レビュー
「ROBOT魂 <SIDE MS> PF-78-1 パーフェクトガンダム ver. A.N.I.M.E.」レビュー
「プラモ狂四郎」を象徴する名機がついに「ROBOT魂 <SIDE MS>」で登場!
2020年6月11日 12:29
ジャンル:フィギュア
発売・開発元:BANDAI SPIRITS
価格:7,920円(税込)
発売日:5月23日
全高:約12.5cm
1980年代初頭、狂乱のガンプラブームの折りに、当時の子供達を虜にしたコミックが講談社の「コミックボンボン」でスタートした。そのタイトルは「プラモ狂四郎」。やまと虹一氏とクラフト団が手がける、プラモデルをテーマにしたコミックで、このコミックでは「プラモシュミレーター」を使うことでプレーヤーが自分が作ったプラモデルに乗り込み戦いを繰り広げるのだ。主人公の京田四郎と仲間達が、自ら作り上げたプラモデルに乗り込で戦うという内容には、大いにワクワクさせられた。
そんなは「プラモ狂四郎」に登場したオリジナルのモビルスーツが、本稿にて取り上げる「パーフェクトガンダム」だ。四郎が劇中で初代ガンダムを改造した機体で、「プラモ狂四郎」オリジナルの機体であるが、後に「PF-78-1」の型番で「MSV(モビルスーツバリエーション)」としてプラモデル化された機会もある人気の機体だ。
その魅力は全身に追加された武装にある。体中に追加武装を取り付けたガンダムは子供だけでなく当時のロボットアニメにも大きな影響を与え「フルアーマー」という追加武装の流れにも繋がっていく。そのパーフェクトガンダムが、満を持して「ROBOT魂 <SIDE MS>」にて発売となった。MSVでの設定を取り入れつつも、コミック版のイメージを強調する、同シリーズでも異色のアイテムとなった。その魅力を紹介していきたい。
ガンダムからパーフェクトガンダムへと換装し、シミュレーション・ゴー!
「プラモ狂四郎」は、自分が作ったプラモデルに乗り込んで、仮想空間の中で戦うという「プラモシミュレーション」が現実となった世界が舞台であった。といっても未来の話というわけではなく、プラモシミュレーションが存在すること以外は1980年代当時のプラモデルファン達の日常が描かれ、連載初期には当時ブームだったガンプラを買えた買えないということに一喜一憂したり、作ったプラモデルの塗装や改造をプラモシミュレーションを介して自慢し合ったりするシーンもあり、小中学生の世代はそれに共感した。
1/144ガンダムの股関節に旧ザクのパーツを移植して可動域を広げたり、糸はんだを巻いて自在に動かせるグフのヒートロッドを作ったりと、改造作例をマネしたファンもいたのではないだろうか。
次々と現われるライバルとのシミュレーションバトルが激化してくると、四郎達のプラモ製作の腕は飛躍的に向上し、小中学生にはちょっとレベルの高すぎる改造……、というよりはもうフルスクラッチに近いレベルの作例が登場し、改造をマネするのは難しくなってしまったものの、そのバトルは熱く、作品やメーカーの垣根を越えた夢の対決や、キットの特徴や欠点が戦いに反映されるという、プラモデルとしてのリアルを取り込んだ設定なども楽しかった。
そんなシミュレーションバトル激化の最初の山場となった、サッキー武田&サッキーファイブとのバトルに、このパーフェクトガンダムは登場した。四郎が自ら考案し、徹底的な改造を施したオリジナルのガンダムであり、サッキーが作り上げた巨大な「パーフェクトジオング」との激しいバトルを展開する。
