ニュース

子供も大人も大熱戦! 「BEYBLADE X」、「バルサカップG3大会」レポート

桶川のおもちゃ屋「おぢいさんの店」主催、熱心なボランティアの活躍で盛り上がる

【バルサカップG3大会】

2月15日開催

主催:おぢいさんの店

会場:桶川市商工会館

 2月15日、埼玉県桶川市のおもちゃ屋「おぢいさんの店」にて、「BEYBLADE X(ベイブレード エックス)」を使った公式大会「バルサカップG3大会(オープン)」が開催された。会場は桶川市商工会館、120名を超える選手が参加する大きな大会となった。

 「BEYBLADE X」はベーゴマの進化形であるタカラトミーの対戦型ホビー。1999年の第一弾から何度かリニューアルされており、「BEYBLADE X」は第4世代となる。スタジアムの外周に凸状のレールが張り巡らされており、ここにベイブレードの芯である「ビット」がかみ合うことで猛烈なスピードで回転する「Xダッシュ」が大きな特徴となる。2023年7月よりスタートし、現在大きく盛り上がっている。

 今回の取材は筆者が2024年末に行われた国際大会「アジアチャンピオンシップ2024」で改めてユーザーの熱さを知り、「BEYBLADE X」の面白さを学んでいた矢先に、「BEYBLADE X」の公式試合のボランティアをしている人に、桶川のおもちゃ屋「おぢいさんの店」が「G3大会」を開催することを教えられ、主催者に取材許可を得たことで実現した。

桶川のおもちゃ屋「おぢいさんの店」。老舗のおもちゃ屋だ

 「G3大会」とはタカラトミー公認のショップ「B4ストア」が開催できる大会。運営は店舗が行うため店によっては店舗スタッフでやりくりする場合もあるとのことだが、今回開催された「おぢいさんの店」での大会は、ボランティアスタッフの積極的な協力で非常にスムーズに進行した。

 イベントを取材し、会場の人たちと話をすることで「BEYBLADE X」の面白さ、選手のこだわり、試合での彼らの躍動感に強く魅了された。「バルサカップG3大会(オープン)」の面白さを紹介していきたい。

参加者だけで120名を超え、応援に来た家族も集まり大盛況のイベントとなった

ボランティアの尽力と来場者の協力で大いに盛り上がるおもちゃ屋主催の大会

 「BEYBLADE X」での公式大会はタカラトミーがきちんとルールやフォーマットを提示している。店舗が主催する「G3大会」とは、6~12歳限定の「レギュラー」、6歳以上出大人も参加可能な「オープン」、「チーム戦」の3つのカテゴリーがある。この大会には賞品としてタカラトミーが提供する公式賞品が用意されている。

 今回の「バルサカップG3大会」はスペイン・カタルーニャのフットボールクラブFCバルセロナとBEYBLADE Xのコラボを記念して開催されたもので、特別なステッカーがもらえる上、優勝者に「ブレード ウィザードロッド メタルコート:ゴールド+9000ベイポイント」が贈られる。対戦台の仕様やルールなども厳密に規定されており、参加者は公式ルールで対戦を行うことができる上、上位入賞者には公式の賞品が贈られるというわけだ。タカラトミーは「BEYBLADE X」においてこういったサポートを行って「G3大会」や「体験会」を行っている。

イベントを主催している「おぢいさんの店」店長の田中肇氏は来場者だけでなく、ボランティアが気持ちよく試合を進行できるように注意事項やイベントの決まりなども細かく設定してイベントを開催している
子供と大人が平等なルールで戦えるところも「BEYBLADE X」の大きな魅力だろう

 「BEYBLADE X」は「ブレード」、「ラチェット」、「ビット」の3つで構成されており、ブレードには「アタックタイプ」、「ディフェンスタイプ」など4つの特性がある。これに高さや重心バランスなどを変えられるラチェット、ダッシュ性能やバースト耐性が変わってくるビットを組み合わせ、「ランチャー」という器具でスタジアムに向けてシュートすることで、ベイブレード同士が激しくぶつかるバトルが展開する。

