レビュー
「ロボ道 イングラム2号機+3号機 コンパチブル・セット」レビュー
パトレイバー、「俺に銃を撃たせろ!」の2号機が、3号機とコンパチで登場
2020年5月29日 10:00
「ロボ道 イングラム2号機+3号機 コンパチブル・セット」
開発元:threezero
発売元:グッドスマイルカンパニー
発売日:9月下旬
価格:16,000円(税別)
※この記事はGAME Watchで5月21日に掲載したものです。
香港のトイメーカーthreezeroが2019年に立ち上げたロボットフィギュアシリーズ「ロボ道」にて展開されるアイテムのうち、「機動警察パトレイバー」シリーズの第2弾となるとなる「ロボ道 イングラム2号機+3号機 コンパチブル・セット」が、グッドスマイルカンパニーの公式サイト他で現在予約を受付中だ(5月27日まで)。
threezeroが持つノウハウによる造形/塗装技術を導入し、一部にダイキャストを使用したロボットフィギュアを、コレクションしやすいサイズと高いコストパフォーマンスでリリースするこの「ロボ道」シリーズ。その第1弾となる6月発売予定の「ロボ道 イングラム1号機」は、昨年末に弊誌でもレビューをお届けしていて、発売を心待ちにしている人も多いだろう。
今回は1号機に次いで今年9月に発売予定の、「ロボ道 イングラム2号機+3号機 コンパチブル・セット」の発売前のサンプルをthreezeroより借りることができたので、レビュー済みの1号機との仕様の違いや、過去記事では触れられていなかったポイントなどについて紹介していきたい。
イングラム1号機とはまた違う魅力のある、2号機と3号機を換装によって再現
コミックやアニメ、小説など、さまざまなメディアで展開された「機動警察パトレイバー」は、2018年に迎えた30周年を機に、新たな盛り上がりを見せている。企画展の開催や記念グッズや書籍の発売、劇場版パンフレットの復刻など、企画が目白押しで、新型コロナウイルスの関係で保留となっているものの、劇場版の4DXによる上映なども予定されている。
西暦1998年、一般社会の中に土木作業などを役割とする産業用ロボット「レイバー」が登場し、それによる“レイバー犯罪”が増加。それに対応するために警視庁は「特科車両二課 パトロールレイバー中隊」を設置、警察用「パトレイバー」が誕生する。OVAやアニメのオープニングナレーションでも馴染み深い、1988年から見た10年後の未来を描いたのがこの「機動警察パトレイバー」であり、その主役機となるのが「篠原重工業製 AV-98 イングラム」である。
筆者は「戦闘メカザブングル」の頃より、メカデザイナー出渕裕氏が手がける“人間に身近な作業用機械としてのロボット”が好きで、この「機動警察パトレイバー」も、どちらかというとタイラントやボクサー、ぴっけるくんなど、汎用の作業用レイバーの存在が好きで見ていたクチだ。
イングラムは他の汎用レイバーと比較すると少々スマートすぎる印象もあったのだが、これはアニメ中期オープニングナレーションの“見る者に与える心理的影響までも考慮して設計された”という設定に基づくものであり、より人間に近いヒロイックなデザインでありながら、ウインカーやナンバープレート、ウインチなど、レイバーの特徴である現実味のある意匠が要所に施されていて、何より劇中での第二小隊隊員らとともに見せた活躍により、その愛着は大いに深まったものだ。
この「ロボ道」のイングラムは1/35スケールで、全高は約23cm。BANDAI SPIRITSのプラモデル「マスターグレード」シリーズで発売されたものと同じで、過去に発売されたイングラムのフィギュアとしては大きめのサイズと言える。スケールが大きいことにより、魅力あふれる意匠はしっかりと造形され、その一部はギミックとして楽しめるようにもなっている。
これまで筆者もいくつかのイングラムのフィギュアやプラモデルを触ってきて気づくのが、造形ごとに異なる機体のデザインバランスだ。例えばTVアニメが放映された頃に発売されたバンダイ(当時)のプラモデルは、肩幅があり脚がやや短い。今はなきシーエムズコーポレーションの「BRAVE合金」のイングラムは脚部がかなり大きく、下半身がどっしりとした印象を受ける。
