レビュー

「IMS 1/100 ナイト・オブ・ゴールド・A-T」レビュー前編

「K.O.G.」の2番騎を全塗装で煌びやかに仕上げるフレーム組み立て&塗装編

【IMS 1/100 ナイト・オブ・ゴールド・A-T】

開発・発売元:ボークス

発売日:2021年5月22日

価格:9,900円(税込)

サイズ:全高約273mm

 今回のレビューでは、ボークスのプラモデルシリーズ「IMS(Injection Assembly Mortar Head Series)」にて5月に発売した「IMS 1/100 ナイト・オブ・ゴールド・A-T」を塗装込みで仕上げていきます。IMSは、造形村F.S.S.プロジェクトチームが手掛けるインジェクションプラキットというカテゴリのプラモデル。モーターヘッドを研ぎ澄まされた造型で再現できますが、高い組み立て難易度を誇るキットです。前編ではモーターヘッドの特徴的な内部フレームの組み立てと塗装を扱います。

そもそも「ナイト・オブ・ゴールド・A-T」とはどんなロボットなのか?

 今回制作する「ナイト・オブ・ゴールド・A-T」(KOG-AT)について模型誌などで見たことがある方はいると思いますが、いったいどんなロボットなのか知らない方も多いと思います。そこで、この「ナイト・オブ・ゴールド・A-T」について軽く解説いたします。

 「ナイト・オブ・ゴールド・A-T」とは、1986年より月刊ニュータイプにて永野護氏が連載中の漫画作品「ファイブスター物語」に登場するロボット兵器「モーターヘッド」の1つ。4つの恒星で構成されるジョーカー太陽星団を舞台に、ロボット兵器であるモーターヘッドを駆る騎士たちが繰り広げる数千年の歴史の物語、その中でもひときわ輝きを放つ黄金の騎体です。

今回レビューする「IMS 1/100 ナイト・オブ・ゴールド・A-T」のパッケージ。

 「ナイト・オブ・ゴールド・A-T」は、同作の主人公・アマテラスがヒロインのラキシスを失った後に創り上げた2騎目の「ナイト・オブ・ゴールド」(K.O.G.)です。ラキシスの姉であるアトロポスのために創られ、「ナイト・オブ・ゴールド・A-T」と名付けられました。「A-T」はアトロポスを指します。

 本機に搭乗する騎士(ヘッドライナー)はアマテラス及びユーパンドラ(アマテラスのコピーとして作られた人造人間)。機体制御を司る生体演算機・ファティマとしてアトロポスを内蔵します。作中では星団歴3960年に星団統一に参戦。その後星団歴4100年に解放軍との戦いでも活躍し、解放軍のリーダーと相討ちました。

プラモデルとしての「ナイト・オブ・ゴールド・A-T」、IMSシリーズとは

 次にプラモデルとしての「ナイト・オブ・ゴールド・A-T」について紹介していきます。今回作成する「IMS 1/100 ナイト・オブ・ゴールド・A-T」は、ボークスのプラモデルシリーズ「IMS(Injection Assembly Mortar Head Series)」より2021年5月に発売したプラモデルとなります。IMSシリーズのキットとしては比較的新しいキットになります。

IMSキット製作に必要なツール

 IMSシリーズのキットはガンプラにて採用されているスナップフィットではなく接着剤必要のキットとなっています。そのため、ニッパーややすりに加え、プラモデル用接着剤が必要となります。今回はタミヤの流し込み用接着剤を使用しました。また、本キットでは一部パーツにビス止めを採用しているため、プラスドライバーが必要となります。

今回使用したツール。これまでのガンプラ素組では使用していなかった接着剤とドライバーが必要となります。

「IMS 1/100 ナイト・オブ・ゴールド・A-T」を制作していく

 それではキットを制作していきます。まず外箱ですが大型のMGガンプラと同じくらいのサイズ感と言ったところでしょうか。

 箱の中身は19ランナー502パーツとなっており、成型色はフレーム色となるブラウンゴールドと外装色のゴールドとなっています。今回制作するフレーム部は9ランナーとなっています。

Aランナー。主に胸部装甲を構成するパーツが入っています。
Bランナー。主に脚部装甲と腕部装甲を構成するパーツが入っています。
Cランナー。主に腰部から上の内部フレームを構成するパーツが入っています。
Dランナー。主に肩部装甲及び武器を構成するパーツが入っています。同じ形状のランナーが2枚入っています。
Eランナー。主に頭部装甲及び腰部装甲を構成するパーツが入っています。
Fランナー。足首装甲を構成するパーツが入っています。
Gランナー。主に脚部内部フレームを構成するパーツが入っています。同じ形状のランナーが2枚入っています。
Hランナー。スタビライザーを構成するパーツが入っています。同じ形状のランナーが2枚入っています。
Jランナー。主に背部ユニットを構成するパーツが入っています。
Kランナー。ハンドパーツを構成するパーツが入っています。
Lランナー。主に脚部内部フレームを構成するパーツが入っています。
Mランナー。主に脚部内部フレームを構成するパーツが入っています。同じ形状のランナーが2枚入っています。
Pランナー。各種関節に使用するポリキャップパーツが入っています。
Zランナー。Pランナーと同様に各種関節に使用するポリキャップパーツが入っています。
ビス及びOリング。本キットでは一部ビス止めやOリングを使用します。
説明書はオールカラーページとなっており、高級感があります。