その後のバトルでの敗北により、新たな「パーフェクトガンダムII(フルアーマーガンダム)」や「パーフェクトガンダムIII(レッドガンダム/レッドウォーリア)」も生まれたが、この初代パーフェクトガンダムは根強い人気で作品の象徴となり、ガンプラの「マスターグレード」やフィギュア「GUNDAM FIX FIGURATION」などのシリーズでも発売され、その後のゲーム作品などにも登場している。「プラモ狂四郎」の作品コンセプトを現代に受け継いだ「ガンダムビルドファイターズ」の最終回で、主人公イオリ・セイの父タケシが乗って現われたシーンも記憶に新しい。
初代ガンダムを改造した機体ではあるものの、その意匠が残っているのは頭部ぐらいで、全身にアーマーをまとい、新たな武装を備えたマッシブなシルエットが特徴だ。「プラモ狂四郎」では、各種アーマーはプラ板やポリパテを使った改造によって構築されていたが、後のワールドシミュレーション大会の決勝戦では、アーマーの着脱を実現させ、「MSV」シリーズとして1/100スケールでプラモデル化されたときにそのギミックが再現された。
今回の「ROBOT魂 <SIDE MS>」のパーフェクトガンダムも、素体となるRX-78-2ガンダムに付属のアーマーを組み付ける仕様なのだが、この素体ガンダムは発売済みの「ROBOT魂 <SIDE MS> RX-78-2 ガンダム ver. A.N.I.M.E.」と同等のクオリティで、単独でもプレイバリューが高い。パーフェクトガンダムの装備ではないビーム・ライフルやハイパー・バズーカなども付属し、原作初期の四郎の活躍を(気分的に)楽しんでみるのもいいかもしれない。
アーマーを組み付けて完成したパーフェクトガンダムは、ボリューム感を持たせつつも、太っているような印象はなく、理想的なシルエットを作っている。顔は「プラモ狂四郎」劇中の作画に合わせて、目の下の赤いクマドリ的な部分が少し広めにデザインされている。
近年のスタイリッシュな顔つきと比較すると「機動戦士ガンダム」放映当時の作画や設定画を思わせるイメージで、その世代の筆者も結構好みだったりする。その他、劇中で壊れた腕時計のバンドを使ったというエピソードのあるシールドのベルトはシルバーで塗装されていたりと、原作版を意識したカラーリングも嬉しい。コミックス(KC版)の表紙などではスネやバックパックなどに黒を加えたカラーも存在するが、あまり一般的ではなく、個人的にはこのカラーリングがベストだと感じられた。
全身にアーマーをまとっているため、当然ながら素体のガンダムの可動域にある程度の制限が出てしまうわけだが、原作の中で見られたようなポージングは十分可能だ。4つ付属するバーニアエフェクトのパーツにより、動きを演出できるのもいい感じである。何より嬉しいのは2種類のコミック版フェイスで、これを使うことで一気に劇中のイメージに近づく。ガンダムの表情が変わる演出は、SDガンダム以外ではかなり珍しく、それがフィギュアで再現されるというのは新鮮な演出でもあった。
この手のアーマーを着脱可能なフィギュアにありがちな、ポーズを付けている最中などに取り付けたアーマーが外れてしまう、いわゆる“ポロリ”が頻発したのは少々残念なところだった。特に腰や股間については、脚を動かすとはじけ飛んでしまうこともあった。またバックパックも大きさの割にダボが小さいため、こちらもちょっと外れやすいように感じられた。購入者の中には、腰のアーマーに限っては、自己責任において接着してしまったという人もいたようだ。
ポロリの欠点は見受けられたものの、極端なポーズを取らせなくても見栄えのする機体であり、顔のデザインなど、昭和のガンダムのテイストを味わえるのもいいところだ。昨年秋の「TAMASII NATIONS 2019」では、参考出展されたパーフェクトジオングとの対決が再現されていたが、その他にも、レッドガンダムやガンキャリアー、武者ガンダムといった名機の復活に期待をかけつつ、このパーフェクトガンダムでさらなるプラモシミュレーションの追体験を楽しもうと思っている。
(C)創通・サンライズ