【120名を超える参加者! 「BEYBLADE X」「G3大会」での様々な試合】

 ブレードには相性があるだけでなく、全般的に強いブレード、特定のブレードに効果的なものなど様々な研究がなされている。ここにどんなラチェットをはめるか、そしてビットでスタミナを強化したり、積極的にXダッシュを使うようにするなど好みや戦略で組み合わせは大きく広がる。

 そして単純に「研究を重ねて力が強い大人が強い」というわけではないのが「BEYBLADE X」の面白さだ。シュートしてからはユーザーはベイブレードを一切操作できない。どういった角度でどうぶつかるかなど運やタイミングの要素も強い。力押しの組み合わせで挑んで、安定を重視したベイに攻撃が当たらずにスタミナ負けする、といった局面も多い。

 何種類もベイを持ち練りに練った戦略で挑んだ大人が、お小遣いをやりくりして少ないパーツから組み合わせた子供に負ける、というのもよくあることだ。それでも自分の考えた戦い方を実現させたり、お気に入りのベイの特性を活かすためには、「スタジアムのどこに向かってシュートするか」、「シュートの角度は」、「強さは」、といった練習が必要不可欠で、努力も重要な要素なのである。子供も大人も同じ土俵で楽しくバトルできる、というのは「BEYBLADE X」の楽しいポイントだ。

 「BEYBLADE X」は対戦風景も面白い。対戦型ホビーは誰でも自分をヒーローにしてくれる。想いを込めたシュートはとてもカッコイイ。子供は全身を使って力を込めてシュートするし、体の大きな大人のシュートはダイナミックだ。興奮でステップを踏む子や、対戦相手をあおるように踊っちゃう子などもいて、対戦風景は特に楽しい。大人でもシュート前の構えで、後ろ足を長く伸ばしたり、体を強くひねったり、ベイに想いを込める熱さが伝わってくる。

【GO シュート!】
シュートの瞬間は子供も大人もダイナミックだ。いかに自分の力や想いを込められるかは、勝利の鍵となる

 そして対戦を見守る風景は緊張感たっぷりだ。食い入るようにベイを見つめる人もいれば、自分を落ち着かせるように目を離す人もいる。不動の姿勢で見下ろす人、祈るように拳を握る人。そういった人の見守る中でベイは時には激しくぶつかり、相手を追い回すように頻繁に位置を変え、時にはぐるぐると同じところを回り続けるスタミナ勝負になる場合もある。

【ベイの激突】
縦横無尽に走るベイ、中央で待ち構えるベイなど、特性とシュートの仕方でその動きは大きく変わる

 ボランティアの頑張りも注目ポイントだ。今回の参加者は120人を超えた。これは「G3大会」ではかなり大きな規模となる。対戦台は5つ用意され、各試合の進行はまちまちだ。ボランティアは空いた対戦台への参加者の誘導、待機列の整理、そして試合のジャッジなど試合の進行すべてを行う。ボランティア自身も選手として参加しているので、彼らが出場するときにはほかのボランティアが進行やジャッジを行う。

 特にジャッジは難しい。シュートタイミングを厳密にしなくてはいけないし、特にスタミナ勝負になったとき、どちらのベイが先に回転をやめたかその見極めはとても微妙だ。両者が外に吹っ飛ばされたときどちらの方が早かったかなど、難しい局面でも双方の選手が納得できるようにジャッジを下すだけでなく、説明もするなど丁寧な対応が印象的だった。

 参加者も非常に協力的だったのはやはりボランティアの熱意があったからだろう。主催者である「おぢいさんの店」の店長・田中肇氏もボランティアの姿勢への感謝と彼らができるだけ気持ちよく運営できるように心がけているのも伝わってきたが、やはりボランティア達の「ベイブレードが好きだ」、「この楽しさをできるだけ多くの人に伝えたい」という気持ちが大会を支えていると感じた。次章から、バトルの詳細と大会の結果に触れていこう。

【積極的なボランティア】
公平なだけでなく、参加者を乗せることができるジャッジ。試合進行の補助や、選手の誘導などボランティアの積極的な姿勢が楽しいイベントを実現している

決勝戦は超大接戦! 読み合いを制したのはどちらか?

