レビュー

プラモデル「日本海軍 戦艦 大和 “進水80周年記念”」レビュー

絞ったパーツ数と組み立てやすさ。エントリーユーザーにオススメのプラモデル

ジャンル:プラモデル

開発・発売元:ハセガワ

価格:6,900円(税別)

発売日:9月16日

サイズ:全長282mm×幅91mm

パーツ数:282

 今回、ハセガワから1/450スケールの「日本海軍 戦艦 大和 “進水80周年記念”」が発売されました。本商品そのものは以前発売されたキットですが、大和進水80周年を記念して装いを一新したものです。

 本商品には封入特典として、加藤単駆郎氏のパッケージイラストがA2ポスターと、南北朝時代の武将・楠木正成が「非は理に勝たず、理は法に勝たず、法は権に勝たず、権は天に勝たぬ」という意味で旗印として掲げた〈非理法灌天〉(現代語では非理法権天)の手ぬぐい(900×340mm)が付いてきます。

 戦艦大和のプラモデルは様々なものが出ていて、1/350スケール、全長752㎜という大型のサイズのものもあります。こちらのパーツ数は1,500という大ボリューム。一方、ハセガワの「日本海軍 戦艦 大和 “進水80周年記念”」は282パーツという抑えた部品点数と、適切かつ少ないパーツ分割で構成され、艦船モデルにチャレンジした事のないエントリーユーザーや、老眼鏡が必要な中高年層モデラーでも安易に組み立てられる親切設計のキットです。

 今回はあえて“初心者向け”を意識し、無塗装で組み立てました。無塗装でもパーツそのものの造形、精密さが実感でき、大和がどのような船だったかを楽しめます。艦船モデルの特に大型モデルは難易度が高い商品が多いですが、たっぷり1/450という大型スケールモデルでありながら初心者にもオススメという常識を覆した習作キット紹介したいと思います。

【パッケージと同梱物】
加藤単駆郎氏のパッケージイラスト
「非理法権天」手ぬぐい。天一号作戦時、「非理法権天」の旗が大和に掲げられたと言われています
【日本海軍 戦艦 大和 “進水80周年記念”】
ハセガワの塗装した完成写真。今回のレビューでは初心者向けを意識し、あえて無塗装で組み立てました

大型パーツで組み立てやすい船体の組み立て

 早速組み立てていきましょう。船体は左右2パーツで構成されています。途中で継ぎ目もなく、特徴的な船体ラインをストレスなく組み立てる事が出来ます。船体内部に5枚のキール(竜骨)パーツを組み込む構造。これを船体内部に組み込むことで、経年による船体の変形を防ぎ、強固な本体ブロックを形成する事が出来ます。

【2パーツで構成された船体】
途中で継ぎ目もなく、特徴的な船体ラインをストレスなく組み立てる事ができます
船体内部に5枚のキール(竜骨)パーツを組み込む構造です

 キールパーツは全部で5枚。それぞれ組み付ける場所に番号が刻印されているので、間違えることなく接着する事が出来ます。

 次に各甲板を取り付けます。上部甲板は3枚と後部甲板の4パーツ構成されており、木目やストリップパターンも精密に再現されています。通風塔や昇降口、キャプスタンなど各種構造物もシャープなディテールで彫り込まれており、組み立てながら艦の構造などを知る事が出来ます。

【キール】
船体を支えるキールを取り付ける。それぞれ組み付ける場所に番号が刻印されているので、間違えることなく組むことができます
【甲板パーツ】
上部甲板は3枚、後部甲板は4パーツの構成。各種構造物もシャープなディテールで彫り込まれています

 組み立てではまずは前部甲板と後部甲板を取り付け、その後に中央の木甲板と後方の飛行作業甲板を取り付ければ、船体の工作はほぼ終了です。

 船体が完成したら、艦底部にスクリューと舵を取り付けます。スクリューは片側2基、合計4基ですが、左右ではプロペラの向きが異なるので注意しましょう。また艦首には主錨も取り付けます。これで船体の工作は終了。いよいよ上部構造物の製作に移ります。

【甲板の取り付け】
前部甲板と後部甲板を取り付けます
その後に中央の木甲板と後方の飛行作業甲板を取り付けます
【艦底部の組み立て】
4本のスクリューと舵を取り付けます
艦首に主錨を取り付けます

高い密度が楽しい大和の上部構造物

 次は甲板上の構造物を製作していきます。前檣楼(艦橋)・煙突・後檣楼はシェルター甲板という構造物の上に乗っているので、このブロックは並行して製作し、最終段階で各構造物を組み合わせると良いでしょう。前檣楼・煙突・後檣楼は基本部分が左右2パーツで構成されているので、まずは基本となるブロックを接着し、その後に各装備を取り付けて行きます。

