特別企画

ヘタ仙人の「プラモデルを楽しもう!」、ハートマークが組む位置を教え、ひげまでしっかり色分け! 「ENTRY GRADE ドラえもん」は、大人が驚く技術の結晶

「ENTRY GRADE ドラえもん」

開発・発売元:BANDAI SPIRITS

発売日:7月18日発売

価格:880円(税込)

ジャンル:プラモデル

対象年齢:3歳以上

 こんにちは。模型はヘタだが愛はある、ヘタ仙人です。

 先日Youtubeで、1966年の東京都民の生活を撮影したフィルムを見ました。私は1969年生まれですから少し前の時代ではあるものの、子供の頃の生活様式はほぼ同じ。懐かしさいっぱいで見ていたのですが、そのワンシーンに衝撃を受けてしまったのです。動画(フィルム)の中で、小学生の男の子が、なんとプラモデルを作っていたんです。クルマの。ランナーの入ったビニール袋をワイルドに噛みちぎっている彼を見て、「嗚呼、確かに子供の頃って、こうして身近にプラモデルがあって、なんの迷いもなく作っていたなあ」と思ったのです。そう、昭和50年代くらいまででしょうか? 子供にとってプラモデルは欠かせないアイテムだったんですよね。

 翻って現在、プラモデルは大人の趣味としての側面が大きく、それはそれでたいへんうれしい状況ではありますが、子供とプラモデルの関係って、いまどうなのだろう……とも考え、そこで思い至るのが、BANDAI SPIRITS ホビー事業部のブランド「ENTRY GRADE(エントリーグレード)」です。最近はRX-78-2 ガンダムがラインナップされて話題になりましたが、実はこれまで発売されている製品も、とんでもなく作りやすく楽しいので、是非手にとっていただきたく紹介します。その最たるものは「ドラえもん」(税込880円)で、対象年齢3歳以上のこの商品は、とにかく組みやすい。そしてデキがいい! そのデキの良さとは、もちろん形状や色味もありますが、細いヒゲすら黒い別パーツで表現されているなど、工業製品として大人が感動してしまうという側面もあるのです。ゆえに、大人も子供も楽しめる逸品であり、ぜひ親子で作っていただきたいものなのです。

【ENTRY GRADE ドラえもん】
7月18日発売、価格は880円(税込)。対象年齢3歳以上という、低年齢層向けに作られているだけに、BANDAI SPIRITSの様々な工夫が盛り込まれたキットです

 前回は「プラモデル初心者にはガンプラがオススメ」としてプラモデルを組む上での注意点を話しましたが、今回はこの「ENTRY GRADE ドラえもん」からメーカー側が商品として初心者向け、子供向けにどのように取り組んでいるかを見ていこうと思います。簡単に組めて、その組んだ姿に自分自身がビックリしてしまう。プラモデルを完成させたという達成感が味わえるプロダクトです。

【爪切りだけでプラモデル作ってみた!30MM 1/144 eEXM-17 アルト(空中戦仕様)[ネイビー]|ニッパーが無い時の対処法】

今の子供向けプラモデルは、大人が驚くクオリティ

 では製品を見ていきましょう。

 ボックスのデザインは、漫画を連想させるデザインで親しみやすいですね。そして注目は左上のアイコンです。

【ボックスとアイコン】
「道具不要」、「塗装不要」、「13パーツ」との表記。とても簡単なプラモデルであることがわかります

 「道具不要」というのは、普通のプラモデルで使われるニッパーすら必要なく、手でパーツをもぎ取ることができることを意味します。「塗装不要」というのは、上記したようにパーツにすでに色が付いているので、塗装の必要がないということです。「13パーツ」とあるのは、もちろん組み立てる際のパーツ数です。ガンプラなどではゆうに100を超えますから、いかに少ないかがわかるでしょう。組み立てに要する時間も、20分とかからないのではないでしょうか(慣れていれば10分程度でしょう)。

 箱を開けると、色とりどりのパーツが現われます。

【箱を開けてみる】
箱を開けました。プラモデルとしてはとてもシンプルなパーツ数で、初めてでもすぐ組み立てられるでしょう。

 説明書にも注目です。説明書は、手順ごとに上下2段にわかれていて、大きく「1」、「2」と記述されています。

【マニュアル】
組立説明書。大きく、わかりやすく書かれています

 説明書が、初心者にとってどうやら難しいらしいことは前回少し触れましたが、これならば大丈夫ではないでしょうか? もっとも個人的には、組立説明書もコンピュータや家電のマニュアルのようにしっかり読めば必要十分な情報は入っていて、アイコンの説明も読んでおけば支障はないと思っているのですが、ことプラモデルに関しては「絵」だけを見て作り始めてしまう方が多いのかなあと。初めての方には、パソコンや家電と同じく、まずは説明書を最初からきちんと読むことを強くおすすめします。

