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展覧会「日本の巨大ロボット群像」。池袋にて12月21日より開催

1970~80年代を中心に「巨大ロボットをどう描いてきたか」を問いかける

【日本の巨大ロボット群像】

開催期間:12月21日~2025年1月13日

会場:サンシャインシティ展示ホールB

入場料:
2,200円(一般)
1,600円(中学生)
800円(小学生)

 日本の巨大ロボット群像東京会場実行委員会は、池袋のサンシャインシティ展示ホールBにて展覧会「日本の巨大ロボット群像」を12月21日より開催する。料金は一般が2,200円、中学生が1,600円、小学生が800円。

 本展覧会では「鉄人28号」を皮切りに、「マジンガーZ」など1970年代のロボットがどう描かれたか、そして「機動戦士ガンダム」へどうつながっていったかなど、1970~80年代の巨大ロボットを中心とした演出論が描かれる。「アニメのロボットが目の前にいたらどう見えるか」という、ユニークな切り口に力を入れているイベントである。

 「日本の巨大ロボット群像」は京都からスタートし、香川、神奈川、福岡で出展の行い、今回東京会場での展示となる。多くの巨大ロボット作品の資料をユニークな展示で見ることができるイベントだ。今回はイベントの魅力を紹介していこう。

様々な時代で描かれた元祖巨大ロボ「鉄人28号」

 来場者をまず出迎えるのは神奈川で展示されていた「動く実物大ガンダム」や、神戸の「鉄人28号」、稲城市の「実物大スコープドッグ」などの日本各地に存在する巨大ロボット立像。漫画やアニメで描かれた巨大ロボットが、日本では様々な場所で「実物大」で見ることができる。

各地の実物大展示。この背面で動画によって各展示を紹介している
2014年の映画「THE NEXT GENERATION -パトレイバー」制作時に作られた実物大イングラムのひな形も展示

 本イベントの大きなテーマは「アニメロボットが現実に存在したらどう見えるか?」である。これはこの先の出展でよりフォーカスされていくが、日本では様々な立像で「現実にロボットが存在したら見ることができる風景」を実際に見ることができる。

 この「現代と巨大ロボットの親和性」を映像で見せた後は元祖巨大ロボット「鉄人28号」だ。横山光輝氏が1956年から連載を開始した「鉄人28号」は、「巨大な鉄の巨人が大暴れする」という、魅力的なアイディアで当時の少年達の心を揺さぶった。同じ時代「人間の友達」である「鉄腕アトム」が自我を持っていたのに比べ、鉄人はリモコンを握った人の意のままに動き、ときには恐ろしい敵ともなるという、「人に操られるロボット」を提示した。

様々な時代の鉄人を展示
側面には作品紹介や時代背景を
「太陽の使者 鉄人28号」のときに販売された玩具
2005年版の小道具

 鉄人の斬新なアイディアは最初に着ぐるみを使った実写ドラマとして描かれ、1963年にアニメとなり大きな人気を博した。「鉄人28号」の魅力は時代を超え、1980年代、1990年代にもリメイク作品が作られる。展示ではこの時代によって描かれる「鉄人28号」を1つのスペースで見ることができる。当時の価値観に合わせてリファインされた者、わざと1963年の雰囲気を再現したものなど、作品のアプローチは様々。特に2005年の実写映画版は撮影に使われた小道具も展示されていて興味深い。

巨大ロボットをリアルに描いた「マジンガーZ」から爆発的に広がるイメージ

 現代の巨大ロボット作品の方向性を決定づけたのは間違いなく「マジンガーZ」だ。物語の基本はその回のゲストとして敵ロボットが登場し、マジンガーZがどう倒すかという特撮番組「ウルトラマン」の1話完結型のドラマフォーマットを踏襲するものであるが、「マジンガーZ」は「巨大ロボットが実際に存在していたらどう運用されるか」を丁寧に描くことで、そのリアリティが後の作品に多大な影響をもたらした。展示ではその演出を紹介している。

 マジンガーは光子力研究所に普段は収納されており、パイロット・兜甲児は分離式コクピット「ホバーパイルダー」に乗り込みマジンガーとドッキング、巨大ロボットを意のままに操る。追加装備である「ジェットスクランダー」、後継機「グレートマジンガー」など、様々な革新的アイディアが作品に盛り込まれていることを提示している。

「リアルな巨大ロボット」としてその後の作品に大きな影響を及ぼした「マジンガーZ」の要素を紹介

 そして「マジンガーZ」の成功が、その後様々な巨大ロボットを生み出す。「日本の巨大ロボット群像」は展示のレイアウトも非常に凝っていて、「勇者ライディーン」は「静」、「動」、「飛」という3つの観点でロボットの多彩な姿を紹介。「ゲッターロボ」は布に各合体シークエンスを描くことで3パターンの合体変形パターンを提示する。「超電磁ロボ コンバトラーV」は壁面に合体シーケンスを描き、その魅力的な変形合体を印象づける。「マジンガーZ」からはじまる「搭乗型巨大ロボット」がどのようにリッチになっていくのか、ヒーロー性を強めていくのかを見ることができる。

