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ホビージャパンの「Sタンク」がついにお目見え【#静岡ホビーショー】

柵状装甲やドーザーも完備。車高調整ギミックも搭載。史上最高のキットを目指す

【1/35 STRIDSVAGN 103 【S-タンク】】
2026年発売予定
価格:未定

 油圧サスペンション機構を搭載した74式戦車のスケールモデルが国内外で高い評価を集めているホビージャパンのプラモデルシリーズ「HJM(Hobby Japan Modelkit)」。弊誌でも何度か取り上げている74式戦車は、2月に発売された「1/35 74式戦車用 ドーザ装置&アクセサリーパーツセット」で一段落ということだが、2026年にも完全新規金型による新シリーズがスタートする。それが、昨年の静岡ホビーショーで予告され、全日本模型ホビーショーで情報が公開されたSタンクだ。静岡ホビーショー2025では、ついに3Dプリンタによるモックが展示され、更なる詳しい情報が公開されたので、お伝えしたい。

【ホビージャパン HJMコーナー】

 通称Sタンク、正式名称をStridsvagn 103(ストリッツヴァグン103)と命名されたスウェーデン戦車をご存じの方は、かなりの戦車通だろう。ゲームでこそ、「大戦略」シリーズや「World of Tanks」などでお馴染みの存在だが、戦後世代の戦車ということもあり、ティーガーI、M4シャーマン、T-34などに比べると、その知名度は数段劣る。

 だが、戦車好きならSタンクは避けて通れない存在だ。砲塔を持たず、極端に低い車高で避弾経始に特化したデザイン。不動要塞化するためのドーザーブレードに、HEAT弾を防ぐ柵状装甲、軽油タンクをぶら下げたサイドスカートなど、従来の戦車の概念をことごとく覆す独創的なデザインは、戦車ファンを魅了してやまない。筆者も、過去に英国のボービントン戦車博物館を訪れた際、最奥に展示されていたSタンクと遭遇できたときは、「本当に実在したんだ」とひたすら感動した。

【ボービントン戦車博物館のSタンク】

 ちなみに戦車ゲーム「World of Tanks」では、最上位Tier Xのスウェーデン駆逐戦車として「Strv 103B」が登場するが、巧者が操るStrv 103Bは、視界の外から高貫通のAPCR弾で狙撃してくるだけでなく、発見しても避弾経始による強制跳弾と、悪魔のような柵状装甲で鉄壁の防御を誇る。ただ、実際に自分で使ってみると、油圧サスペンションを再現した移動と射撃のモード切り替えに無防備な瞬間があり、敵の到来する位置を先読みしてあらかじめ待ち受ける必要があるなど、使い手にセンスを要求するクセの強い戦車であることがわかる。いずれにしても、Sタンクは1997年の退役後も多くの戦車ファンの記憶に残る愛される存在といっていい。

 そんなSタンクだが、スケールモデルの選択肢は驚くほど少ない。タミヤも以前は扱っていたが廃番になっているし、海外キットしか選択肢がないのが現状だ。少ない理由は、その独創的なデザインゆえに、そもそものキット化の難易度が高いことと、純粋にそれほど知名度が高い戦車ではないため、あまり数を見込めないためだ。

 Sタンク開発担当のホビージャパン高橋氏は、そういうことは全部分かった上で、「あえてSタンクをやりたい」という。しかも、一体成型で車体下部に上部を被せればだいたい完成という雑なものではなく、74式戦車で培った油圧サスペンションのギミックに加え、豊富な可動を実現するという。

【1/35 STRIDSVAGN 103 【S-タンク】】
独創的なデザインのスウェーデン戦車STRIDSVAGN 103。キット化されるのは最終形のC型だ
左側に並ぶジェリ缶の連なりはサイドスカート
避弾経始に優れた車体であることがわかる
正面には主砲と、その下にドーザーブレード。柵状装甲はまだ付いていない

 今回ブースに展示されていたのは、3Dプリンタで成型されたモックで、可動部分を実際に確認することはできず、柵状装甲など一部パーツも未実装だったが、CGイメージで可動ギミックを確認することができた。

 可動ギミックについてはまだ最終決定ではないということだが、ドーザーブレードの展開/収納、左右のエンジンハッチの開閉、ドライバーハッチの開閉、弾薬庫ハッチの開閉、機関銃ボックスの開閉など、多くの開閉ギミックを搭載予定。車長ハッチについては選択式を採用予定ということで、完成イメージから、開けた状態で戦車長を配置するか、閉めて戦闘状態にするかが選べる。

 そしてさらにその上に車高調整ギミックが搭載される。仕組みは74式戦車と同等になる見込みで、通常モードと、後部を上げた戦闘モードの2パターンから選択できる。

【Sタンクギミック】
特筆すべきポイントは多いが、中でもエンジンハッチが開閉可能なのはポイントが高い。Sタンクが誇るディーゼルエンジンとガスタービンエンジンを覗くことができるという

 個人的に気になっていた柵状装甲については、標準パーツとして付けるが、こちらも選択式で、装着の仕方については現在検討中だという。柵状装甲は我々が想像しているより、開発難度が高いということで、最終仕様がまだ固まっていないようだ。また、オプションパーツについても検討中で、セールスが好調ならバリエーションも検討したいという。いずれにしても、74式戦車に勝るとも劣らない満足度の高いキットになることは間違いなさそうだ。

 気になる発売日は、2025年度中で、HJMでは恒例となっている2月、3月あたりが濃厚。価格については「1万円を切りたい」ということで、74式戦車を上回る価格設定になりそうだ。Sタンクファン、HJMファンは来年の発売を心待ちにしよう。

【Sタンクディテール】
車長ハッチ部分。ペリスコープはクリアパーツ
サイドスカート。ジェリ缶が並んでいる。中には軽油が満載されており、予備タンクとして機能する
62口径105mm主砲。下部に見えるのはドーザーブレード
後部に装着する収納ケース