レビュー

ボードゲーム「OXtA cube」レビュー

4種類のルールで気軽に遊べる積み木型ボードゲーム、シンプルだが、奥深く楽しめる「軽ゲー」

開発・発売元:
CGCGスタジオHD
発売日:
11月14日
価格:
3,300円(税込)
内容物:
16個の木製キューブコマとゲーム用ボード等
プレイ時間:
10分程度

 昔からボードゲームには根強いファンがいるが、ボードゲームは、プレイ時間の長さで、短時間で終わる「軽ゲー」と、長時間かかる「重ゲー」に大別できる(その中間もあるが)。その定義は人によっても異なるが、だいたい30分以内で1ゲームが終わるボードゲームを軽ゲーと呼ぶようだ。最近は、ボードゲームカフェが増えたこともあり、短時間で気軽に遊べる「軽ゲー」をプレイするカジュアルなボードゲームファンが増えている。

 CGCGスタジオHDが製作・販売を開始したボードゲーム「OXtA cube」(オクタキューブ)は、まさに「軽ゲー」の楽しさと気軽さを凝縮した製品だ。「OXtA cube」は、いろんな遊び方ができることが魅力であり、キューブコマを動かして対戦するチェスのようなゲームから指先の器用さを求められる積み上げ型バランスゲームまで、4種類の遊び方が紹介されているが、どのゲームも10分程度あればプレイできるので、ちょっとした隙間時間にも気軽に遊べる。

また、この4種類はあくまで基本の遊び方であり、自分で新たなルールを考案して遊ぶこともできる。CGCGスタジオは、名前からもわかるように、本来は3DCG制作やコンテンツ開発を専門とする企業であり、今回初めてボードゲームを開発・販売することになったという。

 「OXtA cube」は、パッケージのデザインも洗練されており、サイズも220mm×160mm×40mm(縦×横×高さ)とコンパクトなので持ち運びも楽だ。パッケージの中には、16個の木製キューブコマとゲーム用ボード、キューブコマ用ポーチ、遊び方説明書が入っている。ゲーム用ボードは2つに折りたたむことができ、広げるとちょうどA4サイズになる。「OXtA cube」の主役となるのが、木製のキューブコマだ。キューブコマは、一辺が25mmの立方体であり、赤、緑、青、黄の4色それぞれにつき、○、×、+、△の4種類のマークが描かれているキューブコマが用意されているので、4×4で合計16個となる。

 キューブコマには6つの面があるが、そのうち1面だけマークが黒色で描かれており、その周りの4面にはマークが白色で描かれている。この黒色マークがキューブコマの上面となる。なお、黒色マークの反対側の面には、何もマークが描かれていない。遊び方説明書はフルカラーで、図が多用されているのでわかりやすい。

 「OXtA cube」は、2020年11月14日と15日に開催された「ゲームマーケット2020秋」でも実演販売されたが、来場者からの評判もよかったとのことだ。

【「OXtA cube」の内容】
「OXtA cube」のパッケージ外観
パッケージ裏に「OXtA cube」の4種類の遊び方が簡単に紹介されている
「OXtA cube」のパッケージ内容。16個の木製キューブコマとゲーム用ボード、キューブコマ用ポーチ、遊び方説明書が入っている
ゲーム用ボードは2つに折りたたむことができ、広げるとA4サイズになる
木製のキューブコマ。○×+△の4種類×4色で合計16個となる
キューブコマには1面だけマークが黒色で描かれており、その周りの4面にはマークが白色で描かれている。この黒色マークが上面となる
黒色マークの反対側の面には、何もマークが描かれていない
遊び方説明書はカラーでわかりやすくルールが説明されている
2020年11月14日と15日に開催された「ゲームマーケット2020秋」でも、「OXtA cube」が実演販売されていた
ゲームマーケットでの実演販売も好評だったという