BANDAI SPIRITSの「ROBOT魂 SIDE LABOR」は逆に脚が細めでブーツはかなり小さく見える、といった具合だ。設定や作画によっても見え方は変わるし、個人の好みもあるわけだが、この「ロボ道」のイングラムは、全体的なバランスが取れていて、劇中の一番格好いい姿を立体化したイメージで、多くのファンが納得できる造形だと思う。
全身のほとんどを光沢で処理していて、質感も均一なので、素材によって色味が異なることがない。可動箇所は50カ所近いことをうたっていて、ポージングの幅は広く、一部のパーツにダイキャストを使用していることでその重量に耐えられるよう、関節は固めに設計されているので、ポーズがカッチリ決まる。なお大腿部のアーマーと腰など、若干干渉するところがあり、動かないと思って力を入れて動かすと傷を付けたり破損したりする可能性もあるので、動かすときは注意したい。
関節部のカバーにはシワをつけた布を採用し、可動を妨げることがない。コクピットのハッチは開閉し、パイロットのフィギュアを載せることができる。防弾ガラスの可動やコクピット両脇のパトランプの開閉、肩のパトランプの電飾、右スネの開閉とともに奥からせり上がってくるリボルバーカノンなど、動かして楽しいギミックも満載だ。
ただしパイロットのフィギュアがそれなりに大きく、フィギュアならではのデフォルメを抑えたプロポーションなので、コクピット内部のクリアランスが小さく、フィギュアを乗せてしまうと密閉状態のコクピット(パイロットが頭を出していない状態)を再現することができない。これは1号機とも同じ仕様だ。
特徴のある頭部を持つイングラム3号機に組み替え
そして今回、最大のギミックとなるのが、イングラム2号機と3号機のコンパーチブル仕様だ。まず2号機を語っていきたい。イングラム2号機は、特車二課第二小隊の太田功巡査の専用機である。1号機の頭部にフェイスカバーが設けられ、アゴの左右にある排気口の形状も異なっている。
メーカーは特に明示していないが、造形やカラーリングなどは劇場版「機動警察パトレイバー the Movie」の特徴が色濃く出ている。もちろん同スケールの太田巡査のフィギュアも付属し、ガンアクションやコミカルなポーズがよく似合う機体だ。
3号機への換装は、頭部、肩、そして別パーツとなった前後のナンバープレートの変更によって行う。3号機はTVアニメ20~21話にて、電装品の交換により電子戦にも対応できるマイナーチェンジを施された第二小隊の予備機で、篠原遊馬によって伊豆大島に届けられ、正体不明の無人レイバー(ファントム)とサターンに襲われる1号機のピンチを救った。
筆者は個人的にこのときのシーンが非常に印象深く、当時まだプラモデルで発売されていなかった3号機を作るために、録画したVTRをポーズしてそのディテールを観察し、1号機の頭部に一生懸命パテを盛って改造したという思い出があり、出番の少ない機体ながらかなり愛着がある。
また2000年にリリースされたプレイステーション用ゲームソフト「機動警察パトレイバー ~ゲームエディション~」では、なんとこの3号機がプレイヤー機となり、「機動警察パトレイバー 2 the Movie」で登場するECMを装備した3号機へとバージョンアップされる顛末が描かれたことは驚きであった。
「ロボ道」の3号機はTVアニメ準拠のデザインで、バイザーがなく、大きくせり出した額部分が特徴となっている。肩も1号機、2号機とも異なる角張った形状で、全体的にシャープな印象を受ける。アクションに影響のある換装パーツはないので、2号機と同様のポージングを楽しめるだろう。
筆者がこれまで手にしたAV-98イングラムのフィギュアの中では最もスケールの大きなアイテムとなったわけだが、こうして触ってみることで、ただ大きいだけでなく、隙の少ない造形や劇中のシーンを再現できるギミック、そしてダイキャストを使った適度な重量感など、高い完成度を誇っていることを実感した。筆者は上記で述べたように愛着のある3号機で飾ってみようと考えている。
2機種への換装が可能で税別16,000円という価格は、このご時世ではかなり破格だとも感じられた。同じ「ロボ道」の1号機もまだ予約できるショップがあり、ぜひこの2号機や3号機と並べて、第二小隊の活躍シーンを再現してみてほしい。
(C)HEADGEAR