インタビュー

ついにカバヤが玩具業界に参入! ミニカーの棚に並ぶ「マジョレット」、本物の宝石で作られた「セボンスター」、これからのカバヤの戦略は?

 筆者にとってカバヤ食品(以下、カバヤ)の「ビッグワンガム」の衝撃は忘れられない。1980年前半、当時100円という当時ちょっと豪華な価格に、「D-51」、「戦艦大和」といった本格的な組み立て式模型がおまけとして付属していたのだ。この「ビッグワンガム」は以降の食玩の歴史を大きく変えた。

 カバヤはそれ以降も、ボークスと共同開発した「デュエルナイツ」、きちんと変形する「トランスフォーマーガム」など魅力的な本格的な食玩を生み出し続けた。そして「ほねほねザウルス」である。恐竜などの生物モチーフに組み替えができるブロック要素を併せ持つこのシリーズは発売から25年目を迎えた1歴史を持つブランドとなった。また、女児向けアクセサリー付き玩具菓子「セボンスター」は50年近い歴史を持つ。食玩メーカーとして日本を代表する会社なのだ。

 そのカバヤがミニカー「マジョレット」で玩具業界に参入する。筆者にとっては「まだ参入していなかったのか?」という意外なところもあったが、40年以上前から本格的な食玩を手掛けていたメーカーである。玩具業界という食玩とは異なる流通、売場でどんな商品を出していくのか、興味が惹かれ、インタビューを申し込んだ。

 話を聞いてみると「本格的な玩具を展開する」という方向性だけでなく、「ほねほねザウルス」、「セボンスター」といった自社のIP、現代の大人達が「懐かしい」と感じるブランドでより幅広く展開しようとしている。そしてすでにいくつかのプロジェクトはスタートしており、カバヤ自身が改めて自社の潜在的な能力を自覚し、その力を開花させようとしているのがわかった。

 カバヤは「玩具ライフスタイル事業部」を立ち上げ、自社の製品のコンセプトを見直し、ブランドの活用法を模索して新しい活動をしようとしている。今回、カバヤ食品玩具ライフスタイル事業部長の奥田薫氏と、ライフスタイル事業部デジタルコマース企画推進部長の宮澤浩司氏にインタビューを行い、カバヤの今後の展開を聞くことができた。

今回話を伺った、カバヤ食品玩具ライフスタイル事業部長の奥田薫氏(左)と、ライフスタイル事業部デジタルコマース企画推進部長の宮澤浩司氏

ファンの望むミニカー流通を実現、企画商品も展開していく「マジョレット」

――カバヤ食品さんは私の感覚では「ビックワンガム」を展開していた1980年代には既に食玩に強いイメージがありました。逆に現在まで玩具業界に参入していなかった、というのは驚きでもあります。今、なぜ玩具業界に本格参入したのかを教えてください。

奥田氏:カバヤは「ほねほねザウルス」が25年目、「セボンスター」47年目と、非常に息の長い玩具菓子ブランドを持っています。ここは他社にはない大きな強みです。玩具業界への参入の土台というのは、ずっとあったと思うんです。

 なぜ今参入するのか、という問いの答えの1つが「世代を超えた人気」というブランドの強さへの確信です。親子、さらには3世代が知っているブランド、この強みをもっと活かせないか、というところが今回の展開の理由の1つです。

 もう1つが「平成女児」といわれる、ノスタルジー消費が起きていること。「セボンスター」はこのニーズに合致しています。子どもの時に憧れたものを大人になってから買う。当時生まれていなかったような若い子が独特のセンスに魅力を感じる。こういった昨今の盛り上がりが、私たちに改めて自社ブランドの可能性を実感させてくれました。玩具菓子ブランドの可能性をもっと広げていこうと思ったのです。

――今回私たちがカバヤの展開を知ったのがミニカー「マジョレット」の「トイザらス」での販売、およびカバヤによるECサイトの販売です。これまで「マジョレット」はお菓子をつけた食玩として販売していたが、今後は玩具売場でも「マジョレット」を展開していく、ということでしょうか?