 組み立て説明書では外装を組みつけながら制作する手順となっていますが今回は塗装を考慮し、内部フレームのみを組み立てていきます。それでは脚部から組み立てていきます。

 足首フレームは特徴的なピンヒールとなっており、可動はありません。つま先まで内部フレームが再現されています。

組み立て前のつま先パーツ。つま先だけで4パーツ構成となっています。
組み立て後のつま先パーツ。装甲で隠れてしまう部分までしっかりとモールドが刻まれています。
組み立て前の足首パーツ。かかとパーツは外装色の成型色にて成型されています。
組み立て後の足首パーツ。高いヒールが印象的です。
足首パーツは最後にかかとパーツを取り付けます。接着剤無しでは固定できません。
完成した足首フレーム。かかと部分は外装パーツとなっているので今回は完全に接着しないようにしておきます。
組み立て前の足首基部。3パーツ構成にて構成しています。
組み立て後の足首基部。ガンプラとは異なり、丸みを帯びたデザインとなっています。

 続いて脚部フレーム。膝に可動部があるものの、可動域はほとんどありません。

組み立て前のスネパーツ。スネパーツだけで5パーツ構成となっています。
組み立て後のスネパーツ。5パーツ構成となっていることもあり、前後左右度の面から見ても造形の良さが感じられます。
組み立て前の膝関節。8パーツにて構成されています。
組み立て後の膝関節。ポリキャップを内部に挟み込むことで表面に露出しないように工夫されています。
組み立て前の大腿部パーツ。5パーツにて構成されています。
組み立て後の大腿部パーツ。一部パーツを切断加工する必要がありため制作時には注意が必要です。
組み立て前の脚部内部フレーム。足首部に取り付けるパーツは外側と内側でモールドに違いがあるため、取り付け時には注意が必要です。
組み立てた脚部内部フレーム。可動域こそありませんがディテールの密度はさすがです。

 腰部フレームは脚部付け根のパーツまでが一体化した構造となっています。股関節の固定はビス止めで、好みの固さに調整できます。

組み立て前の股関節部ジョイント。キット付属のOリングは股関節にて使用します。
組み立て後の股関節ジョイント。Oリングと接触するパーツは予め洗浄しておくことで保持力が向上します。
組み立て前の股関節基部。先ほど作成した股関節ジョイントに3パーツを取り付けます。
組み立て後の股関節基部。脚部の付け根は股関節側に取り付ける方式です。
組み立て前の腰部基部。内部にナットを組み込みます。
組み立て後の腰部基部。バックパックを接続する基部にもなります。
一体化の股関節部。先ほど作成した股関節基部と腰部基部を一体化させます。
一体化後の股関節部。股関節基部と腰部基部をビスにて固定します。このビスの締め付け具合により、股関節の固さを調整可能です。
組み立て前の腰部フレーム。股関節部に腰アーマーの受けを組みつけていきます。
組み立てた腰部フレーム。内部フレームとは思えないほど工程も多く、ディテールもかっこよく完成しました。
腰部フレームに取り付け予定の腰アーマー基部。今回は組み立て性を考慮し、現段階では固定せず、個別で塗装していきます。

 胴体パーツは腕付け根部分にビス止めが採用されており、肩の可動範囲を変更することが可能です。また、腹部は軸となるパーツに前後左右から蛇腹パーツを取り付ける構造となっています。

組み立て前の胸部パーツ。ビス、ナットを含め12パーツにて構成されています。
組み立て後の胸部パーツ。ビスを緩めることで肩関節を引き出すことが可能です。
組み立て前の腹部パーツ。全7パーツにて構成されており、軸となるパーツに前後左右から外装をかぶせていきます。
組み立て後の腹部パーツ。蛇腹パーツが細かく造形されており、芸術的なフォルムとなっています。
一体化前の胸部及び腹部パーツ。ここでは軸を差し込むことで固定していきます。
組み立てた胴体フレーム。パーツ分割が多いこともあり、どの角度から見てもディテールを楽しむことができます。

