レビュー

「BEST HIT CHRONICLE カップヌードル」レビュー

3分では作れないけど、見た目はカップヌードルそのもの!? 作って楽しいプラモデル

ジャンル:プラモデル

開発・発売元:BANDAI SPIRITS

価格:2,420円(税込)

発売日:9月18日

サイズ:全高約11cm

 昭和から平成の時代にかけてヒットしたプロダクトの企業とコラボレーションし、BANDAI SPIRITSの成形技術によってプラモデルとして発売する「BEST HIT CHRONICLE」の最新アイテム「BEST HIT CHRONICLE カップヌードル」が、9月18日に発売された。

 1971年に日清食品より発売され、今年で発売49年を迎えたお湯を注いで作るインスタントラーメンの定番「カップヌードル」を、なんとプラモデルにしてしまおうという企画である。今年3月にシリーズ第1弾として発売された「セガサターン」や「PlayStation」とはまったく趣の異なる、「食品」というカテゴリーに当たるカップヌードルなわけだが、組み立てながらその構造や歴史を知るというコンセプトは同じものとなる。

 49年前のカップヌードルの発売日と同じ日に発売されたこの「BEST HIT CHRONICLE カップヌードル」の製品版を早速作ってみたので、レビューをお届けしよう。

エビ、肉、ネギ……。とにかく作るのがとても楽しいプラモデル

 日清食品からカップヌードルが発売されたのは1971年のこと。1966年に同社が発売した「チキンラーメン」を、麺文化のない欧米人が小さく割って紙コップに入れて食べたことにインスパイアされた日清食品創業者の安藤百福氏が、麺をカップに入れてフォークで食べられるインスタントラーメンの新製品として、5年の開発期間を経て発売されたものだ。

 日清食品の公式サイトにある「安藤百福クロニクル」にその開発経緯が詳しく綴られているが、安藤夫妻をモデルとした2018年のNHK連続テレビ小説「まんぷく」でもそのエピソードが描かれていたので、その歴史にピンときた人もいるかもしれない。

【パッケージ】
「BEST HIT CHRONICLE カップヌードル」パッケージ。かなり厚みがある
パッケージの横にはパーツ構成やカップヌードルの歴史が書かれている
箱から出した状態のパーツ。全体的にボリュームがある

 熱湯を注いで3分間待つだけで食べられる便利さとその味は、49年間変わることなく現代まで継承。夜食やアウトドア食、非常食としても優秀で、インスタントラーメンならではの「いつ食べたか」や「どこで食べたか」といった思い出を持っている人も多いだろう。筆者も子供の頃、父親に連れられて行った釣り池の事務所に置かれていたお湯が出る自販機で買ってもらい、透明プラスチックのフォークを使って食べたのがとにかく美味しかったことを今も覚えている(そういえばカップヌードルをフォークで食べる機会は少なくなったな……)。

【パーツ】
Aパーツ。いろプラでカップ底面やロゴの他、たまご、謎肉、エビなどの具材を構成
Bパーツ。全てカップになるパーツだ
説明書には組み立て説明の他に、「カップヌードル豆知識」が掲載されている

 この「BEST HIT CHRONICLE カップヌードル」は、2020年現在のカップヌードルを1/1スケールでプラモデル化している。パーツ数はそれほど多くなく、組み立ても難しくないが、実際に手に取ってみるとそこにはBANDAI SPIRITSの凄まじいほどの成形技術が注がれていた。

 例えばカップについて、写真を見ていただくと分かる通り、複数の円盤やリング状のパーツを重ねて組み立てるだけで、カップにあるあのストライプ模様になる。おなじみのあのロゴは、赤いベースとなるパーツに、8個の文字のパーツをはめ込むと完成する。パーツはミリ単位の狂いなく収まり、実物では印刷の模様となるのである。