 「BEYBLADE X」公式大会の勝敗の決定は4ポイント先取となる。相手より長く回転している「スピオンフィニッシュ」は1ポイント。相手を手前の左右のポケットに落として勝利する「オーバーフィニッシュ」が2ポイント。相手のベイのパーツがバラバラになる「バーストフィニッシュ」も2ポイント。相手を中央のポケットに落とす「エクストリームフィニッシュ」を決めれば一気に3ポイント得ることができる。

 相手を弾き飛ばすことができるベイが強いようにも思えるが、敵の攻撃を「いなす」特性のベイもあったり、耐久力重視のスタミナタイプが現在は強いようだ。しかし攻撃に特化させる派手なベイも人気であり、それらのベイに対抗するベイや戦法もあって駆け引きは奥深い。

【人気のベイ】
「コバルトドラグーン」は左回転。多くの人が使う強いベイ「ウィザードロッド」の天敵と言える存在
こちらが「ウィザードロッド」。スタミナに優れ、現在多くの人が主力に使っている。4月からは殿堂入りで単体では使えないことに
公式ページの発表。4月からは「ウィザードロッド」は公式戦での単体使用ができなくなった

 今回の大会ではベスト8まで1試合に使えるベイは1つのみというルールだ。対戦前までは相手にベイを見せないので読み合いとなる。そして相性が悪い場合でもシュートの仕方で挽回ができる場合もある。

 今回の大会で人気が高かったのは「コバルトドラグーン」のベイと「エレベート」のビットの組み合わせ。コバルトドラグーンは他のベイが右回転なのに対し左回転という珍しいベイで、重量もあるので火力が強い。これに安定した回転をもたらすエレベートというビットを装備してバランスをとらせる戦法が人気だった。

 そして「ウィザードロッド」と攻撃力よりスタミナを重視した「ボール」のビットの組み合わせも人気だ。ウィザードロッドは定番と言える強さと安定性を兼ね備えたベイで、敵の攻撃をいなし最後まで回転しているというスタミナの高さが魅力。ちなみにこのウィザードロッドはその強さのため4月から「殿堂入り」し、1つのみを使う試合では使用できなくなることが決定した。それほど強いベイなのだ。

 ほかにも「シルバーウルフ」と「エレベート」、「エアロペガサス」と「レベル」の組み合わせが人気だった。シルバーウルフは受け流し性能に優れたベイ。これに安定をもたらすエレベートを組み合わせスタミナを強化する。エアロペガサスは「BEYBLADE X」のアプリでポイントをためて挑戦できる「レアベイゲットバトル」で入手できる攻撃力の高いベイだ。レベルはダッシュを利用しやすいビットでエアロペガサスの攻撃力を増すことができる。もちろん、ほかにも重量級の「ホエールウェーブ」攻撃力の高い「フェニックスウィング」など、様々なベイが使われていた。

 そしてベスト8からは「3on3」に戦い方が変わる。これは双方が3つのベイを持ち寄り戦うルールで、どの順番でどのベイを出すかあらかじめ決めておくもの。選択する3つのベイには同じブレード、ラチェット、ビットは使えないので、カスタマイズも工夫が求められる。相手がどの順番で何を出してくるかも予想し1つ1つのベイの特性、パーツの組み合わせでのカスタマイズ、そして出す順番が問われる。しかも3回で勝負がつかない場合、再び順番を決める。相手の手の内は全部わかったが、どの順番で出すか、読み合いはさらに深くなる。