 シェルター甲板の基本部分は1パーツですが、各構造物を取り付ける事で、複雑な構造を再現していきます。まずは射撃装置や高角砲・機銃の台座などを取り付けて行きます。煙突の周辺にも探照灯の台座、ファンネルキャップなどを取り付けて行きます。

【構造物の各パーツ】
前檣楼(艦橋)・煙突・後檣楼はシェルター甲板という構造物の上に乗っている。最終段階で組み合わせるため並行して作っておくのが良いでしょう
【シェルター甲板の基本部分】
各構造物を取り付ける事で、複雑な構造を再現していきます

 戦艦の頭脳である艦橋塔は正しくは前檣楼(ぜんしょうろう)と呼びます。この部分には昼・夜戦闘艦橋、射撃指揮所などが集中しており、外部構造物として射撃装置や測距儀、電波探信儀(レーダー)などが装備されています。これらを順番に取り付けて行く作業となります。特に最後期、前檣楼には最新装備の2号1型電波探信儀が装備され、有名な艦橋塔のシルエットを形作っています。

 続いて各種射撃装置と探照灯、2号2型電波探信儀のパーツを取り付けます。射撃装置は4タイプが使用されていて、艦橋塔やシェルター甲板の各所に取り付けて行きます。

【前檣楼の組み立て】
昼・夜戦闘艦橋、射撃指揮所などが集中した前檣楼。射撃装置や測距儀、電波探信儀(レーダー)などが装備され、大和ならではのシルエットが形成されていきます
【射撃装置と探照灯を取り付ける】
非常に細かいパーツの、射撃装置と探照灯、2号2型電波探信儀のパーツを取り付けていきます

大和の装備の変遷を実感、多数の機銃の取り付け

 高角砲・機銃の取り付けです。まず取り付けるのが、12.7mm連装高角砲(40口径八九式12.7cm連装高角砲・A1型改3)のパーツです。12.7cm連装高角砲にはシールドなしとシールド(爆風避盾)付きの2タイプが存在しますが、基本的には同じ装備です。

 写真右のシールドの中には、写真左の高角砲が現われる構造となっています。これをシェルター甲板中央に2段構成で取り付けて行きます。下段がシールド付きで、上段がシールドなしの配置となっています。余談ですが同型艦の武蔵ではこの高角砲の配置が上・下段で反対になっています。このような装備の違い確認し楽しむ事ができるのもプラモデルの醍醐味と言えるでしょう。

【12.7mm連装高角砲】
シェルター甲板中央に2段構成で取り付けて行く。下段がシールド付きで、上段がシールドなしの配置となっています

 次に25mm三連装機銃(九六式25mm三連装機銃)を取り付けます。この機銃は少々複雑で、一番左がシールドなしの機銃で、残り3つがシールド付きの機銃です。仮に左からA・B・Cタイプと呼びます(組み立て説明書でも、この呼び方をしています)。

 このシールド付き25mm三連装機銃は増設された時期によってシールドの形状に違いが確認できます。写真の左が初期段階で装備されていたもので、シールド周辺の角に丸みが付いています。最も右が天一号作戦(菊水作戦)直前に増設されたタイプで、シールドの角はエッジが立ち鋭い形状をしています。

 シェルター甲板に、Aタイプの25mm三連装機銃とシールドなしの三連装機銃を取り付けます。このシールドなしの25mm三連装機銃座は、映画「男たちの大和」でもドラマの舞台になった機銃座ですので、細かなディテールや運用方法はこの映画を観るとよく理解する事が出来ます。

 25mm三連装機銃は上甲板にも各所に装備されています。まずは最も初期から装備されていたAタイプを取り付けます。艦橋塔横、左右1基ずつ装備されています。

【25mm三連装機銃】
時期によってシールドの形状に違いがある。写真の左が初期段階で装備されていたものです
シェルター甲板に、Aタイプの25mm三連装機銃とシールドなしの三連装機銃を取り付けます
25mm三連装機銃は上甲板にも各所に装備されている。まずは最も初期から装備されていたAタイプを取り付けていきます

 次にBタイプの25mm三連装機銃を取り付けます。こちらはレイテ沖海戦の直前に増設された物で、木甲板中央の舷側と、飛行作業甲板、カタパルト近辺に装備されています。

 最後にCタイプの25mm三連装機銃を取り付けます。先ほど取り付けたBタイプ2基の間に片舷3基装備されています。このCタイプは大和最後の出撃となった天一号作戦(菊水作戦)前に増設された物です。このように増設順に取り付けて行くと、当時の大和の変貌ぶりが良くわかります。同時に時代が戦艦同士に砲撃戦から、航空機による攻撃へ戦術の移り変わりを理解する事が出来ます。

 さらにシールドなしの25mm三連装機銃を各所に取り付けます。簡易的なシールドとセットで配置されていることから、シールドの製造が間に合わない事が伺い知れます。同型艦武蔵には土嚢で囲まれている物も多く、応急的な増設を行なった事を感じ取ることが出来ます。

