レビュー
「MG 1/100 RX-78-2 ガンダムVer.3.0」レビュー
ENTRY GRADEガンダムの衝撃を受けた今だから作るMASTER GRADEガンダムの味わいとは!?
2020年10月2日 00:00
先日レビューさせていただいた「ENTRY GRADE 1/144 ガンダム」、素晴らしい出来でしたね。770円という価格でありながら「超組みやすい」「超可動」「求めていたプロポーション」を実現するとい驚異的な商品となっていてとても感動しました。現在のガンプラはHG(ハイグレード)・MG(マスターグレード)・PG(パーフェクトグレード)をメインに展開されているわけですが、EG(エントリーグレード)はその名が示す通り、”初めてのプラモデルに適したグレード”という方向性の商品としてひとまずガンダムベース先行販売という形でリリースされましたが、意外や意外多くのガンプラファンに受け入れられた形となっています。
本誌ではこれまでHGシリーズ(1/144スケール)をメインに取り扱ってきましたが、EGガンダムを組んでみてガンプラの”作る楽しさ”がとてもよく伝わってきたのですが現在のガンプラ人気の源流ともなるMG(1/100スケール)をご紹介してみたいと思います。EGやHGよりも若干大き目で、そのおかげで内部のメカ構造もしっかり再現された”MG”とはどういったシリーズなのでしょうか。MGは第1弾「MG 1/100 RX-78-2 ガンダム」が25年前に発売されました。そこから現在に至るまでに進化し続けています。EGを生み出すことにもなった”ガンプラ”のメインストリームとなるMGはどういう体験をさせてくれるのか、組むのが楽しみです。
「EG」での組みやすさとMGでの進化の極致。どちらもガンプラの両極となるプロダクトですねそして、今回の「MG 1/100 RX-78-2 ガンダムVer.3.0」のレビューを経て、話題の「MGEX 1/100 ユニコーンガンダム Ver.Ka」もご紹介する予定です。LEDで全身のサイコフレームを光らせつつユニコーンモードからデストロイモードへの”変身”を実現しているとのことでこちらも楽しみにしていてください。
「MG 1/100 RX-78-2 ガンダム Ver.3.0」について
その「MG 1/100 RX-78-2 ガンダム Ver.3.0」ですが、前述の通り2013年発売のものでもう7年前に発売開始されたものです。デザインは当時東京・お台場にあった実物大ガンダム立像のものとなっており、8色もの成形色を採用して実物大同様のカラーリングを再現、RG(リアルグレード)の”リアリスティックデカール”を採用することでメタリックなアクセントカラーを差し込めます。
基本的には「Ver.2.0」をアップデートさせる内容(バージョンが上がるので当然ではありますね)で、いくつかは「Ver.2.0」と同じパーツで構成されながら実物大ガンダムと同じものを1/100スケールで手元に置くことができる製品となっています。内部フレームに外装が連動して動くなどガンプラの進化をまざまざと見せつけるその仕様や魅力は2020年現在でも色褪せてはいません。現在横浜に”動くガンダム”が建造中ですが、このデザインの実物大ガンダム立像はまたどこかに立ってほしいですね。
MGならではの凄まじいパーツ数が、ガンプラ魂を燃え立たせる
まずは商品構成の確認です。MGクラスともなるとその物量に圧倒されてしまいますがEGガンダムで燃え上がったガンプラ熱はそんなものに負けません。勢いに任せて開封します。成形品は圧巻の19枚、シールが1枚となっており相当組みごたえありそうです。腕や脚は共通ランナーでもあるので同時に切り出せば時短製作が期待できます。
コクピットまで回転する驚異のコア・ファイター
早速組み立てていきましょう。まずはコア・ファイターからです。このコア・ファイター、実は「MG 1/100 RX-78-2 ガンダム Ver.2.0」(2008年7月発売)のものとほぼ同じものとなっています。確かにVer.2.0を作った時に「これは完璧だなぁ」と感動したのですがVer.3.0でも引き続き採用されたのと、その後に「一番くじ」で単品(オリジナルカラー)で景品化されたこともあるくらいそのクオリティはすばらしいものです。
HGクラスでは変形・ドッキングするコア・ファイターはない(※RGでは可能です)ので、MGならではの充実度ですよね。そしてこの「Ver.3.0」では展示用にスタンドではなく着陸脚を模したクリアーパーツが付属しているのとコア・ファイターを外に展示するときとLEDユニット搭載時に使用できるコア・ブロックのパーツが付属しているのでプレイバリューが高まっています。
肩の構造の面白さ、サブノズルまで造形されたランドセル
細かなパーツ割りで高い可動性能のボディです。肩の構造も面白く、「そこに接続するとそう動くの?」といった発見もありとても楽しいです。特にコア・ファイターもそうですがLEDユニットを搭載する関係からボデイには大きな穴が空いていますがそれは可動の制限にはなりません。たった1カ所の接続にもかかわらず肩も真上を向かせたり、若干引き出したり、前後へのスイング機構をも持たせてあります。MGならではの細かさは胸の黄色いルーバーをも再現させています。もちろん上下に可動して開閉できます。
ランドセル部は実物大ガンダム立像で新たにデザインされたものになっています。メインノズルの下にサブノズルがあるのを見た時は「すごい!」と思いました。このMGでもちゃんと再現されており、しかも内部にはクリアーパーツを仕込むことができます。ここで初めてリアリスティックデカールを貼ります。ノズルの構造体のところにメタリックのワンポイントを入れます。光りのあたり加減でキラキラしていいアクセントになっています。
襟と首部も面白い構造です。首の軸がクリアーパーツとなっていて、襟の下に配置されるLEDユニットの光を頭部へ導く構造をしています。
MGならでは大きさを活かした精密な頭部
頭部はこれまで進化してきたMGの78ガンダムとして形状やパーツ割りなどとてもすばらしい出来だと思います。しかもLEDユニットで光らせられます。ガンダムのデュアルアイやザクのモノアイを光らせるのはガンプラの定番工作でもあり、憧れでもありますよね。
黄色のバルカン砲も別パーツでしっかり再現されています。これをガンダムマーカーのゴールドで塗って、砲口内を黒く塗ればとてもリアルに仕上がりますのでちょっとしたアクセントにオススメです。バルカン砲の取付位置も機構を意識しながら行なえて、メンテナンス気分を味わうことができます。マスクのスリットもモールドではなく実際に穴が開いていたり、耳もメカ色が露出してびしっと締まります。これがMGならではのディテーリングだと思います。すばらしいですね!