奥田氏:はい、玩具売場を含めたチャネル開拓を進めます。私たちは今後の展開の柱として、「マジョレット」、「ほねほねザウルス」、「セボンスター」を考えています。今回、「マジョレット」で玩具業界に参入したのは、「一番嗜好性が高いブランド」だから、という私たちの判断です。

 「マジョレット」は非常に人気のあるフランスのミニカーブランドです。弊社ではこれにガムを付属させた玩具菓子としてお菓子売場で展開していました。「マジョレット」の人気を実感したのはミニカーイベントへの参加です。

 ミニカーカーイベントなど車好きが集まるイベントでは、限定アイテムの人気が非常に高い。ネットでは希少なアイテムを買い求める「マジョ狩り」という言葉まで生まれています。玩具菓子としての「マジョレット」は販売するための面積も限られていて、発売日が明確ではないため手に入れにくい商品もあって、ファンの間でもっと購入できる機会を増やして欲しい、という声が上がっていました。

 もう1つ、入手しやすいサイズのミニカーはタカラトミーさんの「トミカ」が一強で、他の競合商品は少ない。ここに「マジョレット」をしっかり投入できれば、この1/60サイズのミニカーの選択肢を広げられるのではないか、と考えました。

 今後の戦略としては玩具コーナーのあるレストランチェーン店などでの展開です。玩具菓子だと、スーパーやコンビニといったところでの展開になり、大手雑貨店、家電量販店などにも置けませんでした。玩具菓子ではこれまでできなかったチャネルの広がりを期待しています。

「マジョレット」はフランス生まれのミニカー。現在はドイツのSimba Dickie Groupのブランドとして展開している

――改めて、「マジョレット」の商品の特徴をお聞かせください。

奥田氏:ギミックや、精巧さに魅力のあるミニカーです。ホイールの表現やディテールに力を入れています。サイドミラーがあるなど「トミカ」の「ハイクラス」と呼ばれるカテゴリーの商品にも負けない表現を実現しています。またディスプレイすることを前提に購入される方が多いところがあります。

 そして「車種」です。「マジョレット」はフランスのミニカーブランドなので、ヨーロッパの車がラインナップの中心です。「トミカ」や、マテルさんの「ホットウィール」でも商品化していないモチーフがあり、ミニカーファンの間でも注目されています。

 だからこそホビーファンに「マジョレット」をもっと知ってほしいんです。家電量販店だと、「トミカ」、「ホットウィール」、「マッチボックス」といった各社のミニカーが並んでいるのに、「マジョレット」はないんです。「この車のミニカーはないかな?」と探している人に届いていないのではないか、そう考えました。

 それはお客様としても疑問だったのではないかと思います。「ミニカーなのに、なぜミニカー売場にないのか?」。売場は私たちの都合であり、ミニカーが欲しい人たちにちゃんと届いていないというのは、解消したいポイントなのです。

「マジョレット」はブリスターパッケージで発売。「ベーシック」モデルは999円

――売場が拡張されると、例えば生産数なども変わってくると思います。食玩の少数販売とはまた異なる戦略が求められるのではないでしょうか?

奥田氏:「マジョレット」は現在はドイツのSimba Dickie Groupが親会社ですが、生産側と交渉し、より積極的に展開していこうと話を進めています。そして何よりバリエーション展開を積極的に行う。玩具菓子のミニカーと玩具のミニカーを切り分け、売場に様々な車種の商品が並ぶようにしていきます。

 生産側も積極的で、「日本ではどんな車が人気なのか?」、「どういったモチーフを投入すればいいのか?」など、これまで以上に活発にやりとりをしています。

――今回発表されたセット商品なども目玉ですね。

奥田氏:そうですね、これまではお菓子売場ということで展開場所がありませんでした。今後、こういったセット商品なども積極的にやっていきます。

 セット商品、特別企画は特に「プレゼント需要」に期待しています。ミニカーはプレゼントとしても使われます。好きな車種や特別なカラーリングの商品をプレゼントとして贈る人もいる。そういった方達も「マジョレット」を手にしてもらえればと思います。

宮澤氏:現在玩具流通向けの商品展開をスタートしています。トイザらス様に加え、弊社が運営する「マジョレット」専用のECサイトを開設しています。こちらでの強みはある意味とがった、より企画力の高い商品を展開していきます。ECサイトでの受注は「ポルシェ」などヨーロッパのスポーツカーが人気ですね。直接お客様のニーズが見えるようになったので、「マジョレット」の生産元に伝えています。

