インタビュー
心を込めたお尻のライン! "フィギュア製作YouTuber"コロッケ砕砕氏"が「フィギュアストーリー」の新衣装フィギュアを製作
2021年9月17日 15:05
スマホ向けRPG「フィギュアストーリー」は、フィギュアが特殊な塗料で意思を持ち動き出した架空世界である「Mシティー」を舞台にしている。プレーヤーはMシティーの玩具メーカーであるFULIグループが販売するフィギュアを集め、パーティーを結成、Mシティーで起きた謎の事件を解き明かすべく冒険を繰り広げていく。
本作は「フィギュアが動き出す」というのが最大のセールスポイント。3DCGで描き起こされた60体以上のフィギュアキャラクター達が生き生きと動く。フィギュアのサイズは1/7で、フィギュアの素材感や、戦っているフィールドの"ミニチュア感"も魅力だ。
その「フィギュアストーリー」が、YouTuberであるコロッケ砕砕(ください)氏とコラボレーションを行なう。コロッケ砕砕氏は"フィギュアの原型作り"で人気を獲得しているYouTuberであり、今回、「フィギュアストーリー」のキャラクターの1人、「メーガン」の新スキンである「浴衣」をまとったイラストを元に原型を製作、この原型がゲームに実装され、衣装を着たメーガンがゲーム内で活躍するという。
コロッケ砕砕氏は提示されたイラストを元にフィギュアを製作、本来はこの無彩色の原型がワンダーフェスティバル2021秋に公開されるはずだったが、ワンフェスが中止になってしまった。コロッケ砕砕氏が今回製作したフィギュアはそれ自体の彩色や販売予定は現状無いものの、作り上げられたフィギュア原型を元にCGモデルが製作され、12月にメーガンの新スキン実装と共にゲーム内で実装、3DCGモデルとしてプレーヤー達が閲覧できるようになるとのこと。
今回、コロッケ砕砕氏にインタビューを行ない、彼自身のフィギュア製作への想い、手がけたフィギュアへの思い入れを聞くことができた。今回公開されたメーガンのフィギュア原型を紹介し、実装への期待を盛り上げていきたい。
パーティーのメインメンバーとしても使っている「メーガン」の新衣装フィギュアを手がけることに!
コロッケ砕砕(ください)氏はYouTuberとして2020年から活動している。YouTubeは様々な方法で注目を集めているが、彼は"フィギュアの原型作り"で人気を獲得した。昨年より活動を開始し、現在チャンネル登録者数は34万人を突破しているという。
フィギュアのモチーフは「呪術廻戦」や「鬼滅の刃」などのアニメやコミックのキャラクター。コロッケ砕砕氏が主に使用しているのは「グレイスカルピー」という粘土。粘土を手でこねて1からフィギュア作りを行なう。骨格は針金で作り、そこに粘土で肉付けをしていく。全く何もないところからフィギュアができていく様子は「すごい」と感心してしまう。
配信番組ではコロッケ砕砕氏がフィギュアを1から作製していく映像を倍速で見ていく形になるのだが、キャプションで様々な情報や思い入れが語られており、1つ1つの工程が印象に残る。視聴者からの質問に答える番組もあったり、応援し、次の動画を心待ちにしたくなる配信者である。
YouTubeでの配信は2020年からだが、コロッケ砕砕氏がフィギュアを作るようになったのは2017年から。きっかけは「好きなキャラクターのフィギュアが出ていない!」という想いからだった。以前からフィギュアは好きで集めていたのだが、好きなキャラクターがフィギュア化されず「それなら自分から作ってしまおう!」というのがきっかけだったという。
はじめてフィギュア化に挑戦したのがアニメ「この素晴らしい世界に祝福を!」の「めぐみん」。最初は手探りだったが、ここからネットで調べて、「針金で骨組みを作る」、「造形に適した粘土がある」など色々な方法を学んでいった。一度作ると色々なことに気がつくし、必要なことがわかってくる。作っていくことで必要となる知識も見えてきたという。
現在のフィギュア作りは3DCGで製作し、3Dプリンターで出力するという人が多い。特にプロのフィギュア製作ではそういった手法が盛んだ。コロッケ砕砕氏のように自分の手で、粘土や針金でフィギュアを作るのは"手原型"とも呼ばれ、レガシーな方法といえる。
コロッケ砕砕氏は「3Dにも興味はありますが、手で粘土をこねて作るのが好きなんですよ」と語った。動画では非常にうまく人体を表現し、バランスもとれているが、コロッケ砕砕氏は美術系の学校でそういったことを学んだわけでもなく、独学とのこと。イラストを描くなどの経験もない。ただ美術系の授業は得意で、絵のコンクールで賞をとった経験もあるとのこと。「空間や人体への立体の認識能力……というのはあったのかなと思います」とのことだ。