【決勝戦の激突】
奥の黄色い服がナル選手、手前がいろわ選手
【「おぢいさんの店」主催「BEYBLADE X」、「バルサカップG3大会」決勝戦】

 今回は決勝戦を詳しく紹介したい。勝ち残ったのはナル選手といろわ選手。1回戦はナル選手が「フェニックスウィング 1-60 LR(ローラッシュ)」。いろわ選手が「コバルトドラグーン 5-60 E(エレベータ)」。攻撃力特化のフェニックスウィングに、左回転のコバルトドラグーンが回転で上回りスピンフィニッシュいろわ選手が1ポイントを決める。

 2回戦はどちらもウィザードロッド。そしてセッティングも「ウィザードロッド 9-60 B(ボール)」かなり安定性を重視したセッティングだ。全く同じベイでの戦いだが、僅差でナル選手がスピンフィニッシュ。ポイントは1-1となる。

 3回戦はナル選手が「コバルトドラグーン 5-80 E(エレベータ)」、いろわ選手が「エアロペガサス 7-60 L(レベル)」。ナル選手のコバルトドラグーンがスピンフィニッシュ、ポイントは2-1となる。

 4回戦からは両選手が手持ちの3つから何を出すか順番を変えてくる。ナル選手が「コバルトドラグーン 5-80E」、いろわ選手が「エアロペガサス 7-60 L」。3回戦と同じ組み合わせは同じくナル選手のスピンフィニッシュで3-1、いろわ選手は追い詰められた。

 5回戦はナル選手が「ウィザードロッド 9-60 B」、いろわ選手が「コバルトドラグーン 5-80E」。いろわ選手のコバルトドラグーンがスピンフィニッシュ、左回転のコバルトドラグーンで安定の強さを持つウィザードロッドを攻略しポイントを3-2とした。

 そして6回戦、ナル選手の「フェニックスウィング 1-60 LR」といろわ選手の「ウィザードロッド 9-60 B」。攻撃力に秀でるフェニックスウィングだが、鉄壁のウィザードロッドに及ばず、ポイントは3-3と、6回戦まで戦っても決着がつかなかった。

 7回戦、”ファイナルベイ”はお互い3つの中からどれを出すかを選ぶ。このとき、両者はともに「コバルトドラグーン」を選択した。ナル選手が「コバルトドラグーン 5-80E」、いろわ選手が「コバルトドラグーン 5-60E」。最後はいろわ選手のスピンフィニッシュ、ギリギリの戦いを制し、優勝を手にした。

【表彰】
優勝を果たしたいろわ選手
準優勝のナル選手

 いろわ選手は「ギリギリの戦いで、いつ負けてもおかしくなかった。本当に強かった。3-1の折り返しからは、『どれが来ても負けない順番』を考えました。2点以上とられたら負けなので、吹っ飛ばされないように組み合わせを考えました。最後はウィザードロッドは強いけど、コバルトドラグーンには分が悪い。だからこそ最後は今回の試合でずっと戦ってきたコバルトドラグーンに賭けました」と勝利の感想を語った。

 ナル選手は「今回試合の流れとしてはうまくいったと思いますが、最後コバルトドラグーン対決で少しだけシュート角度が浅かった。悔しいです」とコメントした。


 対戦型ホビーは大人も子供も夢中になる。そして参加者は大人も子供も、男性も女性も物語のヒーローになる。勝つためにブレードを選び、その特性を強め、自分の戦法を実現するために練りに練って選んだラチェットとビットを選択する。

 そして練習を重ね、自分のすべてをベイに託すために編み出した方法で、スタジアムにシュートする。Xダッシュをどう使うか、相手にどうぶつかるか、相手はその攻撃を胴受け、どう交わすか、祈りも込めて試合の行方を見守る。……そして結果に一喜一憂する。この高揚感、楽しさを会場でしっかり感じることができた。大きなイベントはもちろんだが、こういった地方大会も独特の熱さと、気軽に参加できる楽しさがある。

 タカラトミーは公認ショップ「B4ショップ」を通じて積極的に「体験会」、「連勝バトル」、「G3大会」を行っている。こちらのページで全国でのイベントが確認できるので、興味を持った人はまずは見に行ってほしい。改めて「BEYBLADE X」の面白さが実感できた取材だった。今後も追いかけていきたい。