特別企画

「ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E. ブルーディスティニー1号機&イフリート改」インタビュー

ゲームの設定や開発者の証言を積極的に取り入れ、顔やシルエットにこだわる

【ROBOT魂 <SIDE MS> RX-79BD-1 ブルーディスティニー1号機 ver. A.N.I.M.E.】

2024年1月発売

価格:9,900円(税込)

【ROBOT魂 <SIDE MS> MS-08TX[EXAM] イフリート改 ver. A.N.I.M.E.】

2023年12月発売

価格:9,900円(税込)

 BANDAI SPIRITSは7月24日、「ROBOT魂<SIDE MS> ver. A.N.I.M.E.」シリーズにて、「RX-79BD-1 ブルーディスティニー1号機」(2024年1月発売)と「MS-08TX[EXAM] イフリート改」(12月発売)を一般店頭にて発売することを発表した。

 この2機体は1996年から3作に渡って展開したセガサターン向けアクションゲーム「機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY」に登場する。対ニュータイプ戦用オペレーションシステム「EXAM」を搭載した青い色のMSであり、劇中で激しい戦いを繰り広げる宿命のライバルといえる2体が、アクションフィギュアとして満を持して発売されることにファンは大いに湧いた。

ゲームソフト「機動戦士ガンダム外伝2 蒼を受け継ぐ者」パッケージ

 8月4日より一般店頭、ネットショップなどで予約がスタートしたこの2つのアイテムの発売を記念し、それぞれ機体の背景や仕様などをお伝えするとともに、BANDAI SPIRITSコレクターズ事業部で本製品と開発を手がける姉崎氏に、商品のこだわりのポイントや魅力について聞いた。

「ROBOT魂 <SIDE MS> RX-79BD-1 ブルーディスティニー1号機 ver. A.N.I.M.E.」
「ROBOT魂 <SIDE MS> MS-08TX[EXAM] イフリート改 ver. A.N.I.M.E.」

1996年発売のゲーム「機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY」で激戦を繰り広げた、EXAMを搭載する2つの機体

 今回「ROBOT魂<SIDE MS> ver. A.N.I.M.E.」にて発売されるブルーディスティニー1号機とイフリート改は、ともに1996年に発売されたセガサターン用ゲームソフト「機動戦士ガンダム外伝」3部作に登場した機体だ。当時としては画期的だった、ゲーム完全オリジナルのストーリーや設定を設け、一年戦争末期を舞台に、元ジオン公国軍の科学者が対ニュータイプ戦向けに開発したオペレーションシステム「EXAM(エグザム)」を搭載するMSを巡る物語を、OVAのように3つのディスクに分けて描いている。登場機体のメカデザインは大河原邦男氏が手がけたものだ。

「ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E.『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』商品化記念スペシャル対談」のページ
セガサターンで発売された「機動戦士ガンダム外伝」のシーン。3部作で順に発売され、それをまとめたのが「機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY」となる

 ブルーディスティニー1号機(以下、BD1号機)は、ジオンから亡命したクルスト・モーゼスが開発した対ニュータイプ戦を想定したEXAMを搭載した連邦軍のテストMSの1号機。改修を施した陸戦型ガンダムの胴体に、過去の実験で登用されたEXAM内蔵の陸戦型ジムの頭部を載せた姿で、全身がその名前を象徴する濃淡2色のブルーを基調としたカラーで塗装されている。

 「機動戦士ガンダム外伝」第1弾「旋律のブルー」にて、主人公ユウ・カジマが所属する地球連邦軍の第11独立機械化混成部隊(モルモット隊)を、パイロットを乗せたまま暴走して襲撃するという衝撃の演出のもとに登場する。後に回収され、第2弾「蒼を受け継ぐ者」でEXAMにリミッターをかけた状態でユウの搭乗機となり、同じEXAMを搭載したイフリート改と遭遇し撃退することに成功するが、その際に頭部をEXAMごと破壊され、再起不能となってしまう。

