特別企画
トイガンメーカー展示即売会「ブラックホール」レポート
“ショットシェル”でSAAに給弾できるホルスターや30万超えのモデルガン!
2025年1月21日 11:37
- 【2025 春の竹芝ブラックホール】
- 1月11日開催
- 会場:都立産業貿易センター浜松町館
- 入場料:無料
ホビー業界は大小様々なイベントや展示会などを行っている。「ブラックホール」はトイガンやミリタリーの専門メーカーによる合同展示即売会。有志ユーザーだけではなく、様々なトイガン/サバイバルゲーム商品、軍装中古販売業者、さらには日本刀などまで販売されるユニークなイベントで、春、夏、冬と年3回ほど定期開催されている。
今回、1月11日に東京・都立産業貿易センター浜松町館にて「2025 新春竹芝ブラックホール」が開催された。筆者は初めてこのイベントに参加してみたが、そこで大変ユニークな商品、魅力的な商品に出会うことができたので、注目商品を中心に紹介したい。
装着するだけで給弾可能! サバゲーでSAAをたっぷり使えるホルスター
「ブラックホール」は、Gun&ミリタリーの専門店メーカーによる合同展示即売会として始まった30年以上の歴史があるイベント。近年では個人ブースやオークション、ライブ演奏なども行われる総合イベントとなっている。メーカー担当者と直接コミュニケーションができたり、モデルガンやエアガンの体験ができるなど、イベント会場でしか味わえない体験を求めたり、掘り出し物、お宝探しなどを目的に多くの人が集まるイベントだ。
会場の展示物や販売物の中で筆者が最も興味を惹かれたのは、東京目黒区にあるガンショップ「BURST-HEAD」ブースにて紹介されていた、東京マルイの「エアリボルバープロ SAA.45」向けの、「COLT SAA.45用Quickホルスター」だった。価格は13,800円で、BURST-HEAD店舗で販売予定。会場で予約した人は、先行予約特典として1月中に入手できるとのこと。
オートマチックピストルなどに採用される近代的なクイックリリースホルスターをオールドスタイルのSAA(Colt Single Action Army = ピースメーカー)に対応させたものだ。さらに東京マルイのショットシェル型マガジンをセットして、同社のSAAに素早く給弾できるギミックを備えたというのが画期的である。
SAAは、西部開拓時代のリボルバーで、カートリッジ(弾薬)の装填と排莢を「ゲート」と呼ばれる給弾口から行う。撃ち終わったら使用済みのカートリッジを排出して、新しいカートリッジを装填するという手順を行うので、リロード(再装填)に非常に時間がかかる。もちろん、それがロマンでもあり、味わいでもあるが、サバゲーで使う場合や、競技などではその手間ももどかしい時がある。
このホルスターでは、銃をセットして、ハンマーをハーフコック、シリンダーを回転させると、シリンダーの前方からBB弾が給弾されカートリッジ先端に弾が装填される。ホルスターに銃をセットしてハーフコック、シリンダーを回転させて給弾が終わるまでの時間は、慣れたら5秒以内に完了できるほど素早く行える。
ナイスアイディアなのは、BB弾を給弾する装置として、すでに商品化されているショットシェル型マガジンを使用するという点。ホルスターの機構は、その中継装置として機能しているという点になる。
会場では、タナカワークスのPEGASAS式SAAにも対応するのかという質問も寄せられた。PEGASAS方式は、カートリッジ式ではなく、シリンダーの前方から給弾するのが標準の方式なので今回の給弾方式と親和性が高い故だ。現時点では、東京マルイとタナカのシリンダーで弾を保持する位置が若干違うということで、対応はうたえないが、対応させるように検討したいという回答が得られた。
限定20挺、税込35万円超の高級モデルガン「パラ・オーディナンス P10 WARTHOG」
モデルガンメーカーのB.W.Cブースでは、同社の新作「パラ・オーディナンス P10 WARTHOG(ワートホグ)」の展示が行われていた。価格は352,000円と高額なモデルガンで、1月中にモデルガンショップで販売予定。
モデルとなった銃は、パラ・オーディナンス社、いわゆる1911(ガバメント)クローンのメーカーによって作られた、ダブルカラムマガジンを使用する独自のフレームを採用するハイキャパシティ(ハイキャパ)モデルの銃。装弾数が10+1発のコンパクトモデルゆえにP10と命名されている。そのP10をモデルガンとして再現したのがこちらとなる。
.45ACP弾を10発装填できるダブルカラムマガジン対応フレームと、コンパクトな3インチ銃身のモデルアップは同社でも初。ショートリコイルブローバックを再現した発火モデルとして発売される。
この価格になってしまった理由としては、スライド、バレル、フレームなど、ほとんどのパーツが新規製作で、今回限定20挺ということもあり、製造コストが反映されたものになる。
今回展示されていたものは、最終バージョンではなく、さらに手が入り調整、ディテールアップなども予定しているとのことだが、あとは微調整というところまで進んでいるという。
今回、実際に実際に「パラ・オーディナンス P10 WARTHOG」を手に取らせてもらったところ、持った際の重量バランスや構えた時の銃の安定感が素晴らしく感じた。35万円以上の高級モデルガンなのでちょっとおっかなびっくりの操作になってしまったが、それでもスライドを引いた時の感じ、セフティを入れる、解除するなどのパーツの操作感から精度の高い作りを感じることができた。パーツに余計な遊びがなく、スライドを引いてハンマーがコックされる際のカチッとロックが入る瞬間など気持ち良い操作感からそれらを感じた。
