レビュー

「METAL BUILD DRAGON SCALE 龍神丸」レビュー

「登龍剣」はペーパーナイフ大。新機軸のアレンジでポージングもバシッとキマる

 BANDAI SPIRITSより可動フィギュア「METAL BUILD DRAGON SCALE 龍神丸」が7月31日に発売された。

 本商品はアニメ「魔神英雄伝ワタル」の主役魔神(マシン)、「龍神丸」を立体化したもの。これまで「ROBOT魂<SIDE MASHIN>」や「NXEDGE STYLE [MASHIN UNIT]」で立体化されてきたが、今回は完成品フィギュアブランド「METAL BUILD」のスピンオフブランドとして誕生した「METAL BUILD DRAGON SCALE」の記念すべき第1弾となっている。

 筆者は「METAL BUILD DRAGON SCALE 龍神丸」が発表されたとき、度肝を抜かれた。存在感を放つ大きさはもちろん、その高級感溢れる彩色やデザインアレンジに心を奪われた。

METAL BUILD DRAGON SCALE 龍神丸

 2020年に新作アニメ「魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸」がYouTubeで配信され、昨今では「魔神英雄伝ワタル」シリーズに登場した魔神(マシン)たちが立体化され、シリーズの熱量の高さを改めて感じた。

 その中でも「METAL BUILD DRAGON SCALE 龍神丸」は魔神の立体化最新作となる。「デフォルメ頭身の新たな表現」として注目のギミックの数々を本稿では紹介したい。

ハッキシ言って、おもしろかっこいいぜ! 「魔神英雄伝ワタル」を語る

 「METAL BUILD DRAGON SCALE 龍神丸」を紹介する前に、アニメ「魔神英雄伝ワタル」について語っていきたい。

 アニメ「魔神英雄伝ワタル」は1988年に放送されたサンライズのロボットアニメ。主人公、戦部ワタルが学校の帰り道に龍神池で龍と出会い、異世界である神部界へ召喚されてしまう。その世界では、神が住む巨大な山「創界山」が悪の帝王・ドアクダーに支配されていた。ワタルは救世主となって、ドアクダーへと立ち向かう。

 その中でワタルと共に戦う魔神(=ロボット)が「龍神丸」だ。元はワタルが粘土で作ったロボットだが、そこに「創界山」の守り神「神部七龍神」のひとつ、金龍の魂が宿り「龍神丸」となった。ワタルが乗り込むと、そこには巨大な金の龍が浮かぶ空間があり、その角をワタルが掴むことで「龍神丸」は心を通わせて戦う。

 戦いの中で「龍神丸」はワタルと励まし合い、時にはワタルを叱咤する父親のような存在として活躍した。また、名古屋弁や博多弁をしゃべったりとユーモア溢れるシーンもあった。

TVアニメ「魔神英雄伝ワタル」

 ストーリーを通して成長していくワタルとその姿を最後まで見守り続けた「龍神丸」は、一人のキャラクターとして大きな存在となっていた。特に最終決戦後の別れを惜しむワタルを諭す姿に筆者も思わず目頭が熱くなった。

 さて、「魔神英雄伝ワタル」はこれまで初代を含め「魔神英雄伝ワタル2」、「超魔神英雄伝ワタル」がTVアニメとして放送され、他にもOVAや小説、最新作の「魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸」と数多くのメディアミックス展開がされてきた。「龍神丸」も新しい姿となって登場し、活躍してきた。

 今回の「METAL BUILD DRAGON SCALE 龍神丸」は「魔神英雄伝ワタル」の時のデザインに近い印象となっている。頭部のデザインや首周りの勾玉や太鼓を並べたようなベルトなどが確認できる。

 そして、劇中のデザインを含めつつ「METAL BUILD DRAGON SCALE」によるこれまでにない構造と可動、ディテールデザインで「龍神丸」が登場した。

 では、「立体物ならではの表現」が詰まった新たな「龍神丸」を見ていこう。

高級感溢れるパッケージに、豪華な本体と各種オプションパーツ

 最初はパッケージデザインを確認。高級感あふれる質感と「METAL BUILD DRAGON SCALE 龍神丸」を中心に据えたカッコよさ全開のデザインとなっている。

【パッケージ】

 続いて内容物を確認していこう。本体は発泡スチロールに収められ、ブリスターには交換用手首パーツや武器の「登龍剣」、エフェクトパーツ、台座一式、取扱説明書が封入されている。

【内容物】

 これまで筆者は「魔神英雄伝ワタル」シリーズの「ROBOT魂<SIDE MASHIN>」、「NXEDGE STYLE [MASHIN UNIT]」を購入してきた。今回のMETAL BUILD DRAGON SCALEは、まず武器やエフェクトパーツがこれまでの立体物と比べると格段に大きい。

 武器の「登龍剣」はペーパーナイフほどの大きさで、剣身の色合いも一色ではなくグラデーションのように表現され高級感ある仕上がりとなっている。また、エフェクトパーツもクリアパーツで迫力ある造形となっている。

