インタビュー

フィギュア「ヴァンパイア美少女 モリガン」企画者しょーぐん氏インタビュー

翼とお尻を特に見て欲しい! 色っぽさの中に怪物の怖さが込められた造形

 ここからはさらにフィギュアのディテール、造形のke(小抹香)氏と、彩色のnamoji氏のこだわりに踏み込んでいきたい。

 「ヴァンパイア美少女 モリガン」の山下氏のこだわりである、右手の繊細な表現は前ページで触れたが、反対の左手はというと……服をつまんで引っ張っており、結果として左右のバストの形が変わり、胸の柔らかさや重量感を強調する姿になっている。右手のみならず、左手もとても印象的なのだ。このポーズは胸だけでなく、つまんだファー(羽毛)部分の素材感を強調する効果ももたらしている。

【ヴァンパイア美少女 モリガン密着企画2/3】
第2弾は造形にフォーカス。3DCGからのフィギュア製作のアプローチが語られている

 実はこの「服を持ち上げて胸の形を強調するセクシーさ」を原型でしっかりと再現するため、ke(小抹香)氏にイメージを伝えるのにしょーぐん氏は苦労したとのこと。今形になっているものを見るとそのセクシーさや、アイディアに感心させられるが、確かに言葉やイメージで伝えるのは難しいかもしれない。

 山下氏のイラストは独特の“リアル”な雰囲気がある。イラスト的なディフォルメがありながら、しっかりとした骨格、筋肉の付き方、ポーズの説得力……きちんとした実在感があるのだ。このテイストを活かすべく、ke(小抹香)氏は立体物としての整合性を目指している。

【服を持ち上げる手】
左手の服を持ち上げる手の動きで、胸の形が変わっている。服と肌の境界線など細かいところをチェックしたくなる

 それが黒い革の衣装やファーの質感、足を包むストッキングに生じるしわ、グラマラスながらしっかり締まった腹筋や、脇腹の肋骨のラインなどもきちんと表現している。こういった人体ならではのリアリティもしっかり取り入れながら、キャラクターとして、フィギュアとしてのディフォルメを効かせていく。山下しゅんや氏のイラストの持ち味を活かすべく、“リアルとイラスト的なテイストの境界線”をもう一度探っていくところに、原型製作の醍醐味があるのだとしょーぐん氏は語った。

 その中で今回、しょーぐん氏とke(小抹香)氏、そして彩色のnamoji氏があえて強く“リアル”方向に向けたのは“翼”のアレンジ。モリガンは背中からコウモリの翼をはやしているのだが、この翼はグッとリアルな生物方向に振っている。裏側の黒い部分は非常に細かくモールドが彫り込まれ、生物的な意匠を持たせている。

【翼の質感】
生物的なアプローチの翼の表現。実は全体がクリアパーツで、彩色を重ねることで独特の質感を演出している。外側の硬い皮膚の感じ、内側のぬめりがあるような光沢、透けて見える内部の雰囲気などが非常に凝っている

 反面内側は透けた光沢のある質感。クリアパーツに血管が走り、透明な皮膜の奥に薄い皮膚の赤みがかった部分が見える。ここだけ見るとドラゴンなどモンスターのフィギュアのような表現だ。野生動物を見ているような気持ちにさせられる。人間とは全く違う器官を前に、生物学的な好奇心が沸き上がるリアルな表現がなされている。これが美少女から生えている、と言うのが、「人でないものの怖さ」の一端であることを実感できる。

 この翼は非常に凝った作りになっているとしょーぐん氏は語った。素材はクリア(透明)なものを使用しており、これに裏側から着色していくことで翼の独特な質感を生み出している。このため翼の皮膜部分に独特の“深み”が生じ、内側と外側の違いを際立たせ、外側は硬い皮膚のような質感、内側は柔らかい質感となっている。

 この翼の造形は実際のコウモリの翼を参考に要素を活かしていったとのこと。翼は間違いなく本商品の大きな注目ポイントだ。モリガンは頭からもコウモリの翼が生えているのだが、こちらにも生物的手法は使われている。飾りではなく、彼女の体の一部であることを実感できる。

フラッシュを当ててよりディテールによってみた。細かい表面処理などが確認できる

 そして「ヴァンパイア美少女 モリガン」最大の魅力ともいえるのが”お尻”だ。ボリュームたっぷりで、丸みのある、見応えのある部分となっている。胸を突き出したポーズだから顔中からのくびれが強調され、まさに洋梨のようなダイナミックな曲線を描いている。フィギュアを後ろから見た場合は、目が吸い寄せられてしまう。

 モリガンのストッキングにはコウモリ型の模様がある。これは実はモリガンに付き従うコウモリであり攻撃時などはここからコウモリが分離したりするのだが、あえてお尻部分にコウモリの模様は入れず、つるりと光るハイライトが自然に入る曲線を目指したとのこと。フィギュアサンプル撮影時のカメラマンもこのフィギュアのお尻は感心していたという。

 膝裏のストッキングのしわもアクセントとなり、改めてストッキングで強調された、なめらかなお尻のラインは本当に魅力的だ。思わず指でそのお尻のラインをなぞってしまいたくなる。

【魅力的なお尻】
思わず目が吸い寄せられてしまうなめらかな曲線とつやのあるお尻
ストッキングのしわの造形、塗装も魅力的だ。ストッキングの柄のコウモリも楽しい

 このほか、造形部分での小さなこだわりが胸の下の小さなハートマークの切り抜き。体を包む革の衣装でここだけ肌が露出していて思わず目でチェックしてしまう。この部分は別パーツになっており、塗装だけでは出せない服と肌の質感の違いを表現しているとのこと。この胸の下の切り抜きも、モリガンのセクシーさを感じさせる大事な要素である。

 「ピンクのお尻って、色合いから見ても本当はちょっとコミカルな感じが出てしまうと思うんです。でもこのフィギュアでは本当にみずみずしくて魅力的になっている。このジューシー(笑)さは本当に良くできたなぁと思います。ぜひ実物を見て欲しいです」としょーぐん氏は語った。

 「フィギュアの良さって、やっぱり写真だけでは伝わらないと思うんです。実物に本当に目がくっつくんじゃないかと言うくらい目を近づけてみることで、色々な面白さに気づける。モリガンの口の中や、翼のディテール、手の表情……ショーケース越しでも伝わらない。やはり自分のものにして、本当にたっぷり見て欲しい。特にお尻は思わず指を這わせたくなる出来です。そう言う触感も楽しい。ぜひお家に迎えて欲しいです」と熱を込めてしょーぐん氏は語った。

 こちらでもかなり彩色の要素も語られたが、次ページではもっと彩色の要素を紹介していきたい。さらにシリーズ第2弾である「ヴァンパイア美少女 フェリシア」の原型を前に、その特徴もしょーぐん氏に語ってもらおう。

【原型】
こちらは彩色されていない原型。造形の繊細さが実感できる