「機動戦士ガンダム外伝2 蒼を受け継ぐ者」マニュアルより引用したBD1号機の設定画

 今回「ROBOT魂<SIDE MS> ver. A.N.I.M.E.」で立体化されるこのBD1号機は、機体のトレードマークである2色のブルーのカラーを忠実に再現。またこの立体化における最大のポイントとして、顔やシルエットを限りなくゲーム版に近づけている点が挙げられる。これまで様々なブランドで立体化されたBD1号機は、体型に対して頭部がやや小さめで、バイザーの面積やその上側のひさしの形状などから“細目”のイメージで表現されたものが多かったが、この「ROBOT魂<SIDE MS> ver. A.N.I.M.E.」ではゲームのパッケージビジュアルや大河原氏のデザインイラストに準じ、頭部は胴体のバランスに合わせた大きさで、バイザーの面積を広くした“ジム顔”を強く意識した設計となっているのだ。

「ROBOT魂 <SIDE MS> RX-79BD-1 ブルーディスティニー1号機 ver. A.N.I.M.E.」。2024年1月発売予定。価格は9,900円(税込)
正面から見たバイザーが広い“ジム顔”がこちら

 筆者も近年の造形を見ている影響からか、その顔つきは立体物としては新鮮に見えたが、同時に発売当初からのゲームのファンとして眺めると実にしっくりくる姿でもある。特に素立ちのポーズは、ゲームのマニュアルにも載っていた大河原氏のデザインにかなり近く、ポージングを取ることでパッケージビジュアルの再現も可能としている。もちろんEXAM発動時の赤く輝くバイザーも付属し、差し替えによってEXAM発動状態を再現可能だ。

EXAM発動状態の赤いバイザーをパーツ差し替えで再現

 「ROBOT魂<SIDE MS> ver. A.N.I.M.E.」ならではの付属品も用意。ビーム・サーベルのエフェクトは延びたものだけでなく、斬りかかったときの湾曲したものも付属し、ゲーム中のシーンを再現できる。また開発陣の推しは有線式ミサイルで、ワイヤーを内蔵したケーブルとともにミサイル本体と発射エフェクトが用意され、これまで立体化されたBD1号機では初となるその発射シーンを再現できるようになっている。

斬りつけた状態のビーム・サーベルエフェクト
胸部の有線ミサイルを発射したエフェクト
武装はビーム・サーベルの他、ブルパップ・マシンガンと100mmマシンガン、ショート・シールドが付属する

 一方のイフリート改は、劇中でユウのライバル的な存在となる、ジオンのエースパイロット、ニムバス・シュターゼンが駆る機体として登場する。クルスト・モーゼスが亡命前にテストしていた初期型のEXAMを、白兵戦向けに開発されたMS「MS-08TX イフリート」に搭載。それに伴い、頭部やバックパック、脚部スラスターなどが大型化され、機動力が大幅にアップしている。BD1号機と同じ青いカラーリングはモーゼス博士の趣味であり、肩の赤はニムバスの趣味であるという。

 劇中では「蒼を受け継ぐ者」で、味方の救助作戦を遂行するモルモット隊を急襲。その作戦後、ユウの搭乗機となったBD1号機の前に再び現れ、死闘の末、同士討ちとなる形で大破して失われる。脱出したニムバスはその後、連邦軍から強奪したBD2号機を駆り、ユウの前に再び現れる。

イフリート改の設定画。「機動戦士ガンダム外伝2 蒼を受け継ぐ者」マニュアルより引用

 BD1号機と同等かそれ以上の人気を誇るMSであり、MS-07Bグフから発展したその特徴的な機体シルエットを再現している。EXAMが搭載された頭部は、設定通り大型化され、後頭部に冷却用のフィンが取り付けられるなど、独自の形状をイメージ通りに造形している。赤く塗られた肩のスパイクアーマーや手足の武装、脚部のスラスターなど、形状の再現はもちろんのこと、カラーリングも設定通りだ。

「ROBOT魂 <SIDE MS> MS-08TX[EXAM] イフリート改 ver. A.N.I.M.E.」。12月発売予定。価格は9,900円
ゲームのシルエットを意識したプロポーションで設計されている
青と赤のコントラストが映える機体

 イフリート改のトレードマークである双剣タイプのヒート・サーベルももちろん付属し、劇中の設定通り、グフのそれとは異なるデザインを踏襲している。特筆すべきはEXAM発動時のエフェクトパーツで、背面に取り付ける炎のようなパーツに加え、モノアイが輝くパーツも用意。劇中ではあまり表現されていなかった、リミッターのないEXAM機体の凶悪さを演出した仕様だ。