【登龍剣/エフェクトパーツ】

 さらに、台座に描かれている模様もアニメ「魔神英雄伝ワタル」の設定にある神部文字が施される。新紀元社の「魔神英雄伝ワタル 創世伝説(めいきんぐふぁんぶっく)」に掲載された神部文字の設定表を参照すると、そこには「救世主、龍の神とともに空よりあらわる」と書かれていた。これは第1話で語られた伝説を連想させ、筆者も思わずニヤリとしてしまった。

【台座】

 オプションパーツや台座は「ROBOT魂<SIDE MASHIN>」、「NXEDGE STYLE [MASHIN UNIT]」とは異なる存在感と劇中の小ネタなどちりばめられていた。

 となれば、本体の「龍神丸」にも期待が高まる。

金龍の姿を宿した新たな「龍神丸」

 「METAL BUILD DRAGON SCALE 龍神丸」は、「METAL BUILD」のスピンオフブランドであり、ダイキャストが使用されている。そのため、取り出した際にまずその手にずっしりとくる重さは、このブランドならではの手触りで同時にディスプレイ時の安定感を物語っていた。

 そして、全身を見ると劇中とは異なるエッジの効いた細部のデザインに、メッキ塗装のゴールドの輝きと高級感あるパール塗装が美しい仕上がりとなっている。

【METAL BUILD DRAGON SCALE 龍神丸】

 そして、最大の特徴は体の各部から覗く内部構造だ。劇中の設定で「龍神丸」には「金龍の魂」が宿っている。そして、ワタルが乗り込んだ時の描写を立体物に落とし込まれている。

「METAL BUILD DRAGON SCALE 龍神丸」のページの内部構造のイメージ

 「龍神丸」が一人のキャラクターとして描かれ、その核心となる「金龍の魂」を内部に封じ込めた表現は筆者にとっては目から鱗だった。

 例えば、リアルロボットなどは外装を外した内部のメカ描写、配線や冷却装置、センサー類やコンパネの配置など「情報密度」を詰め込むことができる。そうした機械としてのシステマティックな描写は「現実感(リアリティ)」の名のもとに造形、表現がされてきた。精緻な造形の密封は立体物だからこそできる表現だ。

 しかし、そうした「現実感(リアリティ)」とは違った「キャラクターとしての魅力」からアプローチしたのが「METAL BUILD DRAGON SCALE 龍神丸」だと筆者は感じた。

【内部構造】

 「龍神丸」は機械の塊ではない。本来の姿である金龍が「龍神丸」の姿を借りている。その設定を内部構造で表現することによって劇中の設定を視認させ、「キャラクターとしての魅力」が際立つ造形に昇華されている。

 実際に内部構造は本体を動かすことによって露出し、新たなキャラクター像を作り出している。

 その魅力をさらに引き出す可動も見逃せない。

可動で外装のスライド。アクションのメリハリが決まる

 「METAL BUILD DRAGON SCALE 龍神丸」の可動は、「METAL BUILD」のノウハウを受け継いだ可動機構となっている。肘や膝を動かせば、それに合わせて外装がスライドする。

 アクションのメリハリが増えるとともに、可動域の確保の両立ができる構造となっている。まさに龍のウロコが連動するかのように動き、「龍神丸」ならではのアレンジとなっている。

 また、腹部が大きく開くので、「ROBOT魂<SIDE MASHIN>」などではできなかった振り仰いだ態勢がより自然に取れるのも、筆者にとっては嬉しかった。それに合わせて背中の外装も動き、柔軟な可動が楽しめる。

【可動域】

 スライド機構は可動範囲を広げ、アクションのメリハリをつける重要な機構となっている。この機構も立体物ならではのアレンジで、アニメとはまた違った趣や迫力を宿している。動きの流れが明確になるとともに、重厚感ある動きを楽しむことがきる。

 さらに、肩口部分は引き出し機構が2段構えとなっており、大きく肩を上げた状態にすることができる。また、肩を寄せて武器を両手持ちにすることができ、「龍神丸」の必殺技「登龍剣」を再現するにはなくてはならない機構だ。

 また、動きの表現の幅を広げたものとして、手の指が可動することも欠かせない。本商品でも交換用手首パーツが付いているが、指の可動は武器を掴む瞬間や腕を振るった際の指先までの動きをサポートしてくれる。指先までピシッと決められるのは、筆者にとっては嬉しいギミックだ。

【スライド機構/引き出し機構/指可動】

 ここまで可動域を紹介して、筆者は個々の可動の柔軟性や動きの表現への追求に感服した。しかし、「デフォルメデザインはリアル頭身に比べるとアクションが詰まった印象」になりやすい。アニメでは手足の短さもハッタリを効かせた構図でカバーし、ダイナミンクに映せるが立体物ではそれが難しいからだ。

 後半ではそんな不安も払拭するオプションの活用を紹介していく。