが「ハウルの動く城」の魅力の1つだと思っている。

 今回は本製品を実際にお借りし、その細やかな造形からギミックまでじっくりと紹介したい。そうすれば、価格相応のこだわりと手間がかけられていることが分かるはずだ。

□「ジブリがいっぱい どんぐり共和国」公式サイト
□「そらのうえ店」商品ページ

パッケージ側面。マットな質感で高級感がある造りだ

もちっと丸くまとまったボディーと、生物的な挙動のかわいさ

 本製品は実際に動くフィギュアとして、動きを再現するために足の位置や翼のサイズなど構造物のバランスを専用にアレンジしている。その結果、城上部のアンバランスさが際立ち、特徴的なドーム状の砲塔や機関部のような構造物のゴチャゴチャとしたにぎやかさが面白い。なお外装は全てPVCで造形されているが、塗装を丁寧に変えることでそれぞれ素材の質感の違いをうまく表現している。

 塗装では、金属は真ちゅう、赤銅、鋼、黒鉄といった素材の違いがイメージできるように丁寧に塗り分けられていて、上部構造物のれんがや瓦、木といった素材もしっかりと塗り分けられている。しかも、それぞれが経年劣化しつつも手入れが行き届いた風にウェザリングされているのだ。しかし上部構造物の屋根から張り出した幌は定期的に替えられているような塗りで表現され、新しい印象を受ける。また足の段差が黒ずんだように彩色されている様子は、実際に真ちゅうの黒ずみを見ているようで非常にリアルだ。

向かって左側面。どっしりとした機関部に、ごちゃごちゃとした上部構造物が積み上げられていてにぎやか
向かって右側面。きのこのように伸びた煙突が特徴的だ。腰のあたりの茶色いパーツも金属の違いが丁寧に塗り分けられている
足裏。メタリックな塗料にウェザリングを施し、クリアカラーを塗った雰囲気だ
爪は当たっても痛くないように丸められている。安全面にも配慮されている
下部構造物は金属それぞれを丁寧に色分けしており、さらにウェザリングが施されている。ツルッとした金属らしい質感に板金をたたいて曲げたような見た目
裏側。プラスドライバーで開け、単4電池2本で動作する。扉部分の飛び出たスイッチを押し下げることで城が動き出す
後部。細く突き出した薄い灰色の煙突は軟質PVCでできていて、曲がっても折れにくいという
口の中にはオレンジ色で成型されたカルシファーがのぞく

 動作は劇中で「ソフィー」たちが出入りするドアの部分を押し下げることで行える。カチリとした感触は扉の行き先が決まったときのようだ。

 動き出すとのしりのしりとゆっくりとした動作で足を前後させる。体を左右に揺らすたびに上部構造物がガタガタと傾き、大きな砲塔が左右に振れる。砲塔は下部砲塔がモーターと連動、上部砲塔が構造物の傾きに合わせて重りで動く仕様で、それぞれが逆の方向に動くのは見ていて面白い。

 歩く動きは、そのもっちりしたフォルムから小動物が歩き出すようなかわいらしさがある。口からはゆらゆらと炎らしく光る「カルシファー」が見え、劇中の姿を思わせる。「カルシファー」の位置は本製品専用のアレンジだが、巨大な構造物を力いっぱい動かしている様子がとてもよい。なお足は万が一指などを挟んでしまっても、クラッチ機能が働き空転することでケガにつながらない工夫がされている。

【【うごくハウルの城 歩行の様子】】

⾃作ジオラマに飾ってさらに楽しむ

 動くし造形は緻密で、塗装も手が込んでいる本製品だが、できるなら箱にしまい直すより、大切に飾って時々眺めて楽しめる場所が欲しい。

 そこで、模型店などで買えるタミヤ製「情景テクスチャーペイント」で土と草を盛り、KATOが販売している模型用の「ランドスケープ」フォーリッジやパウダーで装飾して劇中で城がたたずんでいた丘をイメージしたベースを作ってみた。

 作り方は簡単で、ホームセンターで購入した板にコンビニでもらったプラスチックのスプーンで土ペーストをすくって塗りつけ、ある程度乾いたら草ペーストを盛る。左官になった気持ちでぺたぺたと塗りおえたら、草が乾く前にメッシュ、パウダーの順でベースに散らし、とんとんと指の腹でならすようにたたいて押しつけていく(押しつけすぎるとペーストに混じりすぎて色が落ちる)。そうすると本来必要とされる水で溶いたボンドを作る手間なく、草ペーストに混じってパウダーやメッシュが定着する。

 たっぷり1日乾燥させれば出来上がる。そこにどしんとハウルの城を乗せれば、劇中序盤で「ソフィー」たちが歩いた丘のように見える。今回は家に在庫があった「土 ブラウン」と「草 グリーン」を使用したが、「土 ブラウン」の上に直接KATO「日本の草はら」シリーズや「フォーリッジ」シリーズを散らしてもよさそうだ。

タミヤ「情景テクスチャーペイント 土 ブラウン」でベースを覆う
「草 グリーン」で草地のベースを作る
KATO「ランドスケープ」を高く伸びた草地や繁茂する草原をイメージして振りかけたもの
1日程度乾燥させたら、城を飾る

 「うごくハウルの城」は、発売告知当初動画で見た以上に、実物を見て「もっちりしているな」、「意外とドタドタ動いてかわいいな……」といった気持ちがわいた。上面から歩く姿を見つめていると小動物のような存在感があり「うわ、生き物がいる!」と驚く。

 どっしりとした体躯を細く頼りない足で支えているのに、きらきらと「カルシファー」が燃えて一生懸命歩く姿はコミカルでキュート。隅々まで丁寧に彩色が行われている様子は、サイズはコンパクトだが高級フィギュアとして語っても特筆すべき仕上がりだ。発売の暁にはぜひ購入して、年末年始の大変な作業を乗り越えるたびにこの城を動かしてほっこりしたい。

□「ジブリがいっぱい どんぐり共和国」公式サイト
□「そらのうえ店」商品ページ