4人で競う戦略移動ゲーム「shibuya.」

 「OXtA cube」で遊べる4種類のゲームの中から、まずは、4人で競う戦略移動ゲーム「shibuya.」を紹介する。対象年齢は8歳以上とされている。なお、「OXtA cube」のゲーム名は全て東京の地名を元にしている。「shibuya.」は四方から人が押し寄せる渋谷のスクランブル交差点をイメージしてつけられたそうだ。

 「shibuya.」では、△マーク以外の12個のキューブコマを使ってプレイする。各プレーヤーが、自分の陣地の中央に3個のキューブコマを縦に積み重ねた状態でスタートする。ゲームの勝利条件は、自分のキューブコマを全て対面の相手陣地へと移動させることだ。

 一番上に載っているキューブコマのマークによって、動かせる方向が決まるというのが、「OXtA cube」の基本ルールだ。動かせる距離は全て1マスだけだが(つまり隣にしか移動できない)、○マークは全方向に移動できるのに対し(将棋の王将と同じ)、+マークは前後左右だけ、×マークは斜めにしか移動できない。+は飛車の移動距離を1マスに制限したもの、×は角行の移動距離を1マスに制限したものと考えればよい。「shibuya.」では使わないが、△マークは前にしか移動できない(歩と同じ)。マークの形と移動できる方向が一致しているので、すぐに覚えられるだろう。

 「shibuya.」では、積み重なったキューブコマを一度に動かすだけでなく、分離して上側だけを移動させることもできる。もちろん、プレーヤーが一度に動かせるキューブコマは1組だけだが、キューブコマを相手のキューブコマに重ねることで、相手のキューブコマを支配できることが面白い。これをマウントポジションと呼ぶが、一番上のキューブコマがその下にあるすべてのキューブコマを支配する。積み重ねられる高さは最大で4段までに制限されているため、先に4段積み重ねてしまえば、その上から相手にマウントをとられることはなくなる。また、「shibuya.」では、キューブコマは自分の陣地と対面の相手陣地以外は、中央の3×3のエリア(スクランブルエリアと呼ぶ)のみしか移動できないルールになっている。

 プレイを進めていくと、自分のキューブコマ全てが相手にマウントされてしまうこともありうる。その場合、自分のターンはキューブコマを動かせず、パスとなる。自分以外のキューブコマごと相手陣地に移動した場合、その下にあった自分以外のキューブコマは、その位置からスタートとなり、そのプレーヤーは次の一手で必ず、スクランブルエリアに戻らなければならない。

 「shibuya.」はルールはシンプルなのだが、やってみるとなかなか奥が深い。いかに自分に有利なマウントポジションを作っていくかがポイントだが、1プレイ時間も短く、夢中になってプレイしてしまう。

【「shibuya.」の遊び方】
「shibuya.」の初期配置。△マーク以外のキューブコマを使う。キューブコマの積み重ね方は自由だが、それぞれ上に黒色マークが来るように並べる。一番上に載っているキューブコマのマークによって、キューブコマを動かせる方向が決まる
積み重なったキューブコマを分離して上側だけを移動させることもでき、キューブコマを相手のキューブコマの上に重ねることができる。これをマウントポジションと呼び、一番上のキューブコマがその下にあるすべてのキューブコマを支配する。積み上げる高さは最大4段までなので、4段積んでしまえば、その上から相手にマウントをとられることはなくなる
自分のキューブコマ全てを対面のエリア(赤なら緑)に移動させると勝ちとなる。次の手番が赤なので、赤のキューブコマを奥に動かせば勝ちだ
赤のキューブコマがゴールしたら、その下にあった黄色のキューブコマはそこからのスタートとなる

