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ミニ四駆で電気自動車を学ぶ! 日産とタミヤが特別授業「なかの電動化スクール」を実施

電気自動車(EV)を活用した未来のまちづくりを体験

【なかの電動化スクール】

実施日時:3月11日~12日

会場:学校法人新渡戸文化学園

 日産自動車とタミヤ、学校法人新渡戸文化学園は、3者共同の取り組みとして小学校向けの特別授業「なかの電動化スクール」を3月11日と12日の2日間実施した。授業初日となった3月11日には、日産自動車によるEVの仕組みや可能性の紹介が行われたほか、タミヤの講師による特製ミニ四駆の制作と走行体験が行なわれた。

 2日目の3月12日は、その応用編として体育館の広いスペースを活用し、ミニチュア中野を使ってEVを活用するアイデアを発想する授業が行なわれた。こちらの記事ではその中から2日目の模様をレポートする。

授業終了後の囲み取材の登壇者。写真左からタミヤの満園則紀尚氏、日産自動車の寺西章氏、中野区長 酒井直人氏、新渡戸文化学園 理事長の平岩国泰氏、小学校教諭の栢之間倫太郎氏

未来のオーナーになる子供たちに電気自動車(EV)の可能性を知ってもらいたい

 今回の特別授業が行なわれることになったきっかけは、日産自動車の呼びかけからだった。そもそも、なぜこのような授業を行なおうと考えたのだろうか? 同社では、2050年に温室効果ガスの排出をゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すために、電気自動車を世界中の人々の間に普及させるための活動を進めている。

 電気自動車には環境に優しいというイメージもあるが、走りの加速力や乗り心地、静寂性という車としての面白さもある。それに加えて、電気を溜めることができ、電力源として他の機器に使えるといった、街のインフラとしても活用できるところに注目が集まっているのだ。そのような、新しい電気自動車の特徴について、日本中の人々に知ってもらいたいという思いが込められている。

今回行われた授業の風景

 そうした上で、今回小学校で授業を行うことになったのは、未来のオーナーになる可能性がある子供たちに電気自動車について触れてもらうという原体験をしてもらうためだ。日産自動車では、「日産わくわくエコスクール」と呼ばれる出張授業は行っているが、環境に優しいというイメージを飛び越えて、子供たちを夢中にさせるような授業をすることができないかという部分にこだわり、この「なかの電動化スクール」ではタミヤと新渡戸文化学園と一緒に授業を作りあげている。

日産自動車の寺西章氏より、企画の経緯が紹介された

 今回の「なかの電動化スクール」がこれまで行われてきた出張授業と異なるところは、EVを使った未来のまちづくりでどんなことができるのかということを、子供たちに考えてもらうところだ。そのためのツールとして採用されたのがタミヤのミニ四駆である。

 授業で使われたミニ四駆は、通常のものとは異なる仕掛けがあり、接続した「手回し発電機」を手回しすることで発電し、自分で作った電気を使用して走らせることができるようになっていた。これによって、エネルギーのありがたみが理解できることに加えて、電気を使ってどのようにまちを作っていくかということも体感できるようになっていたのだ。

 ちなみにミニ四駆自体は市販されているものと同じだが、手回し発電の部分を日産自動車が開発を行い、そちらを組み合わせたものが授業で採用されている。企画を担当した日産自動車の寺西章氏自身も、幼い頃ミニ四駆を遊んで育ってきた世代だ。その原体験が現在の仕事にも繋がっているのだという。

 そのため、大人が子供たちに「ミニ四駆はいいよ」と押しつけるのではなく、実際に遊んでもらうことで楽しいと感じてもらえるのではないかと考えた。そこで、タミヤには「一緒に将来の車好きを広げていきましょう」と声を掛け、企画を進めていったそうだ。

