レビュー
食玩「SMP タイムボカンシリーズ 逆転イッパツマン トッキュウザウルスセット」レビュー
2021年8月11日 00:00
ニッコリ目が特徴のリリーフドンは、逆転王と合体してトッキュウザウルスに変形!
そしてこのセットにのみ付属するリリーフドンは、回転するタイヤでコロ走行する、ちょっと懐かしい感じのするキットだ。本体のタイヤは内側からピンで固定し、トッキュウトレーラーはシャフトを使ってタイヤを固定する仕組みで、ともにフリーで回転する。またリリーフドンの白のパーツは、ガンプラのグロスインジェクションのような艶のある成形で、ニッコリ目がプリントされた瞳も完成時の機体のアクセントになっている。
本体のサイズに合わせてパーツも大きく、可動範囲も少ないので、とても作りやすいキットであった。また逆転王のメイン武器の一つである「魔神棒」は、このセットにのみ付属する。面白いのは卵形コンテナで、カプセル状に上下に割れるようになっていて、中に細かい余剰パーツを入れられるようになっている。武装類はさすがに無理だが、ディスプレイするときにこれが結構便利だったりする。
劇中のシーンを再現するような、忠実な合体変形を体験できる
最大のギミックである合体変形だが、完成時は劇中のプロセスとは逆に、逆転王&リリーフドンの状態から始める。分離する頭部の弾丸ヘッド号を取り外し、腕を上げ、バックパックの翼とノズルを収納。トッキュウザウルス胸部のマークは、バックパックのパネルを外して裏返しにして装着すると現れる仕組みだ。バックパックを回転させて前方に移動させ、手首を外してツメに交換、脚部を背中側に折りたためば準備完了だ。リリーフドンは首を持ち上げてトッキュウトレーラーを外に出すと本体に大きな空洞ができるので、そこに逆転王を収納することでトッキュウザウルスになるといった具合だ。この変形プロセスを逆にすることで、劇中の逆転王への変形を楽しめるのである。変形時は差し替えが必要なのは手首ぐらいで、それ以外は完全変形といって差し支えない。変形させるときはパーツが外れてしまうこともなく、毎回「嗚呼!逆転王」のフレーズを口ずさみながら変形ギミックを楽しんでいた。
筆者もスーパーミニプラはプライベートでも結構買って作っているが、作りやすさやパーツの色分けはこれまでのシリーズからさらに進歩しているように感じられた。数年前のシリーズならシールで対応していたような箇所もパーツや塗装となり、触っていてはがれてしまうアクシデントはほとんどなくなっている。アンダーゲートの採用に加えて、ゲート自体も細くなっているので、よく切れるニッパーなどを使えば、組み立て後のゲート跡もそれほど目立たなくなっているのも嬉しいところだ。
その一方で気になるところもいくつかあった。まずは説明書なのだが、パーツリストがないため、組み立て前のパーツ確認が困難だということ。どんなパーツがあるかリストと照らし合わせてチェックしたい人は多いだろうし、あれば万が一の欠品にも対応しやすい。SMPの説明書は公式サイトでPDF形式で公開されているため、印刷物を入れるのが難しければ、そこで公開してほしいと思った次第だ。
またこれは筆者が購入した個体の不具合なのだが、リリーフドンの左前輪パーツをニッパーで切り出す際、ゲートの付け根に異物があったようで、ガリッという音がしてニッパーの刃が欠けてしまったのだ。体験したことのない出来事にしばらく唖然としてしまったのだが、実際に起きた不具合であり、あえてここに記しておきたい。こうした成型時の異物混入が一体どの程度の確率で起こるものなのかはわからないが、それがゲートの付け根に入っていたのは、運が悪かったと思うしかない。同時に今後のシリーズの品質向上には一層力を入れてほしいと思った次第である。
不具合のある製品に当たってしまったのは運が悪かったが、総合的な満足度は非常に高く、完成後も何度か合体変形を繰り返して楽しんでいる。何より、放映から39年が経過したこの今、写真のような完成度の高いトッキュウザウルスの造形が比較的安価で手に入ったことが嬉しく、動かしても楽しめる合体変形のプレイバリューの高さもその価値を大きく高めた。筆者がTwitterで見かけた作例では、パーツの一部をメッキ加工して当時のおもちゃ風に仕上げている人がいて、個人的にもう1セット入手してそれをマネしてみたいとも思った。
スーパー戦隊や勇者シリーズなど、人気のメカを主軸に置く一方で、今回のトッキュウザウルスや12月発売予定の「クラッシュギア」のような、ピンポイントに刺さるラインナップを据えてくるのが、スーパーミニプラからSMPシリーズへと受け継がれた大きな魅力だ。さらには10月からはディテール重視のスピンオフシリーズ「SMP ALTERNATIVE DESTINY」も展開予定で、新たなユーザーの獲得にもチャレンジしている。今後も筆者を含む幅広いユーザーの期待に応え、そしてその期待をいい意味で裏切ってくるラインナップを楽しみにしたい。
©タツノコプロ