レビュー

「リコリス・リコイル」ガスガン「千束の銃」レビュー

エアガン初心者向けガイド付き

【千束の銃】

1次生産分:3月14日発売

2次生産分:8月29日再販

価格:32,780円

全長:210 mm

銃身長:74 mm

重量:784 g(空のマガジンを装着した場合)

弾丸:6mm BB(0.2〜0.25g)

動力源:「ガンパワーHFC134a」または「ノンフロン・ガンパワー」

装弾数:22+1発(1発は本体に装填した場合)

 今回は、東京マルイとTVアニメ「リコリス・リコイル」の公式コラボレーションガスブローバックハンドガン「千束の銃」について、TVアニメ「リコリス・リコイル」の魅力を改めて紹介しながら、初めてエアソフトガンを手にする方への注意点を踏まえつつ製品を検証していく。

 そんな「千束の銃」を早速レビューしていこう。


今からでも間に合うTVアニメ「リコリス・リコイル」の魅力とエアソフトガンとの親和性の高さ「千束の銃」を改めて紹介

 「リコリス・リコイル」は2022年7月~9月に放送されたオリジナルTVアニメ作品だ。敵の銃撃戦では銃のリアルな作動が描写されており、銃器ファンも唸る迫力だ。本作でガンアクションの魅力を知ったアニメファンも多いことと思う。

 今までエアソフトガンを購入したことがなかったアニメファンからも、放送直後から劇中で使用される銃器に似たタイプのエアソフトガンが大人気となり、特に東京マルイの「デトニクス.45 コンバットマスター」や「M&P 9」に「ストライクウォーリア」が瞬く間に市場から消え、中古品までプレミア価格で取引された。このように極めてエアソフトガンとの親和性が高いのがTVアニメ「リコリス・リコイル」の大きな特徴だ。

 今回のコラボモデル「千束の銃」は、「錦木千束」が劇中で使用するハンドガンをガスブローバックハンドガン化した製品だ。

 また、千束は銃にあえて非殺傷弾と呼ばれる特殊な弾丸を使用している。この弾丸は命中した相手に強い衝撃を与えるだけで人体を破壊しない特徴がある。千束は常人を超えた動体視力で発射される弾丸の射線から身体を反らす特別な能力を持っていて、劇中では接近戦で拳銃を打撃武器としても使用する迫力のアクションシーンも見せてくれた。「千束の銃」は、単に武器というこれまでの概念を超えた存在感があるのだ。


初めてエアソフトガン購入を考える方へ贈るガスブローバックハンドガン「千束の銃」購入の諸注意

 「『千束の銃』で初めてエアソフトガンを購入する」というアニメファンの方も多いと思う。そこで「千束の銃」を紹介する前に購入するに当たっての注意点をお伝えしたい。

 まず、注意してほしいのは、東京マルイの「千束の銃」は、18歳以上(学生含む)を対象にした製品であるという点。玩具やゲームなどに対象年齢が記されることは当たり前となっているが、エアソフトガンの対象年齢は各都道府県の条例で決められたパワーに抵触しない様に定められている。0.135ジュールを超えるエアソフトガンは、18歳未満は使用・所持することは条例に抵触するというルールになっている。

 なお、東京マルイからは上記の「0.135ジュール」(これは最も数値が厳しい県の定める値)を下回る数値で製造・販売している「対象年齢10歳以上用商品」も展開されている。

 今回の「千束の銃」を含め、対象年齢18歳以上用商品を18歳未満へ販売したり、18歳未満の青少年が購入・使用することはできない。これは全国の条例で定める値を超えているためである。保護者であっても購入して貸与したりしてはいけない。例えば「購入したエアソフトガンをイベントなどで18歳未満のコスプレイヤーに貸して写真撮影」という行為もNGだ。TVアニメのグッズではあるが、それ以前にエアソフトガンであり「BB弾を発射する」という危険を伴う製品である点に充分注意して購入し、取り扱ってほしい。


東京マルイ「千束の銃」は公式コラボならではの再現度! 溢れるリアル感

「千束の銃」

 ではここから、ガスブローバックハンドガン「千束の銃」を仔細に見ていく。まず「千束の銃」が他の製品と違っているのは、パッケージごと個別にビニール袋に封入されていること。貼付のテープは再利用を前提にしている。キャラクターがプリントされ、解説も書かれたスリーブ状のパッケージを痛めないように出荷段階から陳列、保存に至るまで考えらているのだ。

