インタビュー

フィギュア「ヴァンパイア美少女 モリガン」企画者しょーぐん氏インタビュー

これまで以上にセクシーな、山下しゅんや氏だからこそのモリガンを!

【ヴァンパイア美少女 モリガン】

開発・発売元:コトブキヤ

発売:2022年03月

価格:14,300円(税込)

ジャンル:フィギュア

全高:約228mm(台座込)

原型師:ke(小抹香)

 コトブキヤが発表した「ヴァンパイア美少女 モリガン」は、カプコンの2D対戦格闘「ヴァンパイア」シリーズに登場するキャラクター、モリガンをモチーフとしたフィギュアである。

 モリガンは気品とセクシーさを併せ持つサキュバスで、ゲーム内での性能も高く人気が高いキャラクターであり、カプコンを代表する女性キャラクターの1人だ。今回はイラストレーターの山下しゅんや氏がアレンジを行なうフィギュアシリーズ「BISHOUJOシリーズ」としての立体化になった。

 このモリガンはかなりインパクトの強いアレンジだ。前傾姿勢の胸を強調するようなポーズに、潤んだ目、突き出された舌。こちらを誘惑するサキュバスそのままの非常にセクシーな姿になっている。この大胆なアレンジはフィギュアの企画者であるコトブキヤの企画担当・しょーぐん氏の強い思いと共に実現したという。

 コトブキヤは「ヴァンパイア美少女 モリガン」発表にあたり、「デザイン」、「造形」、「彩色」の3つのテーマのムービーを収録、各担当者のコメント付きでフィギュアの魅力をアピールしている。本インタビューではここからさらに踏み込み、各担当者に企画者のしょーぐん氏がどういった想いを持って取り組んだか、そしてフィギュアはどこまで魅力的な立体物になったかを紹介していきたい。

 本稿ではさらに次回作の「ヴァンパイア美少女 フェリシア」の原型にも触れている。2つのフィギュアを見ることでしょーぐん氏が目指す「かわいらしくて魅力的だけど、怖い」という独特の世界観も見えてくる。思わず手に取ってじっくり眺めたくなるその魅力を感じて欲しい。

【ヴァンパイア美少女 モリガン】
イラストレーターの山下しゅんや氏がアレンジを行なうフィギュアシリーズ「BISHOUJOシリーズ」の最新作である。インタビューはこのフィギュアの魅力、込められた想いに迫っていきたい

海外で特に人気の高い「ヴァンパイア」のモリガンを“BISHOUJO”に!

 「ヴァンパイア美少女 モリガン」は、イラストレーターの山下しゅんや氏がアレンジを行なうフィギュアシリーズ「BISHOUJOシリーズ」の最新作である。「BISHOUJOシリーズ」では、「MARVEL」や「DC COMICS」にとどまらず、「13日の金曜日」で有名なジェイソンなどのホラー映画のキャラクターまで“BISHOUJO化”、さらには「マイリトルポニー」といったキャラクターまで山下しゅんや氏が独特のアレンジで美少女化している。

 「BISHOUJOシリーズ」は特に北米を中心とした海外ファンが多い。今回、「モリガンをBISHOUJOに!」というのも北米ファンの強い要望を受けてのものだという。北米はやはり「MARVEL」や「DC COMICS」キャラクターへの要望が大きいのだが、「ストリートファイター」シリーズや、「キングオブファイターズ」シリーズなど日本のアーケードゲームキャラクターの人気も高く、これらに並んで声が大きかったのが、「ヴァンパイア」シリーズに登場するキャラクター達だったとのこと。

 ここで少しだけモリガンを掘り下げたい。彼女は「ダークストーカー」と呼ばれるモンスター達が戦いを繰り広げる1994年のアーケードゲーム「ヴァンパイア」に初登場、「ヴァンパイア」はその後「ヴァンパイア ハンター」、「ヴァンパイア セイヴァー」とシリーズが続くヒット作となる。

 モリガンは美しくセクシーなサキュバスであり、”魔王”と呼ばれる存在の養女である。彼女は魔王の地位を継ぐことになるが、彼女自身は地位や権力に興味はなく、楽しみを求めてダークストーカーズとの戦いを繰り広げていく。