2人で遊ぶ積み上げチェス型ゲーム「shinjuku.」

 2つめの遊び方が、2人で遊ぶ積み上げチェス型ゲーム「shinjuku.」だ。こちらの対象年齢は「shibuya.」と同じく8歳以上とされている。

 「shinjuku.」では、好きな2色のキューブコマ4個ずつを使ってプレイする。最初に自分の陣地の中央にキューブコマを4つ積み重ねた状態でスタートするが、この積み重ね方は自由だ。ただし、「shibuya.」と同じく、一番上のキューブコマのマークに従って移動することになるので、最初の積み上げ方は重要だ。例えば、一番上を△マークにしてしまうと、一手目は前にしか移動できない。

 勝利条件は3つある。1つは相手の○マークのキューブコマ(キング)をとること。2つめは、相手の○マーク以外のキューブコマを全部とること。そして最後が、自分のキューブコマをどれか1つでもいいので相手陣地まで移動させることだ。

 「shinjuku.」でも、積み重なっているキューブコマを分離して動かすことができる。また、相手のキューブコマの上に移動できる場合、積み重ねるのではなく、移動させた自分のキューブコマの積み重なっている数だけ、相手のキューブコマをとることができる。移動先にある相手のキューブコマを全てとり切れば、その場所へ移動できるが、とりきれない場合は、移動はできない(相手のキューブコマをとることはできる)。とった相手のキューブコマは、マス目の外に置く。

 積み重なっているキューブコマを分離することで、新たに上にマークが出てくるわけだが、そのマークによって攻守の戦略を立てることがこのゲームのポイントだ。相手に自分のキングのキューブコマをとられたら即敗北となるが、キングを守ることばかり考えていると、相手のキューブコマに自分の陣地に入られてしまい、負けることもある。勝利条件が3つもあるので、なかなか難しい。

 一見、将棋やチェスにも似ているが、キューブコマを積み重ねて移動したり、分離したりできるので、想像以上に奥深いゲームだ。

【「shinjuku.」の遊び方】
「shinjuku.」で対戦しているところ
「shinjuku.」の初期配置。キューブコマの積み重ね方は自由だ
一番上に載っているキューブコマのマークに従って、キューブコマを動かしていく。shibuya.と同じく、分離して動かすことができ、積み重なったキューブコマの数だけ相手のキューブコマを取ることができる。取り切れない場合は、キューブコマを動かすことはできない。次が緑の手番なので、中央の+を上から2つ下に移動することで、赤の2つのキューブコマをとれる
赤の2つのキューブコマを取った状態。勝利条件は3つあり、相手のキングのキューブコマ(○マークのキューブコマ)を取るか、相手のキング以外のキューブコマ3つを全て取るか、自分のキューブコマのどれか1つを対面まで移動させれば勝ちとなる
次が赤の手番なので、赤の○マークのキューブコマを左にひとつ移動させれば赤の勝ちとなる
赤のキューブコマが対面まで移動したので、赤の勝利となる

小さな子どもでも遊べる積み上げ型バランスゲーム「ikebukuro.E」

 3つめのゲームが、積み上げ型バランスゲーム「ikebukuro.E」だ。このゲームは、他の3つとは全く異なるタイプのゲームであり、単にキューブコマを崩さないように上に積み上げていくだけという、とても簡単なゲームだ。ikebukuro.Eというのは池袋東口の意味で、サンシャイン60をイメージしているのであろう。

 プレイ人数は2人から4人で、対象年齢は6歳以上とされている。付属のポーチに入れたキューブコマを、見ないで1個取り出し、それを上に積み重ねていけばよい。わざと少しずらして重ねて、次の人にプレッシャーをかけるのもいい戦法だ。順番に1個ずつ積んでいくだけだと、イマイチゲーム性に欠ける気がするが、「ikebukuro.E」では、ポーチから取り出したキューブコマが、積まれているキューコマの一番上と同じ色または同じマークだった場合、もうひとつキューブコマを引いてそれも上に載せないといけないというルールがある。例えば、今積まれているキューブコマの一番上が赤色の○マークだったら、次に引いたキューブコマが赤色か、○マークだった場合、そのキューブコマを上に載せた後に、続けてもう1個引いて載せる必要がある。キューブは全部で16個あるが、途中で倒れたら倒した人が負け、倒れずに16個全て積んだら、積んだ人が勝ちとなる。

