レビュー
「VSMS 1/100 ゲートシオンマーク3 リッタージェット・破烈の人形(ホークヘッド)」レビュー
ツインスイング、翼型装甲、プラズマをまとった剣、F.S.S.の世界観を満喫できる
2025年12月6日 00:00
- 【VSMS 1/100 ゲートシオンマーク3 リッタージェット・破烈の人形(ホークヘッド)】
- 発売元:ボークス
- 価格:11,550円
- 発売日:11月22日(予約完売、2次分12月6日発売)
- ジャンル:プラモデル
- サイズ:全高305mm
ボークスが11月22日に発売したプラキット「VSMS 1/100 ゲートシオンマーク3 リッタージェット・破烈の人形(ホークヘッド)」はマンガ「ファイブスター物語(F.S.S.)」において、印象的な活躍が描かれた人気の高い騎体「破烈の人形」をモチーフとしている。
特に黒騎士デコース・ワイズメルが駆る「ダッカス・ザ・ブラックナイト」との対決はファンにとって強く記憶に刻まれているだろう。キットの人気も高く、1次生産分は完売、12月6日に2次分が発売となる。
ボークスの「VSMS(VOLKS SUPER MODELING SERIES)」はボークスが追求し続けるメカロボットの可動機構・造形表現を、インジェクションプラキットで表現するシリーズだ。第一弾が「VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト」であり、今回発売された「VSMS 1/100 破烈の人形」と並べれば、劇中の対決を再現できる。
「VSMS 1/100 破烈の人形」は永野護氏のデザインした破烈の人形を立体物として細部までチェックできる。「F.S.S.」ならではのロボット「ゴティックメード(GTM)」独自の関節構造「ツインスイング機構」や半透明の装甲、フレーム構造などを組み立てることで実感し、「F.S.S.」の世界をより深く理解できるのだ。
弊誌では先駆けて専用塗料を使用した塗装レビューを行っているが、本稿では成形色を活かした部分塗装で組み立てた。プラキットの詳細に触れ、魅力を紹介したい。
大出力でプラズマの剣を振るう、短期決戦型の騎体
キットを組み立てる前にもう少し破烈の人形の設定を紹介したい。破烈の人形は「F.S.S.」の舞台であるジョーカー太陽星団のクバルカン法国を象徴するGTMだ。クバルカン法国はかつてフィルモア帝国の一部だったが、帝国の分裂期に独立し、帝国の名を受け継ぐ現・フィルモア帝国の隣国としてフィルモアに次ぐ軍事力を誇る。厳格な戒律を守るルーン騎士団を擁する国家だ。
クバルカン法国の特徴は「法」と「徳」を重んじること。一定の確率で生まれる強力な力を持つ騎士を管理し、国民の利益のために奉仕させる「騎士法」を最初に作った国であり、強力な騎士国家や騎士領を法で1つにまとめ上げている。「徳」は優れた能力を持つからこそ、その力を国民のために使う行動を示した者が徳があると認められ、国家を代表する人物として選出される。
そのクバルカン法国を象徴する破烈の人形は「星団最強のGTM」とも呼ばれるものの、国家機密とされその情報は徹底して秘匿・隠蔽されているため、戦争での参加の記録も少なく、実態は謎に包まれている。正式名称は「マーク3・リッタージェット」。他のGTMより一回り大きく、その出力は非常に大きいと言われている。
装甲に姿を劇的に変えることができる「モーフィング装甲」を採用しており、戦闘機のような飛行形態に変形することができる。飛行形態時は空気を切り裂き、まるで空が破裂したかのような轟音を上げて飛行する。
他のGTMにはない特殊な点として、破烈の人形は「D.B.B.(ディストーション・ブレード・ブロウ)」と呼ばれる武器による攻撃を行うことができる。これは有り余るエネルギーを刀身に乗せ、発生するプラズマで装甲を電磁融解させることができる攻撃だ。加えてそのプラズマは、たとえ受け流してもGTMの動きを止める可能性があるという。かわすことでしか逃れられない、必殺攻撃なのだ。
しかしその攻撃を行うためにはチャージに0.3秒かかり、刀身にエネルギーがチャージされている時間は1秒。それを超えチャージし続けると刀身そのものが溶けてしまう。また強大な力を発揮する破烈の人形は、戦う時間が長引くと発熱が増大しパワーダウンする恐れもある、超短期決戦型の騎体なのだ。諸刃の剣ともいうべき、扱いの難しいGTMなのである。
「F.S.S.」の15巻で破烈の人形は、ダッカスを駆る黒騎士デコース・ワイズメルの前に空を切り裂く轟音と共に現れる。破烈の人形を操縦するのはルーン騎士団の騎士ミューズ・バン・レイバック枢機卿。ダッカスを制御するファティマ・エストはかつて破烈の人形と戦い敗れた記憶があり、その経験でデコースをサポート、2体の騎体は激闘を繰り広げる。
GTMは戦場や状態に合わせて調整され、その姿を変える。今回発売された「VSMS 1/100 破烈の人形」はダッカスとの対決時の姿を再現している。シリーズ第一弾の「VSMS 1/100 ダッカス」と並べることでマンガの名場面を再現できるだけでなく、破烈の人形とダッカスのデザインの違い、通常のGTMより1回り大きいと言われる破烈の人形のサイズ感を実感できるなど、楽しみがさらに広がる。ぜひ2体を並べて欲しい。