「ブラックエディション 5ピースギフトパック」、精巧なディテールが際立つ、ブラック仕様の特別モデル5台セット。価格4,950円。こういった企画商品は、従来の食玩では展開できなかった
ヨーロッパならではの車種にも注目だ

――ラインナップには作業車もあるのですね。例えばトラックやゴミ収集車なども日本とは全く形が違う。「ヨーロッパらしさ」は受けると思います。

宮澤氏:「マジョレット」はVOLVO(ボルボ)も強いメーカーの1つです。ボルボはショベルカーなども多く手掛けていて、ダンプカーなど、建機・作業車も本格的でニーズがあると思っています。

――企画商品などECサイトでの特別商品、トイザらス限定の特別車両といった差別化はわかるのですが、一般商品に関しては、従来の食玩と玩具店に並ぶ物でラインナップは変わるのでしょうか?

奥田氏:こちらはきちんと差別化し、玩具菓子で展開する車種、玩具で展開する車種は変えていきます。それは販売店様が扱う上でも必要な戦略だと考えています。「マジョレット」の高い潜在力を、カバヤとしてより本格的に活かしていく、というイメージだと思っていただければ。

宮澤氏:「マジョレット」は対象年齢は3歳以上ですが、ラインナップで子ども向けを意識しもの以外に、大人に魅力の商品もある。従来は子ども向けを意識して展開していましたが、今回、選択の幅を広げました。玩具流通では大人にも魅力的な車種を投入していきます。そしてECサイトではよりマイナーというか、とがった企画の商品も展開します。ECサイトは自分から積極的に情報を求めてきたユーザー様に向け、独特の車種や限定カラーなど一般販売とは異なる商品を扱っていこうと思っています。

――現在販売を開始した「マジョレット」商品は、トイザらス、ECサイトでは異なる商品を販売しているのでしょうか?

宮澤氏:トイザらス様では20種、ECサイトでは100種ほど扱っています。

 ECサイトでは特別商品なども扱う予定ですが、それと共に”メディア化”を行っていくのが今後の大きな戦略です。「マジョレット」とはどういう世界観を持っているのか、その紹介をしっかりしていきます。ECサイトでは商品の販売と同じくらい、「マジョレット」とはどんな商品か、その商品にどんな魅力があるかを紹介していきます。

 特集や紹介にとどまらず、開発者インタビュー、さらには「マジョレット」のコアなファンにインタビューを行い、コミュニティに働きかけるなどカバヤの「マジョレット」サイトとしてより幅広い情報を発信していこうと思っています。「マジョレット」をより深く知っていただけるような企画を考えていますので、期待してください。

4月からオープンした「マジョレット」のECサイト。今後ラインナップを拡充する

――今回、「マジョレット」でのカバヤが玩具業界へ本格参入、というニュースは大きな反響があったと思います。カバヤにとってこの反響はいかがでしたか?

奥田氏:発表後にはお取引先さまからの問い合わせも多く、私たちへの期待感は強く感じました。「マジョレット」は皮切りであり、カバヤの独自IPも展開していこうと現在戦略を練っています。さらに玩具だけでなく、そこからさらに幅広い商品開発を行っていく予定で、準備を進めています。その柱となるのが、「ほねほねザウルス」、「セボンスター」です。

 実は「セボンスター」はライセンス販売という形で、すでに多彩な展開を行っています。「ほねほねザウルス」も今後さらに幅広く展開していきます。カバヤにとってお菓子という業種以外にも自社IPを広げていこうという動きが活発になっています。

 商品の多チャネル化、ECサイトでの自社販売、玩具を始めとした文具などの展開など、カバヤは自社が扱っている商品やブランドをより幅広く扱っていこう、というところで私たちの「玩具ライフスタイル事業部」を立ち上げました。

宮澤氏:今回、「マジョレット」を大きく発表したのは、いち早く商品展開をしやすかった、という側面があります。現時点ですでに「セボンスター」は玩具以外の展開がありますし、「ほねほねザウルス」も5月24日まで開催中の「ほねほねザウルスワールド展」(福井県立恐竜博物館)でグッズを展開しています。玩具業界への参入は皮切りで、ライフスタイル全般にカバヤのIPを活用していきたいというのが、今後の狙いになります。

