特別企画
【静岡商談会】これぞ浮世絵2.5D! 浮世絵を木製立体モデルに!? ウッディジョーの「東海道五十三次」シリーズ
静岡模型の源流、木製モデルの質感が味わいを産む
2020年7月2日 16:30
筆者が静岡のプラモデルメーカーを訪れる際に、楽しみにしているメーカーの1つがウッディジョーである。その名の通り木製モデルを作り続けているメーカーで、「法隆寺五重塔」や「平等院鳳凰堂」など実在の木造建築と同じ木のパーツを複雑に組み上げて作る模型は、本当に圧倒される。
静岡は大きな河川があり、これを使って木材を運送、日本全国に運んでいた。木材加工も盛んで、古くから木材を加工する職人が集まっていた。アオシマは戦前から木材の玩具メーカーとして活動しており、こういった流れが静岡を「模型の世界首都」とした。木製モデルは、いわばその"源流"なのだ。
そのウッディジョーが現在新たな挑戦をしているのが、「東海道五十三次シリーズ」だ。江戸時代の大動脈、「東海道五十三次」の風景を木製モデルで再現しようというキットで、1つの建物ではなく土台を含めたジオラマキットとなる。1つの宿から河を渡る橋、関所など様々な風景を木製モデルのセットで表現している。
例えばわら屋根は、セットの中に麻の糸が入っており、これをほぐして適度な大きさに切った後屋根に貼り付けていくのだ。橋の下に流れる川の水の表現はレジンを流し込むのだが、このレジンはセットに入っていない。レジンは時間がたつと固まってしまうため、他の部品とセットにできない。長期間保存できる内容をセットにしているとのこと。
「ちょっとやり過ぎちゃったかなあ」と開発担当者であり代表取締役の常木氏が言うのは、シリーズの「由井 薩た嶺(さったれい)」。それまではジオラマ的なミニチュアの建物だったが、この商品では版画の浮世絵そのままの構図を、舞台での"書き割り”のように絵を描いた板を立てて立体ジオラマ化しているのだ。
版画と違って奥行きを持たせ、パースをつけて距離感を演出。木のパーツを使っているため版画風の味も出ている。2.5次元モデル、とも言うべき構図の面白さだけでなく、木製モデルだからこそ出せる味のある風景を作り出している。
【東海道五十三次シリーズ】
ひたすら感心する筆者に向かって常木氏は、「記者さんは皆感心してくれるけど、実際にうちの商品作ってくれないしなあ」とチクリ。ウッディジョーの商品はやはり作るための難易度、行程がものすごい。ランナーからパーツを外して塗装もせずに組み立てられるようなプラモデルと違い、細部まで調整し、時には火であぶってパーツを曲げたり、信じられないくらい細かい行程を積み重ねたりと、まさに一生ものの製造工程がかかるような商品も多い。正直、筆者も手が出せないでいる。
そのなかで「東海道五十三次」はスケール的に抑えめで、構造もシンプルだ。色々なアイディアが詰まったセットになっており、版画を模型化するというアイディアも面白い。ウッディージョーの"入門キット"としていいかもしれない。