子供たちが手に持っているのが、日産が今回の授業のために開発した手回し発電機

 こうした話は、タミヤ側にとっても渡りに船であった。しかし、タミヤの満園則紀尚氏によると、最初のうちはミニ四駆とEVの関係性が全く繋がらなくて混乱したという。そこで話を進めていくうちに、手回しで蓄電してモーターを動かすという部分がEVであるということがわかり、目から鱗が落ちたそうだ。また授業の中にも、実際に子供たちがミニ四駆を組み立てるという工程を取り入れてもらうことができた。

 タミヤでは、寺西氏のように技術者の原体験としてミニ四駆や模型で遊んでいたという話を聞く機会が多い。しかし、静岡市の調査例では小学生の70パーセントが模型に触れたことがないというデータもあった。そのため、こうした取り組みを通じて小学生や教育機関に取り入れてもらえることはありがたいと感想を述べていた。

子供たちが授業で作ったミニ四駆。それぞれ独自の装飾が施されていた

ふたつのミッションで子供たちがEVを活用したまちづくりを体験

 2日目に行われた授業では、大きく分けてふたつのミッションに子供たちが挑戦するといった内容で行なわれた。第1ミッションは「停電した街をあなたのEVで助けよう!」で、第2ミッションは「私たちの中野の街にEVを使った新しい遊び場を作ろう」だ。それを行うために、広い体育館というスペースが使われている。こちらでは、箱で中野の街並みを再現したものが「ミニチュア中野」として用意されており、大まかではあるが駅や中野サンプラザといったランドマークも並べられていた。

授業開始前の「ミニチュア中野」

 第1ミッションの「停電した街をあなたのEVで助けよう!」では、中野の街全体が停電になってしまい、電気で動くものはすべて止まっている状態。しかし、自分のEVは電気が満タンになっている。そこで、EVをどこに置き、そして誰に電気を届ければいいか? といった設定の中、子供たちがここに置いた方がいいというところに、チームで2台のミニ四駆を置いていくところからスタートした。

 制限時間はわずか3分間だったが、特定の場所になんと複数台のミニ四駆が重ねられているところもあるなど、なかなか面白い光景も見られた。

電気が満タンという設定のEV(ここではミニ四駆)を、どこに設置すれば活用することができるのか? というお題に子供たちが挑戦

 子供たちがミニ四駆を置いた場所で多かったところが病院だ。たとえば災害時には病院は人で溢れてしまうということなどを考えて選んでいたようだ。また、スーパーに置いたという児童は人も多いし懐中電灯なども売られているという理由を上げていた。

 また、今回はEVがテーマということもあり、自分たちがミニ四駆を置いた場所で手回し発電で蓄電を行い、その電気で電球に明かりを付けるという試みが行われた。

病院に人気が集まりすぎて、ついには上に重ねられていくミニ四駆
蓄電した電気で明かりを付けていく子供たち

 第2ミッションの「私たちの中野の街にEVを使った新しい遊び場を作ろう」では、ルールなしでEVを使った楽しそうな遊びを考えて作っていくというものに子供たちが挑戦。様々な工作道具が用意されていたほか、自由に街を塗ることもできるようになっていた。完成した作品は、最後にタブレットで撮影して投稿することができ、それを見ながら自分たちが作った作品のプレゼンも行われた。

ちょっとしたハッカソンのように、ホワイトボードを使ってチームでアイデアを出しあっていた
こちらが子供たちが作った作品の一部
子供たちが自ら作品のプレゼンをするシーンも見られた
タブレットで作った作品を撮影したものが、次々と投稿されていった

 最後に今回の授業を観覧していた中野区長の酒井直人氏が「みんなが作った楽しい場は、ほしい場だなと思いました。子供たちが楽しめる場所を中野区もいろいろと考えていきたいです」と講評を述べ、すべてのプログラムが終了となった。なかなかユニークな試みであったが、こうした授業が全国に広がっていくことで、さらに子供たちのEVへの感心も高まっていきそうだ。

授業の最後に、来賓者の中野区長 酒井直人氏から講評が述べられた