 次にパーツです。これは、ランナーからもぎ取るだけで、力もそれほど必要ありません。ぶどうを房から取り外すくらいのイメージでしょうか。もし「固いな」と思ったら、片方の手はランナーを、もう片方はパーツを掴んで、1つのつなぎ目(ゲートといいます)に力をかける形で、折り離すようにしてみてください。

【パーツの楽な外し方】
片方でランナーを、片方でパーツを持って、一箇所に力をかけます

 ゲートが1つ外れれば、ほかのゲートも楽に外れます。

 さて。ドラえもんはなぜ、ニッパーを使わず手だけでパーツを外せるかというと、ゲートが極めて細い「タッチゲート」と呼ばれるものになっているからです。タッチゲートは初心者向けのプラモデルによく使われていて、ニッパーいらずで便利なのですが、実はもうひとつ、隠れた利点があります。それは、「誰でもパーツがしっかり組み合わせられる」という点です。私も驚いたのですが、初心者の場合、ゲートがパーツに残っていることがあり、結果パーツが上手くはめられないというトラブルが起きていることがあるのです。

【ゲートを残したパーツ】
ゲートが残ってしまっているパーツ。赤丸で囲んだ部分が残っているゲートです。このゲートが邪魔をして、パーツが上手くはまらなかったりします。ドラえもんはこうした事態は起こりません

 タッチゲートであれば、手で取れるえ上にゲートがほぼ残らないので、こうしたトラブルも防げるのだなあと感じました。ちなみに、ニッパーいらずとはいえ、もちろんニッパーを使って切り取ったほうがきれいに切り取れますから、見栄えを気にされる方であればニッパーも使ってみてください。

【ニッパーで切り取った跡】
左が手でもぎ取った箇所で、右がニッパーで切り取り、少しツメで均した跡です。手でもぎ取った場合は、ツメで均すこと自体、少し労力がかかります

 次にパーツを組んでいきます。ドラえもんは、パーツを「積み重ねる」ことでボディーが出来上がっていくことが特徴で、商品の公式ページでもその構造が紹介されています。

【ドラえもんの構造】
ドラえもんのボディーは、パーツを積み重ねていく工程で完成に近づきます

 この構造自体素晴らしいと思いますが、ほかにも注目ポイントがあります。それは、ひとことでいえば「かわいい」点。どこがかわいいのか? 組み間違え防止のための印が、です。

【かわいい】
組むときに向きを間違えないように、星や月、ハートといった意匠が施されています。たのしいですね!

 プラモデルは、組んでいくたびに形ができあがるのが醍醐味ですが、それとは別に、星や月、ハートといった意匠が組み込まれたことで、組む過程での楽しみが増えること間違いなしです。ちょっとしたパズルのような感覚にもなるでしょう。

 そして、この商品の、ある意味目玉となるのがパーツ構成です。シンプルなデザインのドラえもんとはいえ、そこには細かい色分けが存在します。それを、シール無しで実現してしまうのは素晴らしい。特に、前述したヒゲの構造などは大人でも「ほほー」と驚くものではないでしょうか?

【ひげ】
ドラえもんの顔の構造。別々のパーツを組み合わせるとドラえもんの顔になります
組み合わせたところです。ヒゲが、白い肌から若干飛び出しているのがわかるでしょうか?

 長々と書いてきましたが、慣れていれば時間にしてここまで10分程度。あとは、頭をボディに差し込めばよいのですが、ここにも工夫が施されていて、抜けないようになっているのです。

【頭】
頭を後ろ側に向けて差し込み、前に回せば完成なのですが……
実は、足元でしっかりロックされているので、頭がスッポ抜けることはないのです

 組み立ての全行程はこれで終了です。いや、素晴らしい。しかし! お楽しみはまだ残っています。目です。目のシールが付いているので、さまざまな表情が楽しめるのです。

【目のシール】
目のシールです。キットと同じ表情の、通常の目もありますが、貼らなくても十分でしょう

 この、シールもよいなあと思いました。というのもプラモデルのシールは、パーツの着色では再現できない箇所の色を補うために貼ることが多く、言ってみれば作業工程のひとつです。しかしドラえもんのシールは、キットと同じ表情で瞳の白を補完するものも入ってはいるものの、基本的には完成後に表情を変えるためのもの。つまりプラスオンの“遊び”要素になっているのです。