MGの真骨頂! 全てのパーツに意味を感じる腕部
腕部の組み立てに入ります。ここからパーツ数が上がってきてまさに進化してきたMGの真骨頂ともいうべき部位になるでしょうか。それではパーツを並べてみましょう。さすがMGクラスともなると1つ1つのパーツの形状が複雑でそれがどういう意味を持つかがぱっと見でわかりにくくはあります。でも、説明書を確認しながら着実に組んでいけばその1つ1つが持つ意味が伝わってきて感動に変わってくるから不思議なものです。
説明書の表記だけでみるとだいぶ複雑に見えてくるパーツや組み方も、こうやって並べてしまえば理解が早くできるという効果があります。もちろんきれいに並べる必要はないので大体の位置にパーツを配置してみることをオススメします。肘関節回りなんてこのライトグレーのパーツはなんの意味があるのかわかりませんでしたが、色分けするためはもちろん関節構造を保持する役目もおっているようです。
そしてこの腕部でのトピックは肘関節へのリアリスティックデカールの貼り込み作業でしょうか。横面への貼り込みはまだよいとして、縦ラインの貼り込み作業が少々面倒に感じる部位かもしれません。きれいに貼れないと完成後に動かすとずれてきたりしますし、貼るのに時間がかかると色が落ちてくるようです。この肘関節がメタリックカラーだと完成後の見た目に相当影響が出る部分なので何とかしたいところです。ほぼほぼ隠れてしまう部分でもありますし、思い切ってお好きなメタリックカラーで塗装するほうがいいかもしれません。
全ての指関節が可動するエモーションマニピュレーターSPがほんとにエモイ!これがすべて別パーツになっていて自分で組み立てなければならなかったら”イヤーーーーッ”ってなるとおもいますがまったくもって心配無用です。ランナー状態ですでに完成していますので慎重に切り出して各指を正規の位置に向けてやれば完成です。
肩アーマーを組み立てます。ここも多色で構成されているのでその分構成が複雑です。肩アーマー上部も可動に伴って動くグレーのパーツがありますが小さなヒンジを切ってしまわないように注意が必要です。
最大の密度。パーツの連動に感動する脚部
脚部のパーツを切り出してみましたが腕部よりさらに圧倒的な物量となっています。まずはバサっと置いてみましたが全てを並べるとカメラの画角には到底入りきりませんでしたので、いくつかの部位に分けて見ていきましょう。足首とソールはアンクルガードを基部に脚部本体とソールに向けた2つのボールジョイントでの接続となっていてふんばるポーズなどで自然なスタイルを実現できます。かかとの白いアーマーもボールジョイント接続でぐりぐり動かせ、可動範囲を広げてくれます。
内部フレームは意外なほどシンプルな作りです。どちらかというと外装パーツが多く、それは色分けの関係もあるでしょう。同じ白でもホワイト・ダークホワイト・ライトグレーで構成されていますので、どのようにパーツが組み合わさっているかを確認しながら組付けていくのが発見もあり楽しいです。パーツのはめ込みの具合もガンプラはいつも精度が高く、はまるべきところにかっちりはまってグラグラすることがありません。
全てを組み付けて脚部が完成、動かしてみると大きく動くのはもちろんのこと細かい部分が少しずつ動くことで可動性能の底上げをしています。大腿部は膝関節を曲げることで前部アーマーは追従して動きますし、脛裏アーマーは若干開くことでかかとの動きの制限を取り払っています。
質量を支えるしっかりした構造の腰部
腰部も想像するよりだいぶパーツが多く、ヒトと同じように体躯を支える大事な部位だと思いました。とくにMGは1/100スケールであり、進化の過程で身につけた質量を支えるにはよほどしっかりしていないといけないですね。そのためかここもカメラの画角に収まらなかったので分けてみていきたいと思います。
パーツが多くなったのは色分けによるところも大きいです。特に黄色いヘリウムコアがある前後アーマーも5色構成となっておりその情報量はすさまじいことになっています。連邦軍のV字マークも細かいパーツで再現されています。MGなので無理なく設計されていてすばらしいですね。前後左右アーマー裏の白いダボピンが気になるかもしれませんので、そこはガンダムマーカー(メカグレー)などでちょいちょいっと塗っておけば目立たなくなるでしょう。
コアブロックの組み立てや、LEDの組み込み