【カップの組み立て】
6つのリング状のパーツを組み立てると……
模様のあるカップの上部が完成。見事なストライプになるのが気持ちいい
こちらはカップの底となるパーツ群。ダボに合わせて重ねていく
これでカップの底が完成
ロゴとカップ前面のパーツ群。ロゴはベースに合うように湾曲している
おなじみのロゴになった。一部いろが抜けているところは後でシールを貼る
カップ背面を組み立て。注意書きやアレルギー表記などが成形されているのが分かるだろう
これまで作ったパーツを組み合わせてカップの完成

 パーツで表現できないカップの模様や注意書き、バーコードなどはシールで表現しているわけだが、カップ側のパーツにはそれらが全てモールドとして成形されているというのも驚きのポイントだった。つまりシールを使わなくても、このモールドの通りに塗装をすることででも、実物と同じ1/1カップヌードルが完成するというわけである。“技術の無駄遣い”と捉えるのもいいが、筆者のようなユーザーを“凄い”と思わせることができた時点で“無駄遣い”ではないと、個人的には思っている。

 中身である麺もかなり面白い。麺は全部で10パーツを使っているが、組み立てるとひとかたまりになるので、1つのパーツでもいいという気もしたのだが、複数のパーツで構成することで実物と同じように麺の隙間から奥の麺が見えるような造形になっているのである。またこの構造は、カップのロゴ部分を取り外すことで、メカ模型のカットモデルのように中身が見える状態でディスプレイすることもできる。これは、カップヌードルが生誕時からある、麺をカップの中間に宙吊りにして固定する「中間保持法」をこのキットでも実現し、それを外から見られるギミックとなっているのだ。

【中身の組み立て】
麺のパーツは実物っぽくモールドが成形されている
中央の8つのパーツを先に組んで、フタをするように2つのパーツで挟み込む
麺の完成。実物は下がまばらで上に行くほど密度が高くなっているという
カップにシールを貼り付ける。注意書きはモールドに重ねるように貼るのだ
ロゴ部分の成形されていない抜けたところは、シールで補完していく
具材はいろプラでカラー成形されている。形も一つ一つ違う
エビは専用のシールを貼って作る。パーツとシールの番号を間違えないように
ネギは付属のネギシートを好みの大きさに切って作る。丸めて作ったりするとリアルになる
具材の完成。紛失しないように注意
カップに麺を入れて、上に具材を散らして本体は完成。これだけでも実物のようだ
フタシールとフタ止めシール。前者は実物と同様、裏側は銀色になっている。後者は実物と同じものを使用

 組み立てはさすがに3分では叶わなかったが、撮影をしながらでも2時間程度で完成させることができている。実物と比較してみると、カップは寸分が違うことのないサイズで、遠目で見ると区別が付かないほど。中身は具材が若干少ないが、思わずお湯を注ぎたくなってしまうぐらいの完成度であった。

【完成】
フタシールを被せて完成
実物と並べてみるとこの通り。左がプラモデル、右が実物だ
中身はプラモデルのほうが具材が少なめ。それ以外はほぼそのままだ
フタ止めシールを貼れば、調理中を再現できる。箸やフォークを沿えるとリアルさアップ!
カップ前面を外すと、宙吊りの麺の中間保持の構造を見ることができる

 実際に完成させてみると、あまりに実物とそっくりなので、飾って楽しむときは、蓋やロゴ部分を開けた状態にしたり、好みのスタイルに塗装をしてみたり、フィギュアなどと一緒にディスプレイしたりするなど、ちょっと工夫するといいかもしれない。そのままではいかんせん、ごく普通のカップヌードルが置いてあるようにしか見えないのだ。完成させることよりも、キット化のために惜しげなく導入された成形や設計の技術を作る過程で楽しむのである。この点に関しては、キャラクターモデルやスケールモデルとはちょっと方向が違うということも感じられた。

 昭和~平成のヒットゲーム機、そしてインスタントラーメンがプラモデル化された「BEST HIT CHRONICLE」シリーズ。この後のラインナップはまだ不明だが、また我々をあっと驚かせるようなプラモデルの登場に期待したい。