透明度の高い青い装甲、メタリックなフレーム、効果的な成形色でパーツを構成
それではいよいよ「VSMS 1/100 破烈の人形」を紹介していこう。まずはパーツからだ。本商品はパーツ総数294点、22枚のランナーで構成されている。
半透明の青、光沢のある白、透明の成形色のPS(ポリスチレン)と、フレーム部にメタリックな光沢を放つABS(合成樹脂)、さらに可動部にはTPE(軟質樹脂)と、腹部の一部には専用ABSを採用。パーツでは成形色だけでなく、樹脂の特性を活かしている。透明感と繊細な表現が得意なPSを外部装甲に、強度に優れたABSをフレームに、関節や可動部の軸受けにTPEを使うことで、可動にも力を入れている。
通常のプラモデル用接着剤はPS向けに作られており、ABSには別なABS用接着剤を使う必要がある。ボークスではABSとPSを接着可能な「ボークス フローセメント(流し込みタイプ)」に加え低毒性溶剤成分を採用した「ボークス フローセメント (流し込みタイプ) ウェルネスタイプ」を発売しており、これらを使用するとよりスムーズに組み立てられる。
ボークスはパーツの繊細な造形に定評のあるメーカーだ。破烈の人形は優美な曲線が多用された外部装甲、緻密なメカ描写が描き込まれたフレームや装甲表面など、永野護氏ならではの繊細なデザインを見事に立体化しており、パーツを見るだけでも、組み立てた手足を見ているだけでも、そのデザインセンスにうならせられる。早速組み立てていこう。
前後に長い頭部、翼のような背面装甲、胴体部の組み立て
「VSMS 1/100 破烈の人形」は顔部分の組み立てからスタートだ。目のパーツにマスクをかぶせる。目部分は基部を黒で塗ってから丸く造形された瞳部分を赤で塗り、マスクをかぶせることで、GTMらしい強い目の力を感じさせる表情で組み上がる。
マスクの内側の顔にあたるパーツをつけていく。本キットの場合、顔の基部はクリアパーツが使われている。破烈の人形は顔の側面に“イヤリング”をつけている。これを緑に塗ることで、透明感のある感じに仕上がる。
破烈の人形は頭は前後に長いデザインになっている。頭は主に青い成形色で造形されているが、設定を意識し頭部側面から後方にかけて黒で塗装した。「VSMS 1/100 ダッカス」はあまり塗装しなくても設定画に近い雰囲気に組み上げられたが、本商品の場合は、ある程度部分塗装を加えるとより設定に近づけられる。特に頭頂部の金色は印象的で、こちらは塗るとよりキャラクター性が強まる。ちなみに今回、部分塗装は筆塗りで行い、ウェザリング用塗料でスミ入れを行っている。
「VSMS 1/100 破烈の人形」は側頭部のパーツが「本編版」と「設定画版」の2種類が用意されている。今回は本編版で組み立ててみた。頭部には髪の毛のようにも見える長いスタビライザーを取り付けて頭部の組み立ては完了だ。
胸部分は内部フレームに装甲を取り付けていく手順で組み立てていく。「VSMS 1/100 破烈の人形」は光沢のある白いパーツを使うことで色分けを行っているが、胸中央は青一色だったため、こちらにも塗装を行った。胸の白い部分はデカールで破烈の人形のマークを貼るところでもあり、白く塗ることでマークが目立つようになる。塗装しておきたい部分だ。
胸部のデザインとしては肩甲骨から2つのアームが造形されているところに特徴がある。これは後で翼のような大型の「背面輻射フライヤー」を取り付けるアームとなる。アームは非常にがっしりした構造で、重くなるであろうフライヤーをしっかり支えられそうだ。
次は腹部。GTMの腹部はまるで背骨だけのように見える非常に細いデザインだ。キットでは軟質素材とABSを組み合わせた「可動用腹部」と、支柱の周りにパーツを組み付けていく「固定板腹部」の2つが用意されている。今回は可動用腹部を組み立て、銀に塗装してみた。破烈の人形の腹部は前面に透明の装甲板が配置されているのもポイントで、こちらも取り付けていく。
次は腰部分の組み立て、前部装甲も透明パーツで造形されているが、裏を銀に塗ることで設定に近づけることができる。腰ブロックは大きな腰の基部パーツに挟み込むように足の付け根を組み立てていくのだが、しっかりと足を差し込める堅牢な設計になっている。
破烈の人形のデザインの大きなアクセントとなるのが腰の後部装甲だ。左右に大きく張り出し、飛行機の翼のようなシルエットなのだ。この装甲もかなりの大ボリューム。破烈の人形が飛行形態に変形するという、騎体としての特性をしっかり感じさせるデザインだ。
これまでの部品を組み立てる。後ろに長く伸びた頭部側面装甲により強調された前後に長い頭、細い腹部に、大きな背面装甲とかなり独特なデザインのロボットであることが改めて実感できる。また、成形色によるパーツの色分けがとても効果的だと感じた。
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創作造形(C)造形村/ボークス





































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