 ゲーム内の性能としては、美しい女性ということに加え、遠距離攻撃の「ソウルフィスト」、対空技の「シャドウブレイド」といった強力で使いやすい技を持つ使いやすいキャラクターだった。彼女はカプコンキャラクターが登場する他の作品でも積極的に起用され、特に海外ではハロウィンなどのコスプレ文化にも非常にマッチし、今でも衰えぬ人気を獲得している。

 「海外のお客様はイベントでのアピールがとても印象的なんです。『サンディエゴ・コミコン』などで『どんなキャラクターをフィギュア化したいか?』という声に大きく、前向きなリアクションで応えてくれる。また今でも会場でモリガンのグッズが売っていたり、コスプレをしている方がいたりする。今でも大きな人気があることを実感したんです」としょーぐん氏は語る。この北米ファンのモリガンへの熱い想いが企画の原動力になったとのことだ。

【山下氏のアレンジ】
ゲーム内のモリガンから山下氏のアレンジ、モリガンのセクシーさを強調したいというのは企画者であるしょーぐん氏の提示だ
こちらがイラストを中心としたもの。ポーズと突き出された舌がとても印象的だ

 「BISHOUJOシリーズ」では「ストリートファイター」シリーズのラインナップを展開してきたが、次なるゲームキャラクターのシリーズ展開を模索していた。モリガンを皮切りに「ヴァンパイア」のキャラクターを今後展開していきたい、という企画は数年前から温めていたという。「BISHOUJOシリーズ」には様々なラインナップがあり、これらとの兼ね合いもある。「ヴァンパイア美少女」はモリガンと同時に「フェリシア」の発表も行なっており、すでに第3弾まで決まっているという。

 モリガンをモチーフにするに当たり、しょーぐん氏は様々な資料、アートブックやムック、ファンアートなど様々なものから「ファンの考えるモリガン像」を考えていった。もちろん根底は「ヴァンパイア」のモリガンなのだが、そこから様々な作品に登場したり、ファンの手で描かれるモリガンから、“らしさ”を考えていったという。

 「『ヴァンパイア』のキャラクター達はコミカルだったり、人間のような外見のキャラクターもいる。だけど、『見た目は人間に見えるけど必ずしも話が通じるわけではない』と言うところが面白く、魅力的だと思いました。フェリシアはかわいらしく優しい子ですが、その手は鋭く大きいかぎ爪が生えていて近くにいたらやっぱり怖い。種族、存在そのものが、私たちと相容れない部分がある。“怖い存在である”というテーマはきちんと盛り込もうと考えました」。

これまでにないセクシーなモリガンに! 山下氏と企画者の想いを込めたデザインを立体化

 それではここからいよいよフィギュアである「ヴァンパイア美少女 モリガン」へとフォーカスしていこう。「BISHOUJOシリーズ」はモチーフとなるキャラクター、コンセプトや表現したいテーマをしょーぐん氏が決めた上で、山下氏に提示し、そのテーマに沿って山下氏が独自のテイストでキャラクターを“BISHOUJO化”していく。ポーズを指定する場合もあれば、山下氏からの提案もあるという。

 今回の「ヴァンパイア美少女 モリガン」に関しては山下氏のコメントをピックアップしたメイキングムービーが製作されている。このムービーで注目はコトブキヤ(しょーぐん氏)の方から「さらにセクシーに」というリテイクを行なっているところ。挑発的でこちらを誘うような表情、胸を前に突き出したポーズ、何よりも舌をのぞかせた口の表現が、強烈な印象を与えてくれる。

【ヴァンパイア美少女 モリガン密着企画1/3】
メイキングムービー第1弾では、山下氏のアレンジにフォーカスしている
【フィギュア全身】
山下氏のイラストからの立体化。イラストからさらにフィギュアならではアレンジを加えていく。山下氏自身、立体化のアレンジを歓迎する方向性で、イラストからさらにフィギュア化での変化も大きな注目ポイントとのこと

 「これまでの『BISHOUJOシリーズ』では様々なアレンジで出していますが、今回はセクシーに振り切りたかった、という想いもありました。これはシリーズを意識すると同時に、これまで商品化されているモリガンのフィギュアとの差別化も意識しました。これまでのモリガンのフィギュアは“高嶺の花”のような、高貴ですました印象を受けました。今回はこういった過去の商品とは違う、“サキュバスとしてのモリガン”をテーマにしてみたかったんです」としょーぐん氏は語った。

