レビュー
ハセガワ「VF-19A w/ファストパック & ハイマニューバミサイル」レビュー
"飛行機モデルのハセガワ"が手がける、ファイターに特化したマクロスメカ
2023年6月2日 00:00
- 【VF-19A デュラハンズ】
- 発売日:4月20日
- 価格:4290円
- スケール:1/72
- 全長:260mm
今回レビューで取り上げるのは、ハセガワ「VF-19A “SVF-440 デュラハンズ” w/ファストパック & ハイマニューバミサイル」。「VF-19」は、アニメ「マクロスプラス」の主役機「YF-19」の制式量産機。高性能故に扱いが難しい優れたパイロットのための機体だ。
本来、VF-19はファイター、ガウォーク、バトロイドに3段変形する可変戦闘機である。しかし本商品はファイター形態に特化したプロポーションアレンジを行っている。現実のジェット戦闘機のプラモデルを得意とするハセガワが、その技術を活かし、戦闘機としてVF-19をアレンジした商品なのだ。
今回は「VF-19A “SVF-440 デュラハンズ” w/ファストパック & ハイマニューバミサイル(以下、VF-19A デュラハンズ)」をウォッシングによりディテールを際立たせた形で組み立ててみた。一部のデカールを使用し、部隊マークなども配置した。プラモデルの感触を語っていきたい。
4機のVF-19で数千のゼントラーディ艦隊を壊滅させた"デュラハンズ"所属機を再現
VF-19の魅力を語るには、やはりアニメ「マクロスプラス」が欠かせないだろう。「マクロスプラス」では後にVF-19として制式採用される試作機であるYF-19が大活躍する。「マクロスプラス」は「超時空要塞マクロス」の30年後が舞台となっている。YF-19は、「超時空要塞マクロス」で活躍したVF-1とはまさに"次元"の異なる可変戦闘機なのだ。
目の前にいるのにレーダーで全く捉えられない「アクティブステルス」。48秒で大気圏外まで到達できる「次世代型熱核バーストタービンエンジン」。これまでは艦船などにしか搭載できなかった力場を発生させる防御装置「ピンポイントバリア」。さらに20光年の距離を一気にフォールド(ワープ)する「フォールドブースター」を装備可能。この時代の最新技術を結集した機体なのだ。
「マクロスプラス」ではこのYF-19に加え、同じく最新技術を結集し、さらに脳波コントロールなど革新技術を盛り込んだYF-21が軍の制式採用を巡って激しく争う。アニメではYF-19とYF-21がどれだけスゴイ機体かを丹念に描いており、誰もがこの2つの機体に憧れるだろう。
今回のプラモデルのモチーフとなっているのは、このYF-19が制式採用になったVF-19の"デュラハンズ"という部隊の所属機である。VF-19という機体の魅力を紹介するムック本「ヴァリアブルファイター・マスターファイル VF-19 エクスカリバー」ではVF-19のバリエーションとしてデュラハンズ所属機のVF-19Aの機体のカラーパターンと、彼等の活躍を描いたエピソードが収録されている。
「マクロス」の世界には、銀河をさまよい、目にした文明を攻撃する生体兵器「ゼントラーディ」という存在がいる。人類の植民惑星ロジェはこのゼントラーディ艦隊の襲撃を受ける。艦隊は数千という大群であり、ロジェの配属部隊では防衛が精一杯。この劣勢を挽回するには、VF-19の中央へのピンポイント攻撃しかない。
デュラハンズの4機のVF-19Aはフォールドブースターでゼントラーディ艦隊中央を強襲、艦隊の中枢である司令艦を破壊し、ロジェの戦いに勝利をもたらした。司令艦に攻撃を行うその時まで、ゼントラーディはVF-19Aを全く補足できなかったという。VF-19という戦闘機がいかに革新的な存在かを読者に刻みつけるエピソードだ。
ファンにとってプラモデル「VF-19A デュラハンズ」は、アニメでカッコイイ活躍をしたYF-19のバリエーションモデルとして魅力的だ。YF-19は試作機としてカラーリングをされていたのに対し、デュラハンズは灰色の基本色に黒いファイアパターンという大きく印象の異なる姿になっている。さらに翼には強力な新型ミサイル「ハイマニューバミサイル」を搭載している。
そして"飛行機モデルのハセガワ"がこの機体をどうアレンジしているかも見所だ。人気の高いYF-19は様々なメーカーが立体化している。特にBANDAI SPIRITSとアルカディアは変形可能な完成品モデルを発売しており、これらの商品とどう違うかも興味深いところ。「VF-19A デュラハンズ」を組み立てていこう。
シャープで細かい部品、組み上がっていくスマートな機体
「VF-19A デュラハンズ」のスケールは1/72、設定では全長18.62mの機体が、全長260mmで表現されることとなる。接着が必須のプラモデルでパーツはただ当てただけでは固定されず、位置の調整も自分でやらなければいけない箇所が多い。ある程度のプラモデル組立技術が必要な商品だ。
今回の組立では塗装は行わずウォッシングによるスミ入れを行っている。ウォッシングは薄めた塗料を塗りつけ拭き取ることでプラモデルの細かいモールドを浮き立たせる手法だ。ウォッシングを行うことで、航空機モデルならではの繊細なパネルラインが浮かび上がりカッコよさが増す。