――なるほど、「マジョレット」はあくまでスタートで、今後カバヤの戦略がより明確になっていくのですね。

奥田氏:そうですね。商品ブランドの特性という点も見逃せません。「ほねほねザウルス」や「セボンスター」は商品の性格から”代理購買”になります。子どもが親にお願いして親が買う。このため、ID-POSのデータ上では実際のユーザーとズレが出てしまう場合があります。「マジョレット」は自分のために商品を買う方も多く、ターゲットがより明確なのです。

 オフラインの玩具流通に加え、オンラインのECサイトを立ち上げ、欲しい商品を購入するチャネルを作れば、そこでユーザーは「マジョレット」を手にする。そういう道筋が明確でした。このため現在考えている「マジョレット」、「ほねほねザウルス」、「セボンスター」の3つの柱のうち、「マジョレット」が最初に、そして明確にアピールできる商材だった、という側面もあります。

本当の宝石を使用した「大人のセボンスター」! 進化していくカバヤのブランド

――では「セボンスター」、「ほねほねザウルス」、2つの玩具ブランドについてお聞きしたいです。

奥田氏:「セボンスター」は1979年にスタートした女の子向け玩具菓子です。六角柱のパッケージに入っている商品が主力の「セボンスター」です。ペンダントとチョコレートが入っています。メインターゲットは3歳から小学校低学年くらいまでで、女の子の初めてのおしゃれを想定した「マイファーストアクセサリー」をコンセプトにしています。

 「セボンスター」は各シリーズの多彩な種類が魅力で、現在販売されているシリーズ商品は全部で90種類となっています。ペンダントトップには大きな宝石状の透明なクリスタルを配置、チャーム部分のデザインで様々なバリエーションを展開しています。宝石と共にフレームのデザイン、フレームの材質で差別化をしていて、フレームがメッキされているもの、ラメが入っているもの、パール風のつやのあるものなどがあり、ここにカラーバリエーションが加わるので合計20デザイン全90種類。コレクションも楽しめます。

 「セボンスター」は90種のうち何が入っているかわからないブラインドパッケージで、1つ270円程度。「セボンスター」ブランドとしては他に2つのペンダントが入っていてペアで楽しめ、友達に渡したりして遊べる「キラキラコーデセボンスター」が490円程度、宝石箱に入っている「ドリーミーセボンスター」が770円程度、といったちょっとだけ高額なラインナップもあり、女の子のあこがれを感じてもらえるような製品です。「小さいときに買ってもらえなかった」と大人の女性が買うといったこともあります。

 2024年頃から「平成女児」ブームで、少しレトロ感もある「セボンスター」は大きく受けて、現在でも人気です。発売からほとんど変わらない6角柱のパッケージに懐かしさを感じる人も多く、高校生や大人の女性も購入することで、人気がより加速している印象です。

「マイファーストアクセサリー」がコンセプトの「セボンスター」。左の六角柱パッケージが1979年からの伝統だ
素材もさまざまで、全部で20デザインあり、カラーバリエーションを含めると90種類もの多彩な展開が魅力だ

――「セボンスター」は低年齢層向け玩具という位置づけですが、今は大人の方にも受けているんですね。

奥田氏:「平成女児」といわれる一種のレトロブームはかなり後押ししてくれていると思います。その上で47年という非常に長く続いたブランドなので、孫に買ってあげる、娘とお揃いでちょっとしたおしゃれに使う、子どもの頃の憧れを手に取るなど、世代を超えた人気商品に成長しているのを実感しています。

 話題になったことでの注目度も高いですね。箱ごとの”大人買い”をしても数千円なので、自分のお気に入りの組み合わせを探す、といった方もいらっしゃるようです。そして実は「大人のセボンスター」という、「マジョレット」よりも早く新しいジャンルで展開もしているんです。

――「大人のセボンスター」をもう少し詳しくお願いします。

奥田氏:「大人のセボンスター」は宝石専門店のKARATZさんとカバヤのコラボレーションで生まれた商品で、現在すでに第3弾まで展開しています。ラベンダークォーツ、ダイヤモンドといった本物の宝石を使い、「セボンスター」のデザインを再現、「セボンスター」らしい独特のかわいらしさと、本物の宝石の輝きを持つ商品です。ジュエリーケースも六角柱にするというこだわりです。第1弾発売時に有楽町マルイ内にKARATZさんのポップアップストアを出店し、そこで販売しましたが、販売時には開店時から入店待ちの人が列をなすほどの人気でした。