このスムーズな操作感は「フレームが一体成形になったこと」が大きく感じた。実銃はフレームとシャーシは金属による一体成形のため、スライド部分などで摩擦が生じにくい設計になっている。しかしモデルガンの場合、金属を部分的にしか使えないため、樹脂フレームに部分的に金属を補強として使うという設計になる。このため作動する部分、特にスライドを動かすときに引っかかりやすく、結果として実銃のようなスムーズな動作ができない場合があるのだ。
しかし「パラ・オーディナンス P10 WARTHOG」は樹脂によって強度も確保して一体設計を実現している。しかも従来のモデルガンとしての妥協点を極力無くそうと、1つ1つを微調整しながら組み立ているのだ。35万円というと非常に高価に感じるが、これだけの手間がかかっているからこその、スムーズな動作を実現しているのである。
今回は実際にBWCへ金属パーツを納入している金属加工会社のスタッフの話も聞けた。このモデルガンに使うパーツは、専用のネジや金具が多いとのこと。小ロットで精度の高いパーツを作るのはとても大変なのだが、ご自身がモデルガンが好きだからこそ、リアルな形状、サイズにするために、細かい要望に対応しているのだという。「パラ・オーディナンス P10 WARTHOG」は「リアルなモデルガンを作りたい」という想いの結晶なのだ。こういった話を聞けたのが、今回一番楽しかった体験だった。
映画でおなじみの「ハードボーラー」など、注目商品
B.W.Cブースでは、「AMT HARDBALLER LONGSLIDE」のステンレスフィニッシュバージョン「ハードボーラーロングスライド メタルウォールインサートモデル」の展示もあった。こちらは2月に各モデルガンショップで販売予定。価格は26万1,800円(税込)で、Superme実物複製のラバーグリップが装備されている。
ハードボーラー ロングスライドは、映画「ターミネーター」で、アーノルド・シュワルツェネッガー演じるT-800型が、レーザーサイト搭載の“アラモ銃砲店モデル”を使っていたことでも有名なモデル。
樹脂製のスライドの側面に、極薄のステンレス板を貼り付けて刻印、仕上げを行ったもので、2月の発売を目指しているという。モデルガンは、各種法令を遵守するために素材や強度に制約が課せられているが、樹脂製スライドに強度のない薄いステンレス板を貼るのは問題ない。安全性とリアルな外観を実現するナイスアイディアだ。
もう1つ、モデルガンメーカーのタニオコバのブースでは、創業者の小林太三氏も在席で、訪れるユーザーから寄せられる質問に回答したりファンとのコミュニケーションを楽しんでいた。
タニオコバのモデルガンの調整方法などに関してはもちろんのこと、小林氏がかつて所属していたモデルガンメーカー・MGC時代のエピソードや、MGCのカートリッジを他社のモデルガンで使ってみた互換性の情報、それを実際に動かしてみて、やっぱり「MGCの(自分の設計した)銃はよく動くね(笑)」といった、小林氏ならではの話も聞けた。モデルガンの作りや動作性能のために研究してきた苦労話など、貴重な話を聞くことができたのは、小林氏の1ファンとしてとても楽しかった。
そのほかGM7シリーズの限定版や、M4のバリエーションの販売も行われていた。特に、M4に関してはカスタムメーカーのProject M4が制作したカスタムも販売されており、現物を手に取って検討したい人がブースを訪れていた。
銃本体のみならず、カスタマイズパーツも出展されたオークション
ブラックホールの目玉の1つが「モデルガンオークション」だ。すでにメーカーが存在しない、現在は絶版となっているモデルガン、エアガン、ハンドガンにとどまらずライフルなど大きな商品、さらにはカスタムパーツなども出品されていた。特定の銃に使うパーツなどかなり希少な商品も出品されていたが、入札自体が少なく、安価で落札し喜ぶ入札者の様子も見られた。
オークションサイトと違い、実際のアイテムを事前に確認できること、競合する入札相手の顔が見えることでの駆け引きや場の空気感というのが感じられたのが新鮮だった。
ブラックホールは、GUN誌など購読していた時期から開催の広告が出ていて、当時地方に住んでいた筆者にとっては、いつか行ってみたいイベントの1つだった。今回念願の初参加を達成できて非常に嬉しかった。ユニークな商品に出会ったことはもちろん、高価なモデルガンの凄さを実際に操作して実感できたり、タニオコバの小林氏の話を生で聞けたのは本当に楽しい体験だった。
筆者は同じような性格の「Vショー」を取材した経験がある。こちらもトイガンメーカーや、サバイバル用品メーカーなどが集うイベントであるが、比べるとVショーの方が販売に積極的なメーカー目立っていたかと思う。ブラックホールは比べると落ち着いた雰囲気だな、と感じた。
現地で偶然遭遇したモデルガン仲間によると、ブラックホールはかつてより規模は小さくなっているとのことだった。しかし、今回紹介した「BURST-HEAD」のSAA用リボルバー、B.W.Cブースの高級モデルガンなど、今回のイベントならではの驚きの新商品に出会えたのはとても面白かった。やはりいろいろなイベントを取材することで面白い商品に出会えるな、と実感した。
ブラックホールは、次に4月13日に開催予定とのことで、次回も参加してレポートをお送りしたい。