 そして、シールを貼らなくても、成型色だけで本体が完成しているということは、水につけても大丈夫ということ。つまりお風呂遊びも可能ということです。お子さんにとってはうれしい利点かなと思います。もちろんキットはディスプレイ用途のものなので、商品として水遊びを保証しているものではありませんが。

【完成】
完成! 作業時間は時間にして10分ちょっとでしょうか。手のひらにすっぽり収まりますし、机の上に飾っておくのもいいですね!

 これにて「ENTRY GRADE ドラえもん」のレビューを終わります。思い返せば、BANDAI SPIRITSの初心者向け製品/低年齢層向け製品は、本当に工夫が凝らされているものが多かったと思います。思いつくだけでも、1/48スケールのビッグスケール「メガサイズモデル」はタッチゲートのみならず、ランナー2枚をそのまま組み合わせれば関節機構ができあがる「ランナーロック機構」を採用していました。

 ダンボール戦機シリーズは、各ランナーの表記にA、B、Cという文字ではなく、頭や足のアイコンを使っていました。『機動戦士ガンダムAGE』の「AG」シリーズは、1/144スケールのガンプラなのにパーツ数が10点程度に抑えられていて、完成するとHGと見紛うばかりのクオリティでした(関節はほぼ動かないのですが)。

 こうしたパーツを組み合わせる妙はドラえもんだけではなく、実は「ENTRY GRADE 超サイヤ人ゴッド超サイヤ人孫悟空」990円(税込)の顔も、なかなかのものなのでご紹介しましょう。

【ENTRY GRADE 孫悟空】
髪の毛のパーツ構成も見ものの悟空ですが、髪の毛を構成するパーツにこの白目を差し込むと……
この状態に。あまり「顔」といったイメージではありませんが、さらにフェイスパーツをかぶせると……
顔ができあがりました。髪の毛のパーツに、眉毛と瞳も存在していたんですね! こうした“驚き”も、ENTRY GRADEを組んでいて楽しいところです
「ENTRY GRADE 超サイヤ人ゴッド超サイヤ人 孫悟空」は、3月28日発売で、価格は990(税込)。対象年齢6歳以上。ポーズは固定ですが、顔だけでなく筋肉や道着のしわなどディテール表現も細かいです

 この他、ENTRY GRADEの、ドラえもん以外の商品も、今回参考にするために組んでみたのですが、どれも面白い。そして、完全に私の妄想ですが、各商品はそれぞれ、対象とする年齢層を考慮しているのかな? とも感じました。たとえば孫悟空やウルトラマンゼロは、小さいお子さんはもちろん、コンテンツの発表時期からすれば、ある程度幅広い年齢層が興味を示しそう……というわけでかっこいいアクションの固定ポーズで、ディスプレイに最適です。一方仮面ライダーゼロワン ライジングホッパーは現行の仮面ライダーであり、小さなお子さんが手に取る確率は高いはず。こちらは、肩と頭が可動して、ブンドド時には頼りがいのある「戦力」になりそうです。

【ENTRY GRADE ウルトラマンゼロ】
8月8日発売で、価格は1,100円(税込)。対象年齢6歳以上。こちらもポーズ固定ですが、胸のカラータイマーが差し替えではなく、回すことで青から赤に変化するギミックがあります
【ENTRY GRADE 仮面ライダーゼロワン ライジングホッパー】
3月28日発売で、1,100円(税込)。対象年齢3歳以上。目の部分だけが細かいですが、2パーツで構成されたボディに装甲を貼り付けるという形で組み上げます

 話を「ENTRY GRADE ドラえもん」に戻すと、その詰め込まれた工夫に驚かされましたが、きっとこれは集大成ではなく、今後も進化が続いていくのでしょう。今後どのような商品が出てくるのか楽しみにしつつ、お子さんをお持ちのご家庭には、強くおすすめしたい商品だなと思いました。

【貯金箱】
さいごに。完成後に遊んでいたら、「これ、貯金箱になるのでは?」と思い立ち、カッターとヤスリでお金を入れるミゾを開けてみました。内部のダボも切り取らねばなりませんが、せっかくのプラモデルですので、こうして加工して遊ぶのも楽しいでしょうね