さて、ここからは「フィギュアストーリー」とのコラボレーションについて聞いていきたい。チャンネル登録者数34万人のコロッケ砕砕氏には企業側からのオファーも来る。しかし多くは「自社の商品のフィギュアをレビューして欲しい」というものや、「フィギュア製作のノウハウを語って欲しい」というもので、「フィギュア製作をして欲しい」と言う話は来なかったという。そういう依頼をしてきたのは、「フィギュアストーリー」が初めてだったとのこと。
今回、「フィギュアストーリー」からはキャラクターの1人「メーガン」の新スキン「浴衣(名称仮)」のイラストを立体化して欲しいという依頼があった。メーガンは大きな盾を持つキャラクターで、ゲーム内では敵の攻撃を受け仲間を守る「重装」という役割を担う。
依頼があったのは2カ月ほど前だが、実はコロッケ砕砕氏はその前から「フィギュアストーリー」をプレイしていて盾役としてメーガンを使っており、思い入れもあったとのこと。コロッケ砕砕氏は特にメーガンの「チャイナ服」のスキンがお気に入りだったという。
「チャイナ服のお尻のラインが良いんですよ。メーガンは他のスキンもそうなんですが、お尻から足にかけてのラインが良いんです。今回の『浴衣』もそこには力を入れました」とコロッケ砕砕氏は語った。
メーガンは敵の攻撃を一手に引き受け、コロッケ砕砕氏のパーティーを守ってくれる。その頼もしい姿には「いつも感謝している」とのこと。「フィギュアストーリー」には様々なキャラクターが登場するが、メーガンはプレミア(いわゆるSSR)キャラクターであり、プレミアキャラクター数が他と比べて少ない「重装」ジョブの中で貴重なキャラクターの1人。コロッケ砕砕氏もパーティーに入れて使っており、思い入れがあった。「依頼が来た時は、『お、メーガンなんだ』とうれしくなりました」とのこと。
今回、そのメーガンが浴衣をまとったスキンとなる。浴衣といっても裾は膝までしかない「ミニ浴衣」に非常に豪華な帯とアレンジの強い服だ。右肩を露出させ、さらしで胸を隠すという、いわゆる一般的な浴衣からはかけ離れた衣装と着こなしで、まるでお祭りの衣装にも見えるユニークな服となっている。
コロッケ砕砕氏はこのイラストでもメーガンの魅力である"足"が気に入ったとのこと。浴衣が形作る布のラインは複雑で「かなり頑張りました」とのこと。今回は腰掛けている形だが、こだわりポイントであるお尻のラインも力を込めたとのことだ。
フィギュアの原型の写真も見ることができた。肩の肩甲骨のラインや、膝頭の表現、足首のリアルな形など、イラストにもきちんと描かれた人体のしっかりした描写をフィギュアでもしっかりしていることがわかる。
胸の部分も右肩ははだけられ帯の部分で折り重なり、さらしが巻かれ、かなり複雑な情報量だ。コロッケ砕砕氏はこの一見表現が難しそうな部分もしっかりと粘土で表現している。改めてコロッケ砕砕氏のフィギュアの表現力を感心させられる造形となっている。
「このイラストに加え、この衣装を着ているメーガンの3面図ももらえたんですが、3面図ではメーガンは直立なんですよ。衣装のディテールはわかるけど座った感じや、布の重なりが座ることでどう変化するかは、最初のイラストしかない。自分のフィギュア作りの経験や、知識をフル動員して、『こう言う形になってるんじゃないかな』と作りました」とコロッケ砕砕氏は語った。
やはりメーガンの魅力は足にある。浴衣の裾からすらりと伸びる足のラインに関しては特にこだわった部分とのことだ。コロッケ砕砕氏は裸の状態でフィギュアを作ってから衣装を着せていくスタイルをとっている。今回のフィギュアでは座ったポーズのためちょっと見にくいが、やはりお尻から足にかけての雰囲気が、自分でもかなりうまくできた、という感想を持っているとのこと。フィギュアの写真公開時は、ぜひこのラインを意識して見て欲しいという。
そして「台座」である。今回の依頼はフィギュアのみではなく、竹を組み合わせた椅子や、後ろの背景の竹なども含まれていた。これらは浴衣と共に"七夕"をイメージしたものだ。コロッケ砕砕氏は普段はフィギュア単体しか作らない。プラ棒を使用したこういった椅子のオブジェクト製作は初めてで、かなり苦労したとのこと。「椅子の感じはもちろんですが、後ろの竹とか、小物とか、これらも頑張りました、見て欲しいです」とのこと。
「今回、ゲームとのコラボ、自分のお気に入りのキャラクターの依頼で緊張もしたんですが、楽しかったですし、やりがいを感じましたね。ワンフェスで公開できなかったのは残念ですが、衣装の表現や台座部分などで、自分でも技術的にステップアップしたかなと思っています。とても良い経験になりました」とコロッケ砕砕氏は今回の依頼の感想を語った。
今回のフィギュア原型は本来ならば開催される予定だった「ワンダーフェスティバル 2021秋」で公開予定だった。この原型を元にゲーム内でも新スキン"浴衣(名称仮)"として12月に実装されることとなる。今回コロッケ砕砕氏への依頼は「彩色なしの原型まで」という内容となる。3DCGになった際に初めて色が付く。