【25mm三連装機銃】
レイテ沖海戦の直前に増設されたBタイプを取り付けます
Cタイプの取り付け増設順に取り付けて行くと、当時の大和の変貌ぶりが良くわかります
応急的に取り付けられたシールドなしの機銃です

戦艦装備の主役、主砲塔・副砲塔の製作

 いよいよ戦艦装備の主役、主砲塔・副砲塔を製作します。大和型には当時世界最大、最長の射程距離を誇る46センチ3連装砲塔装備されていました。

 しかし正式名称は九四式45口径40cm砲と呼称され、実際の大きさが秘密にされていました。パーツ構成は基本部分がわずか4パーツで構成されていますが、複雑な大和の主砲形状を見事に再現しています。副砲は60口径三年式15.5cm砲が装備されています。これは軽巡洋艦クラスの主砲に採用されていた砲塔で、どれだけ大和型戦艦が巨大なのかを理解するための基準にもなります。

【主砲塔・副砲塔】
主砲は4パーツで構成
副砲は軽巡洋艦クラスの主砲に採用されていたもの。大和の巨大さを実感できます

 主砲塔・副砲塔を甲板の各バーペットに装着していきます。なお2番・3番砲塔上部には先ほどの25mm三連装機銃が増設されています。同時に25mm単装機銃も上甲板に接着していきます。かなり大和としての全貌が見えてきました。ここまで来ればあと一息です。

【主砲塔・副砲塔を装着】
主砲、副砲、機銃を取り付けていきます

もうすぐ完成! 水上偵察機や、前檣楼・後檣楼・煙突を取り付け

 大和には戦闘用の武装以外にも様々な装備が存在します。代表的な物が零式水上偵察機11型と、そのカタパルト(呉式二号五型射出機)、6トン起倒式ジブクレーンです。これらを組み立て取り付けます。なお、このジブクレーンに付属の空中線支柱は天一号作戦(菊水作戦)時には取り外されていたようです。

 また、水上偵察機も同作戦時には片側1機のみを搭載されていた説もあります。今回は模型的なバランスを考え水上偵察機は両側2機を搭載し、空中線支柱は当時の航空写真からも確認できるので取り付けないことといたしました。

【水上偵察機を配置】
細かくパーツ分割された零式水上偵察機11型
ジブクレーンに付属の空中線支柱は天一号作戦(菊水作戦)時には取り外されていたようなので、取り外しました

 さあ、いよいよシェルター甲板と前檣楼・後檣楼・煙突を取り付けて完成となります。煙突後方にはマストが装備されますが、細く破損しやすいパーツなので最後に取り付けるのが良いでしょう。

 これで完成です。大型艦船モデルのほとんどは細かいパーツ分割のため、部品点数は多く、細かいパーツも多数存在します。しかしこのハセガワ1/450大和は少ないパーツ構成と適切な分割でとても組み立て易く、手軽に戦艦大和の雄姿を楽しむ事ができる数少ないキットです。

【前檣楼・後檣楼・煙突等を取り付ける】
いよいよ完成。煙突後方にはマストが装備されるが、細く破損しやすいパーツなので最後に取り付けるのが良いでしょう

 初心者は物怖じすることなくチャレンジでき、本格派モデラーは基本組み立てにストレスを感じることないので、塗装やディテールアップに労力をつぎ込む事ができる習作キットです。艦船モデル未経験の方も大和竣工80年目の節目に、是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか?

 最後にこのプラモデルの塗装について触れておきます。やはり本商品は基本的には塗装前提のキットなのです。しかし全塗装は難しいという人も多いと思います。本体の「軍艦色」部分は成形色を活かし、喫水線より下を艦底色で塗装するだけでも、雰囲気が一段とリアルに仕上げることができます。

 塗装図を参考に船体の上半分をマスキングテープなどで覆い、缶スプレーなどで塗装を行うと良いでしょう。その際、同名の宇宙戦艦のような真赤な色ではなく、赤と茶が混じった「艦底色」を用いるのが大切です。もし余裕があるようでしたら、スクリューのプロペラ部分を「金色」で塗装すると、より雰囲気が良くなります。

 また、更にチャレンジするのであれば上甲板の檜部分を「タン」で塗り分けると良いでしょう。ただし甲板上には多くの構造物があり、この部分は「軍艦色(成形色)」なので、これらを避けて塗る必要があります。スプレー塗装の場合は細かなマスキング作業が不可欠となりますので、自信のない方は筆を用いて塗装を行う方が簡単だと思います。それぞれの模型スキルに合わせて塗装方法を選択し、チャレンジしてみてください。

【完成!】
【ハセガワの完成写真】
塗装を施すことで味わいが変わります