流通過程で傷つかないよう、ビニールでパッケージが守られている
保管時に再利用可能だ

 東京マルイ製品のパッケージへのこだわりが際立っているのは他のエアガンでも折にふれ感じていたが、「千束の銃」からはさらにキャラクターと作品への想いが伝わってくる。

 テープを慎重に剥がすと、スリーブに収まった製品の外箱が取り出せる。この外箱も、劇中で千束が初めて拳銃を受け取った時に収められていたガンケースをイメージしたこだわりが感じられる物だ。

スリーブ表面には千束と拳銃の名シーン
裏面には作品と、「千束の銃」の解説。ガンケースの画像もある
外箱は劇中のガンケースがモチーフ
開閉はマグネット式になっているこだわりよう

 内側に取扱説明書が収められた上蓋を開けると、「千束の銃」本体と外された専用マガジン1本、劇中同様にもう1本予備マガジンを収める窪みもあり、中央下にはパーツ、試射用BB弾、専用保護キャップ、空撃ち用のフォロワーストッパーが入っている。パッケージングの見た目から劇中の雰囲気が再現されているのは、ファンには嬉しいポイントだ。

 ここで「千束の銃」本体を取り出す前に、まずは取扱説明書を熟読してほしい。エアソフトガン初心者は勿論、「千束の銃」だけの操作もあるのでベテランユーザーも必ず目を通していただきたい。

 説明書を読み終わった所で「千束の銃」を仔細に見ていこう。やはりまず目に入るのは、スライド前部の特徴的な形状の「コンペンセイター」だ。当然ながら新規に製作されていて、劇中の攻撃的なフォルムを完璧に再現している。

 上部に入った3本のスリット、横に斜めに彫り込まれた穴、指をかけられる後方の出っ張りに至るまでしっかり立体化に成功している。精悍な5枚の棘の歯の先端は面取りになっており、過剰に相手を傷付けない千束のイメージ通りだ。外から見えない、下側から横に抜ける穴も再現されている。

「千束の銃」のトリガーガードには公式の注意書きが巻かれている
コンペンセイターに合わせて安全キャップも新規製作された

 そのコンペンセイターから繋がるスライド部分も新造され、フロントサイトをかさ上げした形状に変更されている。スライド新造に伴い、パーツの多くを共有する「デトニクス」では左側にクッキリと刻印されていた製品名がオミットされた。刻印の無い、のっぺりとしたスライドは無国籍でアンダーグラウンド感がありカッコ良い。「千束の銃」らしさが漂っている。

 フレーム右側には「東京マルイ」の刻印があるが、グリップ後方の「ASGK(日本遊戯銃協同組合)」マークはハウジング底部に移っている。細かく目立たない加工だが、これも「千束の銃」らしさを醸し出している。

刻印の無いスライドが新造された。フロントとリアの背の高いサイトにも注目
右側トリガー上に東京マルイの刻印がある
リアサイトは実用性が増している

 続いて「千束の銃」で目を引くのが、後端まで覆った握り易い形状のグリップパネルだ。表面に木目調のモールドが入り、セミグロスの塗装と相まって一見すると樹脂製のグリップとは思えない。また、「デトニクス」はグリップセーフティがないため、ハンマーバイトを予防するための形状としてグリッププレートを作っているため、切り欠きの形状が変わっている。

グリップの色合いは一見してリアルウッドを思わせる

 トリガーとハンマーも含め、全体的に表面がマットに仕上がっている。それにより、光の反射を防ぐ秘匿性の高い特殊任務用の拳銃であるとの自己主張が強烈に漂ってくる。そこへ鈍く輝くシルバーのバレルがアクセントになって非常に質感が高い。

 また、手にした感じは、スライドとフレームが樹脂製であるにも関わらず、ズシリとくる手応えだ。マガジンを装填するとマガジンバンパーが銃のフォルムに溶け込む。コンパクトにカスタマイズした拳銃は、秘匿性と引き換えに握りやすさを犠牲にすることが多いが、「千束の銃」はグリップの形状とグリップセーフティ、マガジンボトムに加わったバンパーによって、元のガバメントよりも握り易く、手に馴染む。「凄腕の戦闘員が無双する拳銃」というのに説得力充分なホールド感だ。