ライディーンは「動」、「静」、「飛」と3形態を紹介
3つの布で3形態を紹介した「ゲッターロボ」
「超電磁ロボ コンバトラーV」は壁面に合体シーケンスを描きその優れた演出を紹介
大ヒットとなった「超合金 マジンガーZ
初の変形ロボ玩具「超合金ライディーン」
メカデザイナー・宮武一貴氏の大迫力の絵

スタジオぬえの「機動歩兵」から「機動戦士ガンダム」へ

 いくつかのロボットの演出を紹介した後、展示のテーマは巨大ロボットの歴史を語る上で外すことができない「機動戦士ガンダム」へとつながっていくのだが、その前に「日本の巨大ロボット群像」では、"スタジオぬえ"の存在をフォーカスしていく。スタジオぬえは企画製作スタジオ、SF監修などで「宇宙戦艦ヤマト」などにも関わり、日本のアニメ史の特にSF的要素において欠くことができないクリエイター集団である。そしてスタジオぬえの宮武一貴氏がデザインし、加藤直之氏が描いたロバート・A・ハインラインのSF小説「宇宙の戦士」に登場する「機動歩兵」が大きな流れを生み出す。

「機動戦士ガンダム」への流れとしてスタジオぬえをピックアップ
スタジオぬえの宮武一貴氏がデザインし、加藤直之氏が描いたロバート・A・ハインラインのSF小説「宇宙の戦士」に登場する「機動歩兵」
顔出し看板風にパワードスーツを着れる

 このパワードスーツのデザインは「機動戦士ガンダム」の企画の原動力となる。「日本の巨大ロボット群像」ではこの機動歩兵をアイディアの発端として戦闘服がデザインされ、「兵器としての巨大ロボット」へ企画が変化していく流れを見ることができる。

 圧巻は「全長18mのガンダム」である。フロアにガンダムの設定画を18mにしたものを展示、実際のガンダムが目の前にいたら? という想像を実現させた展示が行われているのだ。会場ではチャントチョットタカイ位置からこのガンダムを見ることができる。

「機動歩兵」のイメージが「機動戦士ガンダム」の元となる企画につながっていく
床に描かれた18mのガンダム。高いところから見ることができるようになっている
階段を上って撮影

 また、セル画を立体化した独特の展示でアニメ第1話のシーンを展示。こちらでは"絵作り"で「機動戦士ガンダム」のリアルな表現のアプローチを見ることができる。

アニメ第一話のセル画を立体的に展示。レイヤーの分け方に"リアル"にこだわる視点が垣間見える

さらに進化していくアニメロボットの表現を印象づける展示の数々

 「機動戦士ガンダム」を紹介した後、さらに紹介される作品が増えていく。「戦闘メカザブングル」のウォーカーマシンや、「装甲騎兵ボトムズ」のスコープドッグを等身大で展示。18mのウォーカーギャリアは足しか表示されない。「メガゾーン23」のバイクが変形するロボットガーランドのバイク形態の大きさなど、その大きさが実感できる展示は必見である。

「戦闘メカ ザブングル」のウォーカーマシンの実物大展示。主役メカ・ウォーカーギャリアは足しか見えない
「装甲騎兵ボトムズ」のスコープドッグ
「メガゾーン23」のガーランド
「装甲騎兵ボトムズ」のプレゼン用に大河原邦男氏が自作したモックアップも展示

 そして「内部機構の表現の挑戦」や「1990年代の過去の巨大ロボットへのリスペクト」など、1970~80年代の巨大ロボットへの想いがどのように受け継がれていくかを紹介していく。そのユニークな切り口、独特の考察から見せ方の工夫など、出展者の「巨大ロボットへの想い」をしっかり感じることができる。巨大ロボットに何らかの想いを持っている人ならば、大いに刺激を受ける展示会である。

様々なロボットの内部図解
永野護氏はゴティックメードで細部機構を細かく考察している
実際の会社で運用される巨大ロボを描いた「地球防衛企業ダイ・ガード」
ロボットのヒーロー性を前面に出しながらリアリティを盛り込んだ「勇者王ガオガイガー」
「機動戦艦ナデシコ」の劇中劇「ゲキ・ガンガー3」は1970年代ロボットアニメのオマージュ
OVA「ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日」も1970年代のアニメの作風を盛り込み、独特の世界観を作り出している

 「日本の巨大ロボット群像」は巨大ロボットアニメの進化を紹介する非常に楽しい展覧会である。しかし展示を最後まで見ると、「この作品がないのではないか?」と感じるところもある。例えば「リアルな巨大ロボット作品」という視点で外すことができない「機動警察パトレイバー」、子供達の憧れを追求する「勇者シリーズ」、そして巨大ロボットの歴史を語る上で外せないであろう「新世紀エヴァンゲリオン」などなど、触れていない作品も多いのだ。

 これは出展における権利管理や資料収集の難しさ、テーマを語る上であえて外した作品など様々な理由があるだろう。ここに紹介されていないロボット作品を加えて改めてテーマについて考えてみたくなる、というのも「日本の巨大ロボット群像」の魅力であると言える。

 全高18mを実感できるガンダムや、ウォーカーマシンの展示、進化していくロボットの演出論、ロボット文化を受け継ぐクリエーター達のユニークな切り口など、「日本の巨大ロボット群像」は改めて日本のロボットアニメ文化を実感できる展示会である。ぜひ会場を訪れて欲しい。

押井守氏、中島かずき氏などのコメント、
プラモデルや図録、グッズなど物販も充実