レビュー

「METAL ROBOT魂 ガンダムキマリスヴィダール」レビュー

復讐鬼と化した男が駆る、巨大なドリルランスで戦うモビルスーツ

【METAL ROBOT魂 ガンダムキマリスヴィダール】

2022年12月15日発売

価格:17,600円

全長:約150mm

材質:ABS・PVC・ダイキャスト

 「METAL ROBOT魂 <SIDE MS> ガンダムキマリスヴィダール」は、アニメ「機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ」に登場する「ガンダムキマリスヴィダール」をモチーフとしたアクションフィギュアだ。本商品はプレミアムバンダイ専売商品で現在は受注できないが、そのプロダクトを紹介していきたい。

 巨大なランス、長いアームで支えられた2つのシールド、派手な頭部、シリンダーで支えられた細い腰……かなり印象的な特徴を持つ機体である。この機体には九死に一生を得、自身が忌み嫌う人体改造によって蘇ったガエリオ・ボードウィンが復讐鬼と化して乗り込む。その狙う先はかつての親友マクギリス。このエピソードが、機体を一層魅力的にしてくれる。

キマリスヴィダールは、大きな飾りのついた頭部や巨大なランスなど、中世の騎士のようなデザインが盛り込まれている

 「METAL ROBOT魂 ガンダムキマリスヴィダール」はデザイン、多彩な武装、それらをきっちり支える関節構造などで、キャラクターとしてのキマリスヴィダールの魅力をたっぷりと再現している。ギミックを写真とともに紹介していきたい。なお前身となる「METAL ROBOT魂 ガンダムヴィダール」は弊誌でレビューしてるので、こちらも参照して欲しい。

部下を生体ユニットに使い、自身の体を改造してまで強化した「復讐の道具」

 最初にモチーフとなる「ガンダムキマリスヴィダール」の紹介をしていこう。この機体はガンダムキマリスとして「機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ」の物語が展開する300年前の大きな戦い、"厄祭戦"において活躍した72体の"ガンダム・フレーム"のうちの1体である。キマリスは厄祭戦により名を成したボードウィン家を象徴するMSとして保存されていたが、その後は式典などの行事に使用されているだけだった。

「機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ」は2015年のアニメ。キマリスヴィタールは2期の終盤に登場する

 しかし「鉄血のオルフェンズ」の主人公三日月・オーガスの駆るガンダムバルバトスに破れたガエリオ・ボードウィンはこの骨董品ともいえるMSを持ち出し三日月が所属する鉄華団を追う。しかし三日月とバルバトスには現在では禁忌とされる人間とMSを生態的に接続する「阿頼耶識(あらやしき)システム」があり、何よりも三日月の優れた戦闘センスの前に敗北を繰り返す。

【ガンダムキマリス】
ガンダムキマリス。300年前に製造され、現在では式典などで使われていたMSをガエリオはバルバトスと戦うために引っ張りだす。写真は「ROBOT魂 <SIDE MS> ガンダムキマリス」

 そして親友であったマクギリスによってガエリオは葬られることとなる。マクギリスは自身やガエリオが所属するこの宇宙を征する組織ギャラルホルンの失墜と、自身の力による支配を望んでおり、ギャラルホルンの中心を構成する人物の1人であるガエリオを亡き者にしようと狙っていたのだ。「鉄血のオルフェンズ」第一期の終盤、裏切りの友にガエリオは敗北し、とどめの一撃を受ける。

 ……しかしガエリオは死んではいなかった。「鉄血のオルフェンズ」第二期において、密かに生き延びたガエリオは自身が忌み嫌う人体改造を受け復活、ガンダムキマリスに偽装を施し、「ガンダムヴィダール」とし、自身も仮面で顔を隠した謎の人物「ヴィダール」としてマクギリスの真意を知るために暗躍する。

【ガンダムヴィダール】
マクギリスの裏切りによって死んだと思われていたガエリオは、仮面に顔を隠しヴィダールとして暗躍する。MSも偽装を施されガンダムヴィダールとなる。写真は「METAL ROBOT魂 <SIDE MS> ガンダムヴィダール」。基本フレームは同じだが外装を変えているため、キマリスとは姿が大きく変わっている

 そしてマクギリスがギャラルホルンを力で支配しようとその意思を明確にしたとき、彼に対抗しようとするラスタル・エリオンと共に、自身の正体を明かしマクギリスの裏切りを告発、機体も偽装を剥ぎ取り、ガンダムキマリスヴィダールとしてキマリスの名を取り戻す。