2本のヒート・サーベルは専用のジョイントパーツで腰に装備できる
EXAMを発動した状態のエフェクトパーツは背面で揺らぐエフェクトの他モノアイの輝きも再現

 それぞれ単独でももちろん楽しめるが、その真骨頂はやはり2機が対峙する「蒼を受け継ぐ者」のラストステージのシーンが再現できることだろう。同じEXAM搭載機体による戦いを客観視点で眺められるのは、アクションフィギュアならではの醍醐味で、それぞれの造形や可動のクオリティが高いことにより、再現できるシーンの解像度も上がるはず。特にゲームの設定や画面に特化した設計や彩色は、ゲームを実際に遊んだり、映像などを見て好きになったファンにとっては最高の仕様である。

BD1号機の前に現れたイフリート改。対決シーンの再現は楽しそうだ

 次章では2つの機体の立体化を企画した、BANDAI SPIRITSコレクターズ事業部の姉崎氏へのインタビューをお届けしたい。

「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」登場MSの企画から派生した、ゲームならではのMSの立体化。ゲームの開発者の証言を取り入れた点もこだわりのポイントに

――今回「ROBOT魂<SIDE MS> ver. A.N.I.M.E.」にて、アクションフィギュアのBD1号機とイフリート改を発売することになった経緯を伺えますか。

姉崎氏:「ROBOT魂<SIDE MS> ver. A.N.I.M.E.」は、アニメ作品に登場した機体を単純に発売するだけでなく、“統一フォーマットによって開発系譜を感じさせるMS立体図鑑の実現”を目指して立ち上げたブランドでもあるんです。現在「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」シリーズを展開していて、BD1号機は陸戦型ガンダムや陸戦型ジムからの派生機ですので、当然陸戦型ジムの理想形を追ったうえでBD系機体も展開しようと、「第08MS小隊」をシリーズ化する企画時から構想があったんです。

陸戦型ジムの構造を流用しつつ、異なるシルエットを実現

――ゲーム作品としてではなく、「第08MS小隊」からの派生なのですね。ちょっと意外でした。「BD系機体」となると、その後の系譜なども構想にあるんですか?

姉崎氏:そうですね。“全てのMSの立体化”を目指す以上、できるところまでは商品化を目指したいなと考えていまして、日々先の先まで、新しい試みなども模索しながら構想を練っています。

――今回発売されるBD1号機とイフリート改のそれぞれこだわりのポイントを教えてください。

姉崎氏:開発において何より大きかったのは、セガサターン版「機動戦士ガンダム外伝」の開発に携わったの開発担当の方々に当時の貴重なお話やご意見を聞かせていただいて、設定準拠のプロポーションに落とし込めたことです。

 例えばBD1号機もイフリート改も、近年の立体物は頭部を小さくアレンジして設計された商品が多かったのですが、「ROBOT魂<SIDE MS> ver. A.N.I.M.E.」ではゲームの設定画に合わせた形状や大きさを意識しています。また、BD1号機は設定画では陸戦型ジムよりもやや細身に描かれていまして、商品の基本的な関節構造を「ROBOT魂<SIDE MS> RGM-79(G) 陸戦型ジム ver. A.N.I.M.E.」のものを流用しつつ、新規パーツとなる各外装ブロックの比率を少しずつ調整して、できるだけ設定画の印象に近づけるようにしました。

――構造の一部を流用しつつも、印象はずいぶん変わっていますね。

姉崎氏:陸戦型ジム系とBD系の2機体で構造的に最も違っていて、その印象も変えているのは、後者における“円柱型腹部”なのです。陸戦型ジムの長方形腹部の断面と、BD1号機の円柱型腹部の断面では、内部に可動構造を仕込む位置が異なってくるので、後に「ROBOT魂 <SIDE MS> RX-79(G) 陸戦型ガンダム ver. A.N.I.M.E.」の発売が決まった時点で、BD系アイテムの展開を想定し、どちらの構造にも対応できるような設計にしたんです。

蛇腹のような円柱型の腹部を再現

――イフリート改はどうですか?