前述したように、コア・ファイターを別で飾ったり、LEDユニットを搭載する場合はコクピットブロックを利用する必要があります。カットモデルのように内部のエンジン(ジェネレーター)のモールドが施されたコア・ブロックはパイロットが見えて本格的に塗装すればとても映えるコクピットが再現できそうです。できるんですけど実際にこんなところに乗ったとすると怖くてしょうがないです……連邦軍の量産型MSであるGM(ジム)のコクピットにはコア・ファイターではなくこういったコア・ブロックが採用されているという設定検証の愉しみもあります。
装備はビーム・ライフル、ハイパー・バズーカ、シールドとなります。コア・ファイター同様、Ver.2.0の同装備をベースにエモーションマニピュレーターSPに合わせてグリップ部などをVer.3.0仕様にしたものとなっています。エモーションマニピュレーターSPと装備の相互に接続ピンを持たせることで可動する指だと落ちやすい装備類をがっちり保持できてポロリしないのでイライラすることもなく素晴らしい機構です。
ついに完成! MGならではの完成度と組立の充実感!
完成した時の満足感や充実感は「ガンプラの進化がここに極まっている……これが”マスターグレード”なんだ」と感じさせてくれるものでした。EGやHGシリーズでは感じることのできない可動に対するアプローチや1/100という大きさをメリットにして考えうる可動性能をフルに投入しつつもデザインが破綻することもなく、すばらしい配色や構造を体感することができました。
可動させてみると、ここも1/100というアドバンテージを活かして適度な抵抗を伴いながら好みの位置に関節を保持することができ、少々乱暴なアクションでもあえて接続部が外れやすくすることで破損の確立も低くなってある程度許容してくれる懐の深さもあります。
「EGガンダム」と「MGガンダムVer.3.0」、そして……
ランナー4枚(実質2枚)で税抜き価格700円のエントリーグレード、そしてランナー19枚で税抜き価格4,500円のマスターグレード。スケールは違えど、どちらもRX-78-2ガンダムのガンプラですが商品的に目指すところが(あたりまえですが)まったく違うのだとはっきり感じ取ることができました。
EGガンダムの非常に割り切ったパーツ構成と組み方、30分もあれば組み上がってしまう圧倒的な手軽さと想像を超える可動性能は目を見張るものがありましたし、MGガンダムVer.3.0における20年を超えるマスターグレードシリーズの進化の行きつく先もまた想像の先をいく内容で、こちらも組みながら”うわ、なにこれやっぱMGってすごい!”という感想となりました。
EGとMGでほぼ同じポーズを取らせてみましたがいかがでしょうか。可動性能の違いから全く同じというわけにはいきませんがEGの健闘ぶりがすごいです。同列に比較することはナンセンスかもしれませんが、78ガンダムの”ガンプラへのアプローチ”として皆さんはこの差をどう感じるでしょうか。
今回、立て続けにある意味ガンプラの両極となる「EGガンダム」と「MGガンダムVer.3.0」を作ることができたのは個人的にもとても有意義なことだったと思います。ガンプラを作ることの愉しみ方ってひとつじゃないんだ、それは構造・ディテール・プロポーション・価格だけではなく組み立て方や手に取った時の重さや動かしたときの関節の動きや剛性感など、直感的な違いも感じ取れてガンプラが与えてくれるものの幅広さを感じることができたと思います。
MGはさすがに30分で組み上がるほど単純なものではありませんが、時間がかかることにネガティブな要素は何ひとつなく組みながら”この作りはそういうことか!”という発見や組み上げた時の充実感はまた別の意味での達成感も味わえるのも格別なことだと思いました。コロナ禍でもありますし、そんな中じっくり取り組むガンプラとしてMGシリーズは最適ではないでしょうか。
そして、2020年10月8日に待望の「パーフェクトグレード・アンリーシュド RX-78-2 ガンダム」が発表されます。”1/60”という表記がないのが気になりますが、”アンリーシュド=解き放たれた”がどういう意味を持つのかPGガンダム発売(1998年11月)から22年後のVer.2.0ともいうべきこの78ガンダムはどのような内容になって私たちの前に現われるでしょうか。個人的には”細かいマーキングは印刷済みがいいなぁ、解き放たれるなぁ……”と期待していますがいかがでしょうか。それかEGガンダムでの簡素化された組み立て方法をPGクラスで実現……エモーションマニピュレーターSPみたいにある程度完成している……としても作業から”解き放たれた”ということにはなります。期待は膨らむばかりですね!
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