本物の宝石を使った「大人のセボンスター」。2025年10月に第3弾が販売された。左の「ラベンダータンザナイト」が39,800円。もう1つの「ラベンダークォーツ」が29,800円

 もう1つ、「セボンスター」と、「新横浜プリンスホテル」などを運営する「西武・プリンスホテルズワールドワイド」さんとのコラボレーションも非常に人気です。「セボンスター」の世界観をいかした、コンセプトルーム、テイクアウトスイーツ、コラボレーションカクテルを販売して人気を集め、5月末まで実施中です。「セボンスター」は世代を超え、そして玩具菓子というジャンルを超えたIPになっています。

 「セボンスター」はデザインなどの魅力だけでなく、子どもの時に買った、憧れたという“記憶”を喚起させられる商品になったと実感しています。親子3代が魅力を感じることができる商品で、「子どもの頃の記憶は一生の大事な物になる」という情緒的価値が「セボンスター」の大きな武器だと思っています。

新横浜プリンスホテルの「『セボンスター』コラボレーションルーム」。「セボンスター」の世界観で部屋を染め上げている

――樹脂製の“玩具”の材質が本物になった「大人のセボンスター」というのはまさに子どもが夢見た、「本物のアクセサリー」ですね。

奥田氏:この商品は「セボンスター」を長年愛していただいているKARATZさんの担当者からお声がけ頂いて実現しました。彼女の熱量と「セボンスター」の世界観への理解はすごかったです。「セボンスター」は見せ方によってはチープになってしまう。そうならないようにデザインを突き詰め、レアな宝石も活用して「セボンスター」の魅力を最大限に高めています。だからこそファンも納得できる商品となり、シリーズ展開も実現しています。

 ホテルも同様で、世代を超えて「セボンスター」が好きな方が大人になったからこそ、ホテルの一室を「セボンスター」一色にするといった企画が可能になる。そしてそこに人が来るという時代になったんだと思っています。

 ここで強調させて頂きたいのは、カバヤの「セボンスター」はただレトロだから、懐かしいから人気があるわけではありません。「セボンスター」は「手の届く夢の宝石」をイメージしています。

 子供っぽさ、悪い言い方をすれば「子供だまし」ではなく、ハートや星といったキラキラしたものをベースに、普遍的なかわいらしさを大事にしているからこそ、その魅力が現代でも変わらず支持されているんだと感じています。

――カバヤ自身では「セボンスター」はどんな展開をしていく予定でしょうか?

奥田氏:文具など「関連商品」の企画を進めています。今年の末ぐらいまでには発表し、雑貨店などで玩具菓子の「セボンスター」と一緒に商品を展開していこうと考えています。大人の方も手に取りやすい、「セボンスター」の世界観を活かした商品を企画しています。ECサイトで玩具として「セボンスター」を復刻販売していく、というのも人気が得られるのではないかと考えています。

 もちろん玩具菓子の「セボンスター」が中心となるので、こちらはこれまで同様コンセプトをぶらさずに新シリーズもしっかり展開していきます。

子どもとの接点を増やしたい、生活へ浸透していく「ほねほねザウルス」

――「ほねほねザウルス」は組み立てて遊べるリッチな食玩シリーズですね。

奥田氏:「ほねほねザウルス」は「恐竜」などをテーマにしたプラキットにガムをつけた玩具菓子です。これまで発売した全シリーズが共通のジョイントを用いており、同一シリーズでパーツを合体させられるだけでなく、様々なパーツを自由に組み合わせて楽しむことができます。

 こちらのメインターゲットは低学年の小学生男児。「セボンスター」もメインターゲットは広げていません。考え方は「ほねほね」同様です。「平成女児」により大人も買い始めた、という流れで自然に広がったもので、ブランドターゲットはどちらも「3歳から小学校低学年ぐらい」です。無理にターゲットの年齢層を広げようとは考えていません。関連商品を増やし、子ども達のタッチポイントを増やしていこうと考えています。