 高いホールド感のままに構えてみると、重過ぎず軽過ぎない重量で素直に腕を伸ばせ、新造されたリアサイトとフロントサイトを通して自然とターゲットを狙える。千束とたきなの拳銃は、他の銃器に比べて細かく設定・デザインされている。アニメでは動かす都合上、スライドを引く時に指先をかけるセレーション、スライドストップの段差など、線が簡略化されている部分もある。しかし今回、そのフォルムを立体に起こしながら、銃としての実用性、雰囲気を付け加えて3次元で再構築したのが「千束の銃」だと感じた。

 ではここからは「千束の銃」を撃っていこう。


「千束の銃」は実射性能も妥協なし! 初心者でもバシバシ当てれて気分はリコリス

 まず実射に入る前に「千束の銃」でエアソフトガンに初めて触れる方のために、ガスブローバックガンを撃つ時に最低限必要な物を確認しておこう。

「千束の銃」の射撃に必要な物とあると便利な物

 ガスブローバックハンドガンというからには、発射には専用のガスが必要となる。「千束の銃」には付属していないので別途購入してほしい。ガスは様々なメーカーから出ているが、成分の違いで性能が発揮できなかったり、作動不良や最悪の場合故障の原因にもなるので、必ず東京マルイ純正の物を使うようにしよう。

 東京マルイのガスは「NEWガンパワーHFC134aガス」と「ノンフロン・ガンパワー」の2種類がある。どちらを使っても問題はない。「NEWガンパワー」より若干値段の高い「ノンフロン」はパワーが若干低くなる傾向があるものの、環境負荷をより抑えられるうえに、冬期に冷え難いという利点がある。今回は手持ちの「ノンフロン」を使用した。

ガスガン用「NEWガンパワーHFC134aガス」
ガスガン用「ノンフロン・ガンパワー」

 次に弾だが、エアガンで発射する弾丸は直径6mmのBB弾だ。「千束の銃」には小袋に入った0.2gBB弾が100発付属するが、すぐに撃ち尽くしてしまうので別売りのBB弾を購入しよう。BB弾も色々なメーカーから出ているが、直径や表面の状態が微妙に違う。「千束の銃」に限らず、東京マルイ製品は純正BB弾で最も高いパフォーマンスが発揮できるようにパッキンやバレルの寸法が設計されている。

 他社製のものだと性能が発揮できなかったり、弾詰まりなどの故障の原因になったりもする。やはり東京マルイ純正のBB弾を使ってほしい。今回は屋外のサバイバルゲームでも使用できる天然由来成分配合のBB弾「ファイネストBB弾」を使用した。

ファイネストBB 0.2g弾(1kg)残念ながら赤いBB弾は無い

 上記のガスとBB弾があれば発射は可能だが、裸眼だと跳弾の心配がある。エアガンを撃つ際には専用のゴーグルを必ず着けよう。他にBB弾を入れるボトル、BB弾を装弾するローダーもあった方が、BB弾をこぼす心配も少なくなる。

□東京マルイ「ゴーグル」製品一覧

BBローダー

 これで必要なものが揃った。次は実際のエアガンの準備についてだ。まず、説明書を再読し、逆さにしたマガジンにガスをチャージしよう。続いてマガジンのフォロワー(マガジン内部のバネの先端に付いているもの)を下げ、BB弾を装填していく。「千束の拳銃」はシングルカラムで恐らく実弾の装弾数は6発+チャンバーに1発だが、「千束の銃」はBB弾をダブルカラムで22発+チャンバーに1発装弾できる。BB弾を装弾したらマガジンを装填、安全キャップを外してスライドを引き、パッと戻す。これで撃てるようになる。

ガスは逆さに充填する

 ここからは実際に撃つ際の注意点だ。ガスブローバックガンは、ターゲットを狙って引き金を引くとBB弾が発射され、スライドがブローバックして強烈な反動を感じられる動力源にガスを用いたエアガンのこと。BB弾はブローバックで自動的に発射可能な状態になるので、劇中同様に連射が可能だ。