「フィギュアストーリー」はゲーム内のキャラクターは「特殊な塗料により、自我を持ち、自由に動けるようになったフィギュア」である。コロッケ砕砕氏が今回フィギュア化したことで、ゲーム内でどのようにメーガンが動き、戦うのか楽しみなところだ。
今回のフィギュアは販売などの予定はなく、あくまでゲーム内の実装のものだ。「フィギュアストーリー」は今後もコロッケ砕砕氏と何らかのプロジェクトを進める予定もあるという。
「とにかく完成させることが技術上達への第1歩」、フィギュア製作をする人へのアドバイス
ここからはコロッケ砕砕氏にもう少しだけフィギュア製作に関しての質問を重ねてみた。コロッケ砕砕氏のフィギュア製作の手順を見ていると、体の中心線をきちんと設定してから造形を進めていたり、様々なところでテクニックを感じさせられる。
「これを覚えてから腕が上がった、というテクニックはあるか?」という質問をしたところ、コロッケ砕砕氏は「筆で溶剤を使って表面をならすようになって、作業が楽になりました」とのこと。コロッケ砕砕氏が使うグレイスカルピーは形を決めてから焼くことで固まる。それまでは固まってからヤスリをかけることで表面を整えていたが、溶剤を筆塗りすることで、固める前から表面をある程度きれいに仕上げられる。覚えておいて良かったテクニックとのこと。
体の線を設定するのは、「左右対称に作るため」とのこと。バランスもとれるし、キャラクターの体の向きも把握できる。中心線を引き、そこを意識して造形するのは大事なテクニックの1つとのことだ。
ちなみにコロッケ砕砕氏のフィギュアはいつも顔の製作から入るのだが、「かわいらしいキャラクターフィギュアを作る」ためには、やはり顔から製作することでモチベーションが上がるという。「顔を作っておくと、いつも視界にかわいらしいフィギュアの顔があるわけですよ。この顔は良いな、体つけたらもっと良いぞ、というのは大きなモチベーションです」とコロッケ砕砕氏は語った。まず顔がうまくできれば、高いモチベーションでフィギュア作りをしていけるという。
コロッケ砕砕氏の動画を見ると「自分でもフィギュアを作ってみたい」という人も多いと思う。そういった人たちへのアドバイスも聞いてみた。「人体のこととか、体のバランスとか、いざ作ろうとすると不安になり勉強が必要と思うかもしれませんが、そんなことよりまずフィギュアを作ってみることが大事だと思います。まずとにかくフィギュアを作り、完成させる。それでフィギュア作りの面白さを感じる、これが一番だと思っています。勉強はその後です」とコロッケ砕砕氏は答えた。
「そして"続ける"ことです。Twitterなどで『私もフィギュア作りはじめました』という人はいるんですが、完成させられない。それは思ったよりうまくできないから諦めちゃうんですね。でもそれは間違いで、続けなくてはうまくなれない。フィギュアを作れるようになるのは、やっぱり根気だと思うんです。私自身最初からまず完成させることを目標に作ってきました。やり直したり投げ出すくらいならそれは次に活かせばいい。まず完成させて、それから次、と言うのがうまくなるコツだと思っています」とコロッケ砕砕氏は言葉を重ねた。
最後に「フィギュアストーリー」に関してコロッケ砕砕氏に今後やりたいことを聞いてみた。「もしできるならば他のキャラクターも手がけてみたい」とのこと。コロッケ砕砕氏は、「バージニア」など、"カッコイイ系"の美女が好きだが、まだバージニアは新衣装が出ていない。
コロッケ砕砕氏は、このクールでカッコイイ女の子であるバージニアにあえてフリフリのかわいらしい衣装を着せ、そのギャップをぜひ見てみたいとのこと。今後そう言う路線の新衣装が出るならば、ぜひフィギュア化してみたいと希望を語った。このインタビューを通じて、「フィギュアストーリー」の運営や開発に、バージニアの新衣装を提案したいとのことだ。ぜひ開発側に届けて欲しいアイディアである。
読者へのメッセージとしてコロッケ砕砕氏は、「今回のメーガンのフィギュア、自分ではかなり頑張った作品になったと思います。フィギュア自体も、台座も頑張っています。そういったところが伝わるとうれしいです」と語った。
今回のインタビューも非常に楽しいものだった。筆者はメーカーの企画者や原型師にインタビューをすることもあるが、コロッケ砕砕氏のような「YouTuberのフィギュア製作者」という方と話をするのは初めてで、新鮮だった。自分が好きなもの、やりたい事へのエネルギーを強く感じた。
人気のフィギュア製作YouTuberとのコラボ、というのはフットワークの軽いスマホRPGならではと感じたし、その中できちんと「フィギュア」というテーマで合致したコロッケ砕砕氏を起用し作品作りへつなげた「フィギュアストーリー」運営には好感を持った。コロッケ砕砕氏が原型を手がけたメーガンがゲーム内でどのように活躍するか見てみたいし、今後もコロッケ砕砕氏とユニークなコラボを続け、新しい流れを生み出して欲しい。