25年以上の人気を誇る組み立て式玩具菓子「ほねほねザウルス」。価格は330円程度。より合体に注力した「ほねほねザウルス ブロックス」が770円程度。リアルな恐竜の姿を再現した「ほねほねザウルス博物館」が550円程度

 「ほねほねザウルスワールド展」の会場で販売している「ほねほねザウルス」の売場を見ていましたが、予想を上回る人気で可能性を再認識しました。特に大きくて豪華な「ほねほねザウルスブロックス」や、「ほねほねザウルス博物館」といった商品の売り上げが好調でした。

 これらはパッケージが大きいため、スーパーのお菓子売場では棚を圧迫し、敬遠されがちなところもあります。商品のポテンシャルを弊社でも把握していなかったところがあり、今後流通に働きかけていこうと思いました。

――先ほどの話に戻るところもありますが、「セボンスター」、「ほねほねザウルス」の関連商品として、どのようなものを考えられていますか?

奥田氏:文房具や靴、雑貨品など、より子どもの身近にある商品だけではなく、大人をターゲットにした商品企画を進めています。世界観を感じさせる商品です。クリアファイルなどは短期間で商品化が可能なので、積極的に進めていきたいです。

――玩具業界だけではなく、色々な形態の商品を手掛けていく、ということでしょうか?

奥田氏:そうです。私たちは「玩具ライフスタイル事業部」という新しい事業部であり、カバヤの製品ブランドをどのように広げていくかに挑戦する部署です。色々な接点を増やしていこうと考えています。玩具を軸に色々な可能性を模索していきます。

宮澤氏:「ほねほねザウルス」は男の子向けに幅広い展開が可能だと思います。商品にQRコードをつけてアプリでコレクション性を高めたり、WEBとの連動したり、ECサイトとも親和性が高いのではないかと考えています。ゲームなどにも活用できないか、色々企画を練っています。

「ほねほねザウルス」は本格的な組み立て玩具。組み替えも大きな楽しみ方だ

――今回、「マジョレット」でカバヤの玩具業界参入、というところからのお話でしたが、カバヤ玩具ライフスタイル事業部としては、「ほねほねザウルス」に関してはこれまでと同じように小学生を対象に、文具などの生活雑貨での接点を増やしていく。同様の戦略を「セボンスター」でも行っていく、ということですか?

奥田氏:「セボンスター」に関しては女児だけではなく広く女性をターゲットにしているので、商品戦略自体は「ほねほねザウルス」とは異なりますが、いずれもメインターゲットは子どもです。

――現在、少子高齢化の影響で、玩具業界は「キダルト」と呼ばれる大人向けの商品展開を活発化させていますが、「ほねほねザウルス」、「セボンスター」ではあくまで子どもをターゲットに接点を増やす戦略を第一にしていきたいということですね。

奥田氏:子ども達により広く「ほねほねザウルス」、「セボンスター」に触れて欲しい。この想いこそ大事にしていかなくてはいけないと考えています。おっしゃる通り子どもは少なくなっているのですが、だからこそ子どもが好きなもの、ブランドの魅力を掘り下げることに価値が出てくるのではないかと思っています。

 これまでカバヤのブランドに関しては、玩具菓子にとどまり続けていたと思うんです。ライフスタイルに組み込まれる、生活に浸透している「日常にあってあたりまえの商品」がカバヤのブランドでは実現していなかった。その「あたりまえ」を実現していこうと思っています。

 「マジョレット」の玩具業界での参入はその顕著な例です。玩具流通で活発なミニカーをなぜカバヤは流通させていなかったのか? 「ほねほねザウルス」、「セボンスター」の生活雑貨はなかったのか? 玩具業界参入という姿勢はこれから積極的に玩具のみに注力するということではなく、カバヤの“広がり”の一例です。ここからより活発にカバヤのブランドが生活に浸透していくことを目指しています。カプセルトイや、外食企業などとのコラボも、可能性を探っていきます。

――子ども向けの靴や文具などは、IPを求めている会社もあると思います。カバヤとしてはIPを提供する形でのコラボ商品を展開するのではなく、自社で商品を開発していくイメージですか?