 弾を撃ち尽くすとスライドが後ろに下がったままになるので、マガジンを交換し、スライドストップを下げ、再度発射という劇中同様のアクションが可能になる。劇中で千束は自由自在な姿勢で射撃を行なう。基本的にどの姿勢も可能だが、唯一、銃を逆さにして後ろを撃つのはガスブローバックガンの構造上できないので注意してほしい。

 「千束の銃」を実射していく。撃つと、東京マルイのガスブローバックガンらしいスライドのシャープで小気味良い作動を感じた。劇中の千束の気分で、ガンガン撃ちまくれる楽しさがある。パワーの方は、0.20gのBB弾で60.72m/h、0.4J弱。実用充分なパワーを持っている。見やすいサイトのおかげもあり、的に当てやすいのもいい。

実用充分なパワー

 また、「千束の銃」は可変ホップアップとなっていて、BB弾の重さを変えた時や外気温などでBB弾の弾道が変わった時に調整可能だ。ホップの調整はスライドを外して行なうが、「千束の銃」はコンペンセイターが付いているので、通常のガバメントシリーズよりも一手間かかる。しかし、工具無しのワンタッチでコンペンセイターを外せば、あとはスライドを途中まで動かし、スライドストップを抜くと外すだけだ。一端決まったらば、大体の位置を憶えておけば次回からは簡単に調整できる。

矢印部分がロックパーツ
白いドットが見えるまでずらす。ドットは蓄光式なので解りやすい
工具なしでコンペンセイタ-が外せる
スライドストップは丸い切り欠きに合わせると抜ける
スライドを外せばダイヤル式でホップ調整が可能

 「千束の銃」は握り易いグリップと見やすいサイトによる実射性能の高さを備えている。ホップの調整を工具無しで簡単に行なえるのも、初心者にもありがたい仕組みだ。コラボレーションモデルとして外観の再現性が高く、さらに実射性能にも妥協の無い製品だと言えるだろう。

 最後に「千束の銃」のアクセサリーに関して触れておこう。劇中でも「千束の拳銃」はアクセサリーを付けずに使用されていた。「千束の銃」も同じく、レイルシステムを備えていないので拡張性は低いがこれは劇中通りの仕様だ。

 マガジンは、「M1911A1コルトガバメント用スペアマガジン」などのガバメントシリーズの物を流用できる。「千束の銃」用の予備マガジン以外は、バンパーがないので取り付けた際にフォルムが崩れてしまうが、他のマガジンを持っていればサバイバルゲームなどで使えるのは有り難い。人気作品だけに色々な公式アイテムがあるので、組み合わせて楽しみたい。

 ただし、「デトニクス.45」用のマガジンは使えないため注意してほしい。

「千束の銃」にはガバメントシリーズ(ハイキャパのダブルカラムは除く)のマガジン(左)が使用可能
ガバメントのマガジンを装填した状態。見栄えは悪いが装弾数が増加する
「ガンキャリーツールボックス」はマガジンを抜いた「千束の銃」がぴったり収まる。「マルチポーチ」はガスとBBボトルローダ-をまとめられる


東京マルイ「千束の銃」は2次元をリアルに落とし込んだ本物感溢れるガスブローバックハンドガン!

 東京マルイの「千束の銃」を見て触って、まるでアニメから抜け出してきた様なフォルムの再現度を感じた。同時に、アニメに登場する拳銃を製品化した時にありがちな「グッズ感」はなく、他のエアソフトガンと並べても馴染むリアルさ、本物感があることにも驚いた。加えて実射すると、劇中の千束のガンアクションさながらにバシバシ的を撃ち抜く爽快感も味わえる楽しさを兼ね備えている。

 公式コラボモデルということで、形状を忠実に再現することが可能な反面、立体化する為に元のデザインを変えられないという難しさもあっただろう。しかし、「千束の銃」は東京マルイの作品とキャラクターへの想い入れと、エアソフトガンメーカーとしての矜持を具現化した様な製品に仕上がっている。

 期間限定生産品だけに、何度か再販が行なわれると思うので、TVアニメ「リコリス・リコイル」ファンでなくとも是非ゲットしておきたい製品だ。なお、オンラインで購入する際には定価よりも高額なものもあるため、正規のショップでないところからの出品に気を付けていただきたい。