特別企画
ヘタ仙人の「プラモデルを楽しもう!」、ハートマークが組む位置を教え、ひげまでしっかり色分け! 「ENTRY GRADE ドラえもん」は、大人が驚く技術の結晶
2020年9月11日 10:00
こんにちは。模型はヘタだが愛はある、ヘタ仙人です。
先日Youtubeで、1966年の東京都民の生活を撮影したフィルムを見ました。私は1969年生まれですから少し前の時代ではあるものの、子供の頃の生活様式はほぼ同じ。懐かしさいっぱいで見ていたのですが、そのワンシーンに衝撃を受けてしまったのです。動画(フィルム)の中で、小学生の男の子が、なんとプラモデルを作っていたんです。クルマの。ランナーの入ったビニール袋をワイルドに噛みちぎっている彼を見て、「嗚呼、確かに子供の頃って、こうして身近にプラモデルがあって、なんの迷いもなく作っていたなあ」と思ったのです。そう、昭和50年代くらいまででしょうか? 子供にとってプラモデルは欠かせないアイテムだったんですよね。
翻って現在、プラモデルは大人の趣味としての側面が大きく、それはそれでたいへんうれしい状況ではありますが、子供とプラモデルの関係って、いまどうなのだろう……とも考え、そこで思い至るのが、BANDAI SPIRITS ホビー事業部のブランド「ENTRY GRADE(エントリーグレード)」です。最近はRX-78-2 ガンダムがラインナップされて話題になりましたが、実はこれまで発売されている製品も、とんでもなく作りやすく楽しいので、是非手にとっていただきたく紹介します。その最たるものは「ドラえもん」(税込880円)で、対象年齢3歳以上のこの商品は、とにかく組みやすい。そしてデキがいい! そのデキの良さとは、もちろん形状や色味もありますが、細いヒゲすら黒い別パーツで表現されているなど、工業製品として大人が感動してしまうという側面もあるのです。ゆえに、大人も子供も楽しめる逸品であり、ぜひ親子で作っていただきたいものなのです。
前回は「プラモデル初心者にはガンプラがオススメ」としてプラモデルを組む上での注意点を話しましたが、今回はこの「ENTRY GRADE ドラえもん」からメーカー側が商品として初心者向け、子供向けにどのように取り組んでいるかを見ていこうと思います。簡単に組めて、その組んだ姿に自分自身がビックリしてしまう。プラモデルを完成させたという達成感が味わえるプロダクトです。
今の子供向けプラモデルは、大人が驚くクオリティ
では製品を見ていきましょう。
ボックスのデザインは、漫画を連想させるデザインで親しみやすいですね。そして注目は左上のアイコンです。
「道具不要」というのは、普通のプラモデルで使われるニッパーすら必要なく、手でパーツをもぎ取ることができることを意味します。「塗装不要」というのは、上記したようにパーツにすでに色が付いているので、塗装の必要がないということです。「13パーツ」とあるのは、もちろん組み立てる際のパーツ数です。ガンプラなどではゆうに100を超えますから、いかに少ないかがわかるでしょう。組み立てに要する時間も、20分とかからないのではないでしょうか(慣れていれば10分程度でしょう)。
箱を開けると、色とりどりのパーツが現われます。
説明書にも注目です。説明書は、手順ごとに上下2段にわかれていて、大きく「1」、「2」と記述されています。
説明書が、初心者にとってどうやら難しいらしいことは前回少し触れましたが、これならば大丈夫ではないでしょうか? もっとも個人的には、組立説明書もコンピュータや家電のマニュアルのようにしっかり読めば必要十分な情報は入っていて、アイコンの説明も読んでおけば支障はないと思っているのですが、ことプラモデルに関しては「絵」だけを見て作り始めてしまう方が多いのかなあと。初めての方には、パソコンや家電と同じく、まずは説明書を最初からきちんと読むことを強くおすすめします。
次にパーツです。これは、ランナーからもぎ取るだけで、力もそれほど必要ありません。ぶどうを房から取り外すくらいのイメージでしょうか。もし「固いな」と思ったら、片方の手はランナーを、もう片方はパーツを掴んで、1つのつなぎ目(ゲートといいます)に力をかける形で、折り離すようにしてみてください。
ゲートが1つ外れれば、ほかのゲートも楽に外れます。
さて。ドラえもんはなぜ、ニッパーを使わず手だけでパーツを外せるかというと、ゲートが極めて細い「タッチゲート」と呼ばれるものになっているからです。タッチゲートは初心者向けのプラモデルによく使われていて、ニッパーいらずで便利なのですが、実はもうひとつ、隠れた利点があります。それは、「誰でもパーツがしっかり組み合わせられる」という点です。私も驚いたのですが、初心者の場合、ゲートがパーツに残っていることがあり、結果パーツが上手くはめられないというトラブルが起きていることがあるのです。
