インタビュー

フィギュア「ヴァンパイア美少女 モリガン」企画者しょーぐん氏インタビュー

モリガンの肌に魅力を加えるピンクのアクセント。髪の毛の彩色も注目

 彩色という要素で印象に残るのは肌の表現だ。実はモリガンはセクシーというイメージの割には肌の露出が少ない。下半身はタイツに包まれているし、腕部分もぴっちりと布が覆っている。背中からはコウモリの羽が生えている。だからこそ大胆に突き出された胸元と、色っぽい顔に目が惹かれる。

 モリガンの肌で印象に残るのは”ピンク”だ。実際には印象に残るほど強めのピンクは使われていないのだが、胸の谷間や指先にシャドウが入ることで生気のある肌の色にしている。脇部分のほんのりした赤みや、ピンクのネイル、目の上のピンクのアイシャドウなど、効果的に使われる色がピンクの色を印象づけている。特に顔に関してはピンクを強く、ほてった雰囲気も取り入れている。

【ヴァンパイア美少女 モリガン密着企画3/3】
第3弾のテーマは彩色。翼への塗装の細かい工程が語られている

 唇の色に関してはしょーぐん氏がこだわった部分。「唇を赤くしてしまうと、お化粧感が強く出てしまうので、自然な色を選びました。モリガンはサキュバスなので、逆に必死にメイクをしなくても、男を誘惑できるだろう(笑)、という事も考えましたね」。目元はしっかりアイシャドウを入れているが、唇はナチュラルな感じにしている。歯や舌を印象づけることも考え、唇の主張は抑えたという側面もあるという。

 フィギュアの表現としては成型色の白い肌の上に薄く塗料を重ねていくことでこの質感を生み出している。塗料を厚くする”塗り肌”ではなく、薄く重ねる手法は、山下氏のイラストが持つ透明感だけでなく、PVC商品にする工程ともマッチしているとしょーぐん氏は語った。成型色を活かしつつ、シャドウを効果的に入れる手法は昨今の流れでもあるとのこと。本商品においては肌の自然な感じも強められていると感じた。

【効果的なピンク】
アイシャドウ、肌のシャドウ部分や、ネイル、そして唇と、ピンクのアクセントが効果的だ。舌はツヤを持たせてあり、光を当てると反射する
【髪の毛のグラデーション】
複雑な髪のグラデーション。頭の鉢のあたりには"天使の輪"のハイライトも

 髪の毛もグラデーションで立体的な雰囲気を深めている。グラデーションは毛先から、と言った段階的な色調変化ではなく、重なっている部分や、カーブの部分などで色を差し込むことで流れる髪の動きを強調している。また頭の鉢の部分には白い”天使の輪”も入れてあり、こちらも細かくチェックすると楽しいものになっている。

 また、コトブキヤのムービー「ヴァンパイア美少女 モリガン密着企画3/3」では特に翼の塗装方法に関して、詳しく取り上げている。翼の質感がどうやって生み出されているか改めてしっかりわかる構成になっている。他にもフィギュアの各部に施されたシャドウが立体感をもたらすかなど興味深いポイントが取り上げられている。

【革の質感と、台座】
ブーツの質感も彩色の見所。台座のグラデーション表現も面白い

第2弾の「ヴァンパイア美少女 フェリシア」は、モリガンとは全く異なるテーマを追求

 今回はモリガンに加え、第2弾の「ヴァンパイア美少女 フェリシア」も見ることができた。ゲームでのフェリシアは「キャットウーマン族」という猫の特徴を持つ種族だが、アメリカの孤児院でシスター・ローズから愛情たっぷりに育てられる。ローズはフェリシアを世間から離すように暮らすが、この世を去ってしまう。

 1人になってしまったフェリシアはミュージカルスターを志すようになり、そのアピールの手段としてダークストーカーズとの戦いに参戦していく。ゲームのキャラクターとしては素早い動きと肉弾戦が強いキャラクターであり、「ローリングバックラー」、「ローリングスクラッチ」といった一気に距離を詰める技と、手数の多さで勝負する。

【ヴァンパイア美少女 フェリシアのイラスト】
山下氏のフェリシアはかなりかわいらしい雰囲気だ

 原作ではモリガンに劣らないスタイルを持つフェリシアだが、「ヴァンパイア美少女 フェリシア」はスポーティーな雰囲気にアレンジされている。全体的に引き締まった筋肉質な体つきで、あばら骨や腹筋の存在がしっかりわかる体型になっている。それでいながら肩幅は広く、腹筋もしっかり表現していて、肉体のポテンシャルの高さを感じさせるディテールが盛り込まれている。

 フェリシアは体の多くの部分が体毛で覆われており、髪の毛のボリュームはすさまじい。この猫らしく“もこもこ”とした感じと、引き締まったボディのコントラストは大きな魅力だとしょーぐん氏は語った。山下氏のイラストだとかわいらしい印象が強くなっているが、立体化にあたり、女性アスリートテーマとして取り入れたとの事。モリガンのフィギュアを並べてかざれば、体型の違いでも、キャラクターの個性を表現していることがよくわかるだろう。

 彼女は天真爛漫であり、元気いっぱいのキャラクターだ。ポーズもその雰囲気が良く出ているが、こちらに向けて開いた手には、大きなかぎ爪があり、そこだけ見ると非常に恐ろしい。手のひらには肉球がありこちらはかわいらしくも感じるが、サイズや、鍛えられたフェリシアの体を見ると、やっぱり怖い。シリーズのテーマである怖さもきちんと盛り込まれたフィギュアなのだ。

【フェリシア原型】
フィギュアでは手が大きく、爪が鋭い。肩幅が広かったり、スポーティーな雰囲気がある

 モリガン、フェリシアと展開していく「ヴァンパイア美少女」シリーズだが、しょーぐん氏はここからさらにシリーズを展開するためにも「予約注文」をして欲しいと強調した。フィギュアの基本的なビジネスはユーザーが小売店に予約注文を行ない、その予約数をまとめ、発注された数量をもとに、メーカーは工場での生産数を決定している。小売店が「予約注文の他に何個か店頭に置きたい」という判断をしないと、生産数そのものが、予約数に応じたものとなる。かなり受注生産に近いビジネスモデルなのだ。

 このため「店頭に並んでから買おう」と言う考えではフィギュアは手に入りにくいという。「予約から購入までは半年以上お待たせする形になりますが、気に入っていただけたらぜひ予約をしていただきたいです。なによりも予約数が今後のシリーズの展開にも影響していきます」としょーぐん氏は語った。

 最後にユーザーへのメッセージとしてしょーぐん氏は「今回かなり思い入れを語らせていただきました。『BISHOUJOシリーズ』は10周年を迎えた人気シリーズとなりましたが、今後さらに皆様を驚かせる仕掛けも用意しています。今後もぜひ応援をお願いします。今回紹介させていただきましたモリガンをご予約をいただければと思います」と語りかけた。

【フェリシアディテール】
カメラを寄せて各部を撮影してみた

 とても楽しいインタビューだった。かわいらしく、セクシーで、そして怖い。しょーぐん氏が山下しゅんや氏達開発スタッフと目指した「ヴァンパイア」キャラクターの表現は興味深い。

 しょーぐん氏は「ちょっとセクシーすぎるのではないか、と言うユーザーの声もありました」とのことだが、色々な方向性があって良いのではないか。今回の「ヴァンパイア美少女」シリーズがきっかけになり、他のメーカーやクリエイターが「ヴァンパイア」キャラクターに挑戦するような未来にも期待したい。