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仕事場に「シルバニアファミリー」を置く提案。エポック社が提示する”大人向けの遊び方”【おもちゃビジネスフェア】
2024年4月12日 10:39
- 【夏~クリスマス おもちゃビジネスフェア2024】
- 4月10、11日 開催
- 会場:東京都立産業貿易センター台東館
見本市は新製品発表の場であるだけでなく、販売店への"提案"の場でもある。特にメーカー主体のキャンペーンやプロモーション戦略を提示することで、店舗の目立つ場所に商品を置いてもらえるようにアピールをする戦略は重要だ。
今回のおもちゃビジネスフェアでは「インバウンド観光客向け商品」と、「キダルト商品」というカテゴライズが目を惹いた。キダルトとは「キッズ」+「アダルト」の造語。いわゆる"大人向け"商品というわけで、バイヤー向けのわかりやすい言葉というところだろう。
バンダイから”大人向けホビーブランドメーカー”としてBANDAI SPRITSが分社化し、大きな存在を示したのが2018年。それよりずっと前から”大人向けホビー/玩具”商品は製作者の努力と技術の向上で存在感を強めており、今や非常に大きな市場となっている。その現在において、急に「キダルト」という言葉が出てきた上に、「子供大人」のようにもとれるその表現は、個人的には違うとは思っているが、現在玩具業界にとって大きな潮流を示すキーワードであるのは間違いない。
この"大人向け販売提案"を積極的に行っていたのがエポック社だ。エポック社は見本市でも毎年「シルバニアファミリー」の大きなジオラマを展示し、その世界観を流通関係者にアピールしていたが、今年は机にPCを配置した、”仕事場”風のレイアウトにかわいらしい「シルバニアファミリー」の人形が飾られているという、シックな雰囲気の展示を行っていた。
「シルバニアファミリー」は数年前からSNSで大人のユーザーが様々な遊び方の写真を投稿しており、それがユーザーを増やしている。エポック社はこれまでもSNSを使ったプロモーションなどで”大人向けアピール”を行っていたが、今回はその方向性を前面に出しての展示となった。もちろん従来通りのかわいらしい世界観での商品展示も行っているが、大人向け商品紹介の展示例を中心に持ってきたのだ。
フィギュアや模型を仕事用のPCの周りに置く人は、特にリモートワークが増えた昨今では多く見られるようになった。販売しているドールハウスやジオラマに人形を置くだけではなく、「シルバニアファミリー」の人形達は日常に配置してもかわいらしい雰囲気が楽しめる。こういった展示例を示すことで、店舗にも提案を行っていくとのこと。
もう1つ、人形の展示の仕方として、透明なバッグに入れたり、造花とカプセルに入れたりといった展示例も紹介している。これらは実際の大人のユーザー達の遊び方参考にしているとのこと。”人形遊び”ではなく、「日常風景にどう飾るか」、をテーマとした新しい提案だ。現在、「シルバニアファミリー」の顧客にはこういった人たちがいて、こう遊んでいる、ということをうまくアピールしていると感じた。
ユニークな提案としては「アクアビーズ」もある。こちらもエポック社の人気商品でビーズを組み合わせて自分だけのアクセサリーを作る、小学生の女の子がメインターゲットのシリーズだが、このビーズパーツを使って世界の名画を表現しようというのだ。
展示会場にはフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」、ゴッホの「星月夜」、ムンクの「叫び」など名画をアクアビーズで表現したものが展示されていた。これらはただ絵をまねてビーズを配置したのではなく、立体的に配置することで陰影をつけ、より印象的に見えるようにアクアビーズの特性を活かした上で、アクアビーズの表現の可能性を提示している。シンプルなアクセサリー作りという従来の使い方を大きく越えた作例だ。
エポック社は今のところこういった絵は商品として販売することは考えていないとのこと。「ナノブロック」のように組み立て説明図があっても、この作例のようには作れなそうである。しかしアクアビーズを"画材"として使うこともできるというこの提案は、今後「大人向けアクアビーズ」の商品展開も予感させられる。
エポック社はこの路線のアピールとして「つぶつぶアート」のアーティストConoco三のアクアビーズ作品や、東京藝術大学の学生作品などを製作し展示していくとのこと。この動きが新しい商品へつながっていくか、注目したいところだ。