最初に組み立てるのはパイロットフィギュアだが、これが非常に小さい。指の先に乗るような小ささのフィギュアなのだが、米粒のようなフィギュアの頭と、1cmに満たない腕を接着する必要がある。ピンセットは必須だが、拡大鏡もあると良いだろう。
最初からなかなかの難易度だが、パイロットフィギュアのモールドは非常に精密で、2cmほどのフィギュアにもかかわらずこの時代の新統合軍のパイロット服のデザインをきちんと再現している。スミ入れでディテールを浮き出させることでその存在感はさらに高まる。ハセガワの成型技術の高さに感心してしまう。
設定上のVF-19Aは単座にも、復座にもすることができるが、プラモデルにも2体分のフィギュアが入っているので、復座で組み立てることも可能だ。今回は単座で組み立てていった。ちなみに「マクロス」でのVF-19(YF-19)は無改造で復座にすることができ、「マクロスプラス」のクライマックスでは主任設計者のヤン・ノイマンが主人公イサムが搭乗するYF-19に乗り込んでいる。
コクピットを本体パーツに組み込んでいく。機体の下部分を貼り合わせることでVF-19独特の機首の形が作られる。コクピットの後ろには特徴的な前翼(カナード)がつく。また、機体後部はバトロイドやガウォークでは肩になる膨らみがあるが、本商品では一体成型されている。追加武装である「ファストパック」もかっちりとはまる。
本商品で面白いポイントの1つが腕ブロックだ。バトロイド、ガウォーク形態で腕になるパーツだが、このプラモデルではかなり細く、コンパクトに造型している。腕ブロックと、胸部にあるバルカンポッドを取り付けた所は、変形時に分離するとは思えないほどかっちりとはまり込んでいる。こういったところが飛行形態に特化したアレンジの面白さだろう。
次は前脚の取り付け。前脚は航空機モデルの注目ポイントの1つ。現実の飛行機では近くで目にできるメカニックな部分であり、造型に力が入る箇所だ。本商品の前脚も航空機モデルらしいこだわりの造型がカッコイイ。特にクリアパーツで前脚のライトを表現しているところが楽しいポイント。ちなみに本キットは車輪を出した駐機状態でのパーツ設計になっている。もし前脚を収納しハッチを閉じた状態にしたければ、模型スキルを活かした改造を行う必要がある。
次がエンジンブロックの組立。バトロイド時には足になるところだ。アニメのYF-19のバトロイド形態はかなり足がボリュームあるデザインになっているがプラモデルはすらりと細い。太もも部分はエアインテークとなっている。この部分は3ブロックで構成されていて、合わせることでかっちりはまるのが気持ちいい。
空気を取り入れエンジンへ運ぶエアインテークは、内部をのぞくと空気を圧縮するファンが見える。機体に較べて大型のエアインテークは戦闘機の特徴である。架空の戦闘機であるVF-19でもこの大きなエアインテークが戦闘機らしさを強調している。ちなみにエアインテークからエンジンに続く部分はバトロイド形態では太ももと膝になる。バトロイドの時の形も想像できるのがこのプラモデルの面白いところだろう。
次は「ハイマニューバミサイル」を翼に取り付けていく。ミサイルを懸架するパイロンを付けるのだが、この基部がディテールのみで取り付けのガイドとなる穴などがないので、ずれやすい。パイロンを付けない翼の造型を優先している設計のためだが、組み立てにくさを感じた部分だった。
ハイマニューバミサイルは従来のミサイル以上に高機動のミサイルということで非常にカッコイイ。塗装せずともスミ入れだけで質感がぐんと上がるのも楽しかった。ハイマニューバミサイルを取り付けた翼をエンジンブロックに付けるのだが、ここもエンジンの上に翼を貼り付ける形で固定するので、きちんと接着が安定するまでパーツを手で押さえていないと、ミサイルがついた翼の重みでパーツが剥がれてしまいそうになった。翼とミサイルの固定は、もう少ししっかりして欲しいと感じた部分だ。
翼をエンジンブロックに取り付けたら完成までもう1歩だ。エンジンブロック、インテーク、ガンポッドや頭部を取り付けていく。この「各ブロックを機体に取り付ける」という工程が気持ちいい。別々に組み立てていった各ブロックが組み合わさる。これまで想像していた完成形が実際に形になる瞬間だ。
各ブロックは接続のためのガイドもありかっちり組み合わさる。前述の翼と足ブロックの接着の不安定さとは異なる、各パーツがかっちりとはまる設計で好感を持った。特にエアインテークと足ブロックは膝部分が足に収納され組み合わさるのが気持ちよかった。エアインテークと足ブロックの組み合わせは、戦闘機のエンジンにも、足にも見えるという可変戦闘機ならではのシルエットになる。ここまで来ると早く完成させたいという気持ちが強くなった。
最後は機首部分のセンサーだ。YF-19は機首部分にセンサーが集中しており、プラモデルはクリアパーツで表現している。クリアパーツは非常に細かいが、ニッパーで細かくゲート跡を切り離すと、クリアパーツが取り付ける穴のところにきっちりとはまる。また、今回、機首側面の大型のクリアパーツに関しては裏側から塗装してみた。意図しない透明な色合いになって満足しているポイントだ。
これで本体部分の完成となる。今回はさらにデカールを貼って部隊マークなども入れてみた。デカールと完成写真は次ページで紹介したい。
(C)1994 BIGWEST
協力:GA Graphic / ハギハラ シンイチ