特別企画

「ミニ四駆ジャパンカップ 2023」東京大会開催! 超難関コースを工夫を凝らしたマシンで駆け抜ける

【「ミニ四駆ジャパンカップ 2023」東京大会1】

7月22日、23日開催

会場:品川シーサイドフォレスト

 タミヤは7月22日、23日、品川シーサイドフォレストにて「ミニ四駆ジャパンカップ 2023」東京大会を開催した。22日は勝ち抜けなしの走行会形式の練習、23日は「トライアルクラス」、「ジュニアクラス」、「オープンクラス」の東京大会が行われ、全国大会の参加権を賭けての戦いが繰り広げられた。今回は23日の模様をレポートしたい。

 「ミニ四駆ジャパンカップ 2023」ではミニ四駆選手達は、「バニーホップ アメイジング サーキット 2023」というコースに挑戦する。「ミニ四駆ジャパンカップ」のコースは毎回難しく、マシンのセッティングの腕が試されるが、今回は特に難しく、完走率が低かった印象を受けた。その難しいコースでも選手達は工夫を凝らして対応していく。ミニ四駆の奥深さを見ることができたイベントだった。

コースアウト続出、ジャンプと厳しいカーブ連続の「バニーホップ アメイジング サーキット 2023」

 今回の「バニーホップ アメイジング サーキット 2023」についてはまずは走行動画を見て欲しい。5台の参加者で2つのレースを収録しているが、最初のレースで完走者はわずか1名、次のレースでは全員がリタイア。今回のレースでは完走者の少ない、かなり過酷なレースとなった。

【「ミニ四駆ジャパンカップ 2023」、リタイア続出の難関コース「バニーホップ アメイジング サーキット 2023」】
【バニーホップ アメイジング サーキット 2023】
山あり谷あり、かなり立体的なコースだ
赤丸部分が特に難関なポイントだ

 コースの詳細を見ていこう。特に難度を上げているのが赤丸で囲った「アイガーEVO 上り」、「アイガーステップ下り」という2つの場所。アイガーとはスイスの山で北壁は「死の壁」と呼ばれ登頂者を拒み続けてきた。「バニーホップ アメイジング サーキット 2023」はその危険な山を冠する場所が2つある。どちらも急角度でマシンをコースから浮き上がらせる。マシンの制御を試される凝った仕掛けとなっている。

 「アイガーEVO 上り」はアメイジングバンクから加速を経て、コースで最もスピードに乗った状態でのジャンプ台となる。しかもすぐに90度近い急カーブ。ここではいかに飛び出さず、そして安定して着地することが求められる。ここでは選手のマシン制御の腕が試される。スピード重視のマシンだと、コースを飛び越え吹っ飛んでしまうし、着地が悪いとカーブに対応できない。

【アイガーEVO 上り】
コースアウト続出のアイガーEVO 上り。ここを安定して乗り切るかが大きなテーマとなる

 さらに「アイガーステップ下り」は、マシンにとって断崖絶壁のような下りを越えることとなる。ここできちんと着地しなければ加速が足りず、アメイジングバンクが越えられない。パワー不足で越えられない車や、大幅なスピードダウンで抜かされてしまう車も目立った。

【アイガーステップ下り】
急角度の下りは車体が飛び出してしまう
安定して加速しないとアメイジングバンクは抜けられない

 さらに「カールセルチェンジャー」が選手達を悩ませる。ミニ四駆は5つのレーンを1周ごとに変えて5周していくのだが、外側から内側へと一気に変わる場所には毎回様々な仕掛けがある。今回は「カルーセルチェンジャー」。通常のミニ四駆コースと違い車体ギリギリの壁で仕切られておらず大きく膨らんでいる。

 このため安定して走るのが困難になっている。壁にぶつかる角度が悪ければ車体の向きが変わり逆送してしまう。もしチェンジャー部分を越えて逆走してしまったら失格になる。出口で詰まってしまう車も多いし、うまくでれたとしてもここでもたつくと大幅なタイムロスとなる。

【カールセルチェンジャー】
大きく膨らんだカールセルチェンジャー。壁に当たる角度では逆走してしまう

 本来ミニ四駆は間口の広い競技だ。一般的なスポーツのように身体能力は求められないし、RCカーのようなドライビングテクニックも必要ない。選手はマシンを組み立てるだけで競技に参加できる。

 しかしミニ四駆日本一を決める「ミニ四駆ジャパンカップ」は別格であるといえる。モーターやギアの選択はもちろんのこと、通常の走行では対応できない各ギミックに以下に順応するか。壁面とぶつかりながら走る車体をできるだけ安定させる「ローラー」。車体の腹に取り付け、接地時などに地面とこすれ車体スピードを下げる「ブレーキ」。

 浮き上がった車体を地面に押さえつけるための「提灯」と呼ばれるちょうつがいを使ってボディをシャーシから浮き上がらせるテクニック、さらにシャーシにまで改造を施す。選手達は情報を共有しながら自分だけの工夫も行っていく。非常に奥深い世界が広がっているのだ。次章では入選者のマシンと工夫を見ていこう。

工夫を凝らしながら、かっこよさも追求! こだわりの入賞者のマシン

 23日は「トライアルクラス」、「ジュニアクラス」、「オープンクラス」の東京大会が行われた。各クラスはグループに分かれており、選手達の予選レースが行われ、一位を獲得した選手でグループのトップを決定、そこからさらにグループトップによる決勝戦が行われた。各クラスの勝者は10月に開催される全国大会の出場権を得ることとなる。

 「トライアルクラス」は高校生以上が対象、モーターに他のコース以上に使用制限がかかる初心者向けのクラスだ。こちらで入賞を果たしたのは1位マツザキ選手、2位ローズ選手、3位がキタハラ選手。ローズ選手はこの日のためにアメリカから来日したという。

 マツザキ選手のマシンは「とにかく安定性重視」というテーマだという。今大会で多く見られた提灯の改造が施されている。シンプルながら堅牢性も重視しており、車体を重すぎないようにしているのがわかる。

【「ミニ四駆ジャパンカップ 2023」東京大会1、トライアルクラス決勝戦】
【トライアルクラス決勝】
中央が1位マツザキ選手、左が2位ローズ選手、右が3位がキタハラ選手
マツザキ選手のマシンは安定性重視
ボディが上に跳ね上がる提灯と呼ばれる改造

 「ジュニアクラス」は小学4年生から中学3年生までが対象。低年齢のクラスだが、マシンの改造はオープンクラスにも負けていない。1位がワラタニ選手、2位がウワノ選手、3位がコイケ選手。

 ワラタニ選手のマシンは紫のボディに鋭角的にカッティングされた大型のウィングが突いている。このウィングで車体を押しつけ、ジャンプ時の安定を計る設計思想のようだ。工夫した点は「カッコ良さ」。性能だけでは鳴く、見た目も重視したマシンとのこと。

【「ミニ四駆ジャパンカップ 2023」東京大会1、ジュニアクラス決勝戦】
【ジュニアクラス決勝】
中央が1位がワラタニ選手、左が2位がウワノ選手、右が3位がコイケ選手。
ワラタニ選手のマシンは性能だけでなく、かっこよさも追求したという

 「オープンクラス」は「ミニ四駆ジャパンカップ」の中心とも言えるクラスだ。高校生以上が参加可能で、大人が本気で作ったミニ四駆によるバトルが繰り広げられる。コースの完走では勝つことができない、コース完走を目指しながらいかに速く走るかが求められる。だからこそ安定しない車も多く、他のクラス以上にリタイアが目立った。

 それを象徴したのが決勝戦だ。決勝は各グループで勝ち上がった選手達によって勝者が決まり、その上で対戦が行われる。オープンクラスでは11のグループの勝者が対戦を行った。4人、4人、3人の3つのレースが行われたのだが、完走できたのがナカゾノ選手ただ1人になってしまった。結果、ナカゾノ選手がオープンクラスの勝者となり、全国大会への切符を手にした。

 ナカゾノ選手はアイガーへの対応をテーマにマシンを組み上げた上で、どう進むか予測できないカルーセルチェンジャーに対応するため、前のローラーを工夫したとのこと。実は左右で取り付けが異なり、ガイドのない場所でしっかり走れるようにしていたという。

【「ミニ四駆ジャパンカップ 2023」東京大会1、オープンクラス決勝戦】
完走したのはナカゾノ選手の一台のみ、このレースが実際的な決勝となった
【オープンクラス決勝】
グループ戦においてただ1人の完走者となったナカゾノ選手
特に前のローラーに工夫があるという
ウイニングランでも安定した走りを見せた

 「ミニ四駆ジャパンカップ」はやはり参加者の熱意が楽しい。親子連れも多く、多くの人がミニ四駆を楽しんでいると感じられた。その上でやはり日本一を目指す真剣さがある。工夫し、情報を集め、攻略をした上で自分なりのマシンで挑む、そのストイックさもしっかりと感じられた。

 選手達にとってレースはぶっつけ本番となる場合が多い。今回の「ミニ四駆ジャパンカップ」では東京や静岡などでは前日に走行会を設け試す機会を設けている。錬ったセッティングで本番以外でもマシンを走らせ修正することが可能となっている。

 これまでも熱心な選手は複数の大会を回ることで挑戦する機会を増やしていたが、前日を走行会に当てることで大会のハードルを下げる工夫も成されている。特に東京大会は今回だけでなく、10月にさらに2回予定されている。今回リタイアしてしまった選手達のリベンジにも期待したい。

 タミヤの運営スタッフにも頭が下がる。22日、23日は30度を大きく超える炎天下の中でのイベントだった。この中でテンション高くしっかりしたMCで会場を盛り上げたり、子供達をしっかり誘導しスムーズに試合を展開させ、さらにコースから外れたミニ四駆を素早く回収する。休憩時間でも休まずコースを補修し、楽しいイベントを来場者に提供するために努力している。彼等スタッフの人力があるからこそイベントは大いに盛り上がる。そのこともしっかり見ることができた。今後のイベントも注目したい。