奥田氏:どちらもやっていこうと思っています。セリアさんの商品や、ホテルとのコラボレーションなど、私たちのノウハウではカバーできないコラボレーション案件もたくさんあります。一方で文具はできるのではないか、と考えています。文具などは生産工場と付き合うことも必要になってきます。そちらも現在進めています。

 その上で品質にもこだわりたい。良い商品で私たちのIPを活用して欲しい。その方法がコラボレーションなのか自社販売なのかは商品の特性や求められる専門性によって変わってくると考えています。いずれにせよ「ブランドの価値を高める」、というのが一番重要なテーマなのです。

 そしてそのベースとなるのはあくまで「カバヤの玩具菓子としてのこだわり」なのだと思っています。特に「ほねほねザウルス」、「セボンスター」はスーパーやコンビニに置かれている商品だから、玩具菓子だから子ども達の心をしっかり掴んだわけですし、唯一無二の宝物として子どもの記憶に残った。玩具コーナーでの展開だったら他の玩具に埋もれてしまったかもしれません。スーパーやコンビニで親に買ってもらった商品の中で、多くの人気を得たブランドであり、そのブランド力をどう活用するか、ここを大事にしていきたいです。

カバヤの積極的な展開姿勢を語る奥田氏。一方でIPが持つ世界観、クオリティの維持も大きな課題だという

――具体的な、「ほねほねザウルス」、「セボンスター」への施策が見えてくるのはいつからでしょうか?

奥田氏:「セボンスター」は2025年から「大人のセボンスター」や、ホテルとのコラボなど、すでに動き始めているところがありますが、自社オリジナルの関連製品はこれからというところです。具体的な商品展開はまずECサイトからです。

宮澤氏:「セボンスター」のECサイト開設、それに伴う商品発表というのが直近での大きな動きになると思います。年度内での展開を目標に準備を進めています。ECサイトに関しては「マジョレット」はすでに開設していますが、「セボンスター」、「ほねほねザウルス」もそれぞれ独立したECサイトにします。こちらもそれぞれのブランドを明確にするためです。

 私たちもただECサイトを立ち上げるのではなく、デジタルコマースとしてweb全般の戦略を進めていくというところで名称を変更しました。「ブランドの価値を高める」というテーマに対して私たちが何をできるかがより明確になり、そこに合わせて4月に部署名を変え、具体的な施策を進めていくことになったわけです。

 webはユーザー自身が検索したり、ニュースサイトを通じて弊社のページにたどり着いたりするという、ある程度のハードルがあります。子ども達ではたどり着くのが難しい。このため「大人が見て記憶を掘り起こす」というポイントも大事にしています。ここが現在の大きな課題ですね。「マジョレット」に関してはLINEで情報発信もしています。今後メルマガなど可能性を探っていきます。

――最後に、ユーザーへのメッセージをお願いします。

奥田氏:カバヤでは本当に色々なことを考えています。今回お話しした「マジョレット」、「ほねほねザウルス」、「セボンスター」以外のブランドも掘り起こしたいですし、私たちもワクワクしているんです。みなさんの期待に応えるべく、色々なことをやっていきますので、ご期待ください。

宮澤氏:何ができるか、現場は本当に「楽しむ」という感情を大事に準備を進めています。大事なのは「お客様に楽しんでいただくこと」だからこそ私たちも楽しんで企画を練って、広げていきたいと思います。

――ありがとうございました。

宮澤氏はECサイトを販売だけでなく、メディアとして展開していく。各商品への取り組みも注目したい

 「長く愛されたオリジナルIPを活用しよう」というのは、老舗メーカーの非常に有効な戦略だと思う。カプセルフィギュアやマスコット、さらにはアパレルなど、現在は様々な形で古くから慣れ親しんだ商品ブランドが玩具メーカーや、グッズメーカーとコラボレーションを行い、魅力的な商品を生み出している。

 その上で「ブランドのイメージ戦略」も非常に重要になっている。シリーズの世界観、「ほねほねザウルス」や「セボンスター」の世界観を活かし、さらに忠実に再現したグッズでなければ、ユーザーは満足しない。カバヤは自社内にこういった活動そのものを管理運営するライフスタイル事業部を立ち上げて、本格的に展開するという。数十年続きファンに愛されているブランドを持つメーカーだからこそできる戦略だろう。

 カバヤの活動がどんな商品を生み出し、社会に化学変化を起こしていくか、そして他のメーカーがどう反応するかは注目したいところだ。