特別企画

【ちょい組み】スケールモデル「1/48 ソビエト中戦車 T-34-85」

接着剤を使った組み立てを楽しむ。装備品の取り付けにおける創意工夫がおもしろい

 それではキットを見ていこう。単色のランナー4枚に、重量感を出すためのウェイト、砲塔を彩るためのデカール、主砲を稼働させるためのポリキャップ2個とシンプルな構成だ。これに加えて、組み立てマニュアル、組み立てアドバイス、バックグラウンド情報といったペーパーが同梱されている。

【「ソビエト中戦車 T-34-85」同梱品】
ランナーと付属品
ペーパー

【「ソビエト中戦車 T-34-85」同梱品】
ランナーは4枚
ランナーAは2枚。左側面と右側面といった感じ
ランナーBは、砲塔など戦車の上部構造
ランナーCは、戦車下部の車体部分となる
ポリキャップ。主砲を稼働させるために使用する
ワイヤーロープ。より糸だが、ワイヤーっぽい質感
デカール
ウェイト。まずは底部にウェイトを置くのが最初のステップとなる

 筆者はこの「ソビエト中戦車 T-34-85」を、1カ月ぐらい掛けて組んだ。2月6日に発売されてからすぐ購入し、3月過ぎにようやく完成。平日はなかなかまとまった時間が取れないので、週末に数時間ずつ。少し組んでは眺め回し、マニュアルを精読しては次の手を熟考するということを繰り返しながら。トータルでは10時間ぐらいだろうか。慣れてる人なら、接着剤が乾く時間を含めても数時間で組めると思う。

 キットは、車体下部を皮切りに、車輪、履帯、車体上部、砲塔の順番で組んでいく。全工程で接着剤を使うため、ランナーから切り離しては、接合部を綺麗に合わせ、そこに接着剤を流し込んでいくということを繰り返していく。筆者は勝手がよくわからかったので、マニュアル番号ごとにキッチリそのプロセスを繰り返していったが、間に接着を待つ待ち時間が発生するため、先に全部切り離して並べてから取りかかるようにすると、よりスピーディーに組めそうだ。

【車体を組む】
車体は四方を貼り合わせるだけで難しいところはない
10個の車輪は細かいパーツの組み合わせで構成されている。ひとつずつ接着していくが、「タミヤセメント」では付けすぎてしまうことが多く、かえって難易度を高めていた。流し込みタイプがオススメだ

【最難関の履帯に挑む】
ランナーを見て衝撃を受ける
履帯の構成要素。これを車輪に沿わせながら接着する必要がある。今回はメンディングテープを使った
メンディングテープを長めに拡げて、テープの接着力を活かして先に全部繋げてしまう
ぐるりと一周させる
流し込みタイプの接着剤でちょいちょいと。この作業を左右で行なう

 筆者は現在乗り物系のスケールモデルから、いわゆるガンプラまで、様々なプラスチックモデルに挑んでいるが、この「ソビエト中戦車 T-34-85」は、1/48サイズと小さいこともあり、1つ1つのパーツの小ささに驚いた。最初はカッティングマットの上で組み始めたが、くしゃみひとつで色んなパーツが吹き飛んでしまうので、ボックスの中でやったらとても収まりが良かった。そのままふたを被せれば、すぐ中断できるし、接着剤の漏れも吸収してくれる。ビギナーにはオススメしたい。

【車体上部】
いよいよ車体上部へ。大きめのパーツには、切り取るべき突起があるので忘れずに綺麗に切り取る
上部構造物は穴にはめ込む形式が多い。裏から流し込むと綺麗に接着できる
後部の排気管。排気管を付けてからアーマーを付ける、細かいギミックが嬉しい
上部構造を1つずつ付けていく
車体下部に載せると様になってきた

【砲塔に挑む】
まずは綺麗にバラしてから貼り合わせていく
曲面の貼り合わせが意外と難しく、接着剤を多めにしていたらダダ漏れになってしまった
ポリキャップは主砲の付け根に使用する。これにより主砲の向きを変えることができる
戦車兵は4つのパーツで構成されている。ピンセットを使って付けていく
これは戦車兵を置く台。ここも手が入らないのでピンセットが必須
車体下部、車体上部、砲塔の3つのパーツを組み合わせるとようやくひとまずの完成となる

 このスケールモデルの可動部分は、砲塔と戦車砲のみ。キャタピラは写真でもお見せしたようにピッタリくっつけているため動かない。砲塔は全周360度の回転が可能で、進撃、撤退、もっとも有利とされる45度角からの射撃戦など、思いのままのポージングが可能だ。戦車砲の俯仰角は、仰角40度ほど、俯角は5度ほどと、仰角については実際より広く取れる。

【主砲の俯仰角をチェックする】
仰角は40度ほど。実車より多めに取れる
一方、俯角は5度ほどで、ソ連戦車の弱点を忠実(?)に再現している

【戦いは続く:デカール】
第3親衛戦車軍第7親衛戦車軍団仕様にするか、第2親衛戦車軍第9親衛戦車軍団仕様にするか、それが問題だ
結局、両方愉しむために砲塔左右で貼るデカールを変えることに。デカールは必要なぶんだけ切り取り、水に浸す
ティッシュにおいて表面の水を抜く
ピンセットで位置を決める
親指で押さえ、台紙をずるっと抜く
ピンセットで位置を整えて完成

【戦いは続く:ワイヤーロープ】
より紐とフックパーツ。説明書73mm尺に沿って切る
先端にフックを付ける。2組作ったら完成
戦車に付けていくが、軽いので意外と付けにくい

【戦いは続く:装備品】
シャベルや予備の履帯などを丁寧に付けていく
取っ手は、接着面が小さいため思ったより難しい。流し込みが比較的綺麗にできる
ボックスや留め具、機銃の位置など、細かいところに自身のアレンジを加えるのが楽しい

 このちょい組みを通じて伝えたいメッセージは、スケールモデル作成の楽しさとおもしろさだ。自分が関心のある実在した乗り物が自身の創作によって徐々に出来上がってくる感覚は楽しいし、組み立て後半部分の装備品の取り付け部分に、自身の創意工夫を加え、自分だけの作家性を表現していく作業はとてもおもしろい。筆者も引き続き、別の戦車や、もっとサイズの大きいシリーズにチャレンジしていきたいと思うし、機会があればまたこのちょい組みで取り上げられればと思う。ぜひ往年の戦車ファン、戦車に興味のある方は、チャレンジしてみては如何だろうか。

【完成!】
素組としてはかなり良い感じに仕上がった

【「1/48 ソビエト中戦車 T-34-85」ディテール】
75cm砲をはじく傾斜装甲
シンプルな後部構造
戦車兵が顔を出す砲塔
肉厚の防楯が羨ましい主砲
後部にはタンクも背負っている
実際に組んで見ると取っ手が多さに気付かされる

【「1/48 ソビエト中戦車 T-34-85」ギャラリー】
【参考文献】
THE TANK BOOK(ボービントン戦車博物館)
アドバンスド大戦略2001兵器カタログ(セガ)
World of Tanks(Wargaming.net)