 頭を使わず、誰でもすぐに遊べるゲームだが、結構熱くなれる。他のゲームの合間に気分転換としてやるのもお勧めだ。

【「OXtA cube」 積み上げ型バランスゲーム「ikebukuro.E」】
最後のキューブコマを無事に載せることができれば、その人の勝ちとなる
【「ikebukuro.E」の遊び方】
「ikebukuro.E」は、袋に入れたキューブコマをひとつずつ取り出し積み上げていくという、シンプルなゲームだ
引いたキューブコマが、積まれているキューブコマの一番上と同じ色か同じマークだった場合、もうひとつキューブコマを引いて載せなくてはならない

押し出してマークを並べる変形三目ならべ「kanda.」

 最後に紹介するのが、変形三目ならべ「kanda.」だ。プレイ人数は2人または3人で、対象年齢は6歳以上だ。こちらの遊び方では、+マークのキューブコマを除いた12個のキューブコマを利用する。まず、12個のうち9個のキューブコマを裏返してマークが見えないようにして、ボードの中央に田の字型に並べる。次に、残りの3個のキューブコマをボードの外にマークが上になるようにして並べる。

 プレーヤーは自分の番が来たら、ボードの外に並んでいるキューブコマの一番端(外のキューブコマが自分の反対側に並んでいる場合なら右端)のものを取って、ボードの外周のどこかに置き、そのキューブコマで中央に置かれているキューブコマを押し出す。押し出されたキューブコマはマークを上にしてボードの外に置き、次の次に押し出すために使われることになる。

 こうしてプレイを進めていくと、盤面にマークが増えてくる。押し出したキューブコマによって、盤面に同じマークが一直線上に3つ並べば、そのプレーヤーが勝利となる。テトリスのネクストのように、次とその次の相手が使えるキューブコマは決まっているわけで、次の相手がマークを揃えないように邪魔しつつ、自分の番が回ってきたときには3つ揃えられるように考えるのが、このゲームのポイントだ。

 こちらもルールはシンプルだが、先読み力を試されるゲームだ。

【「kanda.」の遊び方】
「kanda.」の初期配置。+マークのキューブコマは使わない。9個のキューブコマを裏返してマークが見えないようにして、ボードの中央に田の字型に並べ、残りの3個のキューブコマをボードの外にマークが上になるようにして並べる
ボードの外のキューブコマは必ず一番手前(この写真の場合)のものを取って使う。そのキューブコマを外周のどこかに置き、そのキューブコマで置かれている他のキューブコマを押し出す
押し出されたキューブコマ(この写真だと青色)は、マークを上にして、ボードの外に置き、ボードの外のキューブコマもひとつずつ下にずらす
ある程度プレイを進めると、マークが揃ってくる。同じマークを3つ直線上に並べた人が勝ちとなる。次の人が使うキューブコマのマークは△なので、もう勝利が見えている
赤色の△のキューブコマを左上から右に押し込めば、△マークが縦に3つ並んで勝利となる
このように同じマークを3つ直線上に並べた人の勝ちだ

家族みんなで気軽に遊べるボードゲームとしてお勧め

 「OXtA cube」は、ルールがシンプルで、キューブコマの色やデザインもしゃれている。対象年齢も6歳または8歳以上であり、子どもから大人まで家族みんなで気軽に遊べるボードゲームとしてお勧めの製品だ。基本の4種類のゲームに慣れたら、自分たちでオリジナルゲームを考えてみるのも面白いだろう。新型コロナの流行がまだまだ衰えそうにない今年の年末年始は、人混みの多い場所への外出を避け、自宅で気軽に遊べるボードゲームに興じてみてはいかがだろうか。