 腕部パーツは肩基部のパーツに対し腕と肩部装甲を取り付ける構造となっています。肘は可動しますが、二重関節になっているわけではないので可動範囲は90度程度です。

組み立て前の肩内部パーツ。全8パーツにて構成されています。
組み立て後の肩内部パーツ。肩アーマーの基部が可動します。
組み立て前の肩部フレーム。肩内部パーツに9パーツを取り付けます。
組み立て後の肩部フレーム。ガンダムと違い、肩が大きく造形されています。
組み立て前の肩アーマー基部。全3パーツにて構成されています。
組み立て後の肩アーマー基部。肩アーマー裏面となる箇所にもしっかりとモールドが入っています。
組み立て前の上腕フレーム。全4パーツにて構成されています。
組み立て後の上腕フレーム。膝関節と同様にポリキャップが外部に露出しない構造となっています。
組み立て前の肘フレーム。全4パーツにて構成されています。
組み立て後の肘フレーム。上腕フレームと接続することで関節が可動します。
組み立て前の前腕フレーム。全4パーツにて構成されています。
組み立て後の前腕フレーム。腕部フレームは全体的に細身の印象です。

 ハンドパーツは分割が細かく、モールドも細かく入っています。形状は開き手、握り手、武器持ち手の3種類、左右計6個が付属します。

組み立て前のハンドパーツ。各形状6、7パーツにて構成されています。
組み立てたハンドパーツ。細部まで細かく表現されています。

 ヘッドパーツはボールジョイントにて胴体と接続する方式です。本キットではヘッドパーツ側がオスで、ボディ側に軸受けがあります。

組み立て前のヘッドパーツ。全6パーツにて構成されています。
組み立てたヘッドパーツ。頭部が大型なロボットということもありフレームも大きくなっています。

 これにてフレームの組み立てが完了しました。本来ならばこれから塗装に入るところですが、その前に一度組み上げて全体を見てみましょう。

組み立て前の内部フレーム。各部が内部フレームの段階で組み立てることができます。
内部フレームの塗装前組み立て状態。これだけでも飾りたくなるカッコよさがあります。

 いかがでしょうか。このままで塗装して完成としたくなるほど造形が細かくされています。ここまで組み立ててみた感想ですが、接着剤を使用する以外はそれほど難しくはないキットだと感じました。それでは塗装準備に入っていきましょう。

 塗装を行なう前の準備として表面に付いた油や削りカスを除去するため洗浄作業を行なっていきます。まずは一度組み立てたフレームを頭部、腕部、脚部といったブロックごとに分解。超音波洗浄機(シチズン 超音波洗浄機 SWS510)に入れます。続いて水、台所用洗剤を入れて5分間洗浄しました。今回はパーツ数も多く1回ではすべてのパーツが入らなかったので2回に分けて洗浄を行ないました。

普段使用している超音波洗浄機。家電量販店にて眼鏡や腕時計用として販売されています。

 洗浄が完了したら塗装に入ります。今回のキットは内部フレームも金属色のため、下地色もそれに合わせていきます。下地にはGSIクレオスの「Mr.フィニッシングサーフェイサー1500 ブラック」を選びました。

塗装前の胴体パーツ。
下地塗装後の胴体パーツ。

 次に上塗りを行ないます。本キットのフレーム色はカッパーに近いゴールドとなっているため、今回はガイアノーツの「Exゴールド」とガイアノーツの「部長カッパー」を調色して塗装していきます。

エアブラシにて塗装中。ムラが発生しないように塗装していきます。
上塗りが完了した胴体パーツ。綺麗に発色させることができました。

 上塗りが完了したらスミ入れを行なっていきます。今回は濃いゴールドのため、エナメルカラーのブラックを使用してスミ入れをします。

スミ入れ作業は希釈したエナメル塗料を流し込んでいきます。
エナメル塗料乾燥後にエナメル溶剤を含ませた綿棒ではみ出た箇所を拭き取っていきます。

 スミ入れ作業が完了したら最後に光沢クリアーで全体をトップコートしていきます。使用した塗料はガイアノーツの「Exクリアー」を使用しました。トップコートが乾燥したら全体を組み立ててフレームの完成です。早速いろいろな方向から見ていきましょう。

前後左右から見てみます。内部フレームでありながら細かい造形であることがわかります。
左脚を最大限曲げてみました。脚部の可動域はほぼありません。
肘は約90度まで可動します。
肩部には引き出し関節が採用されているので大きく可動することができます。
腰を反時計回りに回転させてみましたがここが限界。左右に15度程度の可動域です。

 いかがでしょうか。可動範囲はほぼありませんが造形の細かさはこれを補って余りあるように思います。このままフレーム状態にて飾ってしまいたくも思いますが、後編ではこのフレームに外装を取り付け「ナイト・オブ・ゴールド・A-T」を完成させていきます。次回外装編をお楽しみに。

今回使用した塗料一覧
工程使用塗料
下地GSIクレオス Mr.フィニッシングサーフェイサー1500 ブラック
上塗りガイアノーツ Exゴールド
上塗りガイアノーツ 部長カッパー
スミ入れタミヤ エナメルカラーブラック
トップコートガイアノーツ Exクリアー