 そのセクシーさの象徴と言えるのが、この突き出された舌だろう。かわいらしく色っぽい。公式のイラストで舌を出しているものがあり、「これこそがサキュバスのモリガンだ!」としょーぐん氏は今回のコンセプトを決めたとのこと。フィギュアの舌を出した唇と、まつげが長く、潤んだような瞳の表現は背筋をゾクッとさせる色っぽさがある。山下氏ならではのアレンジによって、これまでにないモリガンの表情を作り出している。

【強い印象を与える"舌"】
今回のフィギュアでの最大の注目ポイントはこの舌だろう。サキュバスであるモリガンの印象を強くするセクシーな表現だ

 もちろん、ポーズに関してもこだわりが込められている。強調したい部分はモリガンのグラマラスな肢体だ。今後の商品と並べた時のバランスも考え前傾姿勢にする。そこからヒップラインを強調するような姿勢にし、結果として胸も突き出されることになる。こういったフィギュアの細部は次ページでより細かく紹介していきたい。

 今回のフィギュアでしょーぐん氏が強調したいのが“手”の表現。ゲームでのモリガンはレバーを離したノーマルの状態の時、戦うように手を構えるのではなく、顔の横で垂直に立てた手をひねるこちらを幻惑するような構えを撮るのが印象的だったが、フィギュアのモリガンは左手を顔の近くで広げ、その手の形に注目したくなるポーズとなっている。思わず爪の先や、指の形をまじまじと見つめてその表現の細かさに感心してしまう。

 実は「BISHOUJOシリーズ」で毎回手の形にとてもこだわりを見せているとのこと。手の形の美しさは、シリーズの特徴の1つなのだという。魅力的なイラストは時に山下氏の奥さんの手をモデルにイラストを作成されているとのこと。山下氏の作品は、“手の形“も注目ポイントとのことだ。

【繊細な手の表現】
右手の指先の表現、ネイルの形、こちらを誘うような手の動きは思わずじっくり見つめてしまう

 もう1つのこだわりは“服のしわ”。しわを意識することで服の素材だけでなく、“薄さ”まで表現できる。モリガンは太もも部分のタイツのしわがとてもセクシーだ。逆に肘にはしわがない。ここはぴったりと肌に張り付いている雰囲気を出している。おなか部分を多う革の衣装はしわだけでなく、その下のおへそや腹筋までくっきりと浮き出させているのも面白い。こういった各所で違うしわの表現も見所とのこと。

 こういったセクシーさに踏み込んだテイストにしながらも、モリガン自身が持つかわいらしさや高貴さを感じさせる部分、山下氏のイラストの持つ雰囲気などで「セクシーすぎないバランス」は実現できているのではないかとしょーぐん氏は語った。「BISHOUJOシリーズ」は元のキャラクターからのアレンジが加わっている商品ではあるが、元作品へのリスペクトを忘れないように気をつけているとのことだ。

 またこのシリーズは女性ファンや、フィギュアを初めて買うきっかけになったと言ってくれる方も多く、そういった方にも受け入れられやすいセクシーさや雰囲気を大事にしているとの事。モリガンはシリーズの中でもセクシーさに踏み込む商品になったが、山下氏のテイストとモリガンというモチーフで独特のバランスが出せたのではないかとしょーぐん氏は語った。

 この山下氏のイラストを、原型師のke(小抹香)氏がフィギュアの原型へと立体化させていく。こちらにもしょーぐん氏は「セクシーなモリガン」というテーマを提示し、「さらに色っぽく!」をキーワードにより細かなディテールを加えていった。

 山下氏自身、「フィギュアになった時のアレンジ」を応援してくれる姿勢があり、「BISHOUJOシリーズ」は積極的にフィギュア化する時に、立体物ならではのアイディアを盛り込んでいるとのこと。「ヴァンパイア美少女 モリガン」では原型師のke(小抹香)氏、彩色のnamoji氏がそれぞれ思い入れを込めてこのフィギュアを作り出している。次ページでは造形と彩色にフォーカスしていきたい。

【フィギュアの後ろ姿】
後ろに回るとお尻の存在感が非常に大きくなる。次ページで詳しく取り上げていきたい