 ヴィダール、及びキマリスヴィダールには「阿頼耶識タイプ・Eシステム」という恐ろしいシステムが搭載されている。このシステムはガエリオの部下だったアイン・ダルトンの脳を生体ユニットとして組み込んでおり、阿頼耶識システムによる脳への負荷を肩代わりさせる。

 アインもまたマクギリスの陰謀の犠牲者であり、ガエリオはアインの力でマクギリスに及ばない実力を補おうとする。「マクギリス、俺を見ろ!」、ガエリオはたった1機でラスタルの首を取ろうと特攻するマクギリスの前に、アインの力を借りたキマリスヴィダールで立ち向かう……。

【ガンダムキマリスヴィタール】
キマリスヴィタール全身。細かく彩色が施され、シールドにはボードウィン家の紋章が描かれるなどマーキングも細かい。シリンダーで繋がれた細い腰、巨大な腰アーマー、背中のアームが支える大きなシールドなどシルエットに大きな特徴がある

大きなシールドをしっかり支える2本のアーム、ポージングが楽しいアクションフィギュア

 「METAL ROBOT魂 ガンダムキマリスヴィダール」のディテールを見ていきたい。目を惹くのはやはり頭部である。キマリスの頭部は中世の騎士の兜のような意匠があるが、トサカ部分がかなり大きくなっている。ガンダムフレームの特徴であるシリンダーの表現など細かいところにも注目して欲しい。

【頭部】
馬のたてがみを思わせる後頭部の飾り。かなり凶悪そうな面構えだ。首のシリンダーや装甲のスジ彫りなど造型の細かさも注目して欲しい

 このシリンダーで一番目立つのは腰部分だ。「METAL ROBOT魂 ガンダムキマリスヴィダール」では金属光沢のある塗装がされていて一層はっきりしている。このシリンダーと中央の背骨のようなフレームで上半身を支えているというのがガンダムフレームの特徴である。また、フレーム部分は他のガンダムと共有で、外装で差別化されるという特徴も伝わる。

【腰】
背骨上のフレームと2つのシリンダーで支えられた腰。この腰の細さはガンダムフレームだけでなく、「鉄血のオルフェンズ」の登場MSの共通の意匠だ

 その外装で特徴的なのが大型のサイドアーマーとリアアーマーである。ここにはバーニアが取り付けられており、キマリスヴィダールの凄まじい加速力を感じさせる。肩や足、そしてフレキシブルに動くシールドにもバーニアがあり、これらを使うことで急旋回や反転なども可能にできそうである。一方で機動にかかる重力は凄まじそうだ。阿頼耶識システムも含め、並の人間では扱えない機体であることがこのバーニアの数でもわかる。

【サイド/リアアーマー】
バーニアがついた大型のサイドアーマーとリアアーマー。このバーニアで爆発的な加速を行うのが想像できる

 足先はかかととつま先でコの字に曲がっている。これが足先を精一杯開いた形で、キマリスヴィダールは地面の接地面積を最小限に仕様としているのがわかる。重装備からも宇宙での戦いが前提の機体であるが、この足はあくまでこの機体が機動性を重視しており、踏ん張ったり、どっしりと構えることを前提としていないことがうかがえる。

【足】
この状態が足裏を最大に開いた状態。つま先とかかとのみが接地するデザイン

 キマリスヴィダールの最大の特徴と言えるのが背中のアームに支えられた2つのシールドだ。「鉄血のオルフェンズ」では主人公機バルバトスを含め"副腕"を持つ機体が多い。腕が多い方が多くの武器を構えられたり、攻撃の手数が増えるなど有利であることが考えられるが、操縦や機会の負荷も増大する。それをカバーするのが機会と人体を融合させ肉体感覚での操縦を可能とする阿頼耶識システムだ。このシールドも阿頼耶識システム前提のものなのだろう。

 「METAL ROBOT魂 ガンダムキマリスヴィダール」は接続部分に金属のピンを使うことで関節に渋みを加え、シールドを2本のアームで様々な形できちんと保持できる。シールドとして前面に構えさせたり、翼のように拡げさせたり、バーニアを意識することで動きの演出にも使える。このシールドが「METAL ROBOT魂 ガンダムキマリスヴィダール」のポーズ付けを一層面白くしている。次ページでは武装などを紹介していきたい。

【シールド】
2本の細いアームがシールドをしっかり保持する。アームは可動部が多く様々な形でポーズを維持できるため、シールドで表情付けが可能。防御態勢や加速/制動のためのスラスター制御、翼のように拡げたり、さらには武器として相手に叩きつけるなど、想像力が刺激される