タッチゲートであれば、手で取れるえ上にゲートがほぼ残らないので、こうしたトラブルも防げるのだなあと感じました。ちなみに、ニッパーいらずとはいえ、もちろんニッパーを使って切り取ったほうがきれいに切り取れますから、見栄えを気にされる方であればニッパーも使ってみてください。
次にパーツを組んでいきます。ドラえもんは、パーツを「積み重ねる」ことでボディーが出来上がっていくことが特徴で、商品の公式ページでもその構造が紹介されています。
この構造自体素晴らしいと思いますが、ほかにも注目ポイントがあります。それは、ひとことでいえば「かわいい」点。どこがかわいいのか? 組み間違え防止のための印が、です。
プラモデルは、組んでいくたびに形ができあがるのが醍醐味ですが、それとは別に、星や月、ハートといった意匠が組み込まれたことで、組む過程での楽しみが増えること間違いなしです。ちょっとしたパズルのような感覚にもなるでしょう。
そして、この商品の、ある意味目玉となるのがパーツ構成です。シンプルなデザインのドラえもんとはいえ、そこには細かい色分けが存在します。それを、シール無しで実現してしまうのは素晴らしい。特に、前述したヒゲの構造などは大人でも「ほほー」と驚くものではないでしょうか?
長々と書いてきましたが、慣れていれば時間にしてここまで10分程度。あとは、頭をボディに差し込めばよいのですが、ここにも工夫が施されていて、抜けないようになっているのです。
組み立ての全行程はこれで終了です。いや、素晴らしい。しかし! お楽しみはまだ残っています。目です。目のシールが付いているので、さまざまな表情が楽しめるのです。
この、シールもよいなあと思いました。というのもプラモデルのシールは、パーツの着色では再現できない箇所の色を補うために貼ることが多く、言ってみれば作業工程のひとつです。しかしドラえもんのシールは、キットと同じ表情で瞳の白を補完するものも入ってはいるものの、基本的には完成後に表情を変えるためのもの。つまりプラスオンの“遊び”要素になっているのです。
そして、シールを貼らなくても、成型色だけで本体が完成しているということは、水につけても大丈夫ということ。つまりお風呂遊びも可能ということです。お子さんにとってはうれしい利点かなと思います。もちろんキットはディスプレイ用途のものなので、商品として水遊びを保証しているものではありませんが。
これにて「ENTRY GRADE ドラえもん」のレビューを終わります。思い返せば、BANDAI SPIRITSの初心者向け製品/低年齢層向け製品は、本当に工夫が凝らされているものが多かったと思います。思いつくだけでも、1/48スケールのビッグスケール「メガサイズモデル」はタッチゲートのみならず、ランナー2枚をそのまま組み合わせれば関節機構ができあがる「ランナーロック機構」を採用していました。
ダンボール戦機シリーズは、各ランナーの表記にA、B、Cという文字ではなく、頭や足のアイコンを使っていました。『機動戦士ガンダムAGE』の「AG」シリーズは、1/144スケールのガンプラなのにパーツ数が10点程度に抑えられていて、完成するとHGと見紛うばかりのクオリティでした(関節はほぼ動かないのですが)。
こうしたパーツを組み合わせる妙はドラえもんだけではなく、実は「ENTRY GRADE 超サイヤ人ゴッド超サイヤ人孫悟空」990円(税込)の顔も、なかなかのものなのでご紹介しましょう。
この他、ENTRY GRADEの、ドラえもん以外の商品も、今回参考にするために組んでみたのですが、どれも面白い。そして、完全に私の妄想ですが、各商品はそれぞれ、対象とする年齢層を考慮しているのかな? とも感じました。たとえば孫悟空やウルトラマンゼロは、小さいお子さんはもちろん、コンテンツの発表時期からすれば、ある程度幅広い年齢層が興味を示しそう……というわけでかっこいいアクションの固定ポーズで、ディスプレイに最適です。一方仮面ライダーゼロワン ライジングホッパーは現行の仮面ライダーであり、小さなお子さんが手に取る確率は高いはず。こちらは、肩と頭が可動して、ブンドド時には頼りがいのある「戦力」になりそうです。
話を「ENTRY GRADE ドラえもん」に戻すと、その詰め込まれた工夫に驚かされましたが、きっとこれは集大成ではなく、今後も進化が続いていくのでしょう。今後どのような商品が出てくるのか楽しみにしつつ、お子さんをお持ちのご家庭には、強くおすすめしたい商品だなと思いました。