姉崎氏:イフリート改は、設定画が持つジオン系機体特有のマッシブさの再現を重視していますね。メイン武装は2本のヒート・サーベルですので、殺陣の見栄えアクションができる可動を最重要と考え、引き出して大きく角度が付けられる頭部や、胴体は前後屈を深く取れる軸位置の検討、回転可動を制限してしまう腰の動力パイプの位置やブロック分割の工夫、大きく股を開いたときも接地する足首の可動など、骨太シルエットながら可動粋はこれまで商品化したジオン機体よりも格段に進化しています。

――イフリート改はEXAM発動時のエフェクトもインパクトがありますね。

姉崎氏:はい! EXAM発動時の再現は、特に気合を込めて設計した要素の一つですね。EXAM発動モードは今回の商品化でも絶対に再現したいと考えていて、他の立体物には見られないセールスポイントの一つと自負しています。

外連味のあるポージングをEXAMエフェクトが盛り上げる

――2機とも青い色の機体ですが、それぞれのカラーリングについてのこだわりがありましたら教えてください。

姉崎氏:カラーリングもセガサターン版の設定をベースに、できるだけゲーム登場時のイメージに近づけました。特にイフリート改の青は、マリオンが好んだ色を、赤は搭乗者のニムバスが好んだ色というイメージで、ゲームそのままの色味を意識しています。

 また、これは個人的な構想なのですが、ニムバスが後に乗ることになるブルーディスティニー2 号機をもし商品化できることになったら、クルスト博士がマリオンをイメージした色として、ゲームに合わせたイフリート改の青とは異なる色合いにしてみたいですね。

――この2機が登場する「機動戦士ガンダム外伝」や関連作品への、姉崎さんの思い入れについてお聞かせいただけますか。

姉崎氏:OVAの「第08MS小隊」に登場する機体のデザインとして陸戦型ガンダムがあり、その派生機体として登場するBD1号機は特に印象深いです。ゲーム序盤で突如現れる暴走した謎の青いMSに対し、こちらは量産型のジム・コマンドに乗って対峙しなければならないのが、一人称視点のゲームデザインと相まって本当に怖かったですね(笑)。

 このゲームからガンダムの世界にハマったファンの方にとっては、BD系MSはまさに原典の存在であり、それに対するイフリート系機体は、RX-78-2ガンダムに対するザクやグフのような存在に位置付けられるのではないでしょうか。

――BD1号機やイフリート改のMSとしての思い入れはありますか?

姉崎氏:イフリート改は、その元となるMSとして、スーパーファミコンの「機動戦士ガンダム CROSS DIMENSION 0079」に「イフリート」が登場しています。こちらは紫がかった青色で、そのままテレビシリーズにも出てきそうなデザインでしたね。その派生となるイフリート改は、鮮やかな青と赤い肩という、異彩を放つカラーリングがインパクト大でした。

 それぞれの機体デザインは、外連味のあるデザインながら「第08MS小隊」や「ポケットの中の戦争」に登場したMSの系譜も踏襲していて、一年戦争のMSとしてオーパーツにはならない落としどころにまとめているのが本当に絶妙だと思いました。今回の立体化に際しても、その意匠を出来るだけ汲み取れるよう尽力しました。

陸戦型ガンダムをベースにした機体のBD1号機は、ビーム・サーベルが脚部に収納される

――それぞれを立体化して、改めて気づいた点などはありますか?

姉崎氏:先ほどお話ししたように、今回はゲーム初出のイラストや設定画をベースに、色はゲーム中のイメージを大事にしているんですが、そうしたことでゲーム中の3Dポリゴンで構築されたモデルがそのまま解像度を上げて自分の手の中にいるという、何とも不思議な感覚が味わえました。

 もちろん当時のゲームを触れていない方にも“一年戦争時に存在したMS”の説得力を感じていただける設計を心がけましたので、そういう視点でも楽しんでいただければと思います。

――最後に商品の発売に先がけて、「ROBOT魂<SIDE MS> ver. A.N.I.M.E.」や「機動戦士ガンダム外伝」のファンに向けて一言お願いします。

姉崎氏:「ROBOT魂<SIDE MS> ver. A.N.I.M.E.」は始動から7年以上が経過し、これまでアニメ作品やそこから派生するMSVなどを展開してきました。しかし今回はゲームタイトルからのオリジナルMSということで、シリーズとしては初の試みになります。どちらも当時の開発スタッフからお話を伺い、こだわり開発をしました。

 今後も“全てのMSの立体化”を目指して商品展開していきますので、昔からシリーズを愛してくださっている方も、この記事で「ROBOT魂<SIDE MS> ver. A.N.I.M.E.」を知った方も、ぜひ楽しんでいただければと思います。私どもも作品の世界を追体験できる最高峰のアイテムとして、これからも商品を